ルーデウスの双子の姉 - 弟に勝てなさすぎるので本気出す -   作:抹茶れもん

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皆さまいつも拙作を読んでいただきありがとうございます。
今回で第1章は完結です。
次話からは第2章が始まります。
ここまで来れたのも皆さまの応援のおかげです!
これからも自分にできる精一杯の努力てこの物語を紡いでいこうと思うので、また感想・評価等を送ってもらえると嬉しいです!
それでは、今回もどうぞよろしくお願い致します!


第十二話 「旅立ち」

 「僕に全て任せてください」と、ルディは言った。

 ルディは考えなしに無責任なことを言う性格ではないから、この言葉もまた、それなりの勝算があってのことなんだろう。

 

 私はその提案に頷いた。

 断る理由がなかったからだ。

 弟に勝つための強さを手に入れるために、まずはその弟に頼らなければならないということには、ちょっと抵抗があったけど、それで現状に足踏みのままでいるのもまた耐えられるものではないと思った。

 この情けなさは、ルディの姉として立派に成長することで返上するとしよう。

 

 まぁ、少し複雑な思いは抱いていたけれど、それでもルディが真っ先に私の所に来てくれたことがこの上なく嬉しくて頷いた部分があったから、私は大人しくルディに家まで連れられていった。

 

 ルディは私が逃げないようにするためか、私の手をしっかり握って先導してくれている。

 その手は私と違って剣を振っているせいか、5歳にしてたくましいものになっていて、がっちりと私をつかんで離さない。

 「そんなにしなくても逃げたりなんかしないのに、心配性だなぁ」と思いながら、そんな弟を愛おしく感じると同時に、私の情けなさを痛感する。

 やっぱりルディにとって、私は庇護する対象なんだろう。

 まぁ家出なんかした私に全面的に非があるんだけど、こういう所が私のダメな所なんだ。

 

 よし、お父さん達を説得する時も、できる限り自分の力でやろう。

 ルディは私が辛くなったらそれとなく助けてくれるだろうし、こういうのは私自身ががんばることに意味があるはずだ。

 ルディに頼ってばかりじゃいられない。

 強さだけじゃなくて、それ以外の部分でも姉としてしっかりしている所を見せなければ。

 

 そんなことを思いつつ月夜の下を歩いていき、いつの間にか私たちは森を抜け、村までたどり着いていた。

 

「ルディ! ノア! 良かった、無事だったんだな……!」

「あ……お父さん」

 

 村の入り口には、いつもの仕事着を着て、剣を装備したお父さんがいた。

 とても険しい顔をしていたが、私たちを見つけた途端パッと眉間の皺が解けて、安心したように駆け寄ってくる。

 それだけで、私がどれだけお父さん達を心配させたのか、どれだけ迷惑をかけたのか、どれだけ愚かで短慮な行動をとったのかが理解できた。

 それと同時に、ひどく申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになってしまった。

 

「心配したんだぞ! どこに行っていたんだ!?」

「えっと……森のほうで、隠れてた」

「そうか……。

 ノア、お前は自分が何をしたのか、わかってるか?」

「……うん」

 

 お父さんはホッと息をついた後、私の目線に合わせるように屈んで肩を掴みがら、真剣な表情で語りかけた。

 安堵、心配、怒り、悲しみ、その他様々な内心が入り混じっているような顔を至近距離から見て、私は咄嗟に目を逸らしてしまいそうになった。

 

「目を逸らすな。

 ノア、お前は今日大きな間違いをした。

 それが何か、本当にわかっているのか?」

「……うん。

 お父さん達を心配させて、迷惑かけたこと……だよね」

「そうだ。

 それに俺達だけじゃなく、村の人たちにも迷惑をかけた。

 ロキシーも自分のせいなんじゃないかと気に病んでいた」

「……そう、なんだ」

「お前は優秀かもしれないが、まだ考えの及ばない子供だ。

 今回のことは、また家に帰ってから皆んなで説教する。

 そしてその前に、何か言っておくことがあるんじゃないか?」

 

 お父さんは、怒っていた。

 今までも何度かお父さんやお母さんに注意を受けたことはあったが、もしかすると叱られたのはこれが初めてかもしれない。

 今回のことは一から十まで全部私のせいなのもあって、言うべきことはするりと口から出てきた。

 

「ごめんなさい……」

「よし、それが素直に言えるならいい。

 自分が間違えたと思ったなら、すぐに反省して謝るのが大切だ。

 以後、こんなことはするんじゃないぞ」

「……はい」

 

 その言葉に満足したのか、お父さんは頷いて立ち上がり、私の頭にポンと手を置いて不器用に撫でた。

 これから家に帰って、お母さんにも色々言われるだろう。

 そしてその後にまたミリシオン行きの交渉をしなければいけない。

 先が思いやられるが、自らが蒔いた種なんだし、うじうじはしていられない。

 

「家に帰ろう、ノア。

 母さん達も心配しているからな」

「うん」

 

 正念場はここからだ。

 気合を入れなおしていこう。

 怒られたことは情けなく思うけれど、それでも不思議と私の気持ちは晴れていた。

 

---

 

 その後、家に戻った私は怒髪天を衝く勢いで怒るお母さんにみっちりと絞られ、危うく燃えカスになる寸前であった。

 あんなにお怒りのお母さんは初めてだ。

 つまり、それだけ心配してくれていたということだろう。

 改めて本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 お父さん達にはもう頭が上がらなくなってしまったのだが、これからその頭を無理にでも上げてお願いしなければいけないとは。

 うーん、胃が痛くなってくる。

 

「……お父さん、お母さん。

 あのね、実はまだ話があるの」

「ん? まさか、まだ諦めてなかったのか?」

「うん、どうしても諦められないから」

 

 お父さんは、またもや難しい顔をして悩んでいる。

 ここでダメだと否定するのは簡単だが、そうしたらまた私が無茶な行動を起こすかもしれないと思っているのだろう。

 まったくその通りだ。

 まあ、さすがの私も今回のことで懲りたので、もうこんな無茶なことはしない。

 けど諦めきれないのもまた事実なら、いつか思いが決壊するかもしれないし、そしたらどうなるかはわからない。

 お父さん達は私のことをよくわかっている故に、それを警戒しているのだろう。

 そこをうまく使えれば、あるい私の要求を通すことが——

 

「いや、ダメだ。せめて12歳になるまでは家にいなさい」

 

 できるわけないよね、知ってた。

 うーん、じゃあどうすれば許可をとれるのか……。

 今思ったけど私交渉とか苦手かもしれない。

 誠心誠意お願いすることは得意だけど。

 でも、いつまでもそれで甘えてるだけではいけない。

 私自身の成長を見せて、ちゃんとお父さん達を認めさせないといけないんだ。

 

「……じゃ、じゃあ、冒険者を雇うとか!」

「んん? 冒険者? それとこれとどういう関係があるんだ」

「だって、私はミリスで魔法を勉強するのが目的で、別に冒険とか、旅とか、迷宮に潜るとかは考えてないもん。

 だったらミリスに行くまでの間、護衛になってくれる人がいれば、大丈夫でしょ?」

「……それでもダメだ。

 冒険者を雇うのには金がかかる。

 それにだな、ここからミリスへの長期間ずっと護衛を続けてくれるようなヤツなんてそうそういないだろう」

「お金は大人になったら自分で働いて返すから! 護衛の人は、護衛の人は……」

 

 そこまで言って、言葉が続かなくなった。

 とっさの思い付きだから仕方ないとはいえ、ここで納得させられないと結局ダメだ。

 もう一押しする理由はどこにあるだろうか。

 

 そう必死に私が頭を回していると、今まで沈黙を保っていたルディがここで初めて声を上げた。

 

「父さまと母さまは、昔冒険者をしていたと聞きました。

 なら、その時に組んでいたパーティの人たちに連絡を取ってみてはいかかがでしょうか?」

「!? ルディお前まさか、ノアの好きにやらせる気なのか!?」

「そうですよ。

 こうなった姉さまは誰にも止められませんからね。

 それならば、最初から腕が保証されていて、信頼できる人に護衛をしてもらうのが一番良いと思いませんか?」

「ぐっ! いや、しかしだな? ルディよ。

 あいつらとはひどい喧嘩別れの末の解散だから、そもそも取り合ってくれるかすら怪しくて……」

「それは父さまとの問題であって、姉さまとは関係がありません。

 あくまで依頼主と雇われ冒険者という体でいればいいんです

 第一、これは父さまにとってもその人たちと仲直りする良い機会になると思うんですよ」

「う、むうぅ……」

 

 あっという間にルディはお父さんを言いくるめてしまった。

 圧倒的ではないか、我が弟は。

 私はとても助かるけれど、お父さんがかわいそうなことになってくるので手心を加えてほしいと思うのは傲慢だろうか。

 しかし本当にナイス援護射撃だ。

 これは、もしかするかもしれない。

 お父さんが最後の抵抗とばかりに口を開く。

 

「だがな、ノアはまだ5歳で、大人の目が必要だ。

 子供だけで幼少を過ごすのはロクなことにならんぞ。

 それはノアのためにもならない」

「姉さまはミリシオンにある母さまのご実家に身を寄せるつもりなんですよね?

 だったらちゃんと大人の目もありますし、問題はないでしょう」

「いいや、ノアは俺達の子だ。

 ラトレイアの奴らに任せきりでは、親としての面目が立たない」

 

 むぅ、と今度はルディが唸る。

 そう言われるとなかなか反論しづらいのだろう。

 なにせこれは親としての意地の問題である。

 解決するにはお父さん達が私に付きっ切りである必要があるが、もちろん仕事があるからそんなことはできっこない。

 つまり、最後の最後で手詰まりだ。

 

「そうだろ、ゼニス。

 そもそも俺達はラトレイア家とは折り合いが悪い。

 受け入れてくれるわけがないだろう。

 この話はこれで終いだ」

「うーん……」

「ゼニス?」

 

 私たちから反論がこないとみて、お父さんは強引に話を打ち切ろうとお母さんに話しかける。

 しかし、意外にもお母さんからはお父さんを肯定する言葉は出ず、代わりにどこか悩ましく思うような声が出た。

 そして訝しむお父さんを横目に、よし、と何かを決断するように頷いて言った。

 

「私も行くわ」

「はっ?」

「私がノアについて行くわ。

 診療所はまぁ……私がいなくても多分大丈夫だろうし、黒狼のメンバーにも私から連絡を取った方が上手く事が運ぶと思うから。

 もちろん、あっちでノアがちゃんとやれてるようだったらすぐに帰るし、ダメそうだったら引っ張ってでも連れ戻すつもりだけど」

「なっ!?」

 

 突然の風の吹き回しに、お父さんだけでなく私たちも目を丸くした。

 

「ちょっと待て、どういうことだ!?」

「私ね、前にノアにラトレイア家のことを少し話したのよ。

 さっきそのことを思い出しちゃってね。

 もう二度と会わないんだろうなって思ってたけど、もしかしたらこれが最後の機会なんじゃないかって気がするのよ」

「だが……!」

「いやねぇ、ちょっとした里帰りみたいなものよ。

 それにあなただって、自分の家族がもし生きていたなら、会いたいって思うはずよ」

「それは……」

 

 思い当たる節があったのだろうか。

 お父さんは言葉に詰まってしまった。

 そういえば、お父さんの家族のことは聞いたことがなかった。

 もしかしたらお母さんと同じように、喧嘩して家出したっきり会わずに亡くなってしまったのかもしれない。

 もしそんなことがあったなら、確かに気に病んでしまうだろう。

 

「それにね、きっとノアにはこの村は狭すぎるのよ。

 この子には、もっと広い世界を見せてあげる必要がある。

 もちろんあなたの心配もわかるけれど、この子も5歳。

 親元を離れて学校に行ってもいい頃合いじゃないかしら」

「……しかしだなぁ」

「大丈夫よ!

 だって私とあなたの子なんだもの。

 きっと上手くやるわ」

 

 お母さんの言葉に、お父さんはしばらく目を瞑って考えた後、諦めたように息を吐いて言った。

 

「はぁ……わかった、わかったよ!

 ミリシオン行きを許可しよう。

 ただし! 途中で投げ出すことは許さん。

 しっかり、学んでこい!」

「……ほ、本当に? や、やったーーー!! ありがとう、お父さん、お母さん、ルディ!」

 

 このように紆余曲折はありながらも、私のミリシオン行きが決定した。

 

---

 

 それから4ヶ月後、ようやっと旅の準備は整った。

 ロキシーは元々すぐに出ていく予定だったらしいけど、私たちの出立に合わせて遅らせてくれた。

 やっぱりロキシーは神さまだね、私もお祈りしておこう。

 

 その間私はというと、お母さんから礼儀作法とやらを教わっていた。

 お母さんのお母さん……つまり私のお婆ちゃんにあたる人はそういうことにとても厳しい人らしく、円滑に話が進むようにとのはからいだ。

 もちろんミリス行きは私が言い出したことなので否やも何もない。

 そうして、私は最低限の貴族マナーというものを修得した。

 ちなみにルディもそれに参加し、お母さんはルディにものを教えるということができてテンションがやたらと高かった。

 

 旅の護衛としてやってきてくれたのは、お父さんたちが以前組んでいたというパーティの人たちだった。

 

 全部で3名。

 長耳族でスレンダーな金髪美人のエリナリーゼさん。

 炭鉱族でガッチリと鍛え上げられた肉体を持つタルハンドさん。

 お猿さんみたいな顔で軽薄そうなだが、その実世話焼きそうな雰囲気を持っている魔族のギースさん。

 

 彼らは全員がS級の冒険者らしく、お父さんとお母さんの頼みに応えてくださったそうだ。

 彼らとお父さんたちには並々ならぬ因縁があるそうだけど、娘のために力を貸してほしいという誠心誠意の頼みあって、渋々頷いてくれたらしい。

 なら、私が先立ってご挨拶しなければならない。

 なんせ私のワガママだ。

 私自身が誠意を見せなければ、彼らだって納得してくれないだろう。

 

 私は朝からずっとソワソワしながら玄関前に陣取って、今か今かとそれらしき人影が見えてくるのを待っていた。

 そして、昼頃に彼らがやってきたのを見て、勢いよく頭を下げた。

 

「こんにちわ!

 ノア・グレイラットです!

 パウロ・グレイラットと、ゼニス・グレイラットの娘です!

 本日は私の我儘にお応えくださり、本当にありがとうございます!!」

 

 よし、台本通り言えた……!

 ふふふ、見て見たまえ、彼らも私の完璧な挨拶に感心しているようだ。

 練習しといて本当によかった。

 

「あら、パウロの娘にしては礼儀正しいんですのね」

「そうじゃのう……てっきり奴に似たワガママ放題の娘かと思っとったわい」

「よう、よろしくなー、ノア! 俺はギースだ。

 パウロのヤツにはまぁ、色々と思うところはあるが、とりあえず馳せ参じてやったぜ」

 

 お父さんは何をやらかしたんだろうか。

 私的に、お父さんは情けないところもあるけれど頼れる大人というイメージなので、彼らの知っているお父さんと私の知っているお父さんは結構違うのだろう。

 そう思っていると、件のお父さんとお母さんが顔を出す。

 

「……その、久しぶりだな、エリナリーゼ、ギース、タルハンド」

「……」

 

 瞬間、一気に沈黙が場を包み、この辺りだけ冬になったんじゃないかと思うほどだった。

 本当に我が父は一体何をやったんだ……。

 

「……あの時は、悪かった!」

「私にも謝らせて。

 ……迷惑をかけて、ごめんなさい」

 

 そしてお父さん達はガバッと勢いよく頭を下げて謝った。

 3人はそれぞれが思い思いの顔を浮かべている。

 エリナリーゼさんだけはそっぽを向いていて、あんまり表情とかわからなかったけれど。

 

「……あの時のことは、私にも非がありますわ」

「……そうか」

「それに、ちょうどこの村で一目見ておきたい人もいたことですし、ついでですわよ」

「ありがとう、エリナリーゼ」

「私からも、ありがとう」

「どういたしまして、パウロ、ゼニス」

「ふむぅ、儂もお主らには言っておきたいことはあったが……今はいい」

「ま、こういう再会の仕方もあらぁな。

 ちなみに俺はギャンブルで有り金全部スッちまったから、適当な稼ぎを探してただけだ。

 だから、んな気にすんじゃねぇぞ」

「ああ、ありがとうギース、タルハンド」

 

 彼らのやりとりは私にとってはまだ難しかった。

 何というか、一言では言い表せない重みというものがあったのだ。

 彼らは私なんかとは比べ物にならないほど重厚な経験をしてきて、それがあっての和解だったのだから。

 言わば、大人の会話というやつだった。

 

「にしても、こんな礼儀正しくて素直なお嬢ちゃんがお前の種から生まれるとは驚きだぜ」

「だろ? 俺には勿体無いぐらいできた子だ」

「ゼニスの教育が良かったのでしょうね」

「まぁ、エリナリーゼったら嬉しいこと言ってくれるじゃない! これから長いこと、よろしく頼むわね」

「任されましたわ」

「心配せんでも依頼料分の働きはするぞ」

「そうそう、たんまり前金もらってっからな。

 こりゃあ後から楽しみだぜ」

「どうせお主は全部スるじゃろう」

「んだとぅ!?」

 

 おお、すごい。

 なんか冒険者って感じの会話だ。

 それに混ざらないのはちょっと寂しいけど。

 私も成長したらああいう風なカッコいい会話ができるようになるんだろうか。

 

「……それじゃあ、ノア。

 これからは離れて暮らすようになる」

「うん」

「ちゃんと食べて、勉強して、立派になって帰って来るんだぞ」

「うん!」

「ゼニスも、ノアのことをよろしく頼む」

「ええ、あなたこそ、くれぐれも浮気とかしないで頂戴ね?」

「わ、わかってるさ……」

 

 お父さんは私の肩を抱きらぎゅっと抱きしめた。

 私もお父さんを抱きしめ返す。

 がっしりとしていて、とても頼りになる立派なお父さんだ。

 それに恥じないような人間になれるよう、精一杯努力しよう。

 

「ルディ」

「はい、姉さま」

 

 そして私は、玄関奥で所在なげに佇んでいる最愛の弟に声をかける。

 ルディは私が呼ぶとすぐに駆け寄ってきてくれた。

 

「ね、ルディ。

 お姉ちゃんって呼んで」

「えっ!? なんでいきなり!?」

「んー、なんとなく。

 あと敬語もいらないから、元気いっぱいで送り出してよ。

 そしたら私、あと10年はなんでもできる気がするから」

「……せめて姉さんにしてください。

 とても尊敬してるんですから」

「仕方ないなぁ、わかったよ。

 でも敬語は抜きだよ! なんかルディのそれって距離感じちゃうんだもん」

 

 ルディは一瞬、えっマジで?って顔をしていたが、すぐに気を取り直し、若干顔を赤らめながら、それでも私の目を真っ直ぐ見て言ってくれた。

 

「いってらしゃい、姉さん。

 帰ってくるの、ずっと待ってるよ」

 

 その言葉は何より私の心に響き、その音を何度も心の内で反芻する。

 ああ、今、最高にお姉ちゃんな気分だ。

 帰ってきたら、この子にもっと頼れるお姉ちゃんなところを見せてあげよう。

 そのためにも、これから頑張らないとね!

 

「うん! 行ってくるね、ルディ!!」

 

 こうして、私は生まれ育った故郷、ブエナ村を旅立った。


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