俺は遠くから尊いを眺めていたいんだよ!組み込むんじゃねぇ!~ゴッドイーター世界に転生したからゴッドイーターになって遠くから極東支部尊いしたかったのにみんな率先して関わってきて困る~   作:三流二式

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要は出なかったんです。ハイ。


グボグボパニック

「グボロ・グボロというアラガミがいる。発生地はユーラシア大陸南東部の沿岸と言われており、巨大なヒレと頭、そして顎を持つ水棲のアラガミである……」

 

 

 エントランスにあるターミナルで、一人の男がグボロ・グボロの項目を読み上げていた。

 彼の名は名無之カカシ。この物語の主人公にして新型神機の適合者である。

 

 

 エントランスは現在がらんとしており、彼の読み上げる声だけが空しく響き渡っていた。

 

 

 リンドウは『デート』により不在。サクヤは新人であるコウタと二人で演習のため不在。防衛班の面々も見回りのため不在。ソーマは勝手に出撃して不在。

 カカシも本来なら新人としてサクヤとコウタと共に演習に行くべきなのだが、サクヤとツバキが二人してお前は待機! と口をそろえて命令してきたので、カカシは不本意ながらアナグラで一人寂しくターミナルを弄っていた。

 

 

 そうこうしている間に人はどんどん出撃してゆき、最終的にエントランスに残ったのがカカシとオペレーターであるヒバリのみとなってしまった。

 無論アナグラ内にはまだまだ人はいるが、ツバキは書類仕事で役員区画にいて不在。博士は言わずもがなで不在。メカニックである『楠リッカ』は神機保管庫でカカシの神機を調整中とのことで不在。

 

 

 そういう訳で話す相手も見る相手もいない。ヒバリは現在オペレートの真っ最中なので話しかけるのも憚られる。

 そうなるとやる事と言えば鍛錬かターミナルを見るくらいしかやる事が無くなってしまう。

 

 

 本日分の鍛錬はすでに終えたから、必然的にやる事がターミナル弄りしかなくなってしまった。

 カカシはシュンとした気分を隠しもせず、口をへの字に曲げながら自分の神機の項目を開いた。

 

 

 そして自分の神機本体の強化をするために必要な素材にグボロ・グボロの物が必要であることが判明し、グボロ・グボロの項目を開いたのであった。

 

 

「グボたんねぇ……」

 

 

 カカシはどこか感慨深げに、親しみを込めて呟いた。

 

 

 彼にとってグボロ・グボロとは楽しい的であり、憎むべき悪魔であった。

 前者はゲームでのグボロ・グボロは大した強さのアラガミでは無く、それなりに慣れていれば大した相手ではないからだ。では後者の理由はというと、とにかくこのアラガミの素材、その中でもなぜか一番出てきやすいはずの『龍種鱗』が全くと言っていいほど集まらず、やりたくもない討伐を延々とさせられる羽目になったからである。

 

 

「あーあ、ほんとなら今すぐにでも出撃してグボグボパニックとしゃれこみたいんだけどなぁ~」

 

 

 出撃するな(でるな)って言われちゃったからねぇ……。

 

 

 そう呟き、カカシは残念そうにため息を吐いた。

 

 

 その祈りが引き金にでもなったのだろうか? アナグラにヒバリの声が放送された。

 

 

『緊急連絡をいたします! 平原地帯にてグボロ・グボロの大量発生を確認! 出撃可能なゴッドイーターは速やかに現場へと急行してください』

「アイエッ!?」

 

 

 カカシは素っ頓狂な声を上げ、ばっと振り返り、エントランスを見渡した。

 何度直してもエントランスはがらんとしており、何処をどう見てもこの場に居るゴッドイーターは彼を除いて他にいなかった。

 

 

「すみませんカカシさん、そういう事ですので出撃お願いします! ツバキさんやサクヤさんには私から言っておきますので!」

「は、はぁ~い!」

 

 

 目をぱちくりさせて硬直していたカカシは、ヒバリからの再度の催促を受け、慌てて神機保管庫へと走りだした。

 保管庫にはすでにカカシの神機の調整を終えたリッカが、待っていましたとばかりにカカシに神機を受け渡した。

 

 

「あ、来たね。放送は聞いていたよ。ちょうど調整を終えたところだったから、もう持っていっても大丈夫だよ」

「アリガトゴザイマス!」

 

 

 お礼もそこそこにカカシは神機を引っ掴むと、いつでも出撃可能なヘリに飛び込んで現場へと急行した。

 ヘリは限界ぎりぎりまで飛ばし、あっという間に嘆きの平原付近へとカカシを送り届けた。

 

 

 しかしそれでも遅いと感じたカカシは辛抱堪らんとヘリをこじ開け、パイロットの制止の声も無視して飛び降りた。

 上空600メートル地点から落ちたカカシは垂直に落下した。轟々と風が足元から頭へと流れ去る。

 

 

 普通の人間ならば、否、ゴッドイーターですらこの高さから落下すれば無事では済まないが、このカカシというゴッドイーターはそんな物の範疇では収まらない。

 カカシは神機を捕食形態へと変え、思い切りオラクルを吹かした。

 

 

 瞬間、落下速度はみるみる落ち、ついには空中200メートルあたりで滞空した。

 それに満足そうに頷くと、カカシはキャンキャン小言を言ってきたヒバリを宥めすかしながら、目標地点へと飛んだ。

 

 

 そう、それは飛翔だった。大型の飛行アラガミにも劣らない速度で(途中何度かオラクル補給のために崩れたビルを蹴ったりはしたものの)カカシは瞬く間に現場に到着した。

 

 

 カカシはすさまじい飛行速度を維持したまま地面へと隕石めいて落下。そして今まさに大口を開けて負傷したゴッドイーターを食らわんとしていたグボロ・グボロを真上から強襲した。

 

 

「グワーッ!?」

「うわーなんだぁ!?」

「キャーなに!?」

「援軍……ってコト!?」

 

 

 突如強襲されたグボロ・グボロと助けられたゴッドイーターの困惑の声が同時に響き渡った。

 カカシは本当ならばゴッドイーターの方に声をかけてやりたかったのだが、先にこちらの方を処理する方が先と判断した。

 

 

 カカシは万力の力を神機に籠め、凄まじい膂力の元、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「「なっ!?」」

 

 

 負傷していたゴッドイーターと、その仲間である2人のゴッドイーターはその驚くべき光景に目を剥いた。彼らは自分が今見た光景が信じられぬとばかりに口をあんぐりと開け、呆然としていた。

 カカシはそんな姿に目もくれずにちぎり取った頭を神機に食わすと、速やかに確認し、そして落胆のため息を吐いた。

 

 

 必要な素材はやはり出なかった。

 だがまだまだ機会はある。そう悲観する物ではない。

 

 

 そのように自らを納得させると、カカシは手元から顔を上げ、負傷していたゴッドイーターに手を貸して立たせてやり、回復錠を渡した。

 

 

「あ、ありがとう……」

 

 礼を言うゴッドイーターにカカシは気にするなと手を振り、再び上空に跳び上がると次の地点へと飛び去って行った。

 

 

「な、何だったんだ今の……」

「私に聞かないでよ……」

「化物……!」

 

 

 三人は嵐のように去って行ったカカシに思い思いに呟くと、しばらくの間カカシが飛び去って行った空を茫然と見上げていた。

 

 

『カカシさん、そのまままっすぐ行った500メートル先に複数のオラクル反応が!』

「あいあい」

 

 

 ヒバリからのオペレートの元現場へと急行したカカシは先ほどと同じように上空から奇襲を仕掛け、一体を撃破。そこにはたった今仕留めた個体の他にもう三体のグボロ・グボロがいた。

 突如飛来し、瞬く間に同胞の命を奪ったカカシに一瞬彼らは呆けたものの、すぐに自分を取り戻し、怒り心頭で襲い掛かった。

 

 

「「グオォオオオオ!!!」」

 

 

 当然そんなもので怯むカカシでは無く。

 

 

「テメッコラー!」

 

 

 負けじと声を張り上げ、黄金の瞳を爛々と輝かせながら神機を構えて突っ込んでいった。

 

 

「グオォオ!」

 

 

 カカシはジャンプして押しつぶしてきたグボロ・グボロのプレス攻撃を避けると同時にブレードで深く切り付けた。

 

 

「グオォオ!」

 

 

 噛みついてきたグボロ・グボロを横ステップでよけると、カカシはその無防備な胴体に放射型のインパルスエッジを叩き込んで吹っ飛ばした。

 

 

「グオォオ!」

 

 

 後方から離れた地点から背びれを立たせ、砲撃の準備に入っていたグボロ・グボロに、カカシは神機を銃形態へと変え、見もせずに雷属性オラクル弾を砲塔に撃ち込んで暴発させた。

 

 

「グオォオ!」

 

 

 インパルスエッジを受けて崩れた体勢を立て直したグボロ・グボロが勢い任せの突進を放ってきた。

 

 

「ダッテメッコラーッ!」

 

 

 カカシは落ち着いた様子で、アサルトの技能であるドローバックショットで後方へと下がりながら雷属性オラクル弾を乱射。

 突進で勢いが乗っているため当然避ける事などできず、弱点属性の弾丸を真正面から受けたグボロ・グボロの勢いはみるみる衰え、カカシに追いつく頃にはすでに息絶えていた。

 

 

「アッコラーッ!」

 

 

 カカシはシュトルムで息絶えたグボロ・グボロを齧りながら前進。そのまま後方で酸の雨を降らすための準備動作をしていたグボロ・グボロに噛みついた。

 

 

「グオォオ!?」

 

 

 突然噛みつかれたグボロ・グボロは一瞬だけ硬直。

 

 

「ソマシャッテコラーッ!」

 

 

 無論カカシはその隙を見逃すはずも無く、あろうことかその巨体を一本背負い。目の前でヒレで殴りつけようと接近してきたグボロ・グボロに叩きつけた。

 

 

「「グワーッ!?」」

 

 

 互いに勢いよくぶつかった2体のグボロ・グボロは折り重なって互いを引き離そうとバタバタと見悶えた。

 

 

「チェラッコラーッ!」

 

 

 カカシは神機を銃形態から剣形態へと変えるとその場で大跳躍。放物線を描いて折り重なるグボロ・グボロに向かって落下してゆき、その勢いで2体まとめて深々と貫いた。

 

 

「「アバーッ!?」」

 

 

 2体のグボロ・グボロは断末魔の悲鳴を上げるとぐったりとなり、二度と動くことは無かった。

 

 

「ガブリンチョ!」

 

 

 カカシはすかさず2体とも神機で齧り、素材の確認。そして再びのため息。また既定の量が揃わなかった。

 

 

『カカシさん! まだ敵のオラクル反応は残っています! 申し訳ありませんが他の人が来るまで迎撃をお願いします!』

「……アッハイ」

 

 

 ……幸いまだチャンスはあるようだ。嬉しくも無いおかわりの報告に、カカシは低いテンションで返答を返した。

 

 

(こ、この流れ……良くないぞ! 非常に良くない!)

 

 

 カカシは流れが確実に良くない方向へと向かっていることをひしひしと感じながら、現場へと向かうために再び空へと飛翔した。

 

 

 彼の予想は見事に当たり、三日連続で出ずっぱりになる羽目になった。

 

 

「そ、揃わねぇ~!!!」

 

 

 三日間ひたすら狩り続ければ流石に大量発生も収まってきたようで、初日に比べれば発生頻度はだいぶ減ってきた。

 しかしまだちらほらグボロ・グボロは残っているようで、その駆除を戻ってきたゴッドイーターたちで行っていた。

 

 

 他の者たちが戻るタイミングでカカシの出番は終わりで、お前はアナグラで待機! とリンドウとツバキとサクヤとコウタとヒバリとソーマと顔を見せにきたエリックと榊に命令されていたが、カカシはこれを巌と拒否。

 本音は素材調達のためだが、それをそのまま言うほど彼は馬鹿では無く、与えられた仕事は最後までやりたいと、普段の笑顔を引っ込めて頭を下げて懇願したのが利いたのか、皆渋々彼の作戦参加を認めた。

 

 

「出ねぇ……出ねぇよ~……鱗が出ぬよぉ~……」

 

 

 カカシは幽鬼の如くふらふらとした足取りで神機保管庫へと向かい、神機を手に取ろうとした。

 

 

 その時。

 

 

「ハイストップ~」

 

 

 カカシの手は何者かの手によって掴まれた。

 

 

 そちらを向くと、リッカがにっこりと笑みを浮かべながらカカシの顔を見つめていた。

 彼女の額には内心の怒りがこれでもかと分かる程血管が浮かんでおり、心なしか背後に炎の如きオーラが浮かんでいるようにも見える。

 

 

(あ、これヤバい奴だ……)

 

 

 カカシはこれから来る説教の予感に、ぶるりと身を震わせた。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 楠リッカは激怒した。

 必ず、邪知暴虐の神機使いを叱らなければならぬと決意した。

 

 

 リッカには(いくさ)が分からぬ。

 リッカは、アナグラのメカニックである。神機を弄り、機械と遊んで暮して来た。けれども仲間に対しては、人一倍に敏感であった。

 

 

「君はさぁ……」

 

 

 持っていたレンチでカカシをべしべしと叩きながら、リッカはジト目を向けた。

 

 

「もしかして……物を丁寧に扱えない人?」

 

 

 リッカはカカシから視線を外し、彼の神機に目を向けた。

 

 

「君入って来てまだ2週間くらいだよね? それなのに神機の疲弊具合が半年間くらい戦ってきた人並みにあるんだけど……どうしてかなぁ?」

 

 

 リッカに追及され、カカシはひたすら申し訳なさそうに縮こまっていた。

 

 

「はぁ……いまさら言っても遅いけどさ、整備するこっちの身にもなってよね」

モ、モウシワケアリマセン……リッカ=サン

 

 

 消え入りそうな声で謝罪をするカカシを見て哀れに思ったのか、リッカはため息を吐きながらカカシの手を離した。

 

 

「大事に扱ってね。でないと次は整備なんてしないんだから!」

「善処しまぁ~す!」

 

 

 許可が出るやカカシは神機を引っ掴み、リッカへの返答もそこそこにゲートをくぐり、保管庫から飛び出してあっという間に見えなくなった。

 

 

「……」

 

 

 カカシが出ていったゲートを見つめながら、リッカはカカシの神機について思いを馳せていた。

 

 

 リッカが正式にフェンリルに配属となったのは今から2年程前だが、実は学生時代から整備班のクルーとして働いており、その経験の長さゆえに神機の傷が「仲間を庇って受けた傷」なのか「ビビって逃げた傷」なのか見て判るようになった。

 

 

 カカシの神機は全て前者だった。全て。刀身にも銃身にも盾にも本体にも。全て他者のためについた傷だった。

 初めて見た時、リッカは絶句したものだ。

 

 

 その神機には()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「物もそうだけどさ、君はそれ以上に自分を大事にしなさすぎだよ……」

 

 

 カカシが出ていったゲートを見ながら、リッカはぼそりと呟いた。

 

 

「そんなことしていたら、壊れちゃうよ……?」

 

 

 リッカは壁に背を預けながら胸の前で、悔し気に拳を握りしめながら項垂れ、口を真一文字に噤んだ。

 誰もいない保管庫で悲しげにつぶやく彼女の言葉を、ただ神機だけが聞いていた。

 

 




この話が出来た経緯は、鱗出ねぇ!→何度もする→作戦支援にリッカちゃんがいるのを何度も見る→ムカついてきた!曇らせてやる!です。
こんなもんじゃ済ませねぇからな…!(ランク7ミッション初めのイベントシーンを見つつ)
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