モンスターハンター:黄金の虚城   作:月侍

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始 異変の日

 

 きっと、その出会いは本当に偶然だったのだろう。

 あまたの偶然が重なった結果だと、知ったのは後の事だが……それでも、悪いものでは無いのだと信じていたい。いや、悪いものな筈がないのだ。

 

 

 

 

……………その日自分は、黄金の蟲と出会った。

 

 

─────────

 

 天気は快晴、森は平静。

 僕ことネロは、ここイスト村の住民だ。15歳で、両親はハンター。だから、村で皆に囲まれながら一人暮らしをしている。

 

 

 ここはイスト村。森と山に囲まれた、特にこれといった特徴があまりない村。

 逆に言えば、ここは平和な村ということ。だからこの村の事がすきなんだ。

 

 

「いち、に、さん……うん、これで全部だ。村長ー!」

 

 薪の数を数えて、きちんとあることを確認する。あったから、村長を呼ぶ。

 

 声をかければ、家の中にいた村長が出てくる。

 

「おお、終わったか。ありがとうな、ネロ」

 

「これもハンターになるための訓練と思えばこそだから、気にしないでください」

 

「うむ。励むと良いぞ」

 

 

 僕の両親はハンターだと先程言った。そのため、両親は基本的に家にいない。ドンドルマだったかそんな所に行っていた。

 まあでも、そんな両親は憧れなのだ。……例え死んでいたとしても。

 

 

 そういう重い話はさておき、薪の整理を終えて暇になってしまった。

 どうしようかなあとぷらぷら村の中を歩いていた。

 

 

 すると。

「わっ!」

 

「ヒャア?!」

 

 背後から大声を出され、びっくりして変な声が出た。

 

 振り向けば、そこには赤毛の少年。

 

「な、なんだ、テオか……」

 

「シシッ!よっ、ネロ!」

 

 彼はテオ。幼馴染。名前はおとぎ話の「炎王龍(テオ・テスカトル)」から取られたものだと、よく誇らしげに言われる。

 

 

「なあ、ネロ、今暇?」

 

「まあ、そうだけど……」

 

「よっし!んじゃあさ、森の川に釣りに行こうぜ!!」

 

 コイツはハチャメチャに行動力が高い。いや無駄に高い。そして僕はよく巻き込まれている。インドア気味なので助かるのだが……共に叱られるのはちょっとこまる。

 

 でも、釣りに行くのは別に問題ない。

 

「分かった。でも、まーた唐突だな」

 

「ああ、いい物が手に入りましてねぇお兄さん……」

 

「なんだその口調」

 

 突然怪しい商人のような言い方をしたテオにツッコミを入れると、彼は笑った。

 

 

「わっははは!!まあそーゆー事だから!!荷物取ってきて行こうぜ!」

 

「ま、そうだな。行くか!」

 

 そんな会話をして、無邪気に森へと向かった。

 

 

 空には、近くの山に住む『飛竜』が飛んでいる。

 しかし、その飛び方は何かを警戒するように大きな弧を描いていた。

 

 

────────

 

 

 森の中を進む。村を囲む森のうち、ある一定の範囲までは普通に進んでも大丈夫と言われている。

 その「動ける範囲」のつきあたりにあたる位置に、川がある。それなりに釣れるが、釣れない時もある。

 

 そこに、僕達は来た。

 

 

「……で、いい物って?」

 

 川に来て、釣竿を出しながらテオにきく。

 

「ふっふっふ……それではご覧下さい!」

 

 するとテオは、ニヤッとして何やらカゴを取り出した。そこには、数匹の大ぶりのハエがいた。

 

「……ハエ?」

 

「そう!釣りフィーバエ!!いい感じに纏まった数見つけたんだよ!だから入れ食いフィーバーしようぜってな!」

 

 釣りフィーバエ。釣りミミズよりも良い釣り餌で、使えばもうそれはすぐに食いつく。1回使ったことがあるが、サシミウオが3匹同時につれたのはびっくりした。

 

 

「ほほーう。いいな!でも、どこにいたんだ?」

 

「いつもの虫取りのとこ。けどまあいいじゃん?」

 

「ま、いっか。何匹か釣って刺身にするか」

 

「おう!」

 

 そう会話して、釣りフィーバエを釣り餌として釣りを始めた……のだが。

 

 

 ………数十分は経った気がする。けども、一向に釣れる気配がない。

 

「……あれぇ?確かに釣りフィーバエなんだけど……」

 

「テオが間違えた……わけはないか。釣りフィーバエは特徴あるし。」

 

 疑問に思って、川をのぞき込む。すると、なぜ気が付かなかったのだろう。そもそも魚が1匹もいないのだ。

 

「魚が、いないな」

 

 そりゃあ釣れるわけが無い。対象がいないんだもの。

 

「マジ?!はぁーーー、マジかぁ……いや、」

 

 テオは大袈裟に落ち込む。かと思えば、バッと顔を上げる。一々挙動がデカい。

 

 

「そうだ!なあ、ネロ!」

 

 ガシッと両肩を掴んでくる。こういう時、テオはだいたい何か悪い(楽しい)ことを考えている。

 

 

「……何?」

 

 

「川上の方行こうぜ!……実はな、この前こっそりそこに行ったら、沢山魚がいたんだよ」

 

 川上は、子供だけで行っては行けないと言われている方面だ。なぜなら、そっちは山に近いから。

 

 山には、蒼と桜の色をした『飛竜』の夫婦が住んでいる。なんだっけ、リオレウスとリオレイアだったか。

 

 夫婦は昔から山に住んでいるらしくて、イスト村含めたこの辺り一帯を縄張りとしているのだと村長から聞いたことがある。村を襲ったことはなくて、むしろどちらかと言えば村には友好的なのだとか。

 実際、小さい頃に近くまで降りてきた蒼の飛竜なら撫でたことがある。なんで友好的なのかは誰も知らない。

 

 

 だが、山にいるのはそんな穏やかな飛竜の夫婦だけでは無い。

 聞いた話だから本当に見た事がある訳ではないけど、山の方には時たま、危険な竜が出るのだと。

 

 なんだっけ。緑の雷を纏う黒い竜とか、恐ろしい容貌の村の鳥のような竜とか。あと青い熊や、赤い鳥のような竜も聞いた。

 

「……危ないんじゃないか?それ」

 

「だいじょーぶ!前行った時は何も出なかったし、出てきても近いからすぐ帰れるからさ!……それに、ネロも気になるだろ?」

 

「う゛っ……」

 

 それを言われると図星だから、言い返せない。それで微妙な顔をしていると、テオはニッとわらった。

 

「日が落ちる前にとっとと行こうぜ!入れ食いフィーバーでめちゃくちゃ釣って帰りゃいいんだし!」

 

「分かった……行くか!」

 

「おう、こっちだ!」

 

 

 

 

 手を引かれ、川に沿って茂みをかき分けて進む。すると、開けた場所にでてきた。

 

 川を覗けば、沢山の魚影が見える。なるほど、ここはあたりスポットだろう。

 

 

 僕達は早速、釣りを始めた。

 

 「……うおっ、もうかかった!」

 

 釣り糸垂らして数分もしないうちに、バンバンかかる。流石釣りフィーバエ。サシミウオ4匹同時は最高記録だ。

 

 そのまま調子に乗り、しばらく釣りを続けるのだった。

 

 

───────

 

 

 調子に乗って釣り続け、既にテオが持ってきたカゴは満杯。

 

「ふー、釣れた釣れた!」

 

「そろそろ戻るか……ん?」

 

 戻るにはいい頃かなと、空を見上げたその時。何か、見慣れないものが見えた。

 

「どした?」

 

「いや、ほら、空……」

 

 空を凝視すれば、何やら、影が2つ。片方は見慣れた蒼い影。もう片方は見慣れない、光を反射して金に輝く……あれは……?

 

「なんだ、アイツ? 金色の……飛竜?リオレウスさんと戦ってる……?」

 

 

 蒼いリオレウスと、何か金色の竜が空中戦を繰り広げているように見える。

 

 

「早く帰ろう」

 

「そうだな……忘れ物は」

 

 そうテオが言って、釣竿を持って帰ろうとしたその時、僕達の真横に、ズドンと何かが落ちてきた。

 

 

「へ?」

 

 

 それは、鋭い鱗。金のような黄土のような色合いをした、刃のような鱗。

 

 降ってきた方向を見れば、何やら、いつの間にか金色の竜がある程度降下した位置から、僕たちを見ていた。

 

『ヒュルルルル……』

 

 鳥の鳴き声にも聞こえる唸り声をあげている。ヤバい。

 

『ヒュイイイイイ!』

 

「に……逃げるぞ!」

 

「お、おう!!」

 

 方向は分からないが、とりあえず走り出した。金色の竜が追ってこようとしたのが視界の端に見えたが、その直前に蒼いリオレウスが噛みつき、ブレスを爆発させていたのが見えた。

 

 とにかく、あの竜の視界から外れなければ!!

 

 

 そう思い、必死に走った。帰れるかなあ?!

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