ルーデウスの双子の姉 - 弟に勝てなさすぎるので本気出す -   作:抹茶れもん

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皆さま毎度感想ありがとうございます。
感想を見ていると新しく良いアイデアが浮かんできたりして楽しいです。
これからも皆さんの感想が私と拙作の力になっていくので、どうぞ元気玉のごとく力をちょっとだけ貸してやってください!
それでは、今回もよろしくお願い致します!


第九話 「伸び悩み」

 私とルディは5歳になった。

 5歳とは節目の年だ。

 生まれてから5年ごとに大きなお祝いをするのが、しきたりとなっているらしい。

 美味しそうな沢山の料理、飾り付けられたダイニング。

 暖炉とロウソクのほのかな灯りが、今日は特別な日だと言っているようだった。

 

「ルディ、ノア! 誕生日おめでとう!!」

「ありがとうございます! 父さま、母さま、ロキシー、リーリャ!」

「えへへー! ありがとう!!」

 

 家のみんなが揃ってお祝いを口にして、私とルディはそれに笑顔で感謝を伝える。

 それを音頭として、ささやかな宴が始まった。

 特に張り切っていたのはお父さんで、剣を呑み込んだりとかいうすごい芸を披露したりして、皆を楽しませていた。

 

 そして一通り食事が終わった後、私たちはお父さん、お母さん、それとロキシーから、誕生日のプレゼントを貰った。

 先陣を切ったのはお父さんで、ルディには剣を贈ったようだ。

 男は心に一本の剣を持ち、自分に大切な人ができた時はそれを思い出して、全力で守らなければならない、というスピーチと共に、ルディにはまだ少々大きすぎるような剣を渡した。

 スピーチの後半は剣術がどれだけ良いものかという説教に移行していったので、お母さんが「話が長い」と切り上げたが、私にはお父さんの言葉がよく心に響いた。

 私は剣とか全然使えないけれど、この心構えは大事にしていこうと思う。

 

「ノア、誕生日おめでとう。

 お前にはこれをあげよう」

「わぁ! 新しいローブだ! ありがとう、お父さん!」

「最近、お前のローブも汚れてきてしまったからなぁ。

 大事にするんだぞ」

「うん、わかった!」

 

 私が貰ったのは真っ白で、それでいて真新しいフードの付いた全身が隠れるほどに大きいローブ。

 最近は水魔術を浴びたり、土や泥で汚れたりして、若干茶色にくすんできていたので、新品の衣類が貰えるのは素直に嬉しい。

 手触りもしっかりとしていて、丈夫で良い生地だとわかる。

 それなりに値が張るものなのだろう。

 

「はい、それじゃあ次は私ね。

 誕生日おめでとう、ノア」

「ありがとう、お母さん!」

 

 お母さんがくれたのは、綺麗な意匠が施されたロケットペンダントだった。

 ボタンを押すとカチカチと音を立てて蓋が開く。

 ちょっと楽しい。

 

「ノア、それはあなたに大切なものができた時、そこにしまって、肌身離さず持っておくものなのよ」

「そうなんだ」

「ええ、それを見てあなたが将来見つける大切なものと、そのロケットをあげた私たち家族のことを、一緒に思い出してほしいの」

「うん! 大事にするね、お母さん!」

「うふふ、良い子ね〜! ノア大好き!」

「えへへー!」

 

 そして最後に、ロキシーからは片手に収まるくらいの大きさの杖を貰った。

 先端に小さな赤い結晶の付いた簡素なものだったが、不思議と手にしっくりときて、私はとても気に入った。

 

「綺麗だね!」

「それは魔石です。

 魔力を増幅してくれる効果がありますので、きっと役に立つと思います。

 本来は初級魔術が使えるようになった生徒に杖を送るのが通例なのですが、つい失念していました。

 申し訳ありません」

「いえ、ありがとうございます! 師匠!」

「ありがとう!」

 

 赤い結晶が暖炉の炎の明かりを透き通し、キラキラとした光を落とす。

 ロキシーは無邪気に喜ぶ私たちを見て嬉しそうにしつつ、どこか寂しそうに笑っていた。

 

---

 

「初めっ!」

「「ッ!」」

 

 互いに無言で魔術を放つ。

 そう、互いに無言。

 つまり、ついに私は腕に魔力を事前に貯めておき、そのおかげで『射撃(ファイエル)』の詠唱すらも省略することに成功したのだ。

 これが私だけの「無詠唱戦闘魔術理論」と言えよう。

 これにより私とルディの魔術を発動する速度は、速度だけなら私がかなり差をつけることになった。

 

 もっとも、どれだけ速度が早くても呪いのせいで命中させることはどうしてもできないようで、昨日の初お披露目の際はその隙をつかれて負けてしまった。

 今回もそれは同じようで、私の『水弾』はルディを華麗にスルーして塀の向こうに消えていく。

 

 だがしかし、これくらいは想定の内である。

 私は『射撃』と同時にもう一つ魔術を使っていた。

 風初級魔術『衝撃波(エアバースト)』である。

 それを自分に使って放ち、その場から一瞬で離脱してルディの『水弾』を間一髪で回避する。

 

「では、さらばッ!」

「ええ!? 逃げた!」

 

 ルディが流石に予想外、といったような驚きの声を上げる。

 ふっふっふ、別にこの勝負はスタート位置が決まっているだけで、逃げてはいけないというルールはないし、逃げても負けというルールなどというものもありはしないのだ!

 

 とはいえ、私の体力はルディに遠く及ばない。

 追いかけられてはすぐに追いつかれてしまうので、玄関に『泥沼(マッドドロップ)』を張っておき、足止めする。

 ルディから私の姿が見えないくらいまで遠くに逃げたら、見つからないように気をつけながらこそこそと我が家の裏口まで引き返す。

 もっとも、ルディは家の外まで追いかけては来なかったけど。

 

「リーリャ、私だよ。開けてー」

「はい、かしこまりました。ノアお嬢様」

「ありがとね」

 

 そうしたら今度は家で家事をしているリーリャの手引きで、こっそり家に入れてもらってから見つからない物陰に隠れる。

 そう、私は協力者を買収したのだ!

 お母さんに土下座し、お父さんにほっぺにキスをし、リーリャには誠心誠意頼み込んで1日限りの仲間に引き込んだのである。

 ルディには心配させたことを後でこってりしぼられた上で謝罪するという条件付きでね。

 

 ルディには、しばらく近所の猟師でお父さんと懇意にしているロールズさんのお宅に隠れているという旨をお父さん経由で知らせ、夜にとりあえず眠っている間に忍び寄ってゼロ距離『水弾』ぶっぱする作戦だ。

 正直、これで失敗したらもう私は打つ手なしだと判断するレベル。

 だから、この一戦に全てがかかっているのだ。

 

 私はリーリャからの合図に従い、ルディの寝室に忍び込む。

 むふふ、よーしぐっすり眠っておるな、我が弟よ。

 今こそ『水弾』をぶっかけて叩き起こして差し上げよう。

 眠っているルディの顔に、起きないよう細心の注意を払って手を当てて……。

 

「むにゃむにゃ……『水弾』」

「ふぁっ!?」

 

 私が魔術を発動させる前に、ルディはなんと寝ながら魔術を発動させた。

 何を言っているかわからないだろうが、私も何が起きたのかわからなかった。

 

 きっと運命さんがルディに私と訓練している夢を見せて、それで寝言と日々使ってきて体に染み付いた魔術の体感を通して、現実で私に向かって『水弾』が放たれたのだろう。

 ふざけるのもいい加減にしろと言いたい。

 

「ん……、あれ!? 姉さま!? 帰ってらして……てなんでそんなにずぶ濡れなんですか!?」

「あー、その……はぁー……。

 これでも、ダメだったかぁ……」

「あの、姉さまちょっと、説明してくださいー!?」

 

 こうして、私のできる限りの試行錯誤はあえなく全滅となったのでした。

 トホホ……。

 

---

 

「それでさー、困っちゃうんだよねぇ、この呪い。

 もう私にどうしろって感じなんだよ。

 ヒトガミはどう思う?」

「それは僕の方こそ聞きたい」

 

 ヒトガミは呆れ顔で肩をすくめた。

 どことなく疲れているようだが気にしない。

 こいつがそんな感じなのは毎度のことなので慣れたのだ。

 

「というかお前はなんで事あるごとに僕の所に来るんだよ。

 ここは子どもの相談所じゃないんだぞ」

「友達の家に遊びに来てるんだよ」

「誰と誰が友達だって? 笑わせないでくれ」

 

 しっしっ、と手を振って邪険に扱うヒトガミ。

 こいつとは初対面のあの日からたびたび夢でお邪魔して、その日あった事を私が勝手におしゃべりしては帰っていくということを続けていた。

 

 最初の方はヒトガミも私が来る度に実力行使で魔術を使ったり素手で襲ってきたりしていたのだが、最近は無駄だと悟ったのか諦めムードなのだ。

 一度「僕は君の家族を一方的に殺せるんだよ」と言ってきたことがあったのだが、私はなぜか大丈夫だろうという確信があったので、そっかという一言で済ませるしかなかった。

 次に来た時は初対面の時並みにイラついていたので、おそらく失敗したのだろう。

 私の勘って信用できるんだな、と思った瞬間である。

 

 まぁそんなこんなで今の私たちの関係としては、私がヒトガミの所に勝手に愚痴りに来て、ヒトガミがそれに対して中指を立てるような形になっていた。

 双方初対面の印象が最悪だったので遠慮というものがなく、気づいたら割と気の置けない間柄になっていた。

 そう思っているのは私だけで、ヒトガミは違うと思うけど。

 今更細かいことは気にしないのだ。

 

 以前の私は結構溜め込んでたのか、ここで鬱憤をぶち撒けることによって最近はかなり気が楽だ。

 相手に気を遣うということが一切ないので、最近のマイブームがここでのストレス解消になりつつある。

 

「新しい魔術とかってどこで習えると思う?」

「それは君に必要なことかい?」

「そりゃあそうだよ」

「じゃあ絶対に教えないことにするよ。

 せいぜい苦しんで足掻いてくれ、ハハハハ!」

「ま、最初から期待してないからいいや」

「……死にたいのかい?」

「やってみれば?」

「チッ……」

 

 こういう軽妙かつブラックな話は家族とは口が裂けてもできないので、なんとなく楽しんでいる。

 なんかこいつと話しているとルディとは違って、出来の悪い弟と何の気なしに話しているような気分になって、ついつい会話が弾んでしまうのだ。

 

「今んとこ考えてるのは、ロキシーが薦めてたラノア魔法大学か、お母さんの地元のミリシオンってとこかな。

 どっちも身になりそうだけど、私としてはミリシオンの方が惹かれるものがあるんだよね」

「知らないよ、そんなこと」

「だってほら、ルディならきっとすぐに全属性で帝級まで行っちゃうと思うし、そうなるとやっぱ希少価値が高い魔術の方が良いかなって思うんだ」

「勝手にすればいいだろ、僕に人生相談なんてつまらないことさせないでくれ」

「ん、じゃあ、そろそろ私帰るね。また今度」

「旅先で盗賊にでも遭って死んでしまえ」

 

 まぁ結局、第一印象が最悪だっただけで、なんだかんだヒトガミと駄弁るのは楽しかったりする。

 こういう一期一会の縁で繋がる奇妙な人間関係が、友達というものなんだろう。

 

---

 

 で、ここまで来るとさすがの私も気がつくわけだ。

 最近伸び悩んでいるなぁ、と。

 このままではルディとの差は広がっていくばかりなので、そろそろ新しいとっかかりが欲しい所だ。

 

 そんな折、とうとうロキシーから重大な発表がもたらされる。

 それは、翌日に私とルディの卒業試験を行う、というお知らせだった。

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