彼らはウマ娘、ライスシャワーに出会い、彼女のトレーナーになるべく奔走する。
一話 鉄華団
「今日からトレセン学園のトレーナーになります、オルガ・イツカです。宜しくお願いします」
「三日月・オーガス。宜しくお願いします…これで良いの?オルガ」
「歓迎!ようこそトレセン学園へ!君達にはここ中央トレセン学園所属のトレーナーとして、ウマ娘達のトレーニングを指導してもらいたい!」
理事長に案内され、俺とミカは応接室へと通された。そこには俺達より年上の女性が居た。
「始めまして、理事長秘書の駿川たづなと言います」そう言って女性は頭を下げてきた。
「初めまして、俺は……」
「知っていますよ、オルガ・イツカさんと、三日月・オーガスさんですね?お話は聞いております」
「あぁ、そうですか……。」
どうやら事前に話が通っているらしい。まぁ、そりゃそうか。いきなりこんな新人が来ても困るだけだもんな。
そんな事を考えながら、俺は改めて挨拶をした。その後、簡単な説明を受けた後で、俺達は部屋を出て寮へと向かった。
そして今に至る訳だが……。
さっきからどうにも歩道の赤信号に捕まりまくる。そんな事を考えていた時、後ろから誰かがぶつかってきた。
「うわぁっ!ご、ごめんなさい!ライスのせいで…!」
振り返ると小さなウマ娘の子がいた。黒髪が特徴の子だ。その子は謝りながらも急いでいたのかそのまま走り去って行った。
「大丈夫?」
「ああ、気にすんなって。それより早く行こうぜ」
「うん」……………… それからしばらく歩いて行くと、ようやく寮が見えて来た。
「えっと、確かこの辺だった筈だけど……」
キョロキョロと見渡していると、「あっ!」という声と共に一人の女の子が現れた。
「あの時の人ですか!?さっきはごめんなさい…ライスのせいで…」
「謝んなくても良いよ、怪我とか無かったし」
「でも……そのせいで遅刻して……」
「だからもう良いよ」
「っておい!?遅刻って…まさか!」
俺は時計を見る。時刻は既に8時半を過ぎている。ヤバいぞこれ!このままじゃ完全にアウトだ!
「悪いけど急ぐぞ!!」
「ヤバいね…」
こうして俺とミカは何とか間に合ったものの、結局初日から大目玉を食らう羽目になった。
……………… 翌日、俺は早速担当となるウマ娘を探す事になったのだが、これが中々見つからない。
昨日会った子が居るかなと思ったが、流石に入学式当日では見当たらなかったので探す事にしたのだ。しかし、いざ探してみると意外に難しい。
何せここは日本屈指の名門校である。当然生徒数も半端じゃない上に、学年ごとに校舎が違う為、まずはどのクラスにいるかを特定しなければならないからだ。
しかも今日に限って職員室に誰もいない。仕方が無いので俺は自分の足を使って探すしかなかった。
「参ったなこりゃ……」
途方に暮れていると、不意に声をかけられた。
「あれ?貴方ってもしかして……新人のオルガ・イツカさん、ですの?」
振り向くとそこには芦毛の少女が立っていた。身長はやや低め、スタイルが良い美人といった感じだろうか。
「あぁ、そうだが……。アンタは?」
「私はメジロマックイーンといいますの。以後宜しくお願い致しますわね」
そう言うと彼女は微笑んでくれた。随分とお嬢様っぽい雰囲気があるな……。
「こちらこそよろしく頼む。ところで何か用か?もしかして俺の事を知ってたみたいだが……」
すると彼女は少し驚いた表情を見せた。
「あら、私の事を知らないんですの?」
「あぁ、トレセン学園に来たのは初めてでな。」
「私がしよう」
そこに立っていたのは、金髪碧眼の男だった。…いやまて、俺はコイツを知ってる。
こいつは…
(マクギリスじゃねぇか…)
マクギリス・ファリド。
有名進学校、ギャラルホルン学園卒業。名家の生まれでトレーナーとしての手腕も高い、トレーナーの中でも話題だった男だ。
「初めまして、オルガ・イツカ君。私の名前はマクギリスだ。以後お見知りおきを」
そう言ってコイツは手を差し出してきた。「オルガ・イツカだ。それと…」
「オルガー?昼ご飯買ってきたよって…アンタは」
「マクギリス・ファリドだ。宜しく頼むよ。」
「三日月・オーガス。」…………
「オルガ、この人誰なの?」
「あー、同僚のトレーナーだ。それより話って何だ?」
「では単刀直入に聞こう。君が探しているのはこのウマ娘か?」
「あら、ライスさんですの?確か今年の新入生ですわね。」
「そうだ…その子をスカウトしたくてな」「ほう、理由を聞いても良いか?」……正直、理由は特に無いんだよな。強いて言えば……直感か。
「別に特別な理由は無ぇよ。ただなんとなく気になってな……。直感だよ」……そう言った瞬間、マクギリスは笑みを浮かべながら口を開いた。
「成程、君の言いたい事は分かった。確かに彼女には素質を感じるな。どうやら君達は、ただの新人トレーナーではないようだ」
「それはどういう意味だ……?」…… その後、俺達は食堂へと移動した。そこで俺達は昼食を取りつつ話をしていた。
「それでどうするんだい?オルガ・イツカ君。その子をスカウトするのか?」
「まぁ、そのつもりだが……」
「なら早めに話をつけると良い。彼女の素質は、いずれ選抜レースで明らかになる」「……ああ、分かってるよ」……
「アンタがライスシャワーってウマ娘?」
ミカは単刀直入に聞いた。その言葉を聞いた少女は明らかに怯えていた。
「ひゃっ!そ、そうですけど……」
「三日月・オーガス。宜しく」
「オルガ・イツカだ。宜しく頼む」
…… それからしばらく経って、ようやく俺達三人は食事を終えた。そして俺は改めてライスに声をかける事にした。
俺達が座っているテーブルには、俺とミカとライスが居る。
ちなみにミカは相変わらずの無表情、ライスは緊張している様子。
俺は話を切り出した。
「さて、早速本題に入るが……アンタをスカウトしたい」すると彼女は驚いた表情を見せた。
しかし、すぐに首を横に振った。
「………ライスなんかのトレーナーになったら、不幸になっちゃうから……」
そんな事を呟いた。
「あー…一応聞いておくが、そいつはどういう意味だ?」俺は疑問を口にした。すると彼女は俯きながらも答えてくれた。
曰く、自分の近くに居ると、皆が不幸な目に遭うという。
それを聞くと、俺は思わずため息が出てしまった。
何だそりゃ……。
「……とにかく…!ライスのトレーナーになんてなったら、不幸になっちゃうから!じゃあ…!」
といってライスは逃げようとした。
が、ミカに腕を摑まれた。
「そうやって断り続けるつもり?」
ミカは話しだした。
「そんな風にしてたらトレーナーなんてつかないよ」
「で、でも……」
「結局は他の誰かがやることになるんだ。だったら、俺達にトレーナーをやらせてくれ」
「でも…!本当に迷惑かけちゃうかも……」
「大丈夫だ。俺達の事を信じろ」
「……うん」
こうして俺達は、一人のウマ娘を担当する事になったのだった。
「……で、これからどうすんの?」
「とりあえずトレーニングメニューを考えないといけねぇな」
「ふむ、では私に任せてもらえないか?」マクギリスが提案してきた。
「貴方はトレーナーとしての経験はありますの?」メジロマックイーンは質問をした。
「いいや、俺達はトレーナーとしては新米でな、実戦は初めてだ」
「そうですか……。分かりました、お任せしますわ」
「じゃあ俺達はどうすれば良い?」
「そうだな……まずはライス君の実力を知りたい。なので明日は模擬レースをしよう」
「分かった」
「了解だ」
そうして俺達は解散した。
次の日、ライスのデビュー戦が決まった。
相手はミホノブルボン。三冠バを目指しているらしい。
今日はそのデビューの前日だ。
ライスは不安そうな顔をしていた。
「……あの、やっぱりライスが走るのはダメかな……?」
「いや、駄目じゃないよ」
そう言っては頭を撫でた。
「えへ……ありがとう……。頑張るね」
そう言うとライスは嬉しそうに笑っていた。
そして翌日、ついにデビュー戦が始まった。
観客はかなり多い。それだけ注目されてるってことだろう。……さて、いよいよ始まったか。
今回の作戦はライスに全てを任せている。
「……次はどうする?オルガ」
「今回は俺達、いや鉄華団の初仕事だ。派手に行こうぜ」
「分かったよ」
そうして俺達はライスの行末を見守った。
ライスがゲートインすると同時に実況の声が聞こえてきた。
『さぁ始まります、ライスシャワーのデビュー戦です』……
『各バ一斉にスタートしました!』
「よし……行くぞミカ」
「ああ」
そしてライスは後方に位置どった。
「このまま様子を見るの?」
「ああ、あいつならきっと上手くやるはずだ……」……
『先頭はやはりこの子、ミホノブルボンです!』
ミホノブルボンは「逃げ」の戦法を取っている。しかし、他のウマ娘達も負けてはいないようだ。
そんな中、ライスは後方の位置どりを続けていた。
(まだ仕掛けないのか?)
そしてレーナはそのまま終盤まで走り続けた。そして最後の直線に差し掛かった時、ライスは一気に加速し始めた。
「なっ!?」
俺は思わず声を上げてしまった。
ライスは、今まで温存していたスタミナを全て使い切り、ラストスパートをかけたのだ。
そしてそのままゴールしたのだった。……
「はぁはぁ……」ライスは息を切らしながら戻ってきた。
「ライス、良くやったな」
俺は褒めてあげた。するとライスは笑顔を浮かべていた。
「う、うん!ライス頑張った!」
そしてライスシャワーの初勝利を飾ったのだった。……
「ライス、速かったね」
「ああ、まさかあんなに速いとは……」
俺とミカはライスの走りを見て驚いていた。するとマクギリスは話しかけて来た。
「どうだいオルガ君、彼女の素質は?」
「正直驚いた。あれだけの脚があるなんて思わなかったからな」
「そうか……。それは良かった」…… それから数日後、俺達は正式にライスとトレーナー契約を交わした。そして俺達はチームとなった…ライス一人だがな。
名前は『鉄華団』とした。俺が団長。ミカは参謀だ。……チーム名に関しては、俺が決めた。決して散ることは無い、鉄の華。俺達の絆を現した名前だと思っている。
「あ、あの……」
「ん?何だ?」ライスは俺に話しかけて来きた。
「その……これからよろしくお願いします」
「おう、こちらこそ宜しく頼む」
………こうして俺達のトレーナー生活が始まったのだった。