ドールズフロントライン ~16.6%のミチシルベ~   作:弱音御前

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雨ばかりの毎日で気も滅入ろうという今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか?
どうも、弱音御前です。

今回より、新作の連載を始めていきたいと思います。
書いておいて自分で言うのもなんですが、タイトルとあらすじだとどんな内容か分かりづらいかな? と。
元ネタを知ってる方も知らない方も、何かの片手間に楽しんでいただければと思います。

それでは、今週もどうぞごゆっくりとどうぞ~


16.6%のミチシルベ

 

 空はスッキリ晴れ渡り、ポカポカ陽気のそんな昼下がり。と、ノリのいいライムが自然と脳裏に浮かんでくるぐらいには、私こと、戦術人形ネゲヴは今日も好調である。

 大好きな指揮官と共にくつろぐアフターファイブを目指し、さっさと本日の執務に勤しんでいる。

 

「ふぁ~~あ。ネゲヴちゃんは今日も頑張り屋さんだねぇ。もっとのんびりと仕事したっていいんだよ?」

 

 そんな働きアリな私とは対照的に、デスクに就く指揮官はあくび交じりに眠そうな目をぐしぐしと擦っている。

 子供みたいで超カワイイ仕草である。

 

「お疲れな指揮官の分、私が働かないとでしょ? また、あの鬼上司にどやされたくないもの」

 

 それは、思い出すと今でも背筋が寒くなる、まだ真新しい記憶。

 私も少しばかり気を抜いてしまったのが悪いのだが、仕事が溜まりに溜まってしまったことを見かねた指揮官の上司、ヘリアンがここにカチコミをかけに来たことがあったのだ。

 その時のヘリアンの鬼のような形相といったら・・・さしもの私も、ちょっと涙がジワってしまったくらいだ。

 もうあんな目に遭いたくないという事で、素直な私は気を引き締めなおして業務に勤しむことを決意したのである。

 

「あんなのほっときゃいいのよ。罰則だ何だと言っても、どうせ口ばっかなんだからさぁ~」

 

 アレを前にしてもなおこの態度である。カッコ良すぎ! を通り越して、彼女の脳神経の働きを疑いたくなってこようというものだ。

 

「でも、ネゲヴちゃんに任せっぱなしじゃあ指揮官としてカッコつかないものね。ちょ~っとだけ頑張りますか」

 

「いいからいいから。指揮官はそこに座ってて、私が処理した書類の確認と審査をやっててちょうだい」

 

 いよいよヤル気を出そうとした指揮官を私は引き留める。

 朝からず~っとあくび連発で目にクマまで浮かべている指揮官に、あまり負担をかけるわけにはいかない。

 副官として・・・というか、誓約を交わした相棒として、だ。

 

「そお? なんか、妙に優しいところがまた怖いわね。あとで変な要求とかされないかしら?」

 

 失礼な事をのたまう指揮官はひとまず無視。今日中に処理すべき仕事から順番にせっせと片を付けていく。

 ・・・そうして、グリフィンの規定による業務定時ギリギリ前に目標分の仕事を完遂することに成功したのだった。

 なんだか、久々に仕事やり切った感がすごい。

 

「ふぃ~、なんとか間に合ったわね」

 

「はい、お疲れお疲れ~。今日も頑張ったわね。ほら、こっちおいで」

 

 ソファーに体を投げ出したばかりの私だったが、指揮官のお招きに預かり、デスクにつく彼女のもとへ。

 ぽんぽんと叩いているお膝の上に静かにお座り。割といつもの事である。

 

「エネルギー補給のぎゅ~~~っ♪」

 

 そして、ぬいぐるみのように大人しくお座りしている私の身体を、背後からしっかりと抱きしめてくれる指揮官。これもまた、わりかしいつもの事である。

 柔らかさと温もりといい香りで、メンタルがどうにかなってしまいそうな心地よさは、普段よりも長く続けられる。

 当人は絶対に口にしないが、それだけ指揮官が疲れているのだと、私は理解している。

 

「・・・ねえ、たまにはお仕事休んでもいいんじゃないかしら? 指揮官は申請すれば休暇もらえるんでしょ?」

 

 それを見かねた私は、いよいよ、その話を持ちかける決心がついたのだった。

 

「へ? まぁ、まだ取得日数は残ってるけど。すぐに休みとれっての?」

 

 私の意図を汲んでいないのだろう、目を丸くして問いかける指揮官に頷いて返す。

 

「こんなに仕事が忙しい時期なのよ? 私が休んじゃったら、あなた1人じゃあ捌ききれないでしょ?」

 

「スプリングフィールドにも手伝ってもらえば問題ないわよ。だから、仕事の心配はしなくてもいい」

 

 これほどの量の執務にスプリングフィールドを巻き込むのは、申し訳ないというのが正直なところだ。しかし、指揮官に休みを取ってもらうという大義名分があれば、彼女はどんな過酷な

ミッションにも喜んで馳せ参じるだろう。

 

「なぁに? もしかして、私の事を心配してくれてるのかな? 愛い奴め! この、この」

 

 私を抱きかかえたまま、後ろ頭に頬擦りする指揮官。

 

「ありがとうね、ネゲヴ。でも、気にしなくていいのよ。みんなの為に働く事が私の生きがいなの。これは、私が望んで、嬉しくてやっている仕事だから。ちょっとくらい疲れてても平気。それに、こうしてちゃんと充電しながらやってるからさ~」

 

 指揮官の言葉からは、無理をしているような様子を伺えない。

 もう、彼女とは付き合いの長い私だ。それが、本心から言っている事だというのは伺い知ることができる。

 ・・・しかし、人間の身体というのは脆く儚いものだ。こうして無理をして積み重なったツケがいつ爆発するか分かったものではない。

 だから、ここ数週間まともに休日をとらず、夜遅くまで会議だの報告会だのと忙しく飛び回っている指揮官に休みを取ってもらいたいのだ。

 

「指揮官がそう言うのなら・・・まぁ、いいけど」

 

 そんな思いからの提案をあっさりと流されてしまい、私は大人しく引き下がるしかなかった。

 私たちの為だなんて、そんな嬉しいことを言ってくれる指揮官に反論なんてできやしない。

 ・・・そして、その優しさに甘えて反論ができなかった自分が情けなくて仕方がなかった。

 

 

 

 

 

 お昼休みの時間。当グリフィンのタイムスケジュールでは、戦術人形たちも含めた職員を

グループ分けし、各グループごとに時間をズラしての休憩としている。

 なので、食堂は総員一同ごったがえすなどということはなく、とても落ち着いたものだ。

 こんな中、私はランチをいただきながら指揮官とイチャイチャトーク・・・なんていうご馳走にありつくことは出来ずにいた。

 最近はいつもそう。今日の指揮官は補給物資の仕入れ先に視察というので、日帰り出張なのである。

 

「また、今日はいつも以上に浮かない顔をされていますね。指揮官様の事をお考えですか?」

 

 私の正面、机を挟んで反対側に座る娘の声で我に返る。

 

「ん~、まぁ、そんなところ」

 

 私が気の無い返事を返すと、ライフルタイプの戦術人形、〝IWS2000〟通称シュタイアーは何が面白いのか、朗らかな笑みを零した。

 最近、私はこの娘と一緒に居ることが多い。というのも、私が直属でシュタイアーの教育係に

任命されたからだ。

 優し気な口調と物腰に、たまにすっトボけた事をしでかすシュタイアーだが、こう見えて、我らがグリフィン基地でも最高クラスの戦闘能力を持つ人形なのだ。

 今はまだ配属されてから日が浅く、練度が低い身だが、ゆくゆくは特戦隊を率い、難敵と噂される〝白い勢力〟討伐のフロントラインに立ってもらうことになる。

 その為、副官兼戦闘のスペシャリストである私が直々に指導してやっているのだ。

 前述のように、たまに抜けたところをみせる彼女だが、真面目で飲み込みも早く、指導する立場としては手がかからなくて何よりなシュタイアー。

 ただ、私にはちょっとだけ引っ掛かるところがある。

 私とシュタイアーがとても似ている、と指揮官を含め、周りからも良く言われるという点だ。

もちろん、性格ではなく外見に関しての事である。

 まぁ、美人でスタイル抜群、という点は私に並ぶレベルだろう。しかし、顔立ちや服のデザインもどことなく似ている、とまで言われてしまっては流石に首を傾げてしまう。

 私たちは出身が違うし、ましてや、同型の姉妹ですらないし。

 所詮は一つの企業が製造した私達戦術人形である。フォルムが似通っていても、それほど不思議なことではないのだろう。

 ・・・ただ、シュタイアーの方がちょっとだけ背が高くて大人っぽく見えるおかげで、私の方が妹扱いされがちのは納得いかない。超納得いかない!

 なので、私の方が格上であると周りに見せつけるために、私は彼女と一緒に居る時は今まで以上に堂々と振る舞う羽目になっているのだ。

 ただでさえ悩み事で頭が一杯なのに、お忙しいものである。

 

「私も指揮官様の負担を減らせないかと、色々と考えているのですが・・・何分、まだこちらに

来て日が浅いもので、良いアイデアが浮かばないのです。お役に立てず申し訳ありません」

 

「それは私、副官が考える事だからって前にも言ったでしょう? 貴女はまず自分の事を一番に

考えなさい。貴女がここに慣れて、十分な戦力として成長するのが指揮官の為になるんだから」

 

 ありがとうございます、と再び柔らかに微笑み、シュタイアーは目の前のランチプレートを

パクパクしはじめる。

 今、シュタイアーが言っていた事こそが、私の頭を悩ませ、憂鬱な気分の原因である。

 指揮官の忙しさをなんとかしてあげたい。その課題に取り組み続けて、もう一ヵ月くらいになるだろうか。その間、課題解決に向けての進捗はゼロ。本当に、手も足も出ないとはこの時の為に

存在するような言葉である。

 指揮官は自分の仕事は自分がやるべきだ、と厄介な信念を持って聞かないし、かといって、

指揮官の仕事を戦術人形が勝手に肩代わりは出来ない。いくら誓約を交わしている副官の私といえども、基本的には指揮官としての権限に抵触することは許されないのだ。

 このように指揮官の身を案じているのは私だけではない。スプリングフィールドを筆頭として、事態に勘付いている幾人かの戦術人形達も、代わる代わる指揮官を癒そうと動いてくれている。

 しかし、それでも焼け石に水だ。この状況の根底をどうにかしなければ、事態は好転してくれない。

 

「シュタイアー。私たちは早めに教室に行って予習をするのだが、良ければ一緒にどうだ?」

 

 思案に耽っていると、いつのまにかダネルが私たちの傍に来ていた。

 

「あ、はい! ぜひご一緒させてください! 申し訳ありません、副官。お先に失礼してもよろしいですか?」

 

「いちいちそんなにかしこまらなくていいから。行ってらっしゃい」

 

 シュタイアーの午後のスケジュールは他の対物ライフル連中と一緒に座学講習だ。今の彼女に

必要な、対物ライフルの何たるかを叩き込む大切な講習である。

 ただ不運なのは、今回の講師があの曲者DSRだという点。

 まぁ、思いっきりからかわれてコロがされて、良い経験にしてもらえればいいだろう。

 ランチトレーを両手に立ち上がり、私にペコリと一礼してシュタイアーはダネルと一緒に離れていく。

 一人残され、大きく一息。

 この問題がいきなり解決するようなラッキーが、何の前触れもなく転がり込んでこないかなぁ、などと、都合のいい妄想を抱きながらコーヒーをクピリと一口。

 

「おやおや? ため息なんかついて、随分とお悩みのようじゃあないか、副官クン」

 

 ・・・問題は、根底からどうにかしなければならないものだと私は思うわけだ。つまり、多忙であることの根底、指揮官という立場をどうにかすればいいのではないだろうか?

 

「そうだよねぇ。数あるグリフィン支部の中でも成績上位支部の副官ともなれば、それなりに頭を痛めることもあるよね。うんうん」

 

 じゃあ、いっそのこと指揮官辞めてもらっちゃう。そうすれば、多忙から解放されて暇になった指揮官に私は甘え放題、指揮官も私に甘え放題でお互いに得をする。っていうか、得しかない最高の作戦じゃないか、これ?

 

「しかし、キミは実に運が良い。そんなキミのお悩みを解決してあげられる術を私が提供しようじゃないか。いや、お礼はいいよ。私としてもコレの生データが欲しかったところでね。使ってくれればそのまま私の得になるのだよ」

 

 いや待て。そもそも、指揮官は指揮官だからこそ指揮官なのであって、指揮官が指揮官でなくなったら、それはもう指揮官ではなくて指揮官以外の別の何者かになってしまうわけで・・・さて問題、この短時間で私は指揮官って何回言ったでしょう?

 

「これが、っと・・・これが・・・・・・ちょっと待ってくれたまえ、ポケットに引っ掛かって

抜けない・・・」

 

「ああもう、うっさいな! 何なのよ、アンタ!」

 

 シュタイアーが去ったのを見計らい現れた女をガン無視していた私だったが、あっさりと我慢の限界に達してしまう。

 

「えぇ? だから、言ってるじゃないか。カワイイ副官ちゃんの助けになってあげようというのだよ。この私が。直々に」

 

 そう、怪しい笑顔を浮かべながら答えるのは、ボサボサ髪にダラしない白衣姿の人間の女性。

技術研究部16Lab所属の研究員、ペルシカである。

 

「誰もそんなの頼んでない。あっち行ってちょうだい」

 

「何でさ~? 人の好意は大人しく受け取っておくもんだぞぉ」

 

 どうやら、各支部を視察がてらフラフラとしているこの女を指揮官は特に警戒しているらしい。なんでも、研究への協力として様々な提案を持ちかけては、基地を阿鼻叫喚の地獄絵図にしていつの間にか去っていくトラブルメイカーなのだとか。

 まだ、この基地では被害を被ってはいないのだが、用心しておくに越したことはない、と私も

指揮官から言い聞かされていた。

 

「そんなウマイ事言って、裏があるの見え見えなのよ。あんまりしつこいと指揮官に言いつけるわよ?」

 

「はぁ~・・・そっか。そこまで言われては仕方がない。無理強いさせてしまったみたいで悪かったね」

 

 私たちの戦いに大いに貢献している部署の研究員だ、指揮官の命があれば、出入り禁止にまではならないだろうが、来づらくなるのは間違いない。

 それは勘弁、とみたペルシカが静かに席を立つ。

 おなじみのマグカップを片手に、肩を落としてトボトボと離れていく背中を見ていると・・・

なんとなく、可哀そうな気になってしまう。

 実は、その話に裏なんてなくて、本当に私を気遣ってくれていたのでは? と。

 

「・・・・・・分かったわよ! 話くらい聞いてあげるから、そんなにしょぼくれないでちょうだい!」

 

 そんな姿を黙って見送れなかった私は、とんでもない甘ちゃんだと思う。

 

「そうこなくっちゃ! それでねそれでね、キミに提案したいことっていうのが・・・」

 

 私が言った途端、先ほどまでの様子はどこへやら、ペルシカが私に飛びついてくる。

 もしかして、完全に嵌められたのかもしれないこの状況。こうなればもう、毒を食らわばなんとやら、である。

 まるで、お気に入りのおもちゃを自慢するかのような怒涛の勢いのプレゼンに耳を傾ける私。

 内容は、さっき彼女が言った通り、新開発のデバイスを実践テストしてほしいというもの。

 そして、それは意外な幸運。今の私の悩みを解決してくれるかもしれないものだったのである。

 あくまで、話を聞く限り、だけど。

 

「分かった。一旦、話を預かって指揮官と相談してあげる。言っておくけど、何か良からぬことを考えてたら承知しないからね」

 

「はい、毎度あり~!」

 

 ペルシカからの提案と共に試作デバイスを預かったところでお昼休み終了。

 これまで煩わしくて仕方がなかった引っ掛かりが少しだけ取れたような、良い気分で私は午後の執務に取り組むのだった。

 

 

 

 

「ふ~~~~ん。コレが私の代わりに指揮、ねぇ・・・」

 

 デスクに頬杖をつき、苦い表情を浮かべる指揮官。その目の前では、まるで汚い布切れでも摘まんでいるかのような風で、書類サイズのタブレットがユラユラと揺れている。

 

「搭載されているAIの性能は16Labお墨付きだっていうから、それなりの性能は期待していい・・・らしいわ」

 

 ペルシカからこのタブレットを受け取り、その翌日。私は指揮官の負担を低減させるための策を提案していた。

 大まかな説明を終えた今、指揮官はその内容を把握してくれたが、あまり乗り気ではないようである。

 

「確かに、現代のAI技術はかなり高い水準にあるみたいね。でも、まだ人間ほど〝柔軟〟な考えができるモノは存在していないのよ。仮に、コレに部隊編成をお願いしたとして。ワーちゃんと

ドラちゃんを一緒にしたらマズイ、っていう事までは考慮しないでしょ?」

 

 参考までに、ドラちゃんというのはSVDドラグノフの事である。この呼び方が許されるのは

指揮官だけで、私を含め、他の戦術人形が言った日にはナイフのような鋭い目つきで睨みつけられてしまう。

カワイイ呼び名だと思うのだが、どこが気に入らないのだろうか?

 

「そこは学習で追々覚えてもらえるわ。ひとまず、コイツに指揮を任せられれば、指揮官のお仕事がだいぶ楽になる。そこが重要なのだから」

 

 指揮官の仕事は多岐に及ぶが、中でも一番多くの割合を占めるのが戦闘指揮関連のお仕事である。

 部隊編成、派遣先の選択、輸送機の手配等々。副官として傍に就いたばかりのころは、あまりの仕事の多さに驚いたものである。

 さすがに、全部とまではいかないだろうが、同時派遣できる部隊の半分くらいでもコイツに任せることができれば、指揮官の仕事はかなり軽くなるだろうという私の見立てである。

 あの怪しい研究員の話にノる、というリスクを差し引いてもお釣りはくる算段だ。

 

「まぁ、AI任せにするのはいいんだけどね。私としても、仕事が減ってネゲヴとの時間が作れるのは嬉しいからさ。でも・・・あのペルシカが持ってきたモノだというのがどうにも胡散臭い」

 

 指揮官のペルシカ嫌いも相当なもののようである。私は何も聞いていないが、過去に何かがあったのだろうか?

 

「まず、先行試験ということで私が率いる部隊の指揮をさせてみたい。その稼働実績を見て、他の部隊を任せられるかどうか判断、というのでどうかしら?」

 

 明日から三日間、指揮官は出張で基地を留守にする。本来は、その間の任務関係の指示は予め決めておいたり、出先から追加の指示を出したり、という具合に対応を行うのだ。

 それを完全にAIに任せるというのだから、当然、不安は付いてまわる。

 しかし、私とて伊達で副官の座に就いているわけではない。今までに学んだ知識を総動員すれば、万が一、コイツがトラブったとしてもフォローできるだろう。

 

「ん~・・・分かった。そこまで言うのなら、お試しでやってもいいわ。ただし、絶対に無茶はしない事。貴女、この基地で唯一の前科持ちなんだし、アレ以来初の任務だというのは忘れないでね?」

 

「わ、分かってるわよ。絶対に無茶しない。約束する」

 

 まるで犯罪者扱いなのは心外だが、あの事件は私の責なので何も言い返すことが出来ない。そして、その事件以来、謹慎が解除された私にとってこれは久々の任務である。リハビリと考え、無理はしないと心に決める。

 もう、大事な人を悲しませるようなことはしないと、固く固く誓おう。

 

「よし、じゃあ誓いの指切り」

 

 言って、指揮官が差し出した小指に私の小指を絡ませる。その昔、どこかの国の習慣だったらしい、誓いの儀式である。

 

「ゆ~びき~りげんまん、う~そついたら50BMG弾千発の~ます。ゆ~びきった」

 

 そうして、互いの小指を放し誓いの儀式終了。

 毎回思うのだが、弾丸を千発近く飲み込むだなんて、不可能よね? 仮に、約束を果たせなかったとして本当にそんなことはしないよね? ね?

 

「ふふ、ありがとう、ネゲヴ。私の事を心配して、色々考えてくれて。もう少し仕事が落ち着いたら、それまでの分、たっくさんイチャイチャしましょうね」

 

 タブレットを弄りながら、指揮官が嬉しそうな声色で言う。

 こんなに嬉しそうな言葉を聞いたのは、ここ最近、忙しくなってしまって以来だろうか。

 それを耳にして私の胸の辺りが、苦手なアルコールを流し込んだ時のように熱くなってくる。

 

「そうね。今までツケておいた分、存分に甘えてやるから、首洗って待ってなさい」

 

 そんな減らず口を吐きながら、踵を返す私。

 ついついそんな言葉が口を出てしまったのは、本心を隠したかったからだ。バレたらきっと、

これ幸いにと一気に畳みかけられてしまうに決まっている。

 大好きな人が嬉しそうにしてくれた。私にとって、これ以上に甘美で温かい幸せなんて、この世には存在しないのだ。




構成のバランスが悪く、まだ本題にも入らなかったのは反省点でした。
次回より、タイトルの意味が分かる展開に入れる・・・と思います。
どうか、長い目で見守ってやって下さいな。

それでは、来週の更新もお楽しみに!
以上、弱音御前でした~

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