俺は遠くから尊いを眺めていたいんだよ!組み込むんじゃねぇ!~ゴッドイーター世界に転生したからゴッドイーターになって遠くから極東支部尊いしたかったのにみんな率先して関わってきて困る~   作:三流二式

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第二章開始ですー


第2章『ゴッドイーターバースト編』
リスタート・ニューデイズ


 世界全土を『アラガミ』が覆いつくし、人類が希望という名の幻想を捨て去って久しい近未来。人類によるアラガミへの完全勝利など、稚気染みた夢。

 人々はいつ来るとも分からぬ終わりを無意識の内に悟りつつも、それでもなお死への怖れを抱き、仮初の平和という名の箱庭の中へと逃避する。

 

 

 ここは『神』に捨てられた者どもが集う場所『極東』。世界有数の激戦区である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァー! ハァー!」

 

 

 降りしきる雨の中、一人の男が息を切らして疾走していた。

 

 

 男の出で立ちは特徴的であった。右手の手首部分に生活に支障が出そうなほど太く大きな腕輪を嵌めており、その背には身の丈を超す大きさの刃を背負っているのだ。

 そして、そのような大物を背負って尚トップアスリート並みの疾駆。

 

 

 彼こそは人類の希望たる『ゴッドイーター』。アラガミの力をその身に宿し、超人的な力を得た、人類の最後の砦である。

 

 

 しかし、常人を遥かに超えた力を手にし、中型アラガミと互角以上に渡り合えるほどの男が、よもや逃走を選ぶ以外にない状況に追い込まれるなどとは、彼自身も予想だにしていなかったことだろう。

 

 

 

 いつも通りの仕事のはずだった。

 

 

 廃墟と化した街のE地点付近に、中型アラガミ『グボロ・グボロ』が小型アラガミ複数の群れと共に出現したという情報が入った。

『例の計画』が失敗した影響か、アラガミの活動が緩慢になっており、今回現れたアラガミの反応も、今まで出てきた物に比べればひどく弱い反応だった。

 

 

『一人で十分』

 

 

 仲間たちやオペレーターの『ヒバリ』にそう宣言したとおり、彼は一人でアラガミの群れを相手取った。そして、見事討伐しきったのだ。

 

 

 いつも通り、楽な仕事だった。そうなる筈だった。

 

 

 思いもしなかった。突如切羽詰まった警告が鼓膜を震わせたかと思えば、倒壊したビルを突き破り、大型アラガミが現れるなどとは。

 

 

 稲光纏う赤くたなびくマントの威容を目にした瞬間、彼はセオリー通りに動いた。即ち撤退。有無を言わさぬ逃走であった。

 

 

「ハァー! ハァー!」

 

 

 息を乱し、しきりに背後を振り返りながら闘争を続ける彼の顔に、中型アラガミの群れを殲滅した時の格下への嘲りと誇らしさを感じさせる余裕はない。

 あるのは、唯々原始的な、醜いと思えるほどの生存への欲求だけ。

 

 

 男の背後に、あの大型アラガミの姿はない。しかし、常に何者かの視線を感じていた。ずしんずしんと、重量を感じさせる足音が途切れることなく聞こえていた。

 その焦りから、彼は判断を誤った。地形は頭に叩き込んである。だが切羽詰まった状況に陥った事により、一次的に頭から吹っ飛んでしまった。

 

 

 気が付けば、彼はF地点の袋小路へと迷い込んでいたのだ。

 

 

「はは……は?」

 

 

 眼前に広がる、一面の壁。

 

 

 呆然と立ちすくむ彼の背後に、一際大きな雷鳴が聞こえた。

 

 

「GRRRRRRR!」

 

 

 禍々しい咆哮が、狭い袋小路に反響し、爆音となって男の鼓膜を、全身を震わせた。

 

 

「ひ、ひぃい!」

 

 

 耳を押さえ、男は思わずしゃがみ込んでしまう。その目の前に、太く、たくましい前足が石畳を叩き割りながら振り下ろされた。

 

 

 男は魚めいて口をパクパクさせながら、少しでも距離を取ろうと後退ったが、壁が無慈悲にその背を止めた。

 

 

「あ、あぁ……」

 

 

 もはや万事休す。かすれ声を漏らしながら、男は荒ぶる神の禍々しき威容を、ただ茫然と見上げた。

 

 

「グルル……」

 

 

 大きな体に、たくましい四肢。兜を思わせる厳めしい顔。全身に雷光を纏い、紅いマントを広げたその姿はまさに獣神。男を見つめる眼差しはぞっとするほどの無感情であった。

 

 

 獣神は何ら感情を揺り動かす事なく、稲妻を纏う前足を振り上げた。

 

 

(死ぬ……死ぬ? ……ナンデ? 俺が死ぬナンデ?)

 

 

 幸福の絶頂から、あまりにも唐突に引きずり降ろされ、そして、何の抵抗も許さぬ幕切れ。凄まじいまでの落差に、男の精神は限界を迎えていた。

 

 

 アラガミに殺されるなど、今の時代では子供ですら驚かない。さっきまで話していた同僚が物言わぬ肉塊と成り果てるなど、飽きるほど経験してきた。

 死神の前には、行列ができている。誰しもがその列に、生まれた時から並ばされている。いつ自分の番が来るかは、()()()が来なければ分からない。ただ、自分の番が来るのは相当先だろうと、心のどこかで思い込んでいた。

 

 

 本当にどうしようもない事は、先触れなど無い。あまりにも唐突に現れ、そしてあまりにも無慈悲に刈り取ってゆく。死神は彼の前に訪れた。何の前触れもなく。

 男は、いつかその日が来るだろうことは覚悟していた。その日が今日になるとは考えてはいなかった。先触れ無き死に対する覚悟など、男にはできてはいなかったのである。

 

 

 かくして鉄槌は打ち下ろされた。アドレナリンが湧き出し、ゆっくりと流れる時の中で男は振り下ろされる前足をただ漠然と目で追っていた。

 

 

 ……こういった光景は、この世界ではしばしば見受けられた。小型アラガミを蹴散らし、中型アラガミと対等に戦えるようになって、自分が強いと確信したゴッドイーターの寿命は短い。

 そういった者の末路は決まって、対処不能な大型アラガミとの邂逅で終わりを告げる。

 

 

 彼もまたそういった者と同じ末路を辿るだろう。そしてリストに刻まれ、瞬く間に忘れ去られるであろう。残しておくには、あまりにもありふれた出来事であるがゆえに。

 

 

 だが、一つだけ、男は忘れていた。獣神は知らなかった。

 

 

 この世界はアラガミに侵食されつつある。その浸食を食い止める最後の砦がゴッドイーター。その事実は揺るがない。

 

 

 彼は忘れていた。人類の守護者、最後の砦がゴッドイーター。その砦の前に居座る者を。神殺しの魔狼を! 地獄の番犬を! 

 

 

 男は見た。鈍化した視界の端。獣神の真横の壁が膨れ上がり、内側にはじけ飛んだ様を! 闇よりもなお黒い影を! 獣神に喰らい付く大狼の顎を! 

 

 

「ARRRRGH!?」

 

 

 獣神は関節から先を噛み千切られた前足を振り回しながら、苦痛と困惑の叫びを上げた。

 

 

「あ……あぁ……」

 

 

 男は仰ぎ見た。獣神の雷光を浴びてなお染まらぬ黒き姿を。狼の尾の如く揺れる束ねられた黒髪を。どす黒い紫色の刀身を持つ第2世代型神機を。

 

 

 黒き影は振り返った。男の呼吸は止まった。

 

 

「ハァアアアア……」

 

 

 口元を覆う『牙』から凄まじい蒸気を吐きだしながら、『大狼』は男の様子を頭からつま先までつぶさに観察した。

 金に輝く人外の瞳に見つめられた男はがちがちと歯を鳴らし、死への恐怖を超える恐れによって身を縮こませた。

 

 

 大狼は男の様子に目を細め、何か言おうとして口を開きかけたが、背後で身動ぎする気配を感じて振り返った。

 

 

「GRRRRRRR!」

 

 

 そこには痛みから脱し、怒りに双眸を燃やす獣神が青白い雷球を今まさに発射した瞬間であった。

 

 

「ひっ!」

 

 

 男は短く悲鳴を上げる。離れていても分かる程の膨大な熱が、熱風となって頬を撫でた。当たれば灰すら残らないであろう。盾でガードしたところで、防ぎきれるかどうか。

 

 

 しかし男の懸念など、埒外の怪物はたちまちの内に覆した。

 

 

 超速で迫り来る雷球に対し、大狼は無造作に神機を振りかぶり、目と鼻の先まで迫った瞬間に振り抜いた。

 

 

 まるで蠅を払うかのようなごく自然動作で、雷球は真っ二つに切り裂かれて背後の壁に着弾した。

 

 

「「ッ!?」」

 

 

 尋常ならざる光景に、男と獣神は、この時全く同じ思いを抱いた。

 

 

 〝何だこいつは!? 〟

 

 

 呆けた様子で硬直する獣神の眼前に、大狼は『出現』した。

 

 

「ガルッ!?」

 

 

 目を剥く獣神に、大狼は情け容赦ない一撃を繰り出す。

 

 

「ARRRRGH!?」

 

 

 咄嗟に掲げられたもう片方の無事な前足は、その一撃で根元から切り飛ばされた。夥しい血が傷口から迸り、辺りはたちまちツンとした臭いに満たされた。

 

 

「ガ……ガガ……」

 

 

 呻き声を上げながら、獣神は堪らず後退した。あの怪物が、今まさに自分の命を奪うはずだった死神が、たった一人の人間に追い込まれている。

 

 

 男は放心していた。あまりにも現実離れしたその光景に、今まで自分を形作っていた常識が、音をたてて崩壊していく。

 

 

 大狼は神機を振り上げ、振り下ろす。振り上げ、振り下ろす。途中何度か獣神が抵抗で稲妻を放ったり、噛みつこうとしたものだが、稲妻は全て紙一重でかわされ、噛みつこうとした下顎ごと切り飛ばされてしまった。

 

 

「……ッ……ッッ……!」

 

 

 もはや声一つ上げることができなくなった獣神は、最後の抵抗とばかりにその全身を使って圧し潰そうと身をもたげた。

 迫り来る巨体を前に、ここに来て初めて、大狼は大きく体を動かした。神機を両手で持ち、身を捻った。ぎちぎちという肉体の緊張の音が、離れている男に耳にすら聞こえた。

 

 

「ガアッ!」

 

 

 そして振り抜いた。獣神の体が真一文字に切り裂かれ、真っ二つになった。

 

 

「──────」

 

 

 力なく地面を転がり、ピクリとも動かなくなったかつて獣神だったオラクルの塊に、自らの命を脅かしていたものの名残は無い。それはもうただの物体と化していた。黒ずみ、塵となって消えるだけの、ただの残骸だった。

 

 

 一瞬の出来事であった。大狼が出現し、獣神を殺すまでの時間は1分も無いだろう。だが男には、あまりにも密度の濃い時間だった。世界を塗り替えられるには、十分な時間であった。

 

 

 アラガミは人を虫か何かの様に殺す。そして世界全土を塗りつぶしつつある。ゴッドイーターという存在がその波を多少なりとも食い止めているが、その抵抗はあまりにも儚いと言わざるを得ない。

 

 

 それが、今までの彼の認識であった。

 

 

 しかし男は思い知った。

 

 

 そのアラガミを虫か何かの様に殺す天敵の事を。名無之カカシがいる事を! 

 

 

 屈み込み、瞬きを一切せずに凝視する金の瞳を見つめながら男は乾いた笑みを浮かべ、そして、白目を剥いて気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




(なんか気絶しちゃった…疲れてたのかな…?)


そんなこと考えていたらしいよ
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