ドールズフロントライン ~16.6%のミチシルベ~   作:弱音御前

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溶けそうなくらい暑い今日この頃。
〝よう、相棒。まだ生きてるか?〟
どうも、弱音御前です。

16.6%のミチシルベ、今回は第7話。
鉄血とのタッグバトルを終えたところからのスタートになります。
それでは、今週もどうぞごゆっくりと~



16.6%のミチシルベ  7話

「くっ・・・くっそぉぉぉ~~! 本気のエクスキューショナーとハンターが負けるなんて。こうなったら・・・お前たちだけでもぶちのめしてやる!」

 

 途中から黙りこくっていたので、存在を忘れていたデストロイヤーが実況席の私達に向けて襲い掛かってくる。

 まぁ、普通はそうなるよね。

 

「トロちゃんがキレたぁ!? 隊長、よろしく!」

 

 泣きたくなるくらい頼りないMDRが、甲羅に引っ込むカメよろしく、その場でしゃがみ込む。

 自然と、デストロイヤーの標的は私になるわけだが。これはこれで私としては都合いいのである。

 飛び掛かってきたデストロイヤーの頭。その左右でフサフサしているツインテールを両手で掴む。ついさっき、MDRと95式が乗っていたモーターサイクルに乗っているような感じである。

 

「・・・へ?」

 

 異様な気配を感じたのだろう、呆気に取られているデストロイヤーの顔に、思いっきり私のおでこをぶつけてやる。

 

「あだっ!!?」

 

 ゴチ~ン、と良い音が木霊する。

 指揮官にからかわれ、鍛えられた私のおでこだ。さぞかし痛かろう。

 予想外の逆襲で怯むデストロイヤーだが、私にツインテを握られているので、逃げることは出来ない。

 そのまま、間髪入れずに両腕を力一杯振り下げる。

 向かう先は、実況席に使っていたテーブルだ。

 

「ぎゃう!?」

 

 オマケで体重も載せてやった甲斐があり、デストロイヤーの頭で木製のテーブルは真っ二つ。

 視界の端で、K5と95式がちょっとヒイているのが見えるが、気にしない気にしない。

 そうして、床に突っ伏しているデストロイヤーの身体をボールでも蹴るかのようにシュートしてトドメである。

 

「ヴぉあぁぁぁ~~」

 

 妙な呻き声をあげながら、床をゴロゴロと転がっていくデストロイヤー。

 今日、これまでに積もっていたストレスが半分くらい消え去ってくれたような爽快感だ。

 

「隊長のケンカファイトって、相変わらずエグイやり口してるよね」

 

「何よそれ。物騒な呼び名を付けないでくれる?」

 

 曲がりなりにも、指揮官直伝の戦い方である。ちょっと乱暴なのは認めるが、せめてストリートファイトくらいの呼び名にしてもらいたい。

 

「さて、これで分かって貰えたかしら? 銃が無くたって、アンタらみたいなクズ鉄に負けるような私達じゃないのよ」

 

 倒れこんでいる鉄血3人を見下ろしながら言い放ってやる。

 これでもまだ生意気な口を利こうものなら、いよいよ鉛玉で分からせてやるしかないのだが。

 

「うぅぅ・・・うえ~~ん! 何だよお前たち! 銃持ってないのにそんな強いなんて、反則じゃんかよぉぉ!」

 

 キレて泣き出すくらいなら、まだ可愛げがあるかな。

 

「そっちだって銃を使ってないのに強いヤツ沢山いるでしょ? 他人のこと言えるかっての。いつまでも泣きベソかいてないで、さっさと出てけ!」

 

「言われなくたって出てくもん! バ~カ! ブ~ス! 死ね!」

 

 デストロイヤーは他の2人に肩を貸して立たせると、人間の子供みたいな悪口を捲し立てながら部屋から出て行った。

 あれだけいたぶってやったのに、まぁ、元気なものである。

 一応、ちゃんと外に出て行ったかどうかを確認。屋内に平和が戻ってきたところでようやく

一安心だ。

 

「はい、お疲れお疲れ。2人とも、大きなケガは無いかしら?」

 

「ええ、私は平気ですよ。K5の方は、何度か打たれていたようですが?」

 

「まぁ、ちょっともらっちゃったけど、受け身をとってたから、大したダメージは無いよ。処置の必要もないから」

 

「いやぁ~、ホントに凄かったよ2人とも。高視聴率に貢献していただいて、マジあざ~す!」

 

 一難去り、興奮が冷めてきたところで眠気が襲い掛かってきた。なんだかんだとやっていたが、今はド深夜だ。日が昇るまであまり時間は無いが、少しでも睡眠を採らせててもらいたい。

 片付けもそこそこに寝袋に潜り込み、目を閉じる。

 疲れ切っていた私の意識は、それこそ秒で深い深い水の底へと・・・

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 沈んでいきたい所なのだが、どうしても気が散ってしまってなかなか寝入ることが出来ないでいた。

 95式とK5が、窓の傍に張り付いたままずっと外を眺めているのだ。

 心配そうな面持ちで、2人が何を見ているのかは大体予想が出来ている。

 

「はぁ~・・・さっきから何を見てるのよ?」

 

 このままでは不眠で朝を迎えてしまいそうので、寝袋から這い出て2人に歩み寄る。

 

「あそこにね、さっきの鉄血3人組がいるんだけどさ」

 

 予想的中。こんな、人間も住んでいないような極寒の僻地である。外に何があるというわけでもないので、見るものといったそれくらいものだ。

 

「とても寒そうにしているので、ちょっと可哀そうだな・・・と」

 

 窓ガラスに近づいてみると、建物の壁に寄りかかり、身を寄せ合っている3人の姿が確認できた。

 ちょうど、建物が壁になって吹雪の直撃は避けられる位置だが、降り積もっていく雪の量は尋常ではない。

 害虫のようにしぶとい連中だ。朝を迎えるまで寒さに耐えるくらいはできそうなものだが。

 

「・・・分かったわよ。ただし、エントランスまで。この部屋には入れないからね」

 

 こんな人里離れた地に送られてしまった者同士のよしみ、というものか。

 敵に手を差し伸べようなどと、ガラにもなく思ってしまったのだから、私も相当に甘ちゃんだ。

 

「いいの? 相手、鉄血だけど」

 

「あれだけ思い知らせてやったんだもの、それでも手を出してくるほどアイツらも馬鹿じゃないでしょう」

 

「ありがとうございます。やはり、隊長はお優しいですね」

 

 そう言ってもらえるのは嬉しいが、副官として、普段は基地の奴らを厳しく指導している私だ。

 95式の言葉に手を振って返し、私は颯爽と部屋を後にする。

 エントランス扉から出てみれば、外は想像以上に強烈な吹雪に見舞われていた。

 

「うわ・・・これはキツイわね」

 

 あまりにも過酷な環境だったことに驚きつつ、建物の外周に沿って、裏側へと周り込む。

 視界は1メートルも効かないくらいで、壁に手を付いて進まなければ、自分の居所を見失ってしまいそうになる。

 こんな中に数時間も居たら、いかにしぶとい鉄血といえど、凍結障害によるブローは免れないだろう。

 本来なら、数分もかからないだろう道のりを、何倍もの時間をかけて確実に進み、ようやく鉄血3人組の姿を視認した。

 積もってくる雪を払い落としてもいないものだから、半ば雪に埋もれていて危うく見落とすところだった。

 

「な、なんだよ。言われた通り外に出たんだから、何も文句なんかないだろう?」

 

 身を寄せ合っている真ん中にいたデストロイヤーが、目敏く私の気配に気が付いた。

 生意気な口をきけるということは、まだ元気な証拠。不覚にも、ちょっと安心してしまった私がいる。

 

「もう、お前達と戦えるエネルギーなんざ残ってないさ。だから、このまま放っておいてくれないか」

 

 対して。ハンターの口調は弱々しく、エクスキューショナーに至っては、俯いたまま顔を上げもしない。

 もう、覚悟は決まっているということか。

 ・・・別に、鉄血のクズ共がどこで野垂れ死のうが私の知った事ではない。どうせ、遅かれ早かれ、私達グリフィンにボコボコに叩きのめされる運命な奴らなのだ。

 だからこれは、たまたまそういう気分だった、というだけの話。

 これ以降、私が鉄血を助けるなんてもう絶っっっ対にあり得ないと、ここに断言しておこう。

 

「エントランスなら使ってもいいわ。ここよりは大分マシでしょう?」

 

「・・・・・・憐みのつもりか? 生憎と、敵に借りを作るほど落ちぶれてはいなくてな。丁重にお断りしておくよ」

 

「あっそ。なら、好きにすれば? それではご機嫌よう、鉄血の皆様方」

 

 キッパリと言われてしまったので、キッチリと言い返して踵を返す。

 私から言うべきことは言った。それを受け入れるかどうかは、アイツら次第である。

 

「ちょっと待った。エントランス・・・使わせてもらうよ」

 

 背後からの声が、離れていく私を引き留めた。

 吹き荒れる吹雪の音にかき消されることのない、強い気持ちのこもった声に聞こえた。

 

「おいおい、正気か? グリフィンに助けてもらったなんて、恥さらしも良いところだぞ」

 

「いいもん。それでハンターとエクスキューショナーが助かる可能性が上がるのなら、どんだけ恥ずかしい目にあったっていい」

 

 結局、ハンターはデストロイヤーの真剣な言葉に逆らえず、3人は私の後にゆっくりとついて歩いてくる。

 敵に情けをかけられるくらいなら死んだ方がマシ、というハンターの考えは、私達のように戦いの中に身を置く者であれば尤もな考えだろう。

 でも、例え見苦しくても生き残る道を選ぶことを、私は悪い選択だとは思わない。それが、仲間の身を想っての事であれば尚更だ。

 無事にエントランスに戻ってくる頃には、私達4人、白いギリースーツでも羽織っているみたいに雪塗れになってしまっていた。

 お互いに雪を払い落とし合ってから、部屋の隅に置いてある椅子に3人を座らせた。

 私の記憶では、エントランスにこんなモノは用意されていなかった。人形想いな誰かさん2人が、こっそりと用意してくれたのだろう。

 

「んで、アンタ達2人は良いけど、そっちのは平気なの?」

 

 エクスキューショナーは、ハンターがずっと肩を貸したままの状態でぐったりとしている。最低限の行動が出来ていることから、完全にダウンしているわけではなさそうだが、私の見立てでも、重症なのは分かる。

 

「Eliteモードのシワ寄せだ。アレは神経系への負担が大きいモードだからな。私と違って、コイツは耐久が高いタイプではないのが災いした」

 

「まったく、無茶なオーバークロックなんてするから、そういう目に遭うのよ。・・・ちょっと待ってなさい」

 

 95式がぶちのめしたのが原因だったら少し気マズイな、とか思っちゃったが、そういう事でなければそれで良し。

 一旦、私達がキャンプを張っている部屋へと戻る。

 

「隊長、あの3人の様子、どう?」

 

「割と平気そうにしてるけど。気になるなら、自分で見に行ってみればいいじゃない」

 

 落ち着き無さそうな様子のK5に返しながら、私は、荷物の中から、予備の毛布と戦術人形用のリペアキットを取り出す。

 

「いやぁ、あれだけ派手にやり合ったんだし、ちょっと顔を合わせづらいというかなんというか。ねえ?」

 

「私達が行って、嫌な気分にさせてしまうのも憚られますし。申し訳ないのですが、引き続き、

対応をお願いしてもいいでしょうか?」

 

 私から言わせれば、何をそんなに気にしているのか分からないが、そういう事であれば、無理強いをさせるつもりもない。

 

「はいはい。後は私がやっておくから、MDRを見習ってアンタ達も少しは眠りなさいね」

 

 配信を終えるや、さっさと眠りについたMDRをジトっと一瞥して、私は再びエントランスへ。

 

「これ、IOP製のリペアキットだけど、アンタ達にも使える部品があったらいいわね」

 

 そう、そっけなく言ってハンターに毛布とキットを手渡す。

 

「なぜここまでする? 回復したら、またお前たちを襲うかもしれんぞ?」

 

「どうぞご自由に。その時は、もう容赦しないから覚悟することね」

 

 余計な話はせず、私は踵を返してさっさと歩きだす。

 あんな寒い外に出て行ったせいで、私の疲れもいい加減ピークだ。もう寝たい。

 

「・・・・・・恩に着る。この借りは、いつか、きっと」

 

 まさか、鉄血にお礼を言われる日が来るなんて想像すらもしていなかった。

 ちょっと悔しい事だけど、それは、基地の仲間にお礼を言ってもらった時くらい気分が良いもので、そのせいもあってか、私は本当にすんなりと眠りにつくことができたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 3日目 8:00 北部戦線制圧区

 

 嵐のようだった吹雪がウソのように収まり、真っ白な水平線から太陽が頭を出し始めた時間帯。早々に目が覚めた私がエントランスを覗いてみると、そこには鉄血3人の姿は無かった。

 キッチリと畳んだ毛布と共に置かれたリペアキットから、神経系の部品が幾つか無くなっているところを見ると、エクスキューショナーの応急処置も上手くいったのだろう。

 鉄血下級兵ほどではないが、エリートだって何体も製造され、稼働している。もう、昨夜のアイツらに出会う事なんてないだろう。

 しかし、まぁ、この私がわざわざ見逃してあげて、おまけにリペアの手助けまでしてやったヤツらだ。今日明日にでも他のグリフィン連中にやられる、なんていうツマラナイ事にならないよう、祈っておこう。

 ・・・・・・などと、昨夜の格闘大会が、あまりに盛り上がったものだから忘れがちだが、私達は任務の真っ最中なのである。それも、行先をダイスで決める、だなんていう傍若無人な。

 

『第8の選択をリストアップしました。ダイスロールによる選択をお願いします』

 

 本日は任務3日目。指揮官が出張から帰ってくる日である。

 確か、指揮官は夕方には基地に帰着すると言っていた。つまり、タイムリミットまであと9時間くらい。指揮官の帰りをお出迎え出来ない、なんていう不手際を晒さないよう、私は、何が何でもここでキメなければならないのだ。

 

 

 第8の選択

 

 1 他支部 〝Fire Team〟と合同戦線 輸送ヘリ〝アイゼン〟 5時間

 

 2 東部戦線奪還戦 高速ヘリ〝テスタロッサ〟 3時間

 

 3~6 ようやく〝R・T・B〟(基地へ帰還)

 

 

「これは・・・ウェンズデイも妥協してくれたのでしょうね、きっと」

 

「妥協っていうか、もう、舐めてるとしか思えない選択肢だもの」

 

 K5の言う事も尤もである。

 いちおうダイスで決めると設定してしまった手前、継続の選択は入れたけど、本当はもう終わりにしたい。これなら、お前らでも帰れる目をだせるだろう? と言わんばかりの選択肢だ。

 まぁ、あまりにもヒキ弱な私達がいけないのだが、ちょっとだけイラつく。

 

「もう決めよう。動画の取れ高的には十分だから。あんまり間延びさせると、視聴者もマンネリ化しちゃうんだから。ってことで、誰がサイコロ振るの?」

 

「私で一周したから、次は95式? 誰だっていいんだけどさ。3~6を出せばいいだけなんだし、ラクショーでしょ?」

 

 とか、2分の1を見事に外した私が言いつつ、95式にサイコロを手渡す。

 

「そ、そう・・・ですね。1と2を避ければいいだけですものね。1と2を・・・」

 

 そう呟くものの、95式はどこか浮かない表情のまま固まってしまう。

 もしかして、ビビっているのだろうか? 昨夜、あれだけ恐ろしいEliteモードに真っ向勝負を挑んだ95式が?

 この選択肢の成功率は70%近い。普通に考えたら、そこまで深く考える事もないはずだ。

 本当に、ゴミ箱に紙くずを放り投げるくらい気楽にサイコロを放り投げてやればいいのだ。

 

「どうでしょう? この長期任務も最後という事ですし、有終の美を飾る人形は、公平にじゃんけんで決めるというのは?」

 

 なんか、みんなも最後の大トリをやりたいでしょ? な感じで95式が提案してくる。

 何をそこまでビビる必要があるのか、私も含めてK5もMDRも、不思議そうに首を傾げてしまう。

 成功率70%だぞ? そんな高確率、この土壇場で外すわけないだろう?

 

「95式がそう言うなら、私はそれでもいいけど」

 

「うん、私も異論は無いぞ?」

 

「んじゃあ、貴女の言う通り、じゃんけんで決めましょうか?」

 

 私達が同意すると、95式は心底安堵の息をついた。

 彼女のこれだけ安心しきった様子なんて、戦場でも滅多にお目にかかれるものではない。

 じゃ~んけ~ん、ぽん! の掛け声1つで勝敗は見事に決した。

 3人がチョキで私がグー。大トリという光栄な役回りなので、勝者である私が、今回もダイスを振る役目だ。

 

「それでは、よろしくお願いしますね。隊長」

 

 大輪の華でも咲いたような笑顔で95式。

 

「さっさと振っちゃっていいよ~。もう、こんな面白みのない選択肢は撮影もしないからさ」

 

「私、帰りの支度を始めちゃうね」

 

 もう、帰る気満々のK5とMDRはこちらに目を向けてすらいない。

 いつまでも、こんな辺境にいるのも時間の無駄なので、早いところダイスを振ってR・T・Bの目を出してしまおう。

 

「はいはい、よろしくね。95式も、そんなまじまじと眺めてないで帰りの支度でもやってれば?」

 

 言って、ダイスを握った手を胸元まで上げる。

 このまま、掌をひっくり返せばそれでこの任務は晴れてお開き。

 たったそれだけの、簡単な行動の・・・筈だった。

 

「・・・・・・」

 

 何気なしに、手に乗せられたダイスに視線が映る。天面に向いているのは2の目。

 偶然にも、出してはイケナイ目が出ていた。

 なんか縁起が悪いな、と思い、わざわざダイスをひっくり返し、違う目を天面に向けなおす。

 これで準備万端。

 ダイスを振ろう。

 掌を返し、地面に向けて落とそう。

 さぁ、早くやろう。

 ・・・それが、なかなか出来ない。

 理由は、さっき2の目が掌の上で出ていた、という些細な事だ。

 分の良すぎる選択だという事は理解している。でも、負けという可能性は低くともゼロではないという事に気づいてしまった。

 

「は・・・ぁ・・・・・・」

 

 知らず、息が切れている。

 たった今の出来事のように、偶然、2の目を出してしまったら?

 初めは、ミジンコにも満たなかった小さな不安が、いつの間にか、私のメンタルに侵食し渡り、がんじがらめに縛り付けていた。

 それは、植物の種が地面に落ち、芽吹き、地に根を張り巡らせる、その成長過程にも似ている。

 

「お判りいただけましたか、隊長? 私が手を止めてしまった、その理由が」

 

 乱れてしまった呼吸を整えている最中、95式の声にハッとする。

 ダイスを手にした途端に95式は表情を曇らせ、手を止めてしまっていた。

 彼女もまた、この勝利へのプレッシャーに捕らわれてしまった人形の内の1人に違いないのだ。

 というか、この70%という勝率が実に良くない。80%とか90%くらいなら、鼻で笑い飛ばしてダイスを振っていただろうが、私が直面しているこの数字は、良く考えてみればメチャクチャきわどい確率である。

 この気持ちは、きっと当人にしか分からないものだ。

 ビビっているだなんだと、95式の事を心の中で馬鹿にしていた事を、本当に申し訳なく思っている今日この頃。

 

「なにやってんのさ隊長? 早くダイス振って、早いところ基地に帰ろ~よ~」

 

 こっちの気も知らず、MDRはその場で座り込んでふてくされ始める。

 私はもう逃げられない。95式は上手く私に押し付けることが出来たが、それと同じ方法は使えないし、もう、他の方法を考えるような精神的余裕は私には1バイトたりとも存在しないのだ。

 ダイスを振るしか道は無いのに、でも、私の本能は最大級の警鐘を鳴らして、私の手を止めてしまう。

 ああ・・・これが、ビビるという衝動か。

 

「く・・・くっそぉぉおぉぉ! いっけぇえぇぇぇええぇ~~~~!」

 

 ダイスを乗せた右手は微動だにしないので、気合一閃、反対側の手で右手をひっぱたいた。

 衝撃でダイスが跳ね上がり、地面に落下していく。

 ダイスが着地するまでの、ほんのわずかな時間で私は思う。

 

(ああ、ダメだ。アカンやつだ、これ。絶対に1か2出る。もう、それ以外の未来見えないもん。ないわ~。70%外すとか、マジでないわ~)

 

 つまりは、もう戦う前から私は心で負けてしまっていたのである。

 そうして、やはりそういうのは現実にも作用してしまうというお決まりがあって。

 ダイスは1の目を上に向けて、新雪の上にポトリと落っこちたのだった。

 

「ちょ!? 隊長・・・噓でしょ・・・?」

 

「心中、お察しいたします」

 

「隊長~・・・・・・そういう面白い事はさぁ、私がカメラを回している時だけにして下さいよぉ」

 

 三者三様のリアクションに、私は頷いたまま返せず立ち尽くす。

 前回の時よりも、段違いに気まずくて、もう、この雪原に穴を掘って埋まりたいくらいである。

 

「はい、みんな、今回もやらかしてくれちゃった隊長に向けて一言。せ~の」

 

 MDRの号令に合わせ、私の真正面3人が息を吸う。

 私は身を小さくして、それを甘んじて受け入れるしかない。

 

「「「こぉの、ダメ人形!」」」

 

 はい、いざというときにやらかしちゃうダメ人形でほんとスイマセンした。




そう簡単には終わらない、というのもサイコロの旅のお約束ですね。
この期に及んで別の戦地へ行かされてしまうエーデル小隊ですが、無事、期日までに帰ることができるのでしょうか?

次回、16.6%のミチシルベ最終話になります。
来週の更新もどうぞお楽しみに!
以上、弱音御前でした~
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