おしかけ家出娘をペットにした話   作:黒マメファナ

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Part7

 家出娘に告白された。それはそれなりの衝撃だったが、本人としても今の今まで無自覚の好意だったと振り返った。俺としてはまさかの展開だが。

 とはいえ、俺が今すぐどうこうは言えない。こちとらそのつもりなんてなかったんだ、そもそもどう転んでも恋愛ごとに発展するなんて微塵にも考えてなかった。今すぐ結論が出せるはずもない。

 

「私は、眼中にありませんでしたか?」

「俺としては家出娘が納得するまで匿うつもりまでだったな」

「下心はなかったと」

「あったに決まってるだろ、でもそれは恋愛じゃなくて性処理的な意味でだ」

 

 付き合えるかな、じゃなくてお礼にどこまでヤラせてくれるかなくらいのテンションだ。本番無理って言われてもテクで黙らせてやるくらいまでしか考えてなかったよ拾った時は。

 今はそうじゃないくらい、俺も偽善者をやらせてもらってるけどな、何故か。

 

「正直」

「あ?」

「キャンプの後は、ドキドキしてました。布一枚しかない隔たりの向こうに肉食獣がいることに対して」

「残念だけど、こっちは天体観測を酒のつまみにしてて、一人でロマンチックに浸ってたけどな」

「でもコテージで、夜中にお兄さんがトイレに行った時……もしここで部屋に侵入されたらと、想像してました」

「ただのトイレだよ、そっちは」

 

 こっちはお前を性欲の対象から外すのにようやく慣れてきたところだっての。じゃねーとGWに二人で出掛けるなんてマジで襲いそうになるからな。とりあえずその話は打ち切ることになり、片付けをして風呂に入った。恵美と入れ替わりで風呂に入り、いつものように風呂上がりのアイスを食べようとリビングに戻ると、恵美がクッションを枕にしてソファで寝ていた。

 

「恵美」

「ん……ぅ」

「その格好だと風邪引くだろうが、また介抱したせいで会社休むのは嫌だからな」

 

 相変わらずパーカーの前全開でパッド入りの色気もクソもないキャミソール姿だが、その瑞々しさのせいかあまりに無防備すぎて思わず肉食獣の顔が出てきそうになる。本人曰く家だとショーツにネグリジェだったそうで、秒で襲うからと今の寝間着姿で落ち着いているのだった。ホットパンツも自室では脱ぐらしい。男の家に居候してるんだよな、お前は。

 

「んにゃ……」

「寝ぼけ方、猫かよ」

「んふふ」

 

 いつもなんだかんだ暗黙の了解的にどっちも風呂から出るまでこうやってリビングで待ってるのが日常風景なんだが、どうやら今日は流石に疲れが来たのか相当眠かったんだろう。そして恵美は寝ぼけるとますます猫になるらしい。上半身を起こし、俺を見るなり肩に頭を乗せて甘えてきやがった。

 

「なんだよ」

「ん〜? ふふ〜」

「……酔ってんのか?」

 

 酒に弱い同級生に酔ったらこんな感じになるやつがいたなと思い出した。顔は微妙だったが妙に仕草エロくてそして妙に感度がよくて遊びがいのある女だった。後断れない性格だったので、複数の男と関係持ってた。そういうビッチもあるんだなと関心したんだが、そんなのはどうでもいいや。

 

「あ、アイス食べてるのずるいです」

「冷凍庫から取ってこい」

「んーん、あーんで食べさせてください」

「……それがお前の本性か」

 

 そりゃ、厳格にいつも真面目な自分って型にハメようとしすぎてたんだ、抑圧されてたんだろうよ。でもまさか家事完璧で正しくメイド然としていた恵美が、ギャルとカレシがイチャイチャするのを遠目から見ていただけの恵美が、こうなるなんてな。いやある種その二人に憧れたんだから内心の理想がそうなのかもしれない。

 

「ほら、あんまりくっついてくると犯すぞ」

「するなら、ちょっとずつ……教えてほしいです」

「……あーもうわかった、ほら」

「んっ、おいしいです♪」

 

 今ちょっとムラっとしてしまった。経験上、処女を抱いた数はそうでもないし、その中でじっくり時間をかけた相手なんて一人もいねーもんだ。やってスローセックスくらい? でも恵美の言葉に、俺は僅かな興奮を感じていた。何も知らない、けど確実に食べごたえのある女が、俺に食われてもいいと身体を預けていて、そこに俺好みの快楽を教え込む──めちゃくちゃおいしい話だ。相手が家出娘の、しかもこいつじゃなきゃ。

 ──ふと、そういえば冷蔵庫にあったチューハイが一つなくなってることに気付いた。そしてちゃんと生真面目に洗った缶が一つ。そしてコップには半分くらい炭酸が残っていた。

 

「……お前、俺のチューハイ飲んだな」

「おいしいのかなって思いまして……」

「それでこの状態か」

「なにがですかー、もっと撫でてくださいよ〜」

 

 アイス食べられたので俺の分を食べつつ、俺の膝を枕にしてデレッデレに甘えてくるペット系家出娘、なんだこれ。しかもアイスを食べる、撫でてと甘えられる、撫でる、食べようと手を放すと甘えてくるの無限ループ状態だ。どうしてこうなった、しかもいつの間にかパーカー脱いでやがる。俺、もしかして誘惑されてるってことなのか。

 

「ね、お兄さんは、なんでご主人様になってくれたんですか?」

「お前を飼ったつもりねーって」

「でも、ご主人様ですよ。私のこと、守ってくれて、今も……」

 

 守ってるつもりなんて、いやあるのか。俺は恵美がこの先も思春期の発露で男に騙されて、痛い思いや苦しい思いをして泣くことにならねーように、俺が押し留めてるのか。それは、前々から抱いていた感情の発露に近いもんだ。

 

「俺さ」

「はい」

「慰めでセックスすること多かったんだよ」

「女の子を、ですか?」

「おう」

 

 カレシと喧嘩した、カレシが浮気してた、相手がいたから諦めるしかなかった、フラれた、そんなんで呼び出されるかその愚痴の果てに抱くことがほとんどだった。碧なんてめちゃくちゃ珍しいタイプだ。んで、その度に思ってたんだよな、俺はそのためのストッパーになってるんだなって。これ以上傷つかないように、泣くことがねーように、そして思い詰めることがないように。

 

「だから最近、幸せになってきたから俺はお払い箱になり始めてるってわけだな」

「……そう、なんですね」

「でも、俺はそれでいいと思ってる。俺は気持ちいい思いができるし、相手は感情のストップがかかる。Win-Winってやつだろ?」

 

 碧はそんな傷心の女をよく紹介してくるし、本人も一番気持ちいいのは傷心中の俺とのセックスだって言ってたしな。そういう装置みたいな存在だったんだよ、俺は。女を慰めついでに抱いて、またケロっとした女が去っていくのを見守る役割、それが俺という存在なんだなって。

 

「私は、嫌です」

「なにが」

「……お兄さんは、他の女の子にとっては慰めてくれるついでに性欲も満たしてくれる都合のいいセフレかもしれません、でも……私にとっては、たった一人の、私のご主人様です」

「恵美、お前……」

「だから、私は決めました……お兄さんをもう二度とセフレとは呼ばせません」

「……あ?」

「いつかきっと、私だけのご主人様に、そしてお兄さんをセフレにしている人全員にとって──元セフレさんにしてあげますから」

 

 その宣言は、俺の心に突き刺さった。こいつは、恵美は強いやつだ。繊細かと思ったら豪胆で、俺が慰めるとかそういうの一切必要とするか微妙な存在だ。ただ、甘えたがりなだけで。

 ──俺は、庇護対象だと思っていた女に、全てを奪われるらしい。でもこいつワンチャン酔ってるから起きたら全部忘れてるとかねーよな。

 

「って、それより前に恵美、俺の膝じゃなくて部屋のベッドで寝ろ」

「もうちょっと」

「もうちょっとって言ったら俺が運ばなきゃいけねーパターンだろこれ」

「もうちょっと、ちょっとくらい触ってもいいですから」

「ホントに触るぞこのヤロウ」

 

 結局、恵美は俺の膝の上で寝息を立て始めたせいで俺が運ぶハメになった。抱きついてきて匂い嗅いできた時は振り落とそうかどうか悩んだけど、一応は運んでやった。これで翌日は覚えてないといいけどな。そう思いながら、少しトイレで用を足してから眠りについた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 翌日、起きると既に恵美は家事をテキパキとこなしていた。いつものように、メイド然としてる。今日が最後の休日だということで、家を空けていた間の埃とかが気になったんだろう。俺が起きたのを見た途端にふわっとした笑顔を浮かべた。なんというか昨日のが嘘だったように平常運転だな。

 

「おはようございます、ご主人様」

「おう、おはよう」

「朝ごはん準備できてますよ」

 

 さて、昨日のことは覚えているんだろうか。どう切り出せばと悩んでいると恵美は向かいではなく俺の隣に座ってきた。怪訝な顔をした俺に対して、恵美はいつも通り、いやいつもよりもちょっと笑顔のキラキラ感が上がってるな。これは、自分が恋してるのを自覚したからか、それとも。

 

「ゆうべ、あんまり覚えてないんですけど」

「なんだ、やっぱ覚えてないのか」

「どこまでえっちしました?」

「……朝から下ネタかよ」

「え〜、だって気になるんですよ? 朝起きて、自分が処女じゃないかもって思った時の私の気持ち、考えてください」

「ペッティングすらしてねーから知るか」

「あれ、犯すぞって言われたからいよいよかぁとか思ってましたけど」

 

 この女、都合のいい、いや悪いところばっかり覚えてやがるな。どうやらヒアリングすると、俺のした話はほぼ覚えてるらしかった。甘えてた最初の部分とは違ってふにゃふにゃ言ってなかったから酔いも覚め始めてんだろうなと思ってたけどな。そして、俺からするとすごく微妙な気分である。

 

『なにが? いいじゃんセンパイ、同意の得られた処女だけどめんどくさくない子になったじゃん?』

「いやめんどくせーだろ、俺のこと身体だけの関係だと思わねーんだから」

『じゃあ捨てないの?』

「わかってて言ってるだろ」

『私もしばらく相手してあげられないから、ちょうどいいんじゃない? 育みなよセンパイも、ちゃんとした愛をね?』

「ふざけんな」

 

 碧にもこのからかわれようである。しかもこの一ヶ月くらいで慣れてきた恵美への耐性が昨日で全部吹き飛んだってのに、相手もしてくれないらしい。お前、俺が犯罪者になって賠償金とかで騒ぎになったら一生お前への恨み節を日記にしたためてやるからな、覚悟しとけよ。

 

「今日はどうしますか、ご主人様? 一日暇なので、ペットの調教でもしますか?」

「しねーよ、来週の買い物と、そろそろ衣替えのための服を選ばなきゃいけねーだろ」

「そうでした、ネット通販もいいですけど、デートしながら選びたいです」

「……言うようになったな」

「お兄さんを堕として、私の飼い主として認めさせるんですから、覚悟しておいてくださいね」

 

 ──まぁ、こんなビッチみたいな見た目してるが男性経験ナシの箱入りお嬢様なんだ、こんなの気の迷いでしかないだろう。そう思って俺は放置しておこうと考えつつ、今までの関係に甘えを含んで腕を組んでこようとする恵美を振り払った。

 俺は女遊びが生きがいのクソ男だ、経験ナシの捨て猫に堕とされてたまるかよ。

 

 

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