ルーデウスの双子の姉 - 弟に勝てなさすぎるので本気出す - 作:抹茶れもん
とりあえず一言。
遅れて申し訳ございませんでしたッッッ!!!
難産でしたッッッ!!!
だからもういっそ開き直って書けてる分だけ投稿しましたッッッ!!!
それでは、今回もどうぞよろしくお願い致します!
「召喚魔術は大きく分けて2種類あることは前回の授業で教えたな?」
「はいっ! 付与と召喚の2つですよね!」
「その通りだ。
付与の方は通常の授業で教えるゆえ、こちらの個人授業では召喚について詳しく教えていくつもりだ。
元々、私はそちらの分野の方が得意だからな」
「よろしくお願いします!」
水聖級魔術を公衆の面前でぶちかまし、校内での私の扱いが地を這う虫けらレベルから触ったら怪我するような危険生物レベルにランクアップした私は、現在この学院唯一の良心とも言える元冒険者のガダルフ先生から召喚魔術をご教授していただいている。
「召喚と一口に纏められているが、実はその中でも大まかに2つに分類される。
精霊召喚と魔獣召喚、これらが主に召喚とされている魔術と言えよう」
「どう違うんですか?」
「精霊召喚は召喚者の魔力を用いて我々の住む世界とは別の次元の世界に存在するという精霊を呼び出し使役する魔術だな。
精霊は使役こそ魔獣より容易だが、術式に組み込まれている単一の命令しか受け付けない」
「ふむふむ」
「対して魔獣召喚は別の場所に存在している生物を呼び出す魔術だ。
およそ『人』と名の付く生物以外であるのなら、ありとあらゆる生き物がこの魔術の対象となる。
精霊よりも複雑な命令を介することも理論上可能だが、上手く手懐けることが何より難しい」
「どちらも一長一短ってことですね!」
いきなり私の知ってる魔術の知識とかけ離れたなぁ。
地水火風のオーソドックスな4属性魔術は術式に魔力を込めれば正直に呼応して術式通りの結果をもたらしてくれる。
精霊召喚はそれに近いようで比較的扱いやすそうだが、魔獣召喚はかなりクセが強そうに思える。
その分セオリーから外れた意表を突く動きが可能っぽいので、これは術者の腕の見せ所ということだろう。
「先生、いくつか質問よろしいでしょうか!」
「構わない。なんでも聞くといい」
「はい! じゃあまず魔獣召喚についての質問で。
なぜ召喚魔術で人を呼び出すことができないんですか? 可能なら色々と応用できそうですけど」
「すまない、それは依然としてわかっていないことなんだ。
召喚魔術の魔法陣には未だに解明されていない点が多い。
使い手の母数が少ないというのもあるだろう、他の魔術に比べて研究が進んでいないのだ」
「なるほどなるほど……それは良いですね!」
そう言ってニヤリと笑みを浮かべる私に、ガダルフ先生は怪訝な顔を見せる。
「良い、とは?」
「え? だってまだ誰にもわかってないことがあるってことは、その分だけ新しくアレンジする余地があるってことじゃないですか!
私だけが知っている魔道の極意……めちゃくちゃでっかいアドバンテージですよ!」
「……なるほど。
君の類い稀な才気は、その飽くなき探究心からくるものなのだな。」
「そうですか?」
先生は私の言葉に苦笑したようだった。
うーむ、呆れられる程のことじゃないと思うんだけどなー。
ルディなんて私よりも全然早い段階で既存の魔術をアレコレ弄くり回していたし、ロキシーだって最近は詠唱短縮の技術なども身につけてますます自身の魔術に磨きをかけている。
私にとって物心つく頃から続けてきた魔道の探究というものは、半ば本能のようなものに近かった。
「あ、それとですね。
魔獣召喚をするとしたら、どんな使い魔が良いと思いますか?」
「そうだな、いくつかセオリーはある。
盾となり攻撃を引きつけ、その隙を術者が狙い撃つ。
逆に主な攻撃を使い魔に任せ、術者はその援護に徹する。
または索敵などの魔獣が持つ特殊技能をメインに運用するなど、スタイルは使い手によって実に様々だ。
まずは自分の戦術を把握し、その中で足りない部分を補うような魔獣を選ぶと良いだろう」
「ふむふむ……勉強になります!」
自分の戦術かぁ。
私が得意としているのは速度・連射重視の魔術。
つまり遠距離から初級魔術を防ぎようのない速度と手数で圧殺、または狙撃する戦法だ。
もっとも、初級とはいえ本気を出せばかなりの威力と精度を保ったまま繰り出すことが可能だと自負しているけど。
それに見合った召喚獣か……なら前衛として敵の注意を引きつけてくれるような頑丈な魔獣が良いだろうか。
旅の間に何度かこなした戦闘でもエリナリーゼさん達が前衛で魔物を食い止めている隙間を縫って仕留めるといった連携をとっていたため、私自身がそのスタイルに慣れているというのが大きい。
けど、これだと魔物相手にしか有効打にならなそうなんだよね……。
人間相手じゃ私は基本役立たずだろうし。
ならば攻撃を任せて私が援護に徹する形が無難だろうか。
仮説の段階だけど、私以外の生物が攻撃する分にはこの色々と面倒くさい呪いの効果適用外である可能性が高いし。
でもそうなると制御とか大変そうなんだよな……魔獣の使役とかやったことないし、細かい指示とかできる気がしない。
魔獣が言葉を理解してくれるといいんだけど、それで言うことを素直に聞いてくれるような生物なら魔獣なんて物騒な名前で呼ばれていない。
どっかに強くて硬くて言葉を理解する魔獣落ちてないかな。
そんな都合の良いこととかないだろうけど。
しかしそうなると精霊召喚と魔獣召喚、どちらを取るか悩みどころだ。
まずは精霊召喚で使役の感覚を掴むところから始めるべきか……?
「難しいんですね、召喚魔術って」
「……まぁ、平易な魔術ではないだろう。だからこそ使い手が少ないのだ。
それで、どうするかね。君はこの魔術を使いこなしたいというのなら、こちらはそれを伝授する支度はできているが」
「もちろん、お願いします!
こんな面白そうな魔術久しぶり! 絶対モノにして見せますから!」
「その意気だ。微力ながら、力になるとしよう」
それから、ガダルフ先生が専門としているという精霊召喚を見せてもらった。
スライムっぽいのがふよふよと飛び跳ねたり、土で形作られた竜が地面から迫り出したり、火炎が武器に纏うように追随して攻撃の威力や属性を付与したりなど、様々な種類の召喚魔術を実演してもらい、私は未知の魔術に目をキラキラさせて興奮しっぱなしだった。
その日は久しぶりに有意義な時間を過ごすことができ、私はホクホク顔で新たな戦術に思いを馳せるのであった。
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ガダルフ先生に召喚魔術を習い始めてしばらく経った。
ちなみに私はまだ精霊召喚の初歩の初歩で足踏みをしている。
召喚には魔法陣が必要なのだが、それを描く技術が私にはなかったからだ。
それでも先生は丁寧に教えてくれるので、最初の頃と比べると様にはなってきている。
最近は魔法陣の魔術式を無詠唱魔術の手作業に落とし込むことにハマっており、授業の間の暇な時とかよく無色の魔力をこねくり回している。
召喚魔術を習うにあたって特に私のためになったと思うことが、魔法陣について理解が深まったことだ。
今まで私が使ってきた無詠唱魔術は感覚によって成している部分が大きかった。
それを非常に理論的に定義されている魔法陣の組み方を学ぶことで、別の視点を得ることもできた。
私の魔術はより一層伸び代がある。
それが確信できただけでもミリスにまで足を運んだ甲斐はあっただろう。
ただ、悩みが全て解消されたわけではなかった。
それは何か。
ズバリ、友達がいないことッ!!
未だに私はクラス内で浮いたままであるのだ。
今なら友達でも作れるんじゃないかと思って、まずは手近な女子達に話しかけてみたのだが、すげなくお断りされてしまった。
会話拒否だ。
ひどくない? さすがの私もちょっと傷つくよ。
でも気持ちはわかるから私も強く出れないんだよね。
このクラスで1番地位が高いという中級貴族くんが未だに私のこと根に持ってんだもん。
派手に手を出されることはなくなったとはいえ、彼らとは目が合うとお互いに「チッ」と舌打ちしてガンを飛ばし合う仲である。
最近はそれもちょっと楽しくなってきた私がいるが、まぁ客観的に見れば関わり合いになりたくない人種なのは間違いないよね。
実際、遠巻きに見ている人達の判断は正しいものだと思うので、私の方から話しかけることは自然となくなった。
私にはないけど、家同士の関わりというものも当然あるだろうしね。
貴族主義の厄介さというものは身をもって学んだので私も仕方ないと諦めており、今のところ私の学院における友達は0人である。
まぁ、ぼっちは今に始まったことじゃないし別にいいもんね。
今までも体質の影響もあり、ほぼ家に引きこもって魔術の研究ばっかりしていたため、ブエナ村では友達と言える同年代の子はいなかった。
せいぜい挨拶する程度だ。
それは当時の私にとって別に寂しいことではなかった。
私なりに充実した時間だったのは確かだし、何より同年代の話し相手というのならルディと魔術トークしてれば満足だったので問題なかったのだ。
しかし、それは以前までの話。
今、私は学院生徒として過ごす時間が大半だ。
そして学院で私と話をする人は1人もいない。
端的に言って、さすがにちょっと寂しいわけだ。
特にクラスの女の子達がきゃいきゃいと喋っているのをぼーっと横目で見ていた時、偶然目があったので笑顔で手を振ってみたのだが、スッ……と目を逸らされたのはよく覚えている。
あれは正直キツかった。
なんというか、言い知れない疎外感と寂寥感、そして敗北感を感じたのだ。
仲睦まじく談笑する彼女達は傍目から見ても1人でいる時より何倍も楽しそうに見えた。
それを見ていると、私がここにたった1人であることを再認識させられる。
以前までの私にはいつも隣にルディがいて支えてくれていたのに、今では1人きりの小娘に過ぎないのだと。
ここはブエナ村から遠く離れたミリシオン。
当然ルディに頼ることなど出来はしない。
だから最近、私は自分の中の物足りなさにも似た何かを持て余し気味なのだ。
かと言って、無理矢理友達を作ろうとすれば迷惑がかかる。
それは私も本意じゃないし、強引に行くのは
そんなこんなで充実しつつも悶々としたものを抱えて過ごしていたある日のこと。
その日最後の授業である解毒魔術の講義が終わった放課後のことだった。
「ノア・グレイラット! ノア・グレイラットは何処にいる!!」
大声を上げながら小さい影が教室の扉をスパァン!と開けて飛び込んできた。
それは私と同じくらいか、もしくは年下に見える小さな黒髪の少年だった。
しかしそんな小柄な体躯には似つかわしくないほどに、瞳には強烈な闘争心が渦巻いている。
その少年には言いようもないカリスマのようなものがあったのだ。
「あの、私ですけど……」
「! お前か……!」
私がおずおずと手を挙げるたところ、少年はキッと上目遣いで睨みつけながらズンズンと近づいてくる。
ちょっと微笑ましい。
いやいや、そうではなく。
一体この子は誰で、そして私に何の用があって教室にカチコんできたのだろうか。
「二年のクリフ・グリモルだ! そう言えばわかるだろう?」
あ、先輩だったんだ。
ちっちゃいから別クラスの同級生かと思った。
「えーっと、わかるだろうって言われても……」
「なに? まさか本当に僕のことを知らないのか? この貴族学院において最も高貴で優秀な天才魔術師、『賢者の卵』たるこの僕を!」
「はい! ご存じないです!」
「おい、そんな自身満々に言うんじゃない! ちょっとは悪びれろ!」
「すいませんでした」
なんかよくわからないけど、とりあえず謝っておいた。
目の前の少年……いや、先輩らしいお人は自己申告によれば有名人らしい。
私はあいにくこのだだっ広い校舎につい最近まで翻弄されていたから、生徒の中で誰々が有名で〜、という噂を聞く余裕がなかったのだ。
私、友達いないしね!
「くっ……! お前、やっぱり僕のことを舐めているだろ!」
「舐めてはないよ? ちっちゃいとは思うけど」
「身長を
「あ、ごめんなさい、つい。そうだよね、見た目でどうこう言うのは失礼ってロキシーも言ってたし!」
「お前もうわざとやってるだろ」
グリモル先輩は眉間にどんどんと青筋を浮き上がらせていく。
お、怒ってる……。
いや、これでも私なりに誠実に応対したつもりなんだよ? ただちょっと心の声が漏れ出ちゃっただけで。
「いいだろう! この際どちらがこの学院一の魔術師か、実力で僕達の上下をはっきりさせようじゃないか!」
「……と言いますと?」
「決闘だ!!」
「貴族ってもしかして、私が思ってた数倍野蛮……?」
舐められたと思ったらとりあえず肉体言語でボコしてわからせるのが上流階級の嗜みである。
ちなみに私はそれを今後とも嫌というほど味わうのだが、この時は知る由もなかったのであった。
「決闘かぁ……」
「なんだ、怖気付くのか!? 威勢が良いのは口だけか!!」
まぁそんな未来のことはつゆ知らず。
この時の私はひたすらに渋い顔をするのみである。
「いやぁ、なんというか。
お貴族様との決闘は面倒くさいことになるから嫌なんですよね……」
「面倒なこと、だと? 僕が面倒くさい奴だって言うのか!」
「いや、そうじゃなくて。
前にそこの中級貴族のお坊ちゃんと決闘になった時、取り巻きに背中から撃たれて集団で殴られちゃって……ちょっとトラウマなんだよね。
それに結構な大事に発展しちゃったし、もう同じことは繰り返したくないなぁ、って」
「背後から撃たれて……? それも集団でだと……?」
グリモル先輩は私がチラリと向けた視線の先にいる貴族くんにバッと勢いよく振り返り、これまたズンズンと詰め寄っていく。
私が困り果てているのを嘲笑っていた彼は、いきなりの飛び火に狼狽したご様子。
だがその彼の
「ち、違うんですグリモル様! これには深い訳が……!」
「黙れ! お前達、そんな卑怯な真似をよりにもよって決闘でしたのか!
恥を知れ! ミリス貴族の風上にも置けないぞ!!」
「うぐっ……」
うわ、すごいなぁ。
私も結構彼らとはバチバチにやり合うっちゃやり合うけど、あれほど強気には出られない。
貴族くんが敬語使ってるから、やっぱりグリモル先輩がかなり家格が上なんだろう。
それでも自分の中の正しいと思うことをあそこまで堂々と口にできるというのは一種の才能なのではないだろうか。
ここまで彼の言動を見てた私には、朧げながらグリモル先輩の為人が見えてきた気がした。
彼はどうやら嫌がらせをしてくるあの厄介貴族共とはちょっと趣きが違うらしい。
なんというか、彼の姿勢からは揺るぎない一本の芯のようなものが窺えるのだ。
だからだろうか。
彼の言う「正論」には確かな説得力があった。
目の前の少年は私がこの学院に来る前に想像していたような、立派な貴族の子息だったのだ。
そうなると、私の中ではムクムクと別の感情が湧き上がってくる。
最近の私は飢えていた。
信頼できる相手との術比べ。
腕の立つ魔術師との戦いを通しての魔道の洗練。
私は久しぶりの対戦相手に内心で舌舐めずりをする。
彼ならばあの貴族達とは違って卑怯な手段は取らないだろう。
それに自分で天才魔術師と言うぐらいだ。
ミリシオン育ちの魔術の真髄、実戦で学べるまたとない絶好の機会!
正直、ウズウズして仕方がない!
「グリモル先輩、グリモル先輩! ふふふ、いいでしょう! あなたの決闘の申し入れ、このノア・グレイラットが受領します!」
「えっ? そ、そうか。でも大丈夫なのか? 君、こいつらに酷い目に遭わされたんだろう?」
「いえ、そういうのもうどうでもいいんで。
それよりほら、早く戦いに行きましょ! さぁさぁさぁいざ校庭へれっごー!!」
「いやちょ、待っ、襟を掴むな引っ張るなぅわわわぁ〜〜!!!」
「グ、グリモル様ぁ〜!!」
そうしてグリモル先輩は私に引きずられて校庭へと猛スピードで連行されて行くのだった。