ドールズフロントライン ~16.6%のミチシルベ~   作:弱音御前

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このところ毎回言っている気がしますが・・・暑い。
発火しそうなくらい暑い今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか?
どうも、弱音御前です。

ネゲヴちゃんのサイコロの旅、今回で最終回となります。
大チャンスのダイスロールを見事に外したネゲヴ率いるエーデル小隊一行ですが、無事に基地へ
帰還をはたすことができたのか?
それでは、今週もごゆっくりとどうぞ~


16.6%のミチシルベ  8話

 3日目 14:00 東部戦線Dライン

 

 

「隊長、8時方向!」

 

 K5が私に注意を促してくれる。しかし、そんなのはとっくのとうに把握している事だ。戦闘のスペシャリストを舐めてはいけない。

 

「んにゃろ!」

 

 振り向き際、飛び掛かってきた近接兵を銃で殴りつける。

 思いっきり振り抜いた一撃だ。近接兵は、たまらず地面に崩れ落ちる。

 

「この私に! 飛び掛かるなんざ! いい度胸! してるわね!」

 

 起き上がろうと、身体を支えている腕を蹴り折る。

 這いずれないように、もう片方の腕を踏み潰す。

 藻掻くことすらも出来ないよう、足を捻じり切る。

 もう、腕を潰した時点で過度ダメージによって機能を停止しているのだが、構いやしない。

 この戦線を制圧していた鉄血部隊はコイツで最後なのだ。ちょっとくらい、私の気晴らしに付き合わせたって、バチはあたらないだろう。

 

「うわぁ・・・隊長、かなり荒れてるね」

 

「先ほどの件で、随分と沈んでいましたから。そっとしておきましょう」

 

「これも、かなり数字取れそうな絵面なんだけどなぁ。表現規制に引っ掛かりそうでちょっと

キワドイかも」

 

 3人のヒソヒソ話は私の耳には届いている。

 そうか、少しやりすぎだったのか、と、ようやく自分の行いを客観的に見れるくらいにクール

ダウンしてきたところで、八つ当たりの手を止める。

 

「はぁ・・・はぁ・・・。今の、見た?」

 

「「「なにもみていません」」」

 

「この事、みんなに言う?」

 

「「「だれにもいいません」」」

 

 キレイに揃った返答を聞いて、良しと頷く。

 まぁ、基地の人形達の間で話題になっちゃうだけならいいんだけど、指揮官の耳に届くのだけはマジ勘弁だ。

 例え敵とはいえ、人形愛のすごい指揮官は、鉄血人形に対してのオーバーキルを嫌う。この事がバレれば、私はお説教確定なのである。

 

「はい、Dライン奪還完了。さっさと次に行くわよ。ウェンズデイを呼び起こしてちょうだい」

 

「りょ~かい。そ、それじゃあ、次は私がダイス振ろっかなぁ。隊長に任せっぱなしっていうのも悪いしさ」

 

「いや、いい。私が振るから」

 

 なんとなく、私の顔色を伺うような様子のMDRにはっきり言って返す。

 

「え? でも、流石に3回も連続はマズイって」

 

「そうですよ。自棄になっている時というのは、総じて良い結果をもたらしません。それは、隊長もご存じの事でしょう?」

 

「いいの! 私がやるの! あんな醜態を晒しといたまま終われるか!」

 

 明らかに分の良い勝負で2回も負けた。あれほどの屈辱は無い。

 この、エーデル小隊隊長として、基地の副官として、指揮官と誓約を交わした人形として、

ダメ人形のレッテルを張り付けられたまま終わるわけにはいかないのだ。

 

「あの時は、流れでついダメ人形って言っちゃったけどさぁ。所詮、確率の問題なんだから、そこまで意地にならなくたって・・・」

 

「もう、好きにさせてあげようよ。こうなっちゃったら、何を言っても聞かないのがネゲヴ隊長、でしょ?」

 

「そうですね。これで隊長の気が済むのなら」

 

 やや呆れ気味に納得してくれたところで、タブレットのウェンズデイが起動準備を終える。

 さぁ、リベンジマッチの開始といこう。

 

「戦線の奪還に成功したわ。さっさと次の行先を提示して頂戴」

 

『エーデル小隊の皆様、お疲れさまでした。損傷と消耗の報告をお願いします』

 

「みんな無傷だし、物資は6割近く残ってる。そんなのはいいから、早く次」

 

『了解。移動に利用する便と時間を検索。・・・・・・検索完了。現地点より南東へ2キロ地点。15:00発、高速ヘリ〝プレデター〟で基地へ帰還してください』

 

 ・・・・・・ウェンズデイの言葉を聞いて、4人揃ってしばしフリーズ。

 どうやら、今の話をすぐに理解できなかったのは、私だけではないようでちょっと安心してしまう。

 

「えっと・・・なんで1便しか検索しないの? いつもの選択肢は?」

 

『もう、複数の行先を選ぶ必要はありません。この便で基地に帰還しなければ、指揮官様の帰りに間に合わなくなってしまいます。エーデル小隊は速やかに、地図のマーカーに向けて』

 

「ちょっと待ったちょっと待ったちょっと待った」

 

 ウェンズデイの話に強引に割り込む。

 

「選択肢を6つ検索しなさい。今すぐに」

 

「ちょお!? 何言ってんのさ、隊長! せっかく帰っていいって言ってるのに!」

 

「そうだよ! あまりに頭にキすぎて、メンタルがイカれちゃったの!?」

 

 K5とMDRが大慌てで私を引き留めるが、聞いてやるつもりはない。

 メンタルがイカれたと言わばそう思え。

 

「隊長、少し落ち着いて良く考えましょう。もう帰れるのです。指揮官様のもとへ。それなのに、わざわざリスクを背負い込むような真似をするのは愚かしいことだと、隊長も理解できるでしょう?」

 

「そうね、確かに。無条件で基地に帰れるのは嬉しい。だが断る。このままあの屈辱を抱えたて暮らしていくなんざ、この私のプライドが許さない!」

 

「その気持ちも分からなくはないですが・・・でも、ここで帰らないと、指揮官様のお帰りに間に合わないのも事実です。隊長だって、指揮官様をお出迎したいのでは?」

 

「だから、ここで帰還の目を出すって言ってんのよ! 何が何でも、この場で決めてやるの!

この私が! アンタ達は、黙って私の指示に従ってればいいのよ!」

 

「うむむ・・・ですから」

 

 私と95式の口論はいつまでも平行線を辿り、傍のK5とMDRはどうしたらいいのか分からず、その場で立ち尽くす。

 そうしている間にも、時間は刻一刻と過ぎていく。

 

『ネゲヴ隊長がお望みであれば、ダイスロールによる選択を続行しますが?』

 

 そんな中、ようやく折れてくれたウェンズデイは流石、優秀なAIである。

 この任務が始まってからこの方、ようやくコイツに対して好感が持てた。

 

「いやいやいや、大丈夫! このまま、指定のポイントへ向かうから。アナタはもうスリープ状態に移行して。ね」

 

「なに勝手な事言ってんのよ、バカ姫! 私はそんなの認めて」

 

「隊長、シャラップ!」

 

 強引にウェンズデイを言いくるめようとするK5。それを咎めようとした私にMDRが飛び掛かり、口を塞いだ。

 

「~~~! ~~~~~!?」

 

「95式、助けて! 私だけじゃあ抑えきれないよ~!」

 

「私が身体を抑えます。貴女はそのまま腕と口を」

 

 振りほどこうと暴れる私の身体を、95式がガッシリと抱きとめる。

 MDRだけであれば、ブン投げてやることもできたが、95式まで加勢されてはそう簡単にはいかない。

 私も、もうなりふり構っている場合ではなさそうだ。

 

「~~~~~~! あむ~~~~!」

 

「あだだだ!!? らめぇぇ! そんな強く噛んだら手の皮膚ちぎれりゅぅうぅ!」

 

 本当に、嚙み千切ってやるくらいの気持ちで口に当てられたMDRの手に噛みつく。しかし、

叫びこそすれ、決して手を離さないその根性はなかなかのものだ。

 

「2人とも、そのまま隊長を抑えてて。MDR、隊長の頭、ちょっと前に下げさせて」

 

「下げさすって、どうやってさ!」

 

「口に当ててる手で、顎を押しこむんです。もっと、グイっと」

 

「私の手ももう限界なのに~。無茶言ってくれるよ」

 

 MDR渾身の力で以て、私の頭が俯き気味に下げられる。

 視界が遮られてしまったので、周りで何が起きようとしているのか、私にはもう分からない。

 

「よ~し、いくよ」

 

 背後から、K5の掛け声。

 タタタ、と駆け足が近づいてくる音が聞こえて。

 

「せやぁ!」

 

 直後、後ろ首に強烈な衝撃を受け、私の意識はスイッチを切ったかのように一瞬にして暗闇へと落ちていった。

 それが、私にとって数か月ぶりとなる任務の、本当に下らない幕引きとなったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 3日目 21:00 グリフィン基地執務室

 

『だから、さっきから何回も謝っているじゃないか。AIの柔軟性が足りなかったのと、強制執行権限まで搭載したのはやりすぎだったって。・・・でも、それはキミのとこの部隊の扱いにも問題はあると思うんだけど』

 

「はぁ? 反省しているって言う割には、随分と偉そうな事言ってくれんじゃない。今回はたまたま、うちの娘達が無傷だったから良かったものの。これで、重傷者が出てロストでもしたら、どうオトシマエつけてくれんのよ?」

 

『お、オトシマエって。どっかの国のマフィアかい、キミは・・・』

 

「まだクソ生意気な口が利けるみたいね。指の一本でも詰めてやれば、少しは大人しくなるのかしら?」

 

『ひぃぃぃい~~! そんな乱暴な~~!?』

 

 なんだかんだありつつも、無事に基地へと帰ってきた私達、エーデル小隊一行。

 指揮官のお出迎えもそこそこに、任務報告書の提出や備品の返却などの雑務も終え、今は、勤務外のリラックスタイムの最中である。

 私の予想では、会えなかった3日分、お互いにゴロゴロと甘え放題というスイートな様相を呈する筈だったのだが・・・ご覧のように、ドスの効いた声で指揮官がペルシカを責め立てている真っ最中である。

 話の内容としては、ウェンズデイの頑固さが原因で、私達の部隊が3日間フルで任務に回らされてしまった、という事案に対してのクレームだ。

 あのAIの頑固さには私もウンザリしていたので、指揮官から話をつけてくれるというのは嬉しい。

 嬉しいのだが。

 

(指揮官、超コワいんですけど・・・)

 

 基本、良い子ちゃん揃いの我が基地である。ちょっとしたイタズラでお叱りを受ける事こそあれど、指揮官がマジギレした姿を見たものは、私を含めて今まで存在しなかった。

 つまり、私はその場に居合わせてしまった人形第1号なのである。

 指揮官絡みの事で一番になれる事ほど幸せな事は無い。

 けど、今回のコレはちょっとマズかった。

 その矛先は私に向けられているものではないが、それでも、怖さのあまり私は執務室のソファーにちょこんとお座りして、着せ替え人形のように微動だにできないでいる。

 そもそも、いけ好かない相手であるペルシカだから烈火の如く怒っているのだろうが、万が一にも、こんなのを向けられたらたまったものではない。

 密かに基地の娘達にも留意しておくべきだと、執務室の空気に溶け込みながら私は心に決めたのである。

 

「ペナルティとして、うちの基地への出入り半年間禁止ね。もし、これに違反した時はどうなるか分かってるわね? 私に、シガーカッターを使わせないでちょうだい」

 

『Yes Mam! ・・・でも、こうやって指揮官ちゃんに電話とかメールするくらいならいいだろう? キミのカワイイ娘達にちょっかい出すんでもないんだし』

 

「はぁ・・・それくらいならいいわ。それじゃあ、もう寝るから。おやすみなさい」

 

 そう言って、指揮官はペルシカの返答も待たずに通信を切ってしまう。

 

「お待たせ、ネゲヴ。いやぁ、恥ずかしいところ見せちゃってごめんなさいね」

 

「いやいやいや! 恥ずかしいなんて、そんな事、全然ないデス!」

 

「どうしちゃったの? なんか、言葉遣いが変よ?」

 

 一転、いつもの陽気さでいきなり話しかけてきたものだから、慌ててしまった結果である。

 ・・・でも、飲み物を片手にデスクから私のいるソファーへ、とてとてと歩いてくるその様子はやっぱりいつもの指揮官となんら変わりなくて。

 指揮官が私の横に腰を降ろすころには、もう私はいつもの調子に戻ることが出来ていた。

 私よりも少しだけ背の高い彼女に寄り添い、身体を預ける。

 柔らかな身体の感触と、嗅覚をくすぐる仄かに甘い香りに包まれ、私はもうこのまま溶けてしまいそうなくらいの幸福を感じていた。

 

「なぁに? そんなに寂しかったの? カワイイやつめ。このこのぉ」

 

 言って、指揮官が私の頭をわしゃわしゃと撫でまわす。

 まるで、犬や猫にしてやるようなやり方だが、私は一向に構わない。

 もっとやってくれ!

 

「だって、ヘリであちこち飛ばされまくって大変だったんだもの。中には、12時間ぶっ続けで

飛んだやつだってあったのよ? ホント、信じられないわ」

 

「そりゃあ大変だったわね。でもさ、なんだってまた、サイコロの出目で行先を決める、なんて言い出したのよ? MDRの視聴数稼ぎに協力してあげたの?」

 

 テーブルの上に転がっていたダイスを拾い上げ、指揮官。

 このダイスは、もともとはK5のお守り代わりだったが、この任務の記念に、ということでK5が私にくれたのだ。

 ただ、記念といっても私にとっては、○○を忘れるな! という感じの戒めの品となってしまっているのだが。

 

「そんなんじゃないけどさ。K5が提案してくれて、ちょっと面白そうだったから、たまにはそんなのも良いかなって思って」

 

「そっかそっか。今回みたいに安全性の高い任務なら、そういう余裕を持っても良いけど、ガチな時は、ちゃんと気を引き締めていかないとダメよ?」

 

「ぅ・・・はい。肝に銘じておきます」

 

 お叱りを受け、ちょっとしゅんとしてしまった私の頭を、指揮官が胸で抱きとめてくれる。

 ふわふわで温かくて。このまま、眠ってしまっても良いかなと思ってしまうくらいだ。

 

「サイコロの出目・・・か。そんな、3日間も帰れなくなるものなのかしらね?」

 

 カツン、コロコロ。

 テーブルの上でダイスを転がしながら、指揮官が呟く。

 

「なるわよ。出てほしい目に限って出ないもんなんだから。16%舐めんな」

 

「ふ~ん、そう。・・・・・・本当に?」

 

 カツン、コロコロ。

 再び、転がしたダイスを拾い上げ、不敵な笑みを私に向けてくる。

 これは、良く知っている指揮官の表情。

 私を完全に言いくるめられると確信した時の、勝ち誇った表情だ。

 

「4」

 

 数字を呟き、指揮官がダイスを放る。

 カツン、コロコロ。

 ダイスは指揮官の宣言通り、4の目を天面にして停止した。

 

「そりゃあ、そういうこともあるわよ。確率だもん」

 

 私に一度微笑みかけ、指揮官がダイスを拾い上げる。

 掌の上でダイスを弄び。

 

「6」

 

 カツン、コロコロ。

 またしても、ダイスは指揮官の言った通りの目を上にして止まった。

 2度あることは3度ある、とも言うが、実際にそんな光景を見せられた私は、もう黙っている事なんてできなかった。

 

「なんで? もしかして、ダイスになんか細工した?」

 

「してないわよ。ほれ、見てみ?」

 

 ダイスを受け取り、まじまじと眺めてみるが、特に変わったところは見られない。

 試しに私もダイスを振ってみる。

 心の中で3と念じて振ってみたが、見事1の目が出やがった。クソが。

 

「何で出目が予想できたか、教えてほしい? ねぇねぇ?」

 

「くっ・・・・・・はい、教えてほしいです」

 

 満面のドヤ顔は非常に腹立たしいが、背に腹は代えられない。このままでは、気になりすぎて

何日も安眠出来ない日が続いてしまうのだろうし。

 

「ネゲヴはさ、このダイスの目、6つのうちどれが出るかはランダム。完全に運だと思っているんでしょ? でも、それは〝運〟とはいえないわけ。少なくとも、私にとってはね」

 

 ・・・・・・言っている意味が少しも分からない。

 首を傾げながら、話の続きを促す。

 

「ダイスは転がりながら目を変える。つまり、転がり方を読めれば、出る目を知ることが出来るわけ。転がり方に必要な要素は、投擲時の勢いと角度、空気抵抗、湿度、地面との高低差、地面の

硬度、接地時の接地面積、転がり抵抗。挙げたらキリがないんだけど、大きな要因だと、これくらいかな?」

 

「はぁ・・・・・・つまり??」

 

「簡単に言っちゃえば。今、この場において全く同じ振り方をすれば、ダイスは全く同じ目を出してくれるっていうこと。ダイスの目を変えるには、投げる時点で上に向いている面を変えてやればいいのよ」

 

「それってさぁ、イカサマじゃん?」

 

「立証されなければイカサマじゃないもの。現に、私が何回も振った中で、あなたはそれに気づかなかったでしょ?」

 

 それはご尤もな言い分だが、なんか、上手く言いくるめられているようでちょっと悔しい。

 

「本当はね、この世界で起こる事柄って、読むことが出来るモノが多いのよ。でも、それを正確に読む為のデータ量はあまりにも膨大すぎて、私達には読み切ることができない。だから、私達は

読むことができないそれらを〝運〟と名付けて折り合いをつけて過ごしているの」

 

 お気楽モードから一変、指揮官の声色が真剣味を帯びてくる。

 これはきっと、私にとって非常に大事に話だ。だから、私も指揮官をガッカリさせないよう、

真剣にこのお話を整理しようと試みる。

 

「・・・だから、指揮官が言うように運も偶然も運命も、この世界には存在しない? 物事には、必ずそれが起きる要因があるから」

 

 良くできました~、と、指揮官が頭をナデナデしてくれた。

 せっかく私がシリアスモードに入った途端にこれである。だから、私は居心地が良くて指揮官の傍からは離れられないのだ。

 

「この先、あなたが苦境に立たされて、どうしようも無くなって、これも運だ偶然だと諦めそうになったら、この事を思い出しなさい。こうなってしまった要因を変えれば、おのずと、その結果も変わる。カッコつけて言えば、運命は変えられるのよ」

 

「運命は変えられる・・・か。K5が聞いたら怒りそう」

 

「そうね。ケーちゃんの信条に反する言い方かもしれないから、あの娘にはまだ内緒にしておいてね」

 

 ガラにもなく哲学的な話になってしまったが、これはつまり、今回の任務の反省会みたいなものか。

 確かに、ウェンズデイはダイスを振れとは言ったが、振り方までは指示していない。私達から、そこまでのルール付けをしなかったからだ。

 なのに、馬鹿正直にダイスを適当に振り続けたから、あちこち振り回される羽目になったのだ。

 指揮官のようなやり方は出来なくとも、出目をコントロールする方法は何かしら考え付いたはず。

 私達の考動次第で、もっと早く帰還できたのだ。

 どんな手段を用いてでも、無事に帰ってくる。

 この基地に、大事な人が居る私にとっては、良い教訓になった任務だと言えよう。

 

「ああ、そうだ。他にもあなたに聞きたいことがあったんだけどさ。あなた達の部隊、負傷者は出ていないって言ってたわよね?」

 

「ええ。まぁ、ちょっとしたダメージはあったけど、負傷というほどのものではなかったわ」

 

「でも、装備してたリペアキットに使用の形跡があったわよね? 何に使ったの?」

 

 言われて、ギクリとしてしまう。

 昨夜、鉄血のエリート3人と交戦、逃したという大まかな事は報告書に載せたが、リペアキットを提供したことは秘密にしておいた。

 さすがに、指揮官相手とはいえ、鉄血に手を貸したことは言いづらかったのだ。

 まさか、指揮官が返却した備品のリペアキットまで管理していたとは。私の誤算である。

 

「あ~と・・・隠してたっていうか、その~・・・ゴメンなさい。隠してたことなんだけど」

 

 ウソをつき通すことは出来ない、と観念した私は鉄血エリートとの絡みを正直に話した。

 ついさっき、あんなに恐ろしい指揮官の様子を目の当たりにした後である。おっかなビックリ話をする私だが・・・幸いなことに、指揮官の様子は私の予想に反するもので。

 

「え~、なになに~? 鉄血エリートの娘達を助けたの? なんでなんで? そこのとこもっと詳しくプリーズ」

 

 もの凄い勢いで食いつかれ、その時のことを根堀り葉掘り聞かれる羽目になってしまったのだが。

 まぁ、指揮官はなんだか終始上機嫌だったので、それはそれで結果オーライとしておこう。

 

 END




改めまして、16.6%のミチシルベ、今回で最後となります。
最後まで読み続けてくれた読者の方々、本当にありがとうございました。

某ローカル番組のパクリネタとして展開した今作でしたが、まぁ、当方でやりたいイベントも
ちょくちょく挟み込めたので、思いの外思いの外な出来になってくれたかなと思っています。

毎度のことですが、また数週間のお休みを挟んだ後、新作の連載を始める予定ですので、気が向いたらぜひとも覗いてやってくださいな。
以上、弱音御前でした~

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