おしかけ家出娘をペットにした話   作:黒マメファナ

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Part16

 恵美は夏休みに突入し、本格的に家事を頑張るということを宣言していた。なんだかんだで休日は俺も家事をしてるからな、一日自分が家にいて俺がいないということもあり、メイドの如く毎日細かいところまで掃除をしていた。大掃除かよとツッコミを入れつつ、屋内とはいえ夏の中、クーラーも使わずに作業してるらしいところが気になった。

 

「熱中症で倒れても助けられないからな、気を付けろよ」

「はい」

 

 対策として俺は麦茶のパックを買って恵美にお湯を沸かしてピッチャーに入れて冷やすことを指示した。こういう時は紅茶より麦茶だろう。後は塩分も取れるように塩飴も買って、掃除しながら舐めとけと伝えた。それを恵美経由で知ったらしい碧には何故かめちゃくちゃに笑われたが。

 

「いやぁ、愛だね〜」

「犯すぞこの野郎」

「やだな、レイプは犯罪だよ?」

「合意するまで犯してやる」

「それも犯罪だよ、センパイ?」

 

 こちとらあの家出娘のエセビッチの誘い方が妙に上達してるせいで割とムラムラしてるんだよ、それがお前の悪影響を受けてることくらい俺だって容易に想像つくんだから責任くらい取ってくれ。

 そう言うと、碧はどうやら呼び出してきた理由をようやく話してくれるようで、スマホの画像を見せてきた。加工はされてるが、そこには大人しそうな女が写っていた。

 

「……この子とかどう?」

「お前の紹介は信頼してるけど……恵美の味方はどうした?」

「いやぁ、こっちにも色々あってね。ほら私が毎度センパイの相手するのもアレでしょ?」

「確かにな」

 

 どうやらカレシとは仲直りをしたようで、というかそもそもケンカの原因が同棲云々の話だったらしい。それが解決したってことはこれからは碧とは気軽にヤレなくなるってことでもある。まぁいつかはこんな日が来るとは予想していたが、恵美との生活で我慢の多い今の俺にとってみればタイミングは最悪なわけだ。

 

「だから、この子の相手をしてあげてほしいんだ」

「──フラれたばっかりってところか?」

「うん、まぁ結構──いや相当ワケあり物件だけど」

「お前それしか寄越してこねーじゃん」

 

 お前の職業柄でそれを紹介してるの、マジでヤバいからなと言うとそれは人選ぶに決まってると笑い飛ばされた。んで、今回のワケありの中身を訊こうじゃねーか。ただこいつが相当って言う時はヤバいくらいビッチか、それとも地雷の恐れがあるかの二択なんだが。というかこんな大人しそうな女がセフレ求めてる時点でアウトだな。

 

「えっとまずね、この子は蒼山(あおやま)(あい)ちゃんって言うんだけど」

「蒼山藍……なんか一貫性のある名前だな」

「ね、今年大学一年生で、五月中盤まで三年間付き合ったカレシがいて、男性経験はそれだけ」

「……それだけ?」

「うん」

「中学ん時にヤリチンに襲われて肉便器だったとか、援交で徹底的に仕込まれたとか、裏垢でヤリまくってるとか?」

「残念、それもないって」

 

 別に残念じゃねーけどな。俺としては荒れた女じゃなくてもちょっとセックスが物足りないとか、カレシと別れて寂しいからカレシ代わりとか、家庭教師は流石にもう状況的には無理だが、そういうので全然いいんだけどな。まぁすると、案件的にはカレシと別れて寂しいからってところか。

 

「そうそう」

「じゃあ別にヤバそうな感じでもないだろ」

「いやぁ、それがね──()()、どこかでセックスしてほしいって」

「……セフレに求めることか?」

 

 頻度が明らかにおかしいだろ。毎週って、そりゃ俺だって多い時は週何回ってレベルで女抱いてたけど、それだって同じやつじゃないからな。それだと俺は当てはまんないだろと言うとそれは休みが続かなきゃそれでいいらしい。シフト制かよ。

 なにより碧の反応を見ると、こいつも扱いに困ってることはありありと伝わった。あれか、俺の好きにできるんだろうな。

 

「それは大丈夫だと思う、Mっ気ありっていうか、相手に合わせたいって。詳しい話は本人としてあげて」

「ん、わかった」

「でも、恵美ちゃんにも話しておいた方がいいと思うよ」

「なんで……まぁ、そうか」

 

 前だったらなんでだよと思うところだが、恵美は本心からおそらくセフレを作ることを嫌がってる。俺がそういう女遊びをするのをやめさせて、誰からも元セフレにしたいって宣言したくらいだしな。碧としても、そんな恵美を応援してたのにって罪悪感があるんだろう。けど、俺はセフレがねーと発散のしようがないからな。

 

「これでもしかしたら、恵美も目が覚めるだろ」

「目が覚めるっていうか単純に冷める感じだろうけど、その可能性はないとは言わないね」

「それならそれで、毎週でも相手にできるからいいんだけどな」

「──本気で言ってる?」

「冗談だよ」

 

 立ち上がりつつ碧の頭に手を置く。わかってるよ、お前が恵美のことを大好きだってことも、恵美が俺のことを好きでいることも、そんな恵美のことが俺にとって特別な位置づけになり始めてることも。けどその度に俺があいつを性欲で傷つける気がしてならない。それが嫌だって思うレベルには、俺は恵美に絆され始めてるって証拠でもあるけど。

 

「ごめん、センパイ」

「謝るくらいなら新居祝いに招かれてやるよ。もちろん──二人きりの時にな」

「最低」

「だろうな。さて、帰らねーと恵美がうるさいからな」

「うん」

 

 碧を送っていき、俺は恵美が待つ家に帰る。機嫌がいい時は風呂とかトイレとかじゃなきゃ基本的に玄関を開けるとどこからでも迎えに来くれるが、風呂に入ってるのか機嫌が悪いのか、恵美は玄関には来なかった。リビングに入ると恵美はソファに座ってテレビを見ているようだった。さて、機嫌が悪いのか寝てるのか。

 

「……ただいま」

「遅かったですね」

「少し話し込んだからな」

「どーせ、碧さんと車でえっちなことしてたんですよね」

「してねーよ」

 

 めちゃくちゃ不機嫌だった。碧に呼ばれたから遅くなる、と連絡した時には既にメシを作り始めてしまっていたようで、冷蔵庫から麦茶を取り出した際にタッパーにおかずが色々と入っているのが見えたことでそれを察知した。

 ──いや、まずいな。このタイミングで新しいセフレができそうなんて言ったら流石に無神経がすぎるだろ。

 

「ごめんな恵美」

「……嫌です」

 

 手を伸ばしてもふいと顔を背けられる。なんとなく尻尾が上下に揺れてるのを幻視した。現実として怒ってるからそれありきなきがしなくはないが。とりあえず、俺は風呂に入ってさっと出るともうソファにはいなくなっていた。この場合、俺が悪いから仕方ない。

 とはいえ、話したかったこともあったのに完全にタイミングを逃したことでため息を吐きながら、寝室に向かう。

 

「どうしたもんかな……ん?」

 

 常夜灯の暗さに慣れてきたせいか、寝室のベッドに違和感があった。そっと捲ると、そこにはなんと俺が一緒に選んでやった枕を頭に乗せ、人の枕を抱きまくらにして寝てる恵美の姿があった。しかも寝息を立てている。なにしてんだこいつと思う暇もなく、恵美はめくられたのが嫌だったのか目をこすった。

 

「んん……なんですか?」

「なんですか、はこっちのセリフなんだけどな」

「なにがですか?」

 

 こいつ、完璧に寝ぼけてるのか。自分が何をしてるのか自覚がないのかと思って驚愕していると恵美は俺がめくった掛け布団を手繰り寄せようとする。再び寝ようとしてるらしく、既にこいつの頭の中は半分以上夢の世界に旅立っていることがよくわかった。俺はそれをそっと手放し、恵美にベッドを明け渡した。頭まで布団がかかりしばらくもぞもぞとしてから、ぴたっと動きが止まったと思ったらそっと顔が出てきた。

 

「……寝ないんですか?」

「起きたか」

「寝てました」

「知ってるよ」

「ここで、寝ないんですか?」

「誰かさんがベッド占領してるからな」

「空いてます」

 

 俺のベッドは女を連れ込んでここでセックスするためにサイズがでかいものを選んでる。だから恵美がどれくらい寝相が悪いかにもよるが、寝てようと俺は熟睡することができる。まぁ理論上はそうだし、俺は割と女を抱きまくらにして寝るのは好きというか安心されるとこっちも安心するというか。でもお前はダメだ。

 

「つか、自分の枕まで持ち込んでやがって」

「ご主人様の枕より、こっちの方がいいんです」

「そりゃそうだろ、オーダメイドなんだからな」

「……後はご主人様のぬくもりがあれば、幸せに寝れそうです」

「誘ってるのか」

「眠いので、流石に今日はやめてほしいですけど」

「まぁいい、ソファで寝てくる」

「え……あ、ま、待ってください」

 

 俺が部屋を出ていこうとすると慌てたように恵美がついてきて、腕に抱きついてくる。どうやら不機嫌だったものの不安がそれを上回ってしまっているようだ。いつだって、恵美は自分が捨てられるんじゃないかって不安がある。だから俺の関係をより確かなものにするために身体の繋がりを求める。

 

「今日は、一緒に寝たいんです……」

「不機嫌はどうした?」

「……怒ってます。まだ怒ってますけど」

「けど、なんだ?」

「……嫌わないでください」

「別に、お前の怒りは正当だよ。俺が悪いんだから」

 

 結局、俺が碧に性欲方面を頼りっぱなしで、そうじゃねーと恵美になにするかわかんないってのが原因なんだからな。だから気にする必要なんてない。恵美は、自分を使えばいいだなんて思ってるけどお前の考えるセックスより、俺の考えるセックスってすごく軽いんだよな。

 

「軽くても、いいんです……いつか、私だけにしてくれれば」

「それが確約できねーから、俺は嫌だって言ってるんだよ」

「──それに、添い寝だけもダメですか……?」

「今日はえらく頑固だな」

「一緒に寝てほしいんです」

 

 こうなると、余計にセフレ云々の話がしにくいな。でも今の状況として最優先されるのは恵美の不安な気持ちをなんとかしてやることだろうと判断して、一旦このことは脇に置いておくことにしよう。この時、割と眠いこともあった。睡眠欲こそが俺の性欲を超える唯一の手段だからな。

 

「……わかった」

「あ、い、いいんですか?」

「寝てほしいってわがまま言ったのお前だろ」

「そうですけど……じゃあ、お願いします」

 

 ──そして俺は朝になってちょっとだけ後悔する。いつの間にか抱きまくらを俺に変えて眠っていた。俺もいつの間にかそんな恵美を腕の中に収めており、目覚めると頭が目線の少し下にあり、俺はその抱き心地がすごくいいことに気付いてしまった。身長的にもこう身体つき的にも。

 

「恵美、おはよ」

「ん……あ、おはようございます、ご主人様」

「おう、って今日はまだ起きねーのか?」

「……今日はちょっと、おやすみなので」

「そっか」

 

 ただ俺の意識がある状態で密着するのはやめてほしい。しかも男の朝はとある一部分が元気になってしまうという生理現象が起きてるからな。そんな静止なんてする前に恵美のお腹付近に先端が触れたことでピタリと動きが止まった。

 

「……犯しますか?」

「朝勃ちだよ」

 

 そんな風に起きたら元通りに戻っている恵美にちょっとほっとしつつ、俺はまた甘え続けてくる恵美をあやしながら、いつもよりも遅い起床をした。

 ただしそのせいですっかり俺は恵美にセフレの話を伝えることを忘れてしまっていたのだった。

 

 

 

 

 

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