ルーデウスの双子の姉 - 弟に勝てなさすぎるので本気出す -   作:抹茶れもん

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その上感想までもいただけてしまい、私としては天にも昇るような心地でいます。
これからも感想・評価等をいただければ、私は第一宇宙速度を超えて地球外まで昇っていく心地になることでしょう。
というわけで、今回もよろしくお願い致します!


第三話 「ロキシー先生のパーフェクト魔術講座」

 私が文字を覚えるのにかかった時間は、およそ半年だった。

 

 最初の方はかなり難儀したものだが、ロキシーがルディの指導が終わって手が空いた時に教えてくれたので助かった。

 やっぱり魔術師は長い詠唱を覚える都合上、文法やら何やらには理解が深いのだろうか。

 要点を絞り、阿呆な私にもわかるように噛み砕いて、何度も熱心に教えてくれた。

 特に詠唱で使うような単語などを直々に教えて貰えたのもかなりお得だったと思う。

 おかげであの人には頭が上がらなくなってしまったよ。

 ルディが慕い、懐くのも大いに頷けるというものだ。

 

 そうして、私たちが4歳になった時くらいから私に対する魔術の授業が開始された。

 ちなみにルディは既に上級魔術のほとんどを会得しているらしい。

 出だしにはだいぶ遅れてしまったが、それでも私はやっとルディと同じ土俵に立てたような気分になり、お父さんからの認可が降りた時は舞い上がるような心地であった。

 

「さて、本日からはノアも一緒に魔術を学んでいきましょう」

「おめでとうございます、姉さま!」

「えへへー! がんばるよ!」

 

 ルディとロキシーの2人に褒められると、どうにも気恥ずかしくなってしまう。

 でも悪い気は全然しないので、私は少し頬を染めてはにかんだ。

 

「ルディとノアでは少々進度が違いますが、ノアはとてもやる気があるようですから、すぐに上達できるでしょう」

「ほんと!?」

「はい。ですがそれは真面目に頑張ったら、の話です。

 これからは厳しくいくときもありますし、どこかで行き詰まってしまう所も出てくるでしょう。

 そんな時は遠慮せずにわたしに質問したり、あるいはルディの真似をするなどして、自分なりに一歩ずつ進んでいってくださいね」

「わかった……いや、わかりました! ロキシー先生!」

「よろしい。では早速授業の方に移りましょうか」

 

 そうして、私は人生で初めて自分で魔術を使う特訓を始めた。

 といっても、私はまだ初級魔術の1つも使えないペーペーの魔術師見習いの、さらに見習いみたいなものである。

 そのことはロキシーも承知しているので、最初は手取り足取り教えることにしているそうだ。

 

 最もルディは最初から初級を使えたから、その才能の差みたいなものを感じてしまって、ちょっと気後れすること所はあったけれど。

 しかし、それ以上にルディと同じことができるようになるんだ、というワクワク感の方が圧倒的に勝っており、そんなことはすぐに水に流した。

 

「では、まず最初は『水弾(ウォーターボール)』からです。

 ノア。この魔術は一体どのようなものだと思いますか?」

「ルディがやってたやつ!

 じゃなくて、えーと、手の平からお水を出して、木にバーンって撃つやつ!」

「まぁ、撃つ対象は木だけじゃないんですけどね……。

 とはいえ、概ね正解と言っていいでしょう」

「やったぁ! ふふん、魔術教本に書いてあったからね! 知ってたんだ!」

 

 この半年間、私の読み書きの教材はもっぱら魔術教本だったのだ。

 特に最初の方に記されている初級魔術の項目はよく頭に入っていた。

 まぁ、若干うろ覚えだったんだけどね。

 

「では、詠唱の方は覚えていますか?」

「うぅーん……、覚えてないっ!」

「ははは……そうですよねー……。

 あぁ、そういえば、最初はルディも覚えていませんでしたね」

 

 私たちとは少し離れたところで土と水の魔術を組み合わせて、泥玉を量産していたルディが、バツの悪そうな顔で苦笑した。

 

「うっ、まぁそれは、僕はいつも無詠唱でやっていましたから……」

「ふふ、では今はどうですか?

 ルディ。わたしの代わりに、ぜひノアに教えてあげてください」

「えっ!? は、はい、わかりました……」

 

 ルディは少し焦った様子で唸り、「確かこれだったはず」という曖昧な表情で私に向き直る。

 きっと、私と同じくうろ覚えだったのだろう。

 ルディは基本ずっと無詠唱で魔術を行使するため、詠唱を覚える作業はことごとくすっ飛ばしていたのだから。

 私といえば、ルディなら完璧に回答してくれるだろうと、根拠のない信頼で瞳をキラキラさせていたのだけど。

 

「えーっと、確か……。

〝汝の求める所に大いなる水の加護あらん、清涼なるせせらぎの流れを今ここに〟

 でしたっけ?」

「正解です。覚えていたんですね」

「いやー、ハハハ」

「ルディすごいねー!」

 

 ルディは後頭部をポリポリと掻きながら笑っている。

 その表情から、「危ねぇー! 間違ってなくてよかったー!」という内心がありありと伺える。

 私といえば、ルディはやっぱりすごいなー、と馬鹿みたいに褒め称えていたのだけど。

 

「無詠唱で魔術が使えるといっても、詠唱を覚えておくのは損にはなりませんよ。

 普通の魔術師ならば基本は詠唱をするものです。

 ですので、相手の詠唱からどんな魔術が繰り出されるのかは、自ずと詠唱から導かなければならなくなります。

 その際、詠唱を覚えているかいないかは、大きなアドバンテージを生むでしょう。

 詠唱を覚える必要性はわかりましたか?」

「「はい!」」

「よろしい。では、今度はノアに詠唱をしてもらいます。

 実際に魔術を発動してみましょうか」

「はいっ!」

 

 私はロキシーに弾むような返事を返しながら手を前方に突き出す。

 物事を効率よく習得するには、先達の真似をするのが1番手っ取り早い。

 私の場合はルディだった。

 見よう見まねで目を瞑りながら、先ほど聞いた『水弾(ウォーターボール)』の詠唱を思い浮かべ、復唱する。

 

「〝汝の求める所に大いなる水の加護あらん!

  清涼なるせせらぎの流れを今ここに!〟

 『水弾(ウォーターボール)』!!」

 

 そう唱えた瞬間、つま先からなんとも言えないゾクゾクとする感覚がした。

 それは私の身体の芯に熱湯を注いだような熱さをもたらし、足先から太ももへ登っていく

 次に太ももから胴体へ。

 胴体から脳天へ。

 そして最後に、脳から一直線に腕を通過し、手掌の一点に収束する。

 

 熱量はそのまま体外に飛び出し、丸みを帯び、カタチを持ち、透き通った拳大の水球を生み出した。

 

 透明な雫から除く世界は、私にとって未知のもので。

 初めての魔術、初めての感覚、初めての景色に、息を呑んで見惚れていた。

 そして、雫はしばらくその場でふよふよと浮いた後、ぱしゃんと弾けて庭の地面に染み込んだ。

 

「あっ」

「ふむ、失敗ですね。

 ですが生成はかなりスムーズでしたよ」

「う〜〜!」

 

 自分としてはかなり上手くいった手応えがあったので、失敗したということにやや憮然とした気持ちになる。

 しかし、結果は明瞭。

 ダダをこねているだけでは何も始まらないと、この半年間の勉強生活で学習したのだ。

 私はやればできる子なのである。

 

「どうすれば上手くできるようになるの?」

「そうですね……。

 先ほどのノアはおそらく魔力の操作をしていませんでした。

 詠唱によって発動した術式に、ただ魔力が流れ込んでいるだけだったのでしょう。

 だから生成した段階で術が霧散してしまったんです」

「詠唱するだけじゃダメなの?」

「はい。魔術を射出するには、自分の魔力を掌握し、自らの意思で魔力に意味を持たせるように操作できなければなりません」

 

 ただ言葉を唱えるだけでは魔術は完璧には発動しない。

 本当にそれだけでできるのなら、今頃世の中は魔術師で溢れかえっていることだろう。

 

「ノア。さっき魔術を使ってみて、身体に何か熱いものが流れる感覚はありませんでしたか?」

「あったよ! なんか、ブワーってなった!」

「それが魔力です。

 この魔力をしっかりと知覚できることが魔術師にとっての最低条件。

 つまり、ちゃんと魔力を感じ取れていたノアには、魔術師としての才能がある程度備わっていることが保証されました」

「やった! じゃあ、私もルディみたいになれるんだね!」

「うーん……、ルディレベルになるのは難しいと思いますが……。

 弛まず努力をし続けるなら、もしかすれば追いつけるかもしれませんね」

「ほんと!?」

 

 ロキシーは、きっとできないと思っていたのだろう。

 それも当然だ。

 私とルディの間には、決して埋めることができない程の才能の差がある。

 だから、これは彼女なりに私がやる気を無くさないように言葉を選んだ結果の方便だ。

 それでも、私にとってはその言葉が何よりも頼れるもので、希望を指し示す指針に思えた。

 

「それよりも、次の目標は魔力を操作できるようになることです。

 そのために、まずは魔力を自分の身体の一部のように感じるよう慣らしていきます。

 とりあえず、『水弾』をできる限り使って、魔力とはどんなものかということを骨身に刻む訓練をしていきます」

「わかりました! がんばります!」

 

 その日の午前にあった授業では、結局『水弾』を飛ばすことはできなかった。

 けれど、私にとっては忘れることのできない輝かしい記憶として脳裏に焼き付いているのだった。

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