おしかけ家出娘をペットにした話   作:黒マメファナ

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Part4

 タバコを吸ってそうとよく言われるが、実のところ俺は嫌煙者だ。理由は大きくわけて二つ。一つ目は味覚が鈍くなるという話を聞いたから。舌が肥えるのは女性をエスコートするために必要な能力だ。それをわざわざ娯楽で潰すのは俺にとってデメリットの方がでかくなる。

 もう一つは体臭を嫌う女が多いからだ。さらに噂によると精液もまずくなるらしい。そう言われると身体を貪るのが生きがいの俺としては吸うメリットが存在しないレベルだ。

 

「よかった、タバコ臭いとか言われたらもっと危なかったから」

「つまりは追求は回避しきれたんだな」

「はい、その代わり話し掛けてくる人もいませんでしたけど」

 

 そりゃ真面目で成績優秀な委員長が暗めとはいえアッシュゴールドなんて髪色にしてきたら誰だって遠巻きに見守るだろうよ。とはいえ、実は家に連絡されてました〜なんて言ったらアウトだけどさ。とりあえず、一週間は穏便に終わってよかったな。

 

「ご飯作りますね」

「おう」

 

 スリッパをパタパタと鳴らしてエプロンを着けながら、キッチンへと向かう恵美は、どこか楽しそうですらあった。思うに、ここには今までの自分の家にはなかった自由があるからだろう。なんとなく俺もそんな料理してる様子が見たくてキッチンに向かうとどうやらシチューかクリーム系のパスタがメインのようだ。

 

「このおうち、色んなお鍋とかあって面白いですね」

「振る舞うのも振る舞わせるのも好きだからな」

「女の子にですか?」

「ああ」

「そういうエピソードも、知りたいです」

「後学のためになるかどうかは保証しかねるけど」

 

 もう一つ言わせてもらうとこの手の話は大抵、性的なやりとりが付け加えられる。それを含めてのエピソードが知りたいっていうんなら語れないこともないが。

 そうだな、一番ベタでテンプレなやつがあったな。キッチンで料理を鼻歌交じりに作ってくれてる女の隣に立って腰を抱く、みたいな。

 

「んっ、今……料理してるから」

「なんか、後ろ姿が妙にエロかったからな」

「もう……」

 

 奪うようにキスをすると火が点いたみたいになって、そのままダイニングテーブルに手を掛けさせて後ろからとか、皿洗い終わってからその場で口使わせてもらったりとか。

 キッチンって特殊なプレイをするのに結構最適な場所なんだよな。変態的だと玄関でとかもあるけど。

 

「……なんか、大人だ」

「高校生でこんなことしてたらどんな退廃だよとか思うけどな」

「そもそもキッチンに二人ってシチュエーションが少ないですよね、たぶん」

「だな」

 

 まぁさらに付け足すと俺んちは男の独り暮らしだけど戸建てで存分に声出せるからな、使えるシチュエーションも多めだ。狭いなら狭いなりの利点もあるにはあるけど。俺は風呂とキッチンとベッドが狭いのだけはどうしても我慢できなかったからな。基本理念はどこの空間でも女と二人でいられるようにって内装設計だ。

 

「並んでご飯作ったり、お風呂入ったり……寝たり、それで広かったんですね」

「当たり前だろ。ここは俺が女を連れ込むために考えた城だからな」

「そういえば私の荷物、寝室の隣の部屋に置いときました」

「いいぜ、化粧台置いてあっただろ、メイクはそこでしていいから」

「はい」

 

 後は、いつまでも恵美にベッド取られるのは嫌だということでエアーベッドなるものも買っておいた。膨らませると思ったよりふわふわで気持ちよくてちょっといいなと思った。俺のベッドはこれより値段が段違いなので手放すのは流石にもったいないが。これで俺は見事ソファで寝泊まりする生活を終えることになった。

 

「ん、うまいな」

「それはよかったです!」

「本当に家事なんでもできるな」

「これからもこき使ってください!」

 

 そんな笑顔を放たれ、俺はわかったと頷いた。随分楽させてもらってるな、と思いながらパスタを巻いているとふと思い出したかのように恵美は俺に向かって申し訳なさそうな顔をしてきた。なんだ一体。

 

「私、普通に一緒に食べてましたけど……メイドって確かキッチンとかで食べなきゃなんですよね」

「お前をメイドとして雇った覚えはないが」

「ペットでしたね」

「追い出すぞ」

「ご主人様、捨てちゃうんですか……?」

「犯すぞ」

「ご主人様が仰せなら」

 

 こいつ、無敵か? とはいえ心の底では嫌がってるのを知ってるから俺はくだらないこと言ってんじゃねーと言うと、恵美もそう言われるとわかっていたように笑顔で頷いた。髪色が変わったせいか、それとも実際にそうなのか知らないけど、たった一週間くらいで明るくなったな。家事を積極的にこなすことで遠慮が薄れたんだろうか。まぁそれはそれでいいんだけどな。

 

「お皿、洗います」

「一緒に洗ってもいいんだけどな」

「……そのまま、私がデザートということですね」

「お前下ネタ多いんだよ」

「飼い主が好色家なので」

「俺のせいにすんなよ──わかった、お前に任せるよ」

「はい!」

 

 俺はその間に風呂に入ってのんびりしてから、皿を洗い終わった恵美と入れ替わる。テレビをテキトーに見ながら熱された身体を冷ましていると、ストンと隣にホットパンツで部屋着のネコミミがついた白のロングパーカーの前を開けてキャミソール姿のおいしそうなJKが座ってきた。

 

「……お前さぁ」

「なんですか?」

「自分が安全だと思ってんなら大間違いだからな」

「だって、暑いんですよ?」

「せめてTシャツにしような」

「……見ちゃダメ、です」

 

 無茶を言うな。こちとら手を出しちゃダメな女を横に置いてる経験がほぼないんだよ。そんな恥じらいにすらちょっと湧き出てきた煩悩を払おうと俺が選択したのは──アイスを食べることだった。しょうがないから、今日もありがとなと恵美にもアイス用の小さな金属製のスプーンとクッキー&クリームを渡すときょとんとした顔をした。

 

「なんだ、食べたことなかったか?」

「いえそうじゃなくて、いいんですか?」

「なくなったら買えばいいんだよ。そもそも食いもんなんて何ヶ月も冷やしとくわけないだろ」

「……では、いただきます」

 

 紅茶も一緒に淹れてやる。アイスと高級茶葉のホットティーの組み合わせは俺が年中アイスを冷凍庫に入れてある理由の一つでもあった。紅茶は趣味だと割とウケがいいからってのもある。コーヒーは飲みすぎると体臭に出るし。いいもの食って、ちゃんとした規則正しい生活を送る。そうすることが俺の好きなプレイをしてもらえる確率にもなり得るんだからな。

 

「……そもそも精液って味変わるんですか?」

「俺は味わったことねーけど、飲んでもらった子曰く」

「なんか、お腹壊しそう」

「まずいとお腹壊すって」

「そんなもの女の子に飲ませてるんですか、変態な上に鬼畜なんですかもしかして」

「今すぐ俺の味わうか?」

 

 勢いよく首を横に振るくらいなら最初から言うんじゃねぇ。というかお腹壊したエピソードのお相手は俺じゃねーんだわ、そいつのは飲めないけど俺のは飲めるって言われたんだわ。なんか女子高生にする自慢じゃないことはよくわかってるが、そういう努力と下地作りが、今の乱れた生活に繋がってるんだよ。

 

「規則正しいのに乱れてるんですね」

「まぁ、だから時折帰ってこない日もあると思うけど」

「けど?」

「そういう時は連絡する、それは忘れない」

「……信じますからね」

 

 少しだけ不安そうな笑顔をされて、俺は思わずその頭を撫でた。拒否されるかと思ったが、恵美は気持ちよさそうに目を細めて、まるで猫がゴロゴロと甘えるようにふふふと口から息を漏らした。

 俺にとって、段々と捨て猫だったはずの、家出娘だったはずの恵美がいる生活が当たり前になっていくのを実感する。そして驚くことに、生殺しのはずのその生活が、俺にとって悪くないものだと感じてもいた。

 

「わぁ……水族館かぁ」

「いいよな、水族館、暗がりだから多少変なとこ触ってもバレない」

「そういうことするんですか?」

「ムラっとすると割と触りたくなる」

「ご主人様、女の子は性欲抜きで単純にデートしたい時もあると思います」

「男性経験ナシ処女の話は受け入れません」

 

 テレビの特集に目を輝かせるJK──恵美が家に来てからもうすぐ二週間が過ぎ、三週目に入ったところで月末、つまり長期の休みが目前に迫ってきていた。いつもならテキトーに女を侍らせて肉欲に塗れた日々を送るところだが、今年は恵美がいるし、そもそも予想通り五月が近づいてきて、みんなカレシやら旦那の予定で埋まっていた。学生の頃のようなバイタリティは当たり前だがないし、ナンパするのもめんどくせーからな。

 

「行きたいか?」

「下ネタですか?」

「イカせてやろうか」

「イッたことないので激しくなければいいですよ」

「……水族館だよ」

「どっちも行ったことないので、ちょっと興味があります」

 

 下ネタやめろとは思いつつ、なんだかんだで俺と恵美の会話テンポがこれで確保できているのでもう諦めた。どんどん言葉遊びで下ネタかましてくる見た目派手で男の目を惹く魅惑のボティしてるのにも関わらず中身は男性経験ナシどころか男と手を繋いだことすらないピュア中のピュアな処女とかいう俄かビッチと化していた。ロングだった髪もちょっと切って、出掛ける時は巻いてハーフアップで清楚さも醸し出してくるけど。

 

「──たまにはそういうのもいいかもな」

「どういうのですか?」

「普通のデート」

「デート……」

「水族館で非日常を味わって、思い出を作って終わり、セックスはなし」

「それ、楽しいんですか?」

「お前がそれ訊くかフツー?」

 

 確かに、と笑って恵美は普通のデートがしたいと言った。たまには家事とか任せっぱなしの飼い猫兼メイドにも休暇を与えないとな。その気持ちで五月頭──つまりはGWの予定を立てていく。旅行ってのもいいな、割と俺は星見るのも好きなんだよな。後は景色を楽しむとか、京都とかみたいに情緒ある場所ってのもいいし、うまいもんめぐりももちろん好きだ。

 

「じゃ、じゃあ……わがままとか、言ってもいいですか?」

「休暇だからな、俺が叶えられる範囲で頼むけど」

「じゃあ、えっと──キャンプって、できますか?」

「キャンプ?」

「はい、こうテントで寝泊まりして、バーベキューして、星見て、そういう体験してみたいです!」

「なるほどな、いいんじゃねーかな、山か……確か親戚に山買ったやついたな」

「いいですね、山って一時期ブームで、正月とかあの山が安いとか、手入れとの釣り合いがって両親が親戚と話してました」

 

 そんなこんなで俺の父方の親戚が買った山とそこに建てたコテージを拠点に、二泊三日で最後に水族館という旅行計画が完成した。

 俺は、またもや旅行中は禁欲生活を送らなければならないことに気付いたが、いい加減慣れてきたな。

 ──旅行前はセフレ誰か募集して発散したら大丈夫だろう、多分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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