俺は遠くから尊いを眺めていたいんだよ!組み込むんじゃねぇ!~ゴッドイーター世界に転生したからゴッドイーターになって遠くから極東支部尊いしたかったのにみんな率先して関わってきて困る~   作:三流二式

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カカシ君ははじめの内はゲームの世界に入り込んだみたいだぜ。ワクワクするな!って感じでしたが、10年間の放浪で現実を知り、物事の考え方がシビアになりました。

その結果、元より自分は死者で、この世界でも存在しない者だったので、自分が傷つく分には何一つ無頓着になってしまいました。

彼の最終目標はレイジバーストのゆっくり終末捕食を完遂させることです。その際いかなる負傷を負おうとも見て見ぬふりをします。

なお彼には体力自動回復、捕食時回復、ジャストガード時体力回復、近接攻撃体力回復等が付いていたりします。伊達に大型アラガミと同じくらいの適合率してる訳じゃないからね。しょうがないね。なお周囲の視線。


申し訳ないが死人はNG

 サクヤさんとミッションを終えてアナグラに帰還し、彼女ともっと親交を深めようと話をしようとしたが「少し時間が欲しい」とすげなく断られてしまった俺は、ふてくされた様にそのまま自室へと直行した。

 

 

 そして一夜明け、すっきりした朝を迎えた俺はエントランスに向かうと『カレル』(攻め)くんと『シュン』(受け)くんを見つけた。

 

 

 この二人は犬猿の仲で、事あるごとに口喧嘩をしては班長の『タツミ』さんやら『ブレンダン』さんやらに窘められている。

 しかし、そんな関係でもしっかり信頼関係が出来ており、2の防衛班の帰還やキャラエピでもその関係性が窺える。

 

 

 うぅ、そういう背景を知っているとこの二人の口喧嘩……尊し! 

 

 

 二人の喧嘩を遠くからにこにこ眺めていたら、シュン君(受け)が俺の存在に気づき、次いでカレル君(攻め)も俺の存在に気づき、先ほどまでの喧嘩っぷりが嘘のように二人そろって俺への嫌味が始まった。

 

 

 そのコンビネーションの鮮やかさときたら! うぅ……尊いよぉ。

 どれだけ嫌味を言おうが堪えない俺に、二人は呆れたように見つめ合い(尊ッ!?)、肩を竦め、すごすごとどこかへ行ってしまった。

 

 

 もう少し二人の仲のいい所を見たかっただけに、ちょっとだけ残念に思っているとコウタ君がやって来て、あの二人の愚痴を言いだした。

 

 

「あの二人、絶対新人イジメするタイプだぜ! あーあ……あんな奴らと一緒にミッション行きたくないなぁ」

 

 

 まぁ確かに、コウタ君の言う事は分らんでもない。あの二人は極東支部でもかなり口が悪い方だから、初対面の人からすればそのような印象を持ってしまうのも仕方がない。

 

 

 でもあの二人は付き合ってみれば結構楽しいもんだよ。だからあんまり気にすんなよ! 

 そういう思いを込めて肩に手を置いたのだが、彼のぶつくさはミッション開始時間までずっと続いた。

 

 

 さて次のミッションだが……。

 

 

「来たか『鉄の雨』!」

 

 

 ミッション名『鉄の雨』

 このミッションの概要をシンプルに言うと、『ソーマ』君の初登場回であると同時に、あの有名な『エリック、上だ!』である。

 

 

 このムービーでゴッドイーター世界のシビアさを思い知らされるわけなのだが、残念ながらそういう酷い展開はNG。俺の前で死者なんて出させませぇ~ん! 

 

 

『裕福な少女』が悲しむ展開は申し訳ないがキャンセルだ。例え自己満足でも死者は出させねぇぜ! 

 そう思い、俺は意気揚々とヒバリさんからミッションを受注し、コウタ君に別れを告げて、いざミッションの地点である『鉄塔の森』へ! 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 廃工場地帯である『鉄塔の森』についた俺は、ソーマ君とエリックさんの姿を探してうろちょろし、そして見つけた。

 エリックさんが一方的にソーマに向かって話しかけているのが遠目からでも分かった。だって彼物凄い派手な格好だし、身振り手振りも大仰だからすぐに分かった。

 

 

 俺はシュトルムで一気に二人に近づいた。移動に便利なのよねぇシュトルムと穿顎。

 

 

 オラクルが噴出される音で俺の存在に気づいた二人はこちらに顔を向けると、そのうちの恰好が派手な方、エリックさんが俺の方に近づいてきた。

 

 

「お、君が例の新人クンかい? 噂は聞いているよ」

 

 

 と髪をかき上げながら、エリックさんは自己紹介を始めた。

 

 

「僕はエリック。エリック・デア=フォーゲルヴァイデ。君も精々僕を見習って人類のため華麗に戦ってくれたまえよ」

 

 

 さて、俺はこの自己紹介の際に彼が何度髪をかき上げたか真剣に数えていたのだが、後ろで我関せずに立っていたソーマ君が血相を変えてこっちに突っ込んで来るではないか。

 

 

 来た……言え……言うんだソーマ君(フロイライン)……! 

 

 

「エリック! 上だ!」

(wwwッ! wwwッ!)

 

 

 俺は内心草を生やしながら、事態を理解していないエリックさんの前に立って落下忍殺を仕掛けてくるオウガテイルにブレード序を振り下ろし、真っ二つに叩き割った。

 その際にオウガテイルの血を頭からかぶる羽目になったのだが、まあ人を助けられたんだからこん位屁でもねぇや。

 

 

「うわっ!?」

 

 

 血液は俺が全部被るように、また切り払った残骸が後ろのエリックさんに当たらないように調整して切ったけど、突然真横を残骸が通過すれば驚いてしまうのも無理はないか。すまそん。

 

 

 それにしても、酷いやっちゃ。

 

 

 腰を抜かし、あわあわと立つのに難儀しているエリックさんに手を貸して立たせながら、俺は思った。

 俺が傷つく分には別にいい。悲しむ人もいないし、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 でも彼らの様な善良な人間が傷つくなんておかしいよなぁ! 

 この10年でそういう場面に出くわす度に、俺は思わずにはいられない。

 

 

 そんな事をつらつらと考えていたら、背後から敵意を感じた。

 でも俺は振り返らなかった。

 

 

(お生憎様、この場に居るのは何も俺たち二人だけじゃないのさ)

 

 

 俺は誰に言うでもなくぼそりと呟いた。

 それと同時に、何か重い物を振るう音がして、背後から迫る敵意が唐突に消え去った。

 

 

 俺はゆっくりと背後を振り向いた。

 視線の先には、胴体を真っ二つにされたオウガテイルの死骸を踏みつけるソーマ君の姿があった。

 

 

(お見事!)

 

 

 俺は迅速な仕事ぶりのソーマ君に、心の中で拍手を送った。

 

 

「……ようこそ、クソッタレな職場へ……」

 

 

 二つになったオウガテイルの死骸の上半身の方を蹴り飛ばしながら、ソーマ君は吐き捨てた。

 

 

「俺はソーマ……別に覚えなくてもいい」

 

 

 そう言うと、残った下半身の方を踏みつけながら、ソーマ君は言った。

 

 

「言っとくが今回はたまたま運が良かっただけで、普通あそこまで油断した奴が送る末路は死だけだ。ここではそれが日常だ」

「ははぁ……」

 

 

 言いながら睨みつけてきたソーマ君に、エリックさんは返す言葉も無いと言った風に頬を掻いた。

 

 

「お前は」

 

 

 と、ソーマ君は唐突に視線を俺に移し、バスター型神機を突きつけて問うた。

 

 

「お前は、どんな覚悟を持って『ここ』に来た?」

「……」

 

 

 どんな、ね。

 

 

 ソーマ君に尋ねられ、俺はこの10年間の事を思い返していた。

 助けられた人、助けられなかった人。素晴らしい人。素晴らしくない人。どうしようもない出来事。思わず涙した出来事。尊い事。醜い事。

 

 

 死と暴力が遥かに横行するようになった世の一端を見て、俺は心底この世界を良い方向にしたいと思った。

 ……己自身の全てを賭けて。

 

 

 でも、そんなことを初期状態のソーマ君に言ったら鼻で笑われること請け合いである。推しにそんな事されたらショックで寝込んじゃう! 

 だから俺は困った風を装った笑みを浮かべる事で誤魔化すことにした。悪いね。恥ずかしがり屋なのん。

 

 

 それを彼がどう受け取ったのかは分からない。

 

 

 ソーマ君はそれ以上何も言ってこず、舌打ちを一つするだけで神機を下ろし、俺に背を向けて歩き始めた。

 その際一瞬だけ垣間見えた彼の横顔は、何かに耐えるかのように歪められ、口は堪えるかのように噛みしめられていた。

 

 

 今の返答ともいえない様な返答に、彼は一体何を思ったのだろうか? 

 

 

 き、気になる……! 滅茶苦茶気になる! 今すぐ追いかけて問い詰めてぇ! 

 

 

 俺はエリックさんの歩調に合わせながら気持ち速めに彼の背を追って歩いて行くと、ソーマ君は唐突に足を止めた。そのせいで俺は彼の背に危うくぶつかりそうになり、エリックさんは間に合わずに俺の背にぶつかり、結局俺はソーマ君の背にぶつかる羽目になってしまった。インガオホー! 

 

 

「チッ……」

 

 

 ソーマ君は俺たちに一瞥をすると、一つ舌打ちを零し、担いでいたバスターブレードを構えた。

 

 

「おいお前ら、構えろ。仕事の時間だ」

「え……? そ、ソーマ君、どゆこと?」

「……!」

 

 

 エリックさんはまだ敵が見えてもいないにも拘らず武器を構えたソーマ君に疑問を投げかけるが、俺はというと彼に言われてようやく俺らを囲むように敵意が渦巻いている事に気が付き、己の不注意さを恥じた。

 

 

 ありゃ、ソーマ君へ注意を向けすぎてここまで接近されているのにすら気付かないなんて、情けないにもほどがある。

 恥ずかしくって、穴があったら入りたい気分だ。何を浮かれているのやら。ここは戦場ですぜ? 浮かれた者がどうなるかは、たった今見たじゃないのよ。

 

 

 俺は火照った頬を押さえ、恥ずかしさを抑えるかのようにぱんぱんと二度ほど張って気分を落ち着かせると、神機を水平に、所謂『ゼロスタンス』の時の構えを取った。

 

 

 ソーマ君に倣って神機を構える俺を見て、ようやくエリックさんも今の状況を理解できたようだった。

 彼がおたおたと何度かブラスト型神器を取り落とし、深呼吸を一回行い、そして構えた瞬間、待ってましたとばかりに俺たちの周りに10を超す数のオウガテイル、コクーンメイデンが地面から文字通り生えてきた。

 

 

『付近に複数のオラクル反応を確認! このままでは囲まれてしまいます! いったん退避を!』

「うわぁ!?」

 

 

 エリックさんはほぼ真横に突如生えてきたコクーンメイデンにビックら仰天して、慌てて後ろに下がるも、今度はオウガテイルに後ろからぶつかり、ひーっと悲鳴を上げながら俺の方に退避してきた。

 うん、エリックさんや。俺のとこに来ても包囲されている事には変わりませんぜ? 

 

 

「このままじゃ分が悪い。お前ら一旦ここは引」

「はいスタグレ」

 

 

 ソーマ君は俺たちに振り返って何か言いだしたけど、その時には俺はスタングレネードを地面に叩きつけ終えたところだった。

 瞬間放たれるのは凄まじい光量と音圧の暴力。

 

 

「「グワーッ!?」」

 

 

 俺を除くその場にいた全ての者が悲鳴を上げて怯んだ。

 ソーマ君やヒバリさんはいったん退避を考えたようだけど、オウガテイルだけならいざ知らず、あれだけのコクーンメイデンがいたとなれば退避している間に蜂の巣にされかねない。

 

 

 だから俺はいっそ内側から包囲網を食い破る事に決めた。

 戦力的にもベテラン一人、新人だが新型神機の使い手である俺が一人、支援役の砲撃職が一人。十分じゃない? 

 

 

 それを伝える時間があれば良かったんだけど、あんまもたもたしてたら再び「上だ!」をされてしまうかもしれない。そんなのは御免である。

 せっかく助けた一つの命。ここで死守させてもらうぜー! 

 

 

 俺は早速オラクルをふかし、エリックさんの真横に生えていたコクーンメイデンを食い千切り、捕食してバースト。

 ヌンヌンヌン、準備完了。システム総じ緑な! 

 

 

 あ゛ー漲ぅ!!! (バチギレ)

 

 

 神機がオラクルを取り込んで活性化。その恩恵で俺の体の各種能力が飛躍的に跳ね上がる。掛けられていた枷が外される素晴らしい感覚が、胸に満ちる。

 たまんねぇ! ポルシェ並みのエンジンだぜ! 

 

 

 その間に一体また一体と復帰してくるが、こっちの準備も完了だ。

 オッシ、どんとこいや―! 

 

 

「ッ!? あのアホ! おいエリック援護しろ! くそ、死にたがりが!」

 

 

 と、ここでソーマ君も復帰し、エリックさんの援護の元、猛スピードで俺を追い越してわらわらと向かって来るオウガテイルに突っ込んでいった。

 

 

 俺はというと、彼がオウガテイルを受け持っている間にコクーンメイデンを始末する事に決めた。

 遠くから近づかせまいと乱射される光弾の弾幕を縫うようにかわし、内一体の背後に回り込んで後ろから一突き。コアをぶち抜いて殺す。

 

 

 その間に他のコクーンメイデンが俺をハチの巣にしようとするが、エリックさんの援護射撃が的確にそれを阻む。

 

 

 俺はそれでも撃ってくる根性のあるコクーンメイデンの光弾を死骸を盾にしてしのぎ、神機を銃形態に変えて、撃った。

 アサルトの強みは連射力と移動しながら撃てる点だ。

 

 

 俺は動き回りながら負けじと弾幕を張り、エリックさんと協力して何とかコクーンメイデンを全滅させることに成功した。

 

 

『コクーンメイデンの殲滅を確認! カカシさん、エリックさん。急ぎソーマさんの援護を!』

「わ、分かった!」

「あいあい」

 

 

 ヒバリさんに急かされ、俺は急いでソーマ君の方へ向かおうとして、唐突にガツン、と後頭部にかなりの衝撃が炸裂した。

 

 

 俺は衝撃がした方向に目を向けると、何と高台に一体のコクーンメイデンが生えているではありませんか。にゃんと! 

 

 

『え? う、嘘!? どうして? お二人が殲滅したはずなのに……!』

「ま、まさか戦闘音を聞きつけてやって来たのか!? か、カカシ君! 平気かい!」

 

 

 光弾を受け、確かに血がダラダラと流れちゃいるが、頭というのは軽傷でも結構血が出たりするのだ。

 駆け寄ってくるエリックさんに、大したことないという事を伝えようとしたけど、その声は叫ぶように声を張り上げるソーマ君の声にかき消された。

 

 

「エリック! 避けろ!」

「え?」

「!」

 

 

 ソーマ君は全身全霊でエリックさんに駆け寄りながら、声を張り上げる。エリックさんは未だ事態を掴めず、オウガテイルから射出された針を、ただ漠然と眺めていた。

 俺はというと、オラクルをふかした高速移動でとっくに彼の元までたどり着いており、彼を優しく押して、位置を交替した。

 

 

 残念ながらその短い時間の内で俺にできるのはそれまで。神機を振って針を弾く事は出来なさそうだった。

 

 

 エリックさんが尻もちをついた瞬間に、ゆっくりになった時間の感覚が元に戻り、俺の脇腹にオウガテイルの針が突き刺さった! 

 

 

(イッッッタぁ~い!!!)

 

 

 脇腹に突き刺さった針は深く食い込み、確実に俺の臓器に穴をあけ、何なら先っちょが少し反対側から突き出ていた。

 あまりの痛みに視界がちかちかと瞬き、脳味噌の芯からしびれるような感覚を覚えた。

 

 

 が、その現象も瞬きする間に終わった。痛みももうすでにない。

 

 

 ありゃりゃ? と疑問に思い、今すぐ確認した上でさっさと引っこ抜きたいけど、しかしここは戦場である。さらに敵味方入り混じっての乱戦の最中だ。

 

 

 引き抜いてる暇なんて無いのだぁ~! 

 

 

 俺は突き刺さった針をそのままに、高台に生えている()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()今まさに飛び掛ろうとしてきたオウガテイルの顔面にぶつけて体勢を崩し、その体勢が整えられる前に接近してコアをブレードで貫いた。

 

 

 そしてロングを引き抜くと同時に、背後から馬鹿の一つ覚えみたいに同じ動作で飛び掛ってきたオウガテイルの鼻面に柄をぶち当てて怯ませ、その反動で一回転して真一文字に叩き割った。

 

 

 叩き割られ、ぽーんと上空を飛んでいた上半分が地面に落ちてべちゃりと音を立てて落下した。

 俺は一旦ゼロスタンスで呼吸を整えると、残心した。

 

 

 コクーンメイデンはソーマ君の怒りのチャージクラッシュを受けて哀れ、爆発四散。

 コクーンメイデンの肉片が周囲にバラバラと散り、それを機に場が静寂に満たされた。

 

 

 聞こえる音はソーマ君の粗い息と、風に晒された工場の部品が鳴らすキイキイという異音だけ。

 

 

『戦闘……終了……。敵の制圧を確認しました……あの、カ、カカシさん』

「ん~?」

 

 

 ヒバリさんの歯切れの悪い言葉に、俺は軽い調子で返事を返す。

 

 

『け、怪我は平気なんですか?』

「ん? ……あ」

 

 

 そういや俺針が刺さってたわね。あまりにも痛みが無いから忘れてたや。

 俺は脇腹に突き刺さった針を見た。

 

 

「わ゛ー!!! 大丈夫かいカカシ君! い、医者―!!」

「おい平気か!?」

 

 

 次いで駆け寄ってきて俺の事を心配してくれるソーマ君とエリックさん。あー二人の優しさがマジ染みるぜ! 

 

 

 二人の優しい言葉に決心がつくと、俺はおもむろに針を握りしめ、力いっぱい引っこ抜いた。

 

 

「「なっ!?」」

(痛ぁ~い!!!)

 

 

 突き刺さった時と同じかそれ以上の痛みとチカチカ現象が起き、そして同様に一瞬で消えた。

 脇腹を見ると、傷は綺麗さっぱり消えていた。まるで何事も無かったかのように綺麗にである。怪我をしていた時の名残は大量に飛び散った血飛沫だけ。

 

 

 顔を上げると、絶句して固まる二人と顔があった。

 うん、まぁこんなスプラッタを見せられたら固まってしまうのも無理はない。多分二人は映画版サイレントヒルが見られないと見た。あれエグすぎんよぉ~。

 

 

「なんて再生能力だ……これは適合率が大型アラガミ並みまである恩恵か……? だとしたら……だから……」

 

 

 と、我を取り戻したソーマ君は俺の脇腹に手を添え、俺に起きた現象について自分なりに考察していた。さすが未来の研究職。この時からその片鱗を覗かせていくスタイル。

 

 

「……チッ、こういうことは二度とするな。いいな?」

 

 

 思考を中断し、指を指しながらそう釘をさすソーマ君に、俺はもちろんですとも、という思いを乗せて頷いた。

 伝わったのかどうかわからないけど、彼は舌打ちし、俺にくるりと背を向けて帰投に向けて歩き出した。

 

 

 俺は未だ呆然としているエリックさんの肩をゆすって正気に戻し、その後に続いた。

 

 

 推しとの初対面に加えてエリックさんを助け出せた。

 うーん、作戦は大成功と言わざるを得ませんな! 

 

 

 俺はこの後ある裕福な少女とエリックさんとの感動の再会を想像し、思わず笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そーま「こういうことは二度とするなよ?」
かかし「当り前だよなぁ?」


なお投稿者のプレイスタイルは装備とスキルによるごり押しです

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