俺は遠くから尊いを眺めていたいんだよ!組み込むんじゃねぇ!~ゴッドイーター世界に転生したからゴッドイーターになって遠くから極東支部尊いしたかったのにみんな率先して関わってきて困る~   作:三流二式

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尾断ウラ好き


オウガテイルはやっぱりバースト維持のために生きているんですね!

「何だ……この数値は……!」

 

 

 カカシがラボから自室へと運び出されてからしばらくの時が過ぎ、ペイラーからのデータが届き、さっそく目を通してヨハネスが発した第一声がこれである。

 

 

 彼は目を見開き、しばしの間モニターに映る研究データを前に茫然としていた。

 

 

 彼が驚愕したのも無理はない。

 ペイラーから送られてきたカカシのデータは、あまりにも彼の理解の範疇を超えていた。

 

 

 今でこそペイラーに研究者の座を明け渡してはいるが、彼は、ヨハネスだってれっきとしたアラガミ研究者だ。

 故に、カカシの肉体とオラクル細胞との適合率が人間の範疇を超え、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に驚愕を禁じ得なかった。

 

 

「バカな、いくら新型神機に適合したからといって、これはあまりにも高すぎる! ……それともデータが少ないだけで、新型神機の適合者とはこういう者ばかりなのか? ……否、そんな訳があるか!!!」

 

 

 声を荒げ、ヨハネスは思わずデスクに拳を叩きつけた。

 

 

「君は何者だ『名無し』! まさか、私の計画に異を唱える神が遣わした現人神だとでもいうのか!」

 

 

 声を荒げて激情を露にする今の彼の姿をペイラーが見たら、さぞ驚いた事だろう。何せヨハネスはここまで感情を露にすることなど滅多にないのだから。

 

 

「ハァ……ハァ……落ち着け。そうだ落ち着け私」

 

 

 

 ヨハネスは自らに言い聞かせるように呟くと、しばしの間目を閉じた。

 そして再び目を開けると、いつものフラットな精神に戻っていた。

 

 

「彼の数値が予想を上回る物だったとしても、計画に変更は無い。寧ろ彼が優秀であることがほぼ確定したのだから、これは嬉しい収穫だ。そうだろう?」

 

 

 そう結論付け、ヨハネスはため息を吐きながら背もたれに体重を預け、虚空を睨んだ。

 

 

 まるで自らの不可逆の運命に戦いを挑むかのように。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「さてさて、一体どんなじゃじゃ馬なのやら……」

 

 

 自室のベッドに腰かけて煙草を吸いながら、雨宮リンドウはこれから会う新型神機の適合者『名無之カカシ』という新人について思いを馳せていた。

 

 

 新型神機の適合者という肩書だけでリンドウの興味を引くには十分な物だが、それに加えて鬼教官と名高いの姉が、絶対に目を離すな! と見た事も無い程の悲痛な表情で釘をさしてくるのだから、彼の興味はとことん高まってきた。

 

 

 あの鬼教官がそのような顔をするとは、一体彼女はその新人に何を見たのだろうか? 

 

 

 リンドウは紫煙を吐きながら頭の中で考えるが、結局会ってみるまでいくら考えようが無駄な事だと結論付けた。

 丁度時計を見ればその新人の初任務の時間が近づいていた。

 

 

「良し、そろそろ行くとしますか」

 

 

 リンドウは煙草を灰皿に押し付けて火を消すと、肺に残った紫煙を吐き出しながら立ち上がり、ゆっくりと自室から出ていった。

 リンドウの自室があるのはベテラン区画の最奥。エントランスからやや距離がある場所だった。

 

 

 時間ギリギリまで自室でくつろいでいたから、この分じゃ遅刻してしまうな、とリンドウはゆっくりと歩きながらそう思った。

 

 

 エレベーターから出て、リンドウはきょろきょろと見まわしてそれらしき姿を探すが、見当たらない。

 ふーむ、と顎に手を当てて姉から伝えられた名無之カカシの容姿を思い出しながら階段を下ると、オペレーターである『竹田ヒバリ』に話しかけられた。

 

 

「あ、リンドウさん! 支部長が見かけたら、顔を見せに来いと言っていましたよ」

「オ~ケ~、見かけなかったことにしてくれ」

 

 と、リンドウはヒバリを軽い感じであしらい、再び名無之カカシを探すためにあちこち見て回り、そしてようやく見つけた。

 

 

 赤いフェンリルの正式制服を身に纏い、黒髪をポニーテールにまとめた細身の優男が長椅子の端に腰かけ、行き交う人々をニコニコと眺めていた。

 中々人目を引きそうな見た目なのに、どういう訳か印象にあまり残らない男だとリンドウは思った。

 

 

 このまま吹けば飛んで行ってしまうかのような存在感の薄さ。それに加えてふと目を離せばどこかへ勝手に行ってしまうかのような危うさを、リンドウはこの優男の中から感じ取った。

 

 

(何だ何だ。てっきりどんなおっかない奴なのかと思えば、とんだ肩透かしだぜ。さては姉上、俺を脅かそうとして話を誇張したな?)

 

 

 ツバキの話と現実で見たカカシの印象のずれに拍子抜けしたリンドウは、意気揚々とカカシの下に向かった。

 

 

「よう新入り」

 

 

 リンドウに話しかけられたことでカカシは彼の存在に気づいたようで、リンドウの姿を見るや、カカシはぎょっと目を見開き、慌てて立ち上がって直立不動の姿勢を取った。

 

 

「あーあーそんなに畏まらなくてもいい。俺は雨宮リンドウ。形式上はお前の上官に当たる」

 

 

 堅苦しいのを好まないリンドウは姿勢を正すカカシを窘めながら、そのまま話を続ける。

 

 

「が、面倒臭い話は省略する」

 

 

 そう言い放つリンドウに、一対のゴールドオーカー色の視線が突き刺さった。

 細められていたカカシの瞳が開かれ、さながらそれでいいのか? と問いかけているかのようだった。

 

 

「良いんだよ。とりあえずとっとと背中を預けられるくらいに成長してくれれば、な」

 

 

 肩を竦めるリンドウに、それもそうかというように、カカシはにこりと笑った。

 

 

(ふ~ん、なかなか面白い奴だなこいつは)

 

 

 そう思いながらにこにこと微笑むカカシを見ていると、後ろから声をかけられた。

 振り返ると、そこには彼にもなじみ深い人物『橘サクヤ』が立っていた。

 

 

「あ~今厳しい規律を叩き込んでるんだから、あっちへ行ってなさいサクヤ君」

 

 

 彼女と話したいのは山々だが、生憎今はこの新人とのコミュニケーションの最中だ。

 仕事の優先順位はしっかりしておきたいので、リンドウは彼女にそれとなく伝わるように茶化しながら言った。

 

 

「了解です、隊長殿」

 

 

 ツーカーの仲であるサクヤは彼の思いをすぐに察知し、そのノリに応じながら去って行った。

 

 

「とまあ、そういう訳、でだ」

 

 

 何故か先ほどよりも笑みが深くなったカカシの視線を訝りながら、リンドウは姉と同じようにこれからの流れを短めに説明した。

 

 

「さっそくお前には実戦に出てもらうが、今回の初戦の任務には俺が同行する……と時間だ。そろそろ出発するぞ」

 

 

 時計を見たリンドウは任務の時間になった事に気づき、話を切り上げてカカシにそう言った。

 カカシは両手を頭の上でくっつけて丸サインを作ることで、リンドウの言葉に了承したことを伝えた。

 

 

(やっぱりこいつは面白いな)

 

 

 後ろからひょこひょこついて来るカカシをしり目に、リンドウは再びそう思った。

 

 

 そしてカカシの初任務の場所、贖罪の街にやって来たリンドウたちは、今回の任務の対象であるオウガテイルを求めてしばらくの間ヒバリのオペレートをもとに崩壊した街の中を彷徨った。

 

 

「ここも随分荒れちまったな」

 

 

 これよりも前の光景を知っているだけに、記憶よりもずいぶんと荒れてしまっているこの場所を見たリンドウは感慨深げに一人呟いた。

 

 

「おい新入り。これから実地演習を始めるが、命令は3つ」

 

 

 持っていたロングブレード型神機を肩に担ぎながら、リンドウはカカシに言った。

 

 

「死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運が良かったら不意を突いてぶっ殺せ……あ、これじゃ4つか」

 

 

 自分で3つと言っておいて、結局4つになってしまったが、そこはリンドウ。いつものまあいいかの精神でそのまま続けることにした。

 

 

「ま、とにかく生き延びろ。それさえ守れば後は万事どうとでもなる」

 

 

 リンドウの言葉にカカシはその通りだと言うように、こくりと頷いた。

 

 

「よぉ~し、おっぱじめるか!」

 

 

 カカシの反応に概ね満足の行ったリンドウは作戦開始を告げた。

 足を止めていた二人はそれを機に再び歩き出し、そしてついにお目当てのオウガテイルの姿を眼中に収めた。

 

 

「いいか新入り? あれがオウガテイルだ。見るのは初めてか?」

 

 

 振り返って聞くリンドウに、カカシは首を横に振って答えた。

 

 

「そうか。なら話は早い。あいつはそこまで強いアラガミじゃない。いわゆる小型アラガミだが、尻尾攻撃は結構強力だ。なるべく食らわないように」

 

 

 カカシは頷きかけ、それから何かに気づいたのか、首を傾げてリンドウを見た。

 

 

「あぁ、そうだ。まずお前ひとりで戦ってみろ。ヤバそうなら俺が助けてやる。行けそうか?」

 

 

 問いかけるリンドウに、カカシはいったんオウガテイルの方に顔を向け、それからリンドウに再び顔を戻し、頷いた。

 

 

「良し、じゃあ行ってこい」

 

 

 リンドウは軽い気持ちでカカシに向かってそう命令を下した。後に彼はその事を死ぬほど後悔する羽目になるのだが、いま未来の話をしたところでしようがない。

 

 

 カカシはリンドウに向かって頷くと、彼の前に出て、ロングブレード型神機とアサルト型神機の備わった新型神機を片手に持ち替え、まるで投げるかのように後ろに引いた。

 

 

(何だ……? こいつなにをする気だ……?)

 

 

 そう思った束の間、カカシは思い切り踏んだ。その瞬間、カカシの姿が掻き消えた。

 

 

「なにっ!?」

 

 

 バカな、何処へ!? 

 

 

 慌てて周囲を探そうとリンドウが顔を正面に向けた瞬間、短い断末魔と何かの咀嚼音が聞こえた。

 バッとその音の方へ振り返ると、そこには顔を失い力なく倒れ伏すオウガテイルと、その死骸を歯牙にもかけず、捕食形態の神機を興味深そうに眺めるカカシの姿があった。

 

 

「何……だと……?」

 

 

 今までリンドウは新人を相手に同じような訓練をしたことがあった。

 誰も彼も、新たに手に入れた力を持て余し、振り回されている者ばかりだった。

 

 

 しかし彼は、カカシは今まで相手にした新人とは明らかに違っていた。

 

 

 彼は振り回されていない。持て余してもいない。

 まるでそうするのが当たり前と言わんばかりに、捕食形態(プレデタースタイル)の一種、シュトルムというオラクルを噴出し、その推進力で突っ込んで噛み千切る形態でオウガテイルに突っ込んだのだろう。

 

 

(なんて奴だ……! これが新人の動きだと!?)

 

 

 カカシのあまりの特出した才能に舌を巻くと同時に、ツバキの言っていた目を離すなという言葉の意味をようやく理解できた。あの悲痛な表情の訳も。

 

 

 その溢れんばかりの才能のままに、彼は突っ込んでいくだろう。今しがた見せたシュトルムと同じように。

 真っすぐに食い破る。()()()()()()()()()()()()

 

 

「カカシ……お前は一体……」

 

 

 リンドウの呟きはオウガテイルの死骸がぐずぐずと崩れていく音にかき消されて消えた。

 その様を興味深そうに眺めるカカシの顔は、リンドウには初めて蟻を見る幼子の様に見えて仕方がなかった。

 

 

 

 




この物語の進行は投稿者のリザレクションのプレイいかんによって変化します。
要するにカカシ君がダメージを受ける描写が多かったり、素材について怒っていたら、まぁそういうことです。生暖かい目で見ていただけると嬉し~です~。

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