ルーデウスの双子の姉 - 弟に勝てなさすぎるので本気出す - 作:抹茶れもん
皆さま鋭過ぎて主人公の呪い詳細説明してないのに、ほぼほぼ割り出しちゃってて笑いました。
さすがやで……。
今後も感想の刃で私を突き刺して昇天させてあげてください。
マゾなので泣いて喜びます。
それでは、今回もよろしくお願い致します!
私の呪いが発覚し、ヒトガミと会った次の日。
私はいつもと同じように、元気よく起床し、部屋を飛び出しておはようの挨拶を家族に告げていく。
お父さんたちはそんな私を見て、昨日はあれほど落ち込んでいたのに、一体どういう風の吹き回しだろうかと不思議に思ったはずだ。
それでも、元気を取り戻してくれて良かったと、誰もが口を揃えてそう安堵した。
「おはよー! ルディ!」
「えっ!? あぁ、おはようございます。
あの、昨日の件ですが……」
「あー、呪いの話? いいよもう吹っ切れたから。
今後はそれ込みでまた新しい戦術考えればいいだけだしね!」
1番唖然としていたのは珍しくルディだった。
そういう表情はあまり見ることはないが、それでも優秀な弟の年相応な顔を私は好いていた。
束の間のお姉ちゃん気分を存分に味わえるからね。
「だから、これからもよろしくね! ルディ!」
「……姉さまは強いですね。
わかりました、僕にできることは何でも言ってください!」
「おっ、今何でもって言ったね?」
「何でもとは言ってないです」
軽口をたたき合いながら、くすくすと笑う。
うん、呪いがどうしたもんだってのだ。
私が呪子だからといって、今までの関係が崩れ去るわけではない。
みんな私の大切な家族だ。
この家の暖かさは、何物にも変えることのできないだろう。
私はニマニマと、この空気感を噛み締めた。
---
とりあえず、私はこの「人間に勝てなくなる呪い」とやらの検証が最優先だと判断した。
まぁ100発撃って1発も当たらなかった上に、鑑定でも結果が出たんだから検証なんて十分だろうけれど、世の中にはもしもということがあるものだ。
もしかしたら呪いの出力を超えるような魔術とかならいけるかもしれない。
まぁそれは今の私じゃ無理だし、他の方法を考えるけど。
まずは魔術の改良からだ。
より速く、より確実に当たる魔術にすれば、実はすんなり当たるということも、あり得ると言えばあり得る。
というわけで、私はまたもやロキシーを巻き込んで研究に取り組むことになった。
私が今回目をつけたのは、魔道具と
きっかけとしては呪いの鑑定に来た人が持ってきた魔道具が気になり、ロキシーに聞いたこと。
曰く、魔道具と魔力付与品は全くの別物であるとか。
魔道具は道具内に魔法陣が組み込まれたもので、使用者がそれに魔力を込めるだけで何度でも使える。
一方、魔力付与品は迷宮などで物品に魔力が注がれてできたもので、回数制限はあるが魔力を込めずに使うことができるそうだ。
余談だが、鑑定に使われた魔道具は、ずっと後に図書迷宮で製法が記されたものを見たが、どうやら第一次人魔大戦時に識別眼という魔眼を持った魔族の目をくり抜いて加工したものらしい。
とんでもねぇ代物だったよ。
ともかく、私はその魔力を事前に込めておくという理論を魔術に応用できる気がすると思ったのだ。
魔術を腕にでも事前に装填しておき、『
腕を魔道具や魔力付与品における物品に見立てるのだ。
そのための詠唱と、理論を組み立てなければならない。
しかし、まだすぐにはその理論とやらのとっかかりを掴めないので、これは他の手を探りながら並行して詰めていくとしよう。
次に新しい魔術の修得。
それもロキシーからだけではない。
お母さんからも習おうと思うのだ。
お母さんは村の診療所で働いていて、治癒や解毒に関してはロキシー以上の腕がある。
また、ミリス神聖国が独占しているという魔術も、ほんの触りくらいなら知っているようなので、それを教えてもらおうと思っている。
何らかのヒントになる予感がするのだ。
そして、最後に実践訓練。
しかも今までのような純粋な魔術の撃ち合いではなく、もっと工夫した戦い方を身につけるのだ。
もしかしたらその中で、呪いを掻い潜るような戦い方が見つかる可能性があるからね。
これらの方法を試すのは、呪いに対してある仮説を立てたからだ。
それは即ち、「勝つ以外の運命がなければ、負けることはないのでは?」というもの。
負ける可能性の未来を一つずつ潰していき、勝つ以外の道筋を無くす。
そうすれば勝てるんじゃないか?と思うのだ。
もっとも、これもほぼ不可能みたいなものだと思う。
少なくとも、今は無理だ。
しかし、地道に強さを突き詰めていけばチャンスはある。
もっと良い方法はあるだろうが、今の私にはこのくらいしか思いつかない。
だから、一歩ずつでも、やれることをやっていこう。
---
「それでは、双方位置について」
いつものごとく実践訓練。
ルディも私も腕を構え、魔術を行使する。
が、今回の私は一味違うのだ!
「ふっ、ルディ! 果たして君はこの防御を突破できるかな!?」
「え? それはどういう」
「初めっ!」
ルディは私の言葉で少し戸惑ったようだが、号令の瞬間には寸分の狂いもなく魔術を練り始める。
狙いを定め、私を撃ち抜こうとし……。
「これでどうだぁ!」
「な!? そ、それは……!」
私は一瞬で構えを解き、長い袖のローブからあるものを取り出し、目の前に掲げる。
その、あるものとは!
「ま、魔術教本じゃないですか!」
「ふははは! これで攻撃できまいー!」
そう! 私が盾に構えたのはご存知魔術教本である。
私たちがここまで魔術を使えるようになったのも、魔術教本さんのおかげじゃないか!ということに気づき、ルディもこれなら攻撃できまいと思ったのだ。
なんせ本は貴重品。
濡れたりしたら取り返しがつかない。
本好きのルディならなおさらだ。
だからこそ絶対的な隙ができ、私はその無防備な姿に全力全速の『水弾』を叩き込むのだ!
「もらったぁ!!」
「ひ、卑怯ものー!」
「勝てばよかろうなのだぁー! 『射撃』!!」
咄嗟に『水弾』を取りやめたルディに、私の放った『水弾』が迫り、そして当然のようにあらぬ方向へと逸れていく。
だがそんなことは折り込み済だ。
非常に業腹ではあるが折り込み済みなのだ。
この魔術教本を盾に構えている間はルディは攻撃できず、私が一方的に攻撃できる。
この状況を作り出し、至近距離でどう曲がろうと外れることがないように魔術を放つ。
これはそのための作戦なのだ。
「まだまだー!」
「くっ!」
私は魔術をルディの足元や移動先を狙って撃つ。
ルディに当てたら勝ちなのだから、ルディを狙わなければ狙い通りに飛んでいくはずである。
その予測通り『水弾』はルディの移動先を潰し、牽制の役割を見事に果たす。
よし! いい感じだ、このまま……!
「ていっ」
「んあッ!?」
と、思ってのこのこと近づいた私を、ルディはきれいに腕を掴んで足を払い、宙で一回転させて背負い投げる。
そうだ、忘れてた。
ルディは剣術の訓練も受けているんだった。
そりゃあ、ド素人の貧弱幼女1人ブン投げるなんて朝飯前だ。
「くぅ〜! いいとこまでいった気がするんだけどぉ……!」
「……ねぇ、姉さま」
「……ん? ひぅっ!?」
「何か、言うこと、ありま、せんかねぇ?」
背中を押さえてうずくまる私に、怪しく目を光らせるルディが、それはもうにっこりと笑いかけてくる。
見るからにお怒りであった。
「ご、ごめんなさい……」
私は渾身の土下座で平伏した。
---
「〝母なる慈愛の女神よ、彼の者の傷を塞ぎ、健やかなる体を取り戻さん〟『エクスヒーリング』」
治癒魔術特有の緑の輝きが診療所内を明るく照らす。
今、私はお母さんの指導の下、治癒魔術を習っている。
形になってきたということで、ちょうど骨折して駆け込んできた村の木こりのお兄さんの足を治療していたところだ。
実際に治癒魔術を赤の他人に使うというのは、なかなかにプレッシャーのかかる作業で、それが終わった今は安堵と達成感が感じられた。
「うん、いい感じね。
すごいわ、ノア! もう中級治癒魔術を覚えちゃうなんて!」
「えへへー、大袈裟だよお母さん。
私なんてまだまだなんだから」
「そんなことないわよー、ノアは天才だわ!」
「んー」
本当に天才ならここまで手こずってないんだよなぁ。
実際、ルディには何やっても敵わないわけなんだし。
でも褒められるのは普通に嬉しいので、ここは得意な気持ちになっておこう。
えへん!
「ね、お母さん! 今度は上級の治癒を教えてよ!
あと、神撃も使えるんでしょ? それも教えて!」
「うーん、神撃は初級までなら教えてあげられるわ。
でも治癒の上級は無理ね」
お母さんはそう言って、申し訳なさそうに微笑みながら、私の前髪をかき上げた。
「えっ、なんで!?」
「上級以上は私、覚えてないの……だから教えてあげられないわ。
ごめんなさいね、ノア。お母さん頼りなくって」
「そんなことないよ! 十分だって!」
良い子に育ったわね、と言いながらお母さんは頭を優しく、くしゃりと撫でた。
「あーあ、こんなことならもっと実家で魔術の勉強をしておくんだったわ」
「お母さんの実家? あっ、前言ってた……確かミリシオンってとこだっけ」
「そうよ。あそこなら結界魔術とか、珍しい魔術がいっぱい習えたのに、今思うと本当に惜しいことをしたわね」
「結界魔術!」
「あら、結界に興味があるの?」
「うん! どんなことができるの!?」
お母さんは、自分の知る範囲内で結界魔術について教えてくれた。
特に私が興味を引かれたのは、対物理結界と対魔術結界である。
「
うん、結構良さげだ。
正直今すぐ試したいところだが、習えないのならそりゃ仕方がない。
今はまだ我慢の時だ。
「ねぇお母さん、ミリスってどんな所なの?」
「そうねぇ、綺麗な所よ。でも、それと同じくらい息苦しい所。
私には、ちょっと合わなかったかしら。
あんまり良い思い出はないし、結局家出みたいになっちゃったしね」
「そうなんだ」
「でも、今思えばもっと家族と話しておくんだったわ。
きっとお互い意固地になってたのね。
いつか機会があったら、謝って、できるなら仲直りしたいかな。
きっとあの人たちも、悪い人じゃなかったもの」
「……そっか」
お母さんの目には哀愁と、後悔が漂っているように見えた。
昔を思い出しているのだろう。
私は何も言えなかった。
「ノア、ミリスに行きたいんでしょ」
「えっ!? い、いやー。あはは……。
なんで、わかったの?」
「んー、お母さんだからかな」
いきなり心の内を言い当てられて驚いた。
ルディに勝つには1秒だって無駄にしたくない私は、この村でやることが全部終わったら、そこに行きたいと思っていたのだ。
「その時はラトレイア家って所を頼りなさい。
そこが私の実家だから。きっと良くしてくれるわ」
「でもお母さん、そこの人たちと喧嘩して出てきたんでしょ? 大丈夫なの?」
「きっと大丈夫よ。お母さんを信じなさい!」
「そっか……うん、わかった!」
そうやって日々は過ぎていく。
毎日が何の成果も得られないけど、それでも自分の中に積み上がっていくものを感じていた。
そして私とルディは、5歳の誕生日を迎えるのだった。