「っ、はーっ、はー………」
かなり走って、体力がキツくて、一息。
カゴも釣竿も置いてきてしまい、持っているものは袋がひとつ。中身は何も無い。
「と、とりあえず……撒いたか?」
「多分……」
息をつく。木にもたれて、休憩。しかしここはどの辺りなのだろうか。
「村、帰れるかなあ……」
「帰れる帰れる!……道が分かれば。」
「えぇ……」
どうしようかなあ、と考え込む。
ふと、視界の端に金色が映った。
「!」
まさかと思って見渡すが、あの金色の竜の姿も鱗もない。
「どうしたんだ?」
「いや、なにか見えたような……」
何だろうかと思いながら、周囲を注意しながら見る。
すると、なにやら茂みから、ほんのりと金色っぽい光が見えた。
茂みを掻き分けてみる。
「おい、何して……」
「……これは?」
茂みの中にあったのは、卵。それも、金色をした卵。若干縦長気味の卵。
「卵、だよな?アプトノス……では無さそうだしな。飛竜の卵とも違うし……」
「金の卵って、ガーグァが稀に産むって聞いたことはあるけど……形が違うし」
なんの卵だろうか。手触りで何かわからないかと触れてみる。つやっとしている。わからない。
「珍しいし、持って帰ろうぜ」
「えっ、これを?いいけど……テオは流石に無理だろ?家にお兄さんいるし」
「だから、ネロが持っててくれよ!ネロ器用だし!」
「なんだその理論……まあ、僕も気になるし、いいか」
卵を手に取り、袋へと入れる。卵は重いが、かと言って動けないほどではない。
「さて、それにしても帰り道を探さないとね」
「そーだな。そろそろ暗くなってきたし」
空を見上げれば、空は茜色。
「とりあえず、川を探────」
流星の如く、黄金の刃が周囲に突き立つ。まさか、こんどこそ。
『ヒュイイイイイイ!』
「さっきの……!」
「もう追い付いたのかよ!」
金色の竜が、全身焦げ付いた様子で、空に現れる。
逃げ場は……わからない。間違いなく、これ以上逃げればどこに行けばいいか分からないまま、野垂れ死ぬ事になるだろうことは分かる。
「りっ、リオレウスさんの攻撃をかいくぐって、俺たちを追ってきた……ってコト?!」
「多分そうなんだろうけど、どうして僕達を狙うんだ……?!」
わからない。が、打つ手がない!それに何より、蒼いリオレウスはいったいどうしたんだ……?!
『ヒュイィ………ヒイイイイイイイ!』
竜の咆哮が鳴り響く。恐怖か疲労か、動けない。
もう、ダメなのか───────
「─────────伏せてね、君たち!!!」
響いたその声に従うままに伏せる。
すると、次の瞬間、目の前で大きな爆発が巻き起こった。
ドーム状の爆炎が、金色の竜を焼き包む。それは、あまりにも強く輝く星が顕現したかのような。
炎が消えるとと同時に、解放された金色の竜は地に堕ちた。
何が起こったのかわからないまま呆然としていると、羽音と足音がした。
「……君たち、怪我はない?」
その声に顔を上げると、そこには女性がいた。
薄黄色を帯びた白い髪をした、虹色のような光沢を帯びる翼を持った純白の鎧の女性だった。
「あ、はい……」
「よかったよかった!立てる?」
差し出された手を取り、立ち上がる。テオも同じく立ち上がる、が……なんだか女性を見てぼーっとしている。
まさかこいつ……
「ええっと……君、大丈夫?」
「え……あ、はい!!イキテマス!」
「元気だね……ふう。君たちが、ネロくんとテオくんであってる?」
名前を呼ばれて、テオも正気に返ったのだろうか。変な声をで返事をしていた。いや完全には正気じゃないな、うん。
「えっと、どうして僕達の名前を……?」
すると、女性は「よしよし」と小さく呟き。
「私はマデュ。ハンターだよ。ここらに用があったから村に来たんだけど、そしたら子供が2人帰ってきてないし、何かおかしいからって頼まれちゃってね。」
あ、これ、多分帰ったらお説教だ。
それに気が付き、テオは完全に正気になって固まっている。
「いやあ、ビックリしたよ!ターゲットのセルレギオスも、探すべき子達も同じところにいたからね」
「そういえば、よく分かりましたよね、僕達の居場所が」
「あ、それはね。あの子が教えてくれたんだよ」
マデュさんの示す方向には、桜の色をした飛竜が、リオレイアが居た。
あの蒼いリオレウスの奥さんだというのはひと目で分かった。
「最初はびっくりしたよ。こんな所にリオレイア亜種が居るもん。でも、村長さんから亜種夫妻の話は聞いていたし、まさかなって思って敵意がないって示したら、乗せてくれて、ここまで連れてきてくれたんだ」
『クルルル……』
「リオレイアさんが?」
テオがきくと、桜のリオレイアは頷いた。
「そうだ。ねえ、この子の夫さん、知らない?」
蒼いリオレウス……逃げてきた方向くらいしかわからないが……
「多分、あっちの方かとは思いますが……」
「分かった。はぐれちゃダメだから、ついてきて」
マデュさんについて、僕達は歩き出した。
……木々の間を進み、川沿いの空間。
そこに、横たわる1匹の竜。それを目にした瞬間、桜の飛竜は駆け出し、その竜をつついて、ゆすって、そして、寄り添った。
しばらくして、桜の飛竜は立ち上がった。
それから、僕達は、桜のリオレイアとマデュさんによって、村へと送られた。
───────
「………はぁぁぁぁ」
村に帰って、こってりしぼられて、やっと解放されて家。
大の字に寝転び、ひたすらに疲れたことを実感する。
結果的に魚はゼロだし、釣竿は置いてきたし。
収穫と言えば、金色の卵くらいだ。ほんと、なんというか……そうだ。
その肝心の金の卵、これは一体なんなんだろうか?
そう思って、袋の上に置いていた卵に触れた、その時。
ピシ、とヒビが入る。
「?!」
パキパキ、ピシ、と割れていき、中から産まれたものが見えた。
『キィ』
そう小さく鳴いたそれと、目が合った。
それは、黄金の螳螂だった。