XX:キタサンブラック 1
三年前に開催されたトゥインクル・シリーズ国際招待競走──ジャパンカップ。
世界最強と名高いチーム・アルデバラン、その中でも”星”という異名で一世を風靡したアイドルウマ娘──ミライが出走するということもあり、当時のトゥインクル・シリーズの中でも異例の注目を浴びることとなったGIレースである。
ミライの走りを生で見ることが出来る。直接応援を届けることが出来る。
その事実に胸が躍った。普段は画面越しに憧れを抱くだけだったミライに、会うことが出来るなんて。
レース当日。あたしは親友のダイヤちゃんを誘って、ジャパンカップの開催地である東京レース場に足を運んだ。
来場者数が十万人を超える異例の熱狂具合に、あたしの期待は否応無しに高まった。
荒波のような人混みに尻込みするダイヤちゃんを引き連れて、あたしはホームストレッチの最前列を目指した。憧れのミライの姿を一番近くで見たかった。普段は人情深いあたしだけれど、今回ばかりは遠慮できない。
小柄な体格を生かして混雑する人の隙間を縫い、あたし達はレースの観戦に最適な場所をなんとか確保することができた。
柵から身を乗り出す勢いで、あたしはターフの上でゲート入場を控えるミライを食い入るように見つめる。
──あ!
「いま、あたしに向けて手を振ってくれた……っ」
今、ミライがチラリとこちらを見た。あたしに向けて、ミライが手を振ってくれる。
「いや、絶対私だよ!」
「あたしだって! 絶対目があったんだから!」
「それは違うよキタちゃん。ぜっっっっったい私!」
多分、彼女が手を振ったのはあたしに向けてでもダイヤちゃんにでもないだろう。このような勘違いは日常茶飯事だ。
『──間もなく各ウマ娘の出走準備が整います』
ダイヤちゃんと言い争っている間に、ミライの晴れ舞台の準備が整う。くだらない喧嘩で一生に一度の機会を見逃すわけにはいかない。
『ついに実現した夢の舞台。その幕が今、上がります!』
世界中の期待を一身に受け、ミライがターフを駆け抜ける。
「すごい……」
彼女の優雅な走りはまるで、夜空を駆ける流星のように美しい。”星”という異名を冠するに相応しい、圧倒的な速さだった。
「あたしも、なれるかな……」
ミライの勇姿に見惚れながら、あたしは呟く。いつかあたしも、彼女のようなウマ娘になりたい。
彼女と同じウマ娘に生を
***
三年前。あたしは”星”の輝きに照らされて、将来の理想像を形にすることが出来た。
ああ、忘れもしない。
三年前のジャパンカップ。
あの時の
絶対に忘れない。
──キタサンブラックが描いた夢の、誰も知らない本当の始まり。
***
「……ダイヤちゃ〜ん? もぉ、どこ行っちゃったの?」
ミライが出走したジャパンカップは、東京レース場で開催される今年最後のレースであった。
第十二レース全ての出走が終了すると、レース場に併設されたライブ会場でウイニングライブが行われる。
十万人を超える来場者が一斉にライブ会場へ移動するため、小柄な体格のあたし達は荒波のような人の移動にあっけなくのみこまれてしまった。
有り体に言うと、あたしは迷子になっていた。
東京レース場には何度か訪れたことはあった。しかし、人混みから抜け出すので精一杯だったあたしは現在地がどこなのか、分からなくなってしまったのである。
ダイヤちゃんに電話をかけようとしたけれど、まるで見計らったようなタイミングでスマホの充電が切れてしまった。
あたしは使い物にならないスマホをカバンにしまって、周囲を見渡す。
先程まであたしの視界は見渡す限りの人、人、人で埋めつくされていた。しかし今はどうだろう。人の気配が微塵もなく、無機質で細長い迷路のような廊下が無限に広がっている。
避難口誘導灯の蛍光色に照らされた少し不気味な道を、身体を小さくしながらゆっくりと歩く。
この後、ジャパンカップで見事一着となったミライのウイニングライブが控えている。彼女が舞台のセンターに立つ瞬間までには、何としてもここから抜け出さなければならない。
変わり映えのしない通路をしばらく進む。だんだんと胸に込み上げてくる不安が大きくなるのを感じて、焦燥に駆られるようにあたしは走り出した。
「えっ──」
そして、廊下の突き当たりを曲がった瞬間、あたしの身体が何かに衝突した。
「──ぶぐぉっ!?」
どうやらあたしは、人とぶつかったようだ。その衝撃でスーツ姿の青年がひしゃげたような声をあげて、背面の壁に身体を強打してしまう。
「え、あ、ごっ、ごめんなさいっ!?」
焦りが募るあまり、少し勢いが出てしまったようだ。あたしは慌てて青年の元に駆け寄った。
「だっ、大丈夫ですか……っ!?」
見た感じ、青年が怪我を負ったような様子はない。
「あ、ああ……うん。大丈夫……慣れてるから、あたたっ」
両手に薄手の革手袋を着用した青年は、頭部を軽くさすりながらおもむろに起き上がる。
少し変わったファッションだな……なんて余計なことを考えていると、不意に青年から声がかけられた。
「えっと……君、こんなところでどうしたの?」
青年と目が合う。ちょっとカッコいいな、なんて不要な感情が脳裏に浮かんで、あたしは慌ててそれを振り払う。
「あ、えっと、その……」
「もしかして、道に迷った感じかな?」
「……はい」
青年の言葉に微かな羞恥心を覚えながらも、あたしは素直に頷いた。
「ご両親と一緒に来たのかな?」
「い、いえ……友達と」
「ふむ……」
青年はあたしの前でしばらく考え込む。
「とりあえず、ここを出よう。窓口まで案内するよ」
「……えっと」
あたしはこのまま青年について行っても良いのだろうか……なんていうあたしの警戒心は、親切な青年に筒抜けだったようだ。
「ああ、すまない。俺は君達ウマ娘を指導するトレーナーだ。ほら、襟にバッジが付いているだろう?」
青年の言葉通り、彼が着用するスーツの襟元には身分を証明するライセンスバッジが輝いていた。
「ご、ごめんなさい……」
「謝る必要はないよ。まぁ、たとえ君に話しかけたのが変質者だったとしても、返り討ちにあうだけだろうけどね」
乾いた笑みを浮かべながら、青年が歩き出す。
その半歩後ろからあたしは続く。
「あの、ひとつお聞きたいんですけど……」
「うん?」
「えっと……トレーナーさんはどうしてこんなところを歩いていたんですか?」
「あぁ……人避け?」
確かに、外は会場を移動する大勢の人々でごった返している。
「レースが終わったから、控室へ行って
青年の言葉の節々から、彼の苦労がひしひしと伝わってくる。
青年はあたしの緊張を紛らわそうとしてくれているのか、他愛ない話題を色々と振ってくれた。
「この時間帯だと、君はジャパンカップを観戦しに来たのかな?」
「は、はいっ! ミライさんの応援に来ました!!」
あたしの声のトーンが跳ね上がる。青年は少し驚いた表情を浮かべたが、年相応にはしゃぐあたしの様子を見て、次第に顔を綻ばせていた。
「初めてミライさんのレースを生で観ましたっ! とっても可愛くてカッコよくて速かったですっ!!」
「ははっ……そっか。それは良かった」
「──っ!? あ、うぅ……」
いつの間にかあたしは、聞かれてもいないことを早口で青年に語っていた。
正直、恥ずかしくて顔から火が出そうだった。
青年と会話を続けているうちに、いつの間にか迷路のような廊下を抜け出していた。どうやらあたしが迷い込んだのは、レース関係者が使用する通路だったようだ。
しかし通路から抜け出したは良いが、ここはどこだろう。廊下の至る所に扉があって……あ、なるほど。レースに出走するウマ娘達の控室か。
「ごめん、少しだけ待っていてくれるかな?」
青年の後にしばらく続いたあたしだったが、彼は一足先に目的地へ到着したのだろう。通路左手に設置された扉の前で立ち止まった。
「はい」
「ありがとう。すぐに戻るよ」
あたしにそう言い残して、青年は控室の中に入って行った。
パタリと扉が閉まる。扉の真ん中には控室を使用するウマ娘の名前らしきものが表記された紙が貼られていたが、あいにく英語で書かれていたため読むことが出来なかった。
しばらく待つ。
すると意外にもすぐに、部屋の奥から青年が出てきた。
「もう良いんですか?」
「ああっと……少し話が長引きそうでさ。君さえ良ければ、中で待っていてくれないかな」
「は、はいっ。大丈夫です」
「ありがとう。簡単なお茶菓子を用意するよ」
控室といえば、今日のレースに出走したウマ娘がいるんだよね。
あたしの心臓が不意の出来事で大きく跳ねる。
青年が控室の扉を開けてくれる。
入っていいよ、ということなのだろう。
「お、お邪魔します……」
おそるおそる、あたしは控室に一歩を踏み込む。
「……?」
しかし、控室を見渡しても誰もいない。でもトレーナーさんは確かに、誰かと会話していたような気がするんだけれど。
「あ、あの誰もいませ──」
あたしは背後に控える青年に疑問をぶつけようとして振り返る。あたしの意識が青年の方へと向いたその瞬間。
「──わぁっ!!」
「うきゃあああああああああっ!?!?!?」
突然女性のいたずらな大声が、あたしに襲い掛かった。あまりに不意な出来事に、あたしはとんでもない声をあげてしまう。
あたしは何事かと、慌てて声の主を視線でたどった。
………………………………え?
「あは、あははははははっ!!!」
あたしは一瞬、自身の目と耳を疑った。
「……はぁ、ファンの前で笑いすぎだ」
「ごめんごめんっ。で、でもこの子のリアクションが、もうとっても可愛くって、あははっ!」
「…………
「うっ……あ、あはは。驚かせちゃって、ごめんね?」
え? …………ミライ?
え。
「あ、あれ? 反応がなくなっちゃった……」
「そりゃあ、あんな風に驚かしたらこうもなるだろう」
「う、うぅ…………」
…………?
「すまない。道に迷った君のことをミライに話したら、ぜひ会いたいって言いだしてさ」
「だって私、ファンと交流する機会が全然無いんだもん」
あたしの目の前で青年と言い争うウマ娘は、あろうことか先程のジャパンカップで”星”のミライが着用していたきらびやかな勝負服と、同様の衣装に身を包んでいた。
「……ほん、もの?」
「え、うん」
「ミライ……さん?」
「うんうんっ」
あたしは彼女の言動に、しばらく思考がフリーズして。
「み、ミライさんって──日本語喋れたんですか!?」
「え、驚くとこそこじゃなくないっ!?」
膨張した困惑が一気に爆発した。
えっ? あたしの目の前に本物のミライさんがいる!?
ええええええっ!?!?!?
「私、ハーフなんだ。母親が日本人なの。こっちに住んでたこともあるから、日本語はぺらぺらだよ」
「は、はわ、はわわわわわ…………っ」
ほ、本物だぁ…………。
「いつも応援してくれてありがとっ!」
「は、はひっ!」
ミライさんは小柄なあたしに目線の高さを合わせて握手をしてくれた。内心パニックになっているあたしには
「トレーナーから聞いたよ? 道に迷っちゃったんだよね。でも安心して、私のトレーナーが責任を持って送り届けてあげるから!」
「言い方」
「別に私が連れて行ってあげても良いけど、多分会場がヤバい事になるよ?」
「……確かに」
本物のミライさんとの対面で意識を完全に持っていかれていたが、そういえば……。
「あ、あの……。トレーナーさんって、もしかして」
ミライさんは先程、迷子のあたしを案内してくれた彼のことを”トレーナー”って呼んでいたような気がする。
「厳密には彼女のトレーナーでは無いけれど、やっていることはトレーナーのそれと変わらないかな」
「もぉ、トレーナーは私のトレーナーでしょ!? ハッキリ言わないと、この子も困惑しちゃうよ」
何か大人の事情があるのかもしれない。少なくともあたしの記憶では、チーム・アルデバランに所属するミライのトレーナーは目の前の彼では無かったはずだ。
「この人はね、私のとっても大切なトレーナーなんだ」
ミライさんは、遠慮がちに背後に控えていたトレーナーさんの腕をグイッと引っ張って、あたしに紹介してくれた。
トレーナーさんを隣に引き寄せたミライさんの表情は……なんて表現すれば良いのかな。少なくとも、ミライさんのこんな可愛らしい表情は見たことが無かった。
「ミライさんの、トレーナーさん……」
「ま、まぁ……そうなるの、かな」
トレーナーさんは少し恥ずかしそうに頬をかきながら、あたしの言葉を肯定した。
そっか。
そうなんだ。
この人が、ミライさんを育てたんだ……。
「あ、あの……っ!」
「「……?」」
仲睦まじい二人のやりとりを眺めていると、胸がソワソワするような不思議な感情が込み上げてきた。
あたしはそれを心の中で咀嚼して、気付いたら二人に声をかけていた。
「あたし、ミライさんの大ファンなんですっ!」
あたしの唐突な告白に、二人は正直困惑していたと思う。
「あたし、ミライさんのようなウマ娘になりたいんですっ!!」
でも、あたしは心に生まれた衝動を我慢することが出来なかった。
「トレーナーさんっ! 将来あたしが大きくなったら、あたしのトレーナーになって下さいっ!!」
良く言えば、自分の気持ちに正直。悪く言えば、本能的な衝動を抑えられない。
勢いのままに頭を下げた後で、じわじわと羞恥心と後悔が込み上がってくる。
こんなどこのウマの骨とも知れない子供に突然迫られて、相手にとっては明らかに迷惑だろう。
TPOを弁えない失礼千万なあたしの言動。
本当にごめんなさい。
「……あ、あはは、困ったな」
案の定、突然子供に言い寄られたトレーナーさんは困惑し、乾いた笑みを浮かべていた。
「あ、そ、その……ごめんなさいっ。本当はこんなこと言うつもりなんてなくて、そのっ」
今更訂正しても、ギクシャクしてしまった空気は元には戻らない。
多感な時期に入ったばかりのあたしはその事実を痛感しただけで感情が暴れ出してしまって、目尻に涙を浮かべてしまった。
昔から周りが良く見えない子だと言われてきたけれど……それが何も、あたしの憧れの人がいる前で起きなくても良いじゃないか。
俯いて、今にでもこの控室から走り去ってしまいたい気持ちに駆られていると。
「──ごめん。泣かせるつもりは無かったんだ」
ミライさんのトレーナーさんが立膝をついて、革手袋を外した手であたしの頭を撫でてくれた。
「ありがとう。素直な気持ちを誰かに伝えるってことは、誰にでも出来ることじゃない」
「ぅ、ぅう…………」
「これは君の一番の長所だ。自信を持っていい。涙を流す必要はないよ」
トレーナーさんはこんなあたしに幻滅するどころか、言動を肯定的に捉えて優しく宥めてくれる。
「私もね、君がそう言ってくれてとっても嬉しい。たった今、私の
そしてトレーナーさんどころか、彼の隣に立っていたミライさんまでもあたしの愚行を肯定してくれた。
「……君は将来、とっても強いウマ娘になれる。世代の頂点も夢じゃない」
「ど、どうしてそんな風に言えるんですか……?」
「なんとなく分かるんだ。”星”を育てた俺が保証するよ」
「ほ、本当……ですか?」
「ああ」
トレーナーさんはまるで、確信があるかのような口調で言い放つ。
どうしてだろう。まだ出会って間もない、名前も知らない彼に認められたような感覚がして、胸の奥がかあっと熱くなった。
「た、ただ……スカウトの件は、そうだな。俺の活動拠点がそもそも、海外だからな……」
「そ、そのことはもう忘れて欲し──」
「えーもったいないよっ!」
あたしが慌てて打ち消しの言葉を言おうとした瞬間、ミライさんが被せるように声を発した。
「トレーナー! せっかくこの子が勇気を出して言ってくれたんだから、しっかりと返事をしてあげるべきでしょっ!?」
ミライさんが困惑するトレーナーさんを説教している。二人は普段から、このような仲睦まじい関係なのだろうか。
やがてトレーナーさんの方がミライさんの熱意に折れたのか、改めて立膝をついてあたしに向き合ってくれた。
「……そうだね。もし君が本格化を迎えて、レースに出走出来るようになったら。その時は、改めて君のことをスカウトさせてもらうよ」
「……っ」
たかが子供の口約束。きっとトレーナーさんは、本気でその言葉を口にした訳では無いと思う。
数多といるファンの一人に対する、少しだけ特別なリップサービス。そんなことは、熱に浮かされた思考をちょっとでも動かせば分かることだった。
でも、まだまだ子供だったあたしには、憧れの人達を前にして冷静になることなんて出来なくて。
彼から貰った言葉が、どんなものよりも嬉しくて。
「良かったねっ! ……あ、そうだ!」
トレーナーさんの返事に満足そうな笑みを浮かべたミライさんが、何かを閃いたかのように表情を更に明るくした。
「これ、あげる。私の夢が叶った記念に」
ミライさんは自身の左耳に付けた耳飾りを取って、きょとんとするあたしの手に置いた。
ミライさんの耳飾りは、三種類の鮮やかなガーベラとリボンがあしらわれた高級で綺麗な代物だった。
「この耳飾り、私の一番のお気に入りなんだ。だから、私の夢を叶えてくれた君に
押し付けられるがままに受け取ってしまったが、これは本当にあたしがもらっても良いものなのだろうか。
「そして、君の身体が本格化を迎えてレースに出走できる時期になったら、この耳飾りをトレーナーに渡すの。"私をスカウトして下さい"って。どう? なんだかとってもロマンチックだと思わない?」
「は、はいっ! とっても素敵だと思います!!」
なんて情熱的なアプローチだろう。まるで、物語のヒロインになったような気分だ。
「……あ、もうこんな時間だ。ミライ、そろそろウイニングライブの準備をしないといけない」
憧れの人達と会話した幸運な時間は、あっという間に過ぎてしまった。
レース後からはぐれてしまったダイヤちゃんにも、心配を掛けてしまっているかもしれない。
「俺は窓口にこの子を送ってくる。すぐに戻ってくるから、ちゃんと移動の準備を済ましておくように」
「うん、わかった」
そろそろ行こうかとあたしに声をかけて、トレーナーさんが立ち上がる。
夢のような時間は、もう終わり。
「──ミライさんっ!」
こんな幸運はもう二度と巡ってこない。
「あたし、これからもミライさんのことを応援しています!」
だからせめて、悔いが残らないように自分の気持ちを伝えたい。
「今日のウイニングライブ、とっても楽しみに待っていますからっ!!」
──あたしに夢をくれて、ありがとうございます。
***
今でも時々、三年前の夢を見る。
"星の消失"を経てもはや叶わぬ夢となってしまったけれど、あの日の幸運は、あたしが前へと進む大きな原動力となっている。
ミライさんの形見であるガーベラの耳飾りは、あたしの一番の宝物として今でも大切に保存している。
ミライさんと交わした約束を守るために。
あたしを認めてくれた
子供の頃の口約束に、三年経った今でも淡い期待を寄せてしまっている。
ロマンチックな思い出に胸をときめかせるなんて、快活なあたしらしくないけれど。
「ミライさん……」
でも、あたしだって年頃の女の子なんだから。
仕方ないですよね。
「…………トレーナー、さん」
あの人との出会いに、素敵な運命を感じてしまっても。
仕方……ないですよね。