ルーデウスの双子の姉 - 弟に勝てなさすぎるので本気出す -   作:抹茶れもん

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高評価ありがとうございます!
感想・批評等もドシドシ送っていただけると私のモチベーションも鰻登りし、いずれは登竜門をくぐり抜けて投稿ペースが早まることでしょう。
これからもどうぞ、よろしくお願い致します!


第二話 「ワガママ娘のノア」

 ロキシーが我が家の家庭教師になって、そろそろ4ヶ月が経つ。

 彼女の弟子であるルディはすでに中級までの魔術は全て使えるようになっていた。

 

 私は以前と変わらず、ルディが魔術を使うところをただ見ていた。

 中級の魔術はうちの2階をふっ飛ばしたという経歴からわかる通り、初級とは段違いに派手なものだった。

 その迫力は私にとって初めての体験で、私の魔術に対する印象をまた一つ大きく塗り替えた。

 

 ロキシーが来てから、ルディは前よりもよく笑うようになった気がする。

 ロキシーから魔術を学び、さらにお父さんからは剣術を学ぶ。

 ルディの毎日は充実しているのだろう。

 

 私にとってもそれは嬉しいことだ。

 弟の笑顔を見て嬉しくならない姉なんていないからね。

 だがしかし、そんな充実した日々が続く中、私は密かに不満が溜まっていた。

 

「ね、ルディ! いっしょに本よもうよ! ペルギウスのやつ!」

「あー、すみません姉さま。

 今からロキシーと魔術の授業がありますので……」

「そっかー。じゃー午後からね!」

「えっと、午後は父さまから剣術を教わる予定でして」

「じゃあ、それがおわってから!」

「その……魔術の座学が入ってまして……」

「……」

 

 そう、不満とは他でもない。

 ルディが構ってくれないのだ。

 もちろん、ルディの特訓を見ているというのも好きだ。

 けど、最近はもっと一緒に何かに取り組みたいと思うようになってきた。

 だからこそ、あまりルディに相手にされない現状にはそこはかとなく不満が募っている。

 

「そ、そっか。あのね、えっと……がんばってね、ルディ」

「はい、もちろんです。

 ……その、埋め合わせはいつか必ずしますので、あんまり落ち込まないでください、姉さま」

 

 どうやら慰められてしまったようだ。

 そんなに悲しそうな顔してたんだろうか。

 きっとしてたんだろうなぁ。

 グレイラット家では私の泣き虫には定評があった。

 

「うめあわせって、なあに?」

「今度また遊びましょう、ってことです」

「ほんと!? じゃあ明日ね! 明日!」

「なら、明日の午後、剣術の訓練が終わったら一緒に本を読みましょう」

「わーい、やったぁ! やくそくだからね!」

「はい、約束です!」

 

 実際はそれほど邪険にされていたわけではない。

 せいぜい1日か2日遊んでもらえなかった程度だっただろう。

 だが、子供にとっての1日とは長いもので、ルディからしてみれば私はワガママなかまってちゃんに見えただろう。

 それでも私はルディが約束をすれば絶対守ってくれることを知っていたので、その日はウキウキ気分でルディの授業について回った。

 

 そして事件は約束をした次の日に起こった。

 午前のロキシー講座を傍聴した後、私はルディの剣術の練習が終わるまでお母さんの手伝いをしていて、それからしばらくして訓練が終わったらしいお父さんがやってきた。

 

「おっ、母さんの手伝いしてるのか〜! 偉いぞノア〜!」

「でしょー! それより、ルディのとっくんおわったの?」

「おう、今日は早めにな。

 自分の部屋で休んでると思うぞ」

「わかった!」

「あっ、おいノア!?」

 

 訓練が終わった。

 そのことを聞いた私は一も二もなく走り出し、ルディの部屋への突撃を敢行。

 昨日から待ちに待っていたのだ。

 体当たりするかのようにバーンッと扉を押し開けて部屋に躍り出た。

 

「ルディー! やくそくだよ! 本よもー!」

「……」

「ルディー?」

「すぴー……」

「寝てる……」

 

 お父さんの言っていた通り、ルディは部屋にいた。

 しかし、立派な鼻提灯をこさえながら爆睡していたのだ。

 

 冷静に振り返ってみればここ数日のルディはかなり疲れが溜まっていた気がする。

 1日の大半は自分を高めるための訓練をしていたし、その上さらに自主的に魔力を使い切るような特訓も毎日行っていた。

 土魔術で精巧な人形を作ったり、火魔術を精密にコントロールしたり、複合魔術とやらの練習だったりである。

 

 その一環で魔力をうっかり使いすぎ、珍しく魔力切れを起こしていても不思議ではなかった。

 ルディの魔力総量は、最近では特に自身でも把握しきれないほど増えており、調整をミスってしまったのだろう。

 実にささやかな失敗であり、それも翌日の訓練に支障が出るレベルではなかった。

 ただちょっと疲れが溜まって眠ってしまっただけなのだ。

 

 だが、道理もわからぬ子供であった私は、ルディが自分との約束をすっぽかしてお昼寝をしてしまったと勘違いした。

 さて、泣き虫で、ちょっとだけ独占欲が強くなってきた3歳の幼女が、この状況になってどうするか。

 答えは一つ。

 

「びええええん!! ルディがやくそくやぶったぁー!!!」

「にょわぁ!?」

「ふええええん!!!」

 

 大泣きである。

 睡眠中のルディを叩き起こすレベルで大泣きである。

 あぁ、思い返せばあれが私にとっての1番の黒歴史かもしれない。

 

 その後は慌てた両親が仲人となって私をあやしにあやして泣き止ませ、ルディも私に平謝りして本を読み聞かせてくれたことで、なんとか私の機嫌も治まり、とにかくその場は一時事なきを得た。

 

 しかし、それは私の幼心に決して小さくはない蟠りを残してしまった。

 自分はもしかして、ルディにとっては二の次で、軽くみられているのではないか。

 そこまで堅苦しい考えではなかったが、そういった方向性の不満が表出してきたのは間違いなくその日が境だったと思う。

 

---

 

「では、本日からは上級の魔術を指導していきます」

「はい!」

「……」

「上級になると以前教えた混合魔術が本格的に運用されていきます。

 ルディは自主練で既に一定のレベルで達しているようですが、これからはそれらを実践レベルで使えるように——」

 

 そんな家庭においての些細な出来事があったところで、当然1日は着々と進んでいき、魔術の授業も新しくステップアップする。

 ルディはワクワクしているようだが、私は少し憮然とした様子だったろう。

 それはなぜか。

 

「では、おさらいです。

 ルディ。『濃霧(ディープミスト)』を発生させるにはどうすれば良いでしょうか」

「『水滝(ウォーターフォール)』『地熱(ヒートアイランド)』『氷結領域』(アイシクルフィールド)を順番に使います」

「……」

「よろしい。では、その霧を晴らすには?」

「もう一度『地熱(ヒートアイランド)』を使って地面を温めます!」

「……」

「その通りです。よく勉強していますね」

「……」

「……あの、どうかしましたか? 姉さま」

 

 ルディとロキシーの話についていけなくなりつつあったからだ。

 今までは「わー、きれーい」とぽやぽや見ているだけだったが、私もルディに比べれば出来損ないとはいえ成長する。

 

 となれば、より深く魔術に関して知りたくなるというもの。

 しかし、私が理解できるような初歩の初歩はとっくのとうに過ぎ去っており、わからない言葉の応酬にモヤモヤが積もっていくのは必定である。

 

 それに加えて以前の私の大泣き事件を境に、ルディの目をこれまでよりも引こうという気持ちが強くなっていた。

 だからこそ、ルディが私の知らない事でロキシーと盛り上がっているのを見ると不安やら何やらで不機嫌になる。

 

「……わたしも、まじゅつやりたい!」

「えっ?」

「ルディだけずるいもん! わたしもやるんだからー!」

「わ、お、落ち着いてくださいノア!」

 

 ぎゃいぎゃいと観覧席である椅子の上で暴れ出した私。

 そうだ、ルディが授業で構ってくれないなら、私も同じ授業を受けて一緒にいればいいじゃない。

 そんな風に考えたのだろう。

 子供らしいワガママである。

 

 無論、ロキシーとてタダで魔術を教えているわけではない。

 家庭教師なのだから、当然お給金をもらい、仕事として教練を施しているのだ。

 つまり、少なくないお金がかかっている以上、両親からの許可が必要となる。

 

「お父さん! お母さん! わたしもまじゅつやりたい!」

「あらまぁ、聞いてあなた! やっぱりノアも魔術に興味があるんだわ!」

「うーん、しかしなぁ……」

 

 反応はまちまちであった。

 お母さんはけっこう乗り気。

 反対に、お父さんは微妙な表情で悩んでいる様子だ。

 

 それもそうだろう。

 まだ呂律も回っておらず、ワガママ放題の未だ3歳である娘。

 ルディはしっかりしているし、長男であるからこそあっさり許可が出た。

 言わば特例なのだ。

 

 それに比べて私ときたら、呂律もうまく回っておらず、ワガママも多い。

 魔術の訓練は外で行うので、万が一日差しを遮るために私に着せているフード付き子供用ローブが風や衝撃で吹き飛ばされたら大変である。

 それに父親とは娘に甘く、過保護な生き物。

 故に、どうしても抵抗感の方が勝ってしまうというわけだ。

 

 しかし、上目遣いでおねだりしてくる娘のワガママは聞けるだけ聞きたいとも思うのが男親の性。

 そのため、お父さんは授業を受けるのを許可する代わりに、ある条件を提示した。

 

「魔術を習うのはいい。

 だが、ノアはまだ文字の読み書きができていない。

 このまますぐに練習したとして、初級の魔術もできないのがオチだろう。

 だから、まずは文字を勉強するんだ。

 それができて、なおかつ途中で投げ出さないと約束できるならば許可しよう。

 できるか?」

「うん! できる!」

「そうか。なら、父さんも応援しよう。頑張りなさい!」

「はーい!」

 

 こうして、私は魔術を習うための第一歩を踏み出したわけだ。

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