おしかけ家出娘をペットにした話   作:黒マメファナ

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Part14

 ガールズトークをもちかけられたのは休日にご主人様の知り合いであり、後輩であり──セフレでもある長月碧さんと買い物をしに行った時のことだった。碧さんは、ご主人様にとってのストッパーであり、私にとってもストッパーでもある存在で頼りになるお姉さんって気持ちと、嫉妬を抱く気持ちが半分になるような人だ。

 

「嫉妬って、恵美ちゃんのご主人様はいらないかな」

「そうじゃなくて……その、えっちしてるじゃないですか」

「あ、あ〜そっち?」

 

 ひとまずご飯を食べるためにショッピングモールの中にあるチェーン店のレストランにやってきたタイミングでガールズトークを始める。忘れてたみたいなリアクションをしないでほしい。複数の男性と身体の関係を持つ、所謂ビッチというものに属するだろう碧さんと未だに手を出してもらっておらず多少こう、ボディタッチ等で誘ってもまるで反応してもらえない私とじゃその行為の重さや価値観が違い過ぎるから。

 

「ほら、焼肉の後も朝帰りでしたし、しかも私を家に放り出してから」

「あれは、センパイが色々と限界だったからね」

「……限界?」

「ありゃ、気づかれてないとは徹底してるね〜」

「な、なんの話ですか?」

 

 碧さんはちょっと迷ったようにリアクションしてから、ご主人様が何故あのタイミングで朝帰りをしてきたのかというのを教えてくれた。ちょっと理性の限界が来たから、このままだとふとした瞬間に襲いそうだったから? 

 ──それは、それで嫌な気分がします。

 

「どうして?」

「私でいいのに」

「でもセンパイはよくないから、我慢してるんだと思うんだけど」

 

 よくない、何がよくないんだろう。世間体なんて気にしてる人はそもそも女遊びなんてしないし、私くらいの年齢の──つまりは碧さんに紹介してもらった女子高生を家に連れ込んだこともある。他の子がよくて私がそんなに避けられる理由ってなんだろう。考えても考えがつかない。嫌われてるってことはないんだと思う。煙たがられてるならとっくに私は捨てられてる。でもご主人様はちょっと大胆に甘えても嫌がる素振りなんて見せない。だから、嫌われてはないと思う。

 

「センパイは嫌ってなんかないよ! それは保証する」

「……なら、どうしてですか?」

「簡単に言うと、理由は二つあると思うんだよね〜」

「二つもあるんですか?」

「一つは恵美ちゃんがセンパイのことを好きだから、二つ目は処女だからだね」

 

 そのピースに私は眉根を寄せて、あんまりよくない顔をしていた気がする。二つ目はまだ納得できる。私は経験がなくて、そういう女の子を抱く責任を負いたくない。記憶に残るような男になりたくない、そう考えてるような感じがするから。でも一つ目はよくわかんない。私がご主人様を好きだとどうしてえっちしたくなくなるんだろう? 

 

「ストレスの捌け口」

「……えっと?」

「私がセンパイとのセックスに求めることだよ」

「す、ストレス……ですか」

「うん、他に例を挙げると、好きな人にフラれて傷心で、誰でもいいから満たしてほしいとか。カレシと性癖が合わないから強引に求めるようなセックスがしたいとか──これが、センパイが抱いてきた女の子だよ」

 

 その理由に、私は思わず言葉を失った。それと同時に、なんとなく私が彼のことを好きだから手を出してくれないという理由もわかったような気がした。

 ──あの人は、自分を見られることがないんじゃないかな。誰かの代わりでしかなくて、でもそれだからこそ無責任に気持ちよくなれるわけで。

 

「そうだね、責任を負いたくないって二つ目の時に言ったけど、一つ目も簡単に言うとそれかな」

「責任を」

「センパイは怖がってるんだよ──いっつも俺の方が気持ちいいだろ? みたいなセックスするくせにね〜」

「それは、わかりませんけど」

 

 私ならそれも受け入れてあげられるのに。そう考えているけどそれが本当という保証はどこにもない。私には経験がないから、そもそもそうやって強引に求められるのが、触られるのがどのくらい気持ちいいのかも私は知らない。知りたいと思っても、知る方法もその経験だから。

 

「手はないわけじゃないよ……伝手を使えば、処女を食べるのが好きな男なんて幾らでもいるから」

「……嫌です」

「うん、だよね」

 

 想像すらしたくなくて首を横に振った。例えそうじゃないとご主人様には抱いてもらえないとしても、私は絶対にそんなことで男を知りたくなんてない。あの人以外に与えられる快楽なんて、知りたくもない。

 碧さんもそんなことはわかりきっているとばかりに頷いた。でもこうなるとすごく難攻不落ですね、ご主人様は。

 

「めちゃくちゃ手が早かったのにね、昔は」

「……やっぱり昔はそうだったんですか?」

「あはは、センパイは本当に高校生の頃は恋と性欲の区別ついてなかったから」

「すごいですね、それは」

「気に入った女の子を片っ端から誘って、抱いて、そうやって破綻していった」

 

 なんというか、今のご主人様からは想像ができない女遊びの仕方だと思った。あの人にも気に入ったセフレって概念は当然あっただろうけど、自分に好意を抱いた女の子を端から食べていくなんて、ありえないと思ってしまう。それだったら私なんてとっくに気が向いた時に抱かれていることだろう。

 

「多分それで失敗したのが一番かな〜」

「恋と性欲の区別がつかなかったことが、ですか?」

「うん、高校時代のセンパイは無責任すぎたんだよ、他人の気持ちに対して、いつだってヤりたいって気持ちでしか接せなかったから」

「……破綻してますね」

「でしょ?」

 

 碧さんは苦笑いをして私の言葉に頷いた。だからこそ、あの人は愛とか恋とかに鈍感なまま、それと性欲の区別がつかなくてそしていつしかそれがご主人様の心を閉ざす扉になってしまった。あの人にとって恋愛は性欲の処理の正当理由で、気持ちいいに勝るものじゃなくて。

 ──だからこそ、私を抱くのを恐れてる。

 

「トラウマなんですね、女の子に好意を向けられることが」

「そうかもね、実際に大学入ってからは恋人らしい恋人もいなくて、ただ一人暮らしの家には毎日のように女の子が寝てたよ」

「爛れてますね」

 

 きっとそれは、私が来るまでも日常だったのだろう。毎日のようにとはいかずとも、気が向けば家に連れ込み自分のテリトリーの中で女遊びをして、それがアイデンティティだった。でも本当に気まぐれなのか、それとも最初は私を抱けると思ったのか、私に手を伸ばした。私を救ってくれた。

 

「センパイの場合、泊めてヤッて帰そうと思ってただろうけど」

「けど?」

「多分恵美ちゃんの慣れてないリアクションに、やめたんだと思うよ」

「……そうだったんですね」

 

 そこでやめてくれる優しさが、私があの人に縋る理由だ。依存してるだなんてそんなこと言われなくたってわかってる。でも、今の私にはあの人が、ご主人様がいないと本当に独りぼっちになってしまう。それは、死ぬことよりも怖いことだと思っている。

 

「恵美ちゃんにはぜひとも、センパイを攻略してあげてほしいね」

「攻略、ですか」

「本当は私がさ、女の子を紹介してあげて……その中でセンパイを幸せにしてくれる人がいないかなって感じでさ」

「碧さんじゃダメだったんですか?」

「私はダメだね、カレシいる以前に──センパイのことは恋愛的な目でみれない」

「どうして、ですか?」

「さっきもいった通り、嫌なことあって愚痴るのもどうかなって思う時に会ってヤル時が、一番気持ちいいから」

 

 それは、えーっと、なんてリアクションしたらいいんだろうか。もしかして嫉妬してもいいよってことだろうか。私はまだそういう経験もないからどれが一番気持ちいいとかわからないんですけど。それとももしかして実は碧さんはご主人様が好きで私にマウントを取って諦めさせようとしてきてるとか? 

 

「センパイと毎日顔合わせて一緒に生活するとか考えられないってこと」

「……楽しいし、幸せですよ?」

「いやあの人、割と非の打ち所がないじゃん? 性欲以外は」

「性欲以外は」

 

 確かに、女遊びのために最適化されたお仕事と生活能力と自分の身体のマネジメント、知識もあるしコミュニケーション能力も高い、女遊びのために本当に色々と最適化されすぎているけど、それだからこそセフレにはよくても恋人はダメらしい。どういうことなんだろう。

 

「センパイって、本当は女なんていらないんだよ。性欲を満たせれば、後は全部一人で完結してる」

「……そう、ですか?」

「それは恵美ちゃんはセンパイが必要とするものを持ってるからだよ」

「持ってる……」

「そこでなんで自分のおっぱい見るの?」

 

 いや、思わず。そうですね、家事能力ですね。私がご主人様より優れている唯一の点は炊事、掃除、洗濯などの家事をこなす能力だ。特にご飯は自分で作るより圧倒的にうまいって言って喜んでくれてるし、ご主人様が支度をしてる間に掃除やらなんやらをこなすから部屋は前よりもキレイになったって言っていた。

 

「それさ、メイドとか家政婦でいいわけじゃん? 少なくとも恋人に求めるのがそれと性欲処理なんて男と私は絶対に付き合いたくないよ、私はね?」

「そんなものなんですね……」

 

 その点、私はご主人様の身の回りのお世話をする家政婦扱いだろうと、性欲処理をするためのペット扱いだろうとどんと来いって感覚だ。献身とかじゃなくて依存してるからなんだけど、それももしかしたら一時の感情かもしれないとご主人様は考えてるみたいだった。そういうのも、拒否される理由に入ってるのかな。

 

「でもそれに抵抗がない恵美ちゃんならって思ったんだよ」

「……なるほど」

「それじゃ、買い物しよっか」

「はい!」

 

 ご主人様と私の恋愛的な相性がそれほど悪くないんだと判断し、とりあえずその言葉に納得した。そこからはもう一つの目的である買い物へとシフトしていく。やってきたのは様々な下着を取り扱うコーナーだ。これをご主人様は律儀に一緒には選んでくれないので、こうして碧さんにあの人が好きそうなものを訊こうという作戦だった。

 

「センパイはね〜、割とあざとい下着も好きだよ、ほらこの空色のとか」

「こういうの、子どもっぽくなりませんんか?」

「大丈夫、恵美ちゃんJKなんだから、狙いすぎよりはこっちだって。ほら、紫のワンポイントもかわいいでしょ?」

「ですね」

「攻めたのがいいならネットでも買うといいよ、紐とか」

 

 今回得られた学びとしては、ご主人様は思っていた以上に私のことを考えてくれてるのかもしれないということと、そんな風に考えてくれてる以上は私にはチャンスがあるということと、後は暖色系より寒色系の方が好きらしいってことだ。特に淡い青系統が好きらしくて、私はそれらを幾つか購入することにした。後はどうやって見せるのかが問題だけど、さり気なく短パンとかからチラリズムで大丈夫とアドバイスまでもらった。

 

「今日はありがとうございました」

「いいって、どうせこの後センパイとホテル行くし」

「……そういうの、言わなくていいんですよ」

 

 倫理観は正直なところ理解できないし、ご主人様と繋がれるのが羨ましくてしょうがないけど。相談役としてはすごく頼りになるお姉さんという印象だった。そうやって信用して他の男に売り飛ばすようなことまでしてるのでもしかしなくてもいい人とはすごく反対にいるような気がしているけど。少なくとも私がご主人様を想ってる限りは、大丈夫そうだということは確かだった。

 

 

 

 

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