年齢的に女子高生とヤレない、ということはない。俺はヤル相手を年齢で決めることはない。条件はイイ身体をしてるかどうか。後はある程度プレイとかで譲歩してくれる相手だろうか。
その融通のためなら欲しい物は大抵貢いでやってる。それが無駄になってると知っていても、一時的な快楽のためには散財を惜しまないのが俺の決めたルールだった。
「これで本格的に衣替えするまではなんとかなるだろ」
「……本当に、こんなに、よかったんですか?」
「よくなかったら、ヤラせてくれんのか?」
「……ごめんなさい」
「謝るくらいなら遠慮してんな。お前が払えるのは身体だけっていい加減覚えとけ」
俺の脅しのような言葉に居候の捨て猫、恵美は目を逸らす。まぁ拒否るだけ多少覚えた方だろうと頭を切り替える。
衣替えは時期になる前にネットで買っておけばいい。何度も碧を呼ぶのもよくないだろうし、俺としては欲張っても自分でほしいもん選べるようになってくれたらそれでいいんだけどな。
「それじゃあ、俺は碧送ってく──いや泊まるから、テキトーに風呂入ったら寝てていいからな」
「あ……う、はい」
「じゃあね、恵美ちゃん」
「……はい」
飯は食ったし、特に気にする必要なんてない。なのになんだろうか、この罪悪感は。そんな胸のモヤモヤを碧は見抜いていたのか、それとも表情に出ていたのか、くすっとバカにしたような笑い方をしてくる。お前、絶対鳴かせてやるからな、覚悟しとけよこの野郎。
「心配なんでしょ? 恵美ちゃんのこと」
「心配……俺が?」
「他に誰がいるの? 独りにしておけないんでしょ、ペットの飼いたてってそういう愛着湧くよね〜」
「なるほどな」
「それに相手がピュアガールなのに、後輩とホテル行くなんて、なんか悪いことしてるみたいじゃん?」
それで、落ち着かなかったのか。そんなことを俺が感じてたのか。それは主観的でありながら、他人事のようで、俺じゃないみたいだ──なんてことを思った。それとは別に、溜まった鬱憤と性欲の放ちどころを見つけてムラムラしてる自分に上書きされた。流石にな、生殺しなところもあったもんで。
「あ〜、もう無理〜、性犯罪者〜」
「ごめんて言ってんだろ? ほら、お湯加減いいぞ」
「はぁ……もう、センパイってば、どんだけ恵美ちゃんにムラムラしてたの?」
「いい身体してんじゃん、身体のラインとか」
「なのに手は出さないと、いつからそんな聖人になっちゃったの?」
「相手、処女、しかもあんまり合意じゃない」
わかるけどさ〜と広い浴槽で俺に碧がもたれかかってくる。確かに、俺はそこまで優しい男じゃなかった気がするな。基本的にセフレになる高校時代から碧の紹介は何人もしてもらったが、処女は断ってた。だけど、そこまで女の態度とかを察知してなんたらとかしてたことはないな。
「結局、それで失敗してるからってのもあるな」
「あ〜」
「今回はそれに処女だ、一生モンの傷になると思うとな」
「それもそっか」
落ち着いたらまた新しい子紹介してあげるよと言われて、俺はそれに頼むわと返す。こいつはなんでか人脈広すぎてJKから俺より年上まで様々だからな。ただそんな万能後輩の碧もそろそろ結婚の話が出ているらしく、こうやってセフレと遊べるのも今年が最後かなとか笑っていた。
「想像できねーな、お前が結婚って」
「式には呼んであげないから」
「招待状送られても欠席に○付けるから安心しろ」
「でもご祝儀は期待してる」
「連続生中出し、なんてどうだ?」
「二度と遊べなくしてあげてもいいんだよセンパイ?」
冗談だよ冗談、ただ俺の性癖上それが満たせる女がいないんだよな。ゴム越しとの違い──性欲というか、原始的な子孫を遺すための本能を刺激されるのがいいっていうか。当たり前だけど、ピル飲んでるから生でもいいよとか言ってくれる女なんてそうそういねーからな。まぁ確率的にはゴム越しより危険度高いし。
「そういう性癖も満たしてくれて、気軽にヤラせてくれる女いねーかな」
「欲張りだね〜」
そんな雑談をして、なんだか気分が変わったのかもう一度だけ相手をしてくれてそれから夜を明かして、俺は家に戻った。普段は誰もいない家だが、鍵を開けて伸びをするとそこには掃除機を掛けるロングパーカー姿の女がいた。
「あ、おかえりなさい」
「……なにしてんの」
「お掃除です」
「うーん、理由を訊いたつもりだったんだが」
「独りでここのところ考えて決めたんです、このままただ飼われるのは嫌ですけど、身体でというのは……その、怖いので」
「おう」
「なので、家政婦さんになろうと思います」
「……なるほどな?」
わかりにくいが、要するにもらいっぱなしだとどうしても気分が悪いということらしい。本当に無駄に律儀なやつ。だが俺はそこでいらないとは言わずにおいてやる。ぶっちゃけ楽できるし、目の保養としてはいいからな。
「住み込みだから、メイドさん?」
「そういうのに拘んなくていいだろ別に」
「飼われてるメイドさん……へ、変態さんです!」
「自分で勝手にエロい方面に組み立てるのやめろ」
「じゃあ、変態じゃないんですか?」
「いや……それは否定できねーけど」
元捨て猫でメイドさんが誕生した。うんエロい。多分この組み合わせでエロスを感じない男はそういないだろう。しかも相手がスタイル抜群の抱き心地良さそうな美少女なんだから余計に。せっかくスッキリして帰ってきたのに悶々としそうだな。
「そういえばご主人様」
「メイド設定引っ張るのか」
「……おじさん?」
「俺まだ24なのよ、お兄さんで通じる年齢なんだけどな?」
「お兄さんっていうのなんか嫌ですね」
「じゃあ名前でいいだろ」
「そんなことよりご主人様」
「……もういい、なんだ」
「朝ご飯は、食べて来たんですか?」
俺は首を横に振る。思ったより寝てしまって起きたら碧がヤバいって言うもんだからすぐに送ってってそのまま帰ってきたんだ。しまったな、コンビニでもなんでもいいから買ってから帰ってくるべきだったな。そう後悔していると、メイド気取りの捨て猫は朝ごはん用意しますねとやや胸を張ってドヤ顔気味に言われた。でかい。揉みごたえありそうな弾み方だ。
「……私は食べれませんよ」
「どっちの意味で?」
「そうじゃないと出てけと言わない限り」
「腹減ってんだ、余計なボケはいらねーよ」
「どっちが欲しいんですか?」
「朝飯に決まってんだろ犯すぞ」
「お望みのままに」
どっちの意味だよとはもうツッコミを入れるのを諦めた。なんか、借りてきた猫だった昨晩までが嘘みたいに恵美はくすくすと楽しそうに笑って、ご飯とサラダと焼き魚とタレで煮込んだ牛肉が出てきた。途轍もなく牛丼屋の朝定食みたいなメニューが出てきた。お茶も緑茶だし。
「お父さんが昔、たまに食べる牛皿定食はホテルの朝食よりおいしいと言っていたので」
「これ焼き魚定食だけどな」
「……違いは?」
「名前聞きゃわかるだろ」
「奥が深いですね」
いやめっちゃ浅いからな。死ぬほど浅瀬だったぞ今の会話。この天然ボケぶちかますお嬢様がこの女の本性ってことか。けど料理上手で家事得意という自己評価はどうやら自他ともにってやつだったようで、おそらく俺よりテキパキこなしてる。こりゃあ、使えそうなメイドさんを拾ったもんだ。性処理に使えればなんにも言うことがねーんだが。
「この後、どうしますか?」
「なんだ、行きたいところでもあるのか?」
「お買い物したいです。明日から学校ありますし」
「その前に、一旦髪の毛染め直した方がいいぞ」
「……ダメですかね?」
「好きにすりゃいいけど、お前は学校じゃ優等生で通ってんだろ? 髪染めて出てきたら教師が黙っちゃいねーだろ」
「そ、そうですね」
俺は美容院に電話をしようとするが、やっぱり拒絶感がした。染めるのが嫌なのか、金髪が気に入ってるってならあんまり強制はしねーけど。それか、あれか。優等生に戻った気分になるのが、嫌なのか。
「……私は」
「最悪、親に連絡行ってもいいってんなら、俺は止めねーけど」
「でも……」
「ま、なんにせよ染め直した方がいいのは確かだな」
「……う、は、はい」
「なんせ美容院スゲーぞ、自分でやるよりキレイにしてくれるからな」
「……え?」
どこでどうやったかは知らないが、確実に慣れないながら自分で染めたんだろうことがよくわかる。それで登校するのは逆にカッコ悪いだろ。どうせなら髪色バシッと決めた方がいいんじゃねーかな。別に金だけじゃなくて、色んなカラーあるしな。俺は割と明るい色とか好きだぜ。
「イメチェンして形から入るってんなら──後は、巻いてみるとか」
「巻く、ですか?」
「ゆるふわカールってやつな、ストレートもいいが、ふわっとしてるのも俺はいいと思う」
「……お兄さんの性癖に合わせるのは、嫌です」
「アドバイスしてやってんだろうが」
いつもストレートなら髪型変えるとかな。似合ってる髪型ってのは絶対あるよ。碧見てみろ、あいつ自分の見た目が清楚系なの知ってるからサイド三編みとかハーフアップの三編みとかよくしてるぜ。カールさせるならサイドテールとかな。別に俺個人の好みだからお前が合わせる必要はねーけどさ。
「……でも、ありがとうございます」
「おう?」
「染め直して、このアッシュゴールドっていうの、トレンドらしいんですけど」
「ブリーチしねーんなら暗めになるんじゃね、こういうの」
「……ぶりーち」
地毛の色抜くってことな。オススメはしねーよ。髪痛むからな、
「漫画の話じゃねーからな」
「……まんが? 脱色する漫画?」
「そうか、伝わらなかったか」
王手少年誌の人気作品だった気がするんだが、ブリーチ。そういえばもう連載終わったの五年以上前だったな、忘れてた。時間が経つのは早いなホントに。
贔屓にしている美容院になんとか飛び込みの予約取り付けて、俺と恵美は数日分の食料を求めて車を走らせることになった。
ここからが本番だ。この捨て猫みたいな女との生活がどうなっていくのか、俺はそんなことを考えることはしてなかった。いつもどおり、なんとかなるだろうの精神で俺は思った以上に様になってる私服姿で出てきた厄介事の種を助手席に乗せて、出発した。