四月十七日、日曜日。
雲一つない快晴の下、鮮緑のターフがそよぐ中山レース場に集った総来場者数、衝撃の十一万人。
足の踏み場もないような間隔で往来する観客の目的は言わずもがな、今年のクラシックレースの開幕戦──GⅠ重賞:皐月賞。
URAが運営するトゥインクル・シリーズにおいて、皐月賞は”五大競走”に指定される最高峰のGⅠレースだ。
皐月賞の出走時刻は、本日の十五時四十分。現時点ではまだ第一レースの出走すら迎えていないというのに、会場は既に嵐の中の荒波と化している。
俺達は会場が人の波でごった返すことを見越して、前日に宿泊した中山レース場付近の旅館から早急にチェックアウトを済ませていた。
その甲斐もあって、俺とダイヤは人混みに巻き込まれることなく運営側が用意してくれた控室にたどり着くことが出来た。
持参した荷物を一旦下ろして、俺達は控室に備え付けられたテーブルの椅子に腰掛ける。
「少し休憩を挟もう。皐月賞の出走時刻までまだまだ余裕があるから、ダイヤは控室でくつろいでいてくれ。俺はその間に、色々と準備を進める」
「分かりました」
ちなみにダイヤに与えられたこの個室は、重賞レースに出走するウマ娘のみが使用出来るちょっと特別な控室である。
空間は全体的に広々としていて、先天的に狭い場所を苦手とするウマ娘にストレスを与えないような設計となっていた。
控室は外部との接触を完全に断つことが出来る場所に設けられているため、選手は心置きなく集中力を高めることが出来る。
いくつかの修羅場を自身の足で切り抜けてきたダイヤといえど、さすがにGⅠレースともなれば緊張でガチガチになってしまうのも無理はない。
「パドックの開始は出走時刻の三十分前だから、勝負服を着るのは十四時を回ってからにしよう」
「そ、そうですよねっ」
俺はそそくさと勝負服を抱えて部屋の奥に消えていこうとするダイヤを引き止めた。
ダイヤの場合は特にそうだが、勝負服に袖を通す際にはスタッフの人達が着用の手助けをしてくれる。
「えっと、つまり……あと数時間は控室で手持ち無沙汰ってことでしょうか」
「まぁ、そういうことになるかな。ちなみに、控室の外へ出るのはやめた方がいい。最悪、観客に捕まったら戻ってこれなくなる」
「き、肝に銘じます」
……さて。
緊張をほぐすためにくつろいで良いとは言ったけれど、忙しなく尻尾が揺れ動く状態では、肩の力を抜くことなんて出来ないだろう。
マックイーンがこの場にいれば先輩からの助言を貰うことが出来たかもしれないが、彼女にはまだ精神的に不安定な面が存在する。そのため、彼女は現在、療養施設からダイヤのことを応援してくれていた。
「よし……それじゃあ一度気持ちを切り替えるために、作戦の最終確認をしよう」
「……っ」
出走までの待機時間はなるべく有効に活用したい。俺は何か別の物事に集中させることで、彼女の緊張を和らげようと試みる。
俺とダイヤはテーブルを隔てて対面する形で、その席へ静かに腰を下ろした。
まずは簡単に、ダイヤが出走するレースの概要から。この辺りは何度も説明しているため、軽く流す程度に留めておく。
「GⅠ重賞:皐月賞。中山レース場:芝二千メートル右/内。バ場状態は非常に良好で、フルゲート十八人で出走する。ダイヤの枠番は六枠十一番だ」
天気予報では明日から二週間程度、全国的に不安定な天候が続くとのこと。なので、快晴の空でレース本番を迎えることが出来たのは非常に大きかった。
「それじゃあ早速、本題の作戦について再確認していこう」
ダイヤは今回、基本戦術を大きく変更して皐月賞へと挑む。
具体的には、末脚を生かした差しの戦術から、序盤から好位につけて良い脚を長く使う
中山レース場:芝二千メートルというコースの特徴として、最終直線が非常に短く、高低差約二メートルの坂路をスタート直後とゴール直前で二周するといったことが挙げられる。
特にこのゴール直前の坂路が害悪で、終盤に突入するまでにスタミナとパワーを温存しておく必要がある。そのため全体を通してスローペースになりやすく、先行集団に脚が残っていることが多い。
加えて最終直線の距離が三百十メートルとなっており、末脚を得意とするウマ娘がそれを活かしきれないといった展開も多く見られる。
皐月賞の制覇に向けて、他のライバル達は必ずダイヤの末脚を対策してくる。ならいっそ、一番の武器を捨ててしまおう。相手の意表を突いてマークを弱らせ、電光石火のように二千メートルを駆け抜ける立ち回りが、俺達の作戦であった。
「トレーニングの成果を発揮できれば、ダイヤなら新しい戦術も難なくこなせるはずだ。去年の自分とは違うってことを、みんなに見せつけてやろう」
「はいっ」
仮に当初の作戦が上手く決まらなかった場合でも、俺達は二の矢三の矢を抜かりなく用意している。盤石の布陣を敷いて、俺はダイヤを夢の舞台へと送り出すのだ。
皐月賞を想定したトレーニングはこの数ヶ月間で散々行なってきた。もはや身体に染み付いているレベルと言っても過言ではない。
「そして……重要なのはここから。皐月賞に出走するウマ娘の情報について、今一度注意するべき相手を押さえておこう」
俺はダイヤに対して、作戦の概要が記された書類とは別の書類──独自に偵察した出走ウマ娘の情報が記載された──を手渡し、最終確認作業に入る。
「一番警戒すべきウマ娘は、チーム・リギルに所属するドゥラメンテ。二番人気に推されたウマ娘だな。去年のホープフルステークスを見れば分かると思うけど……ドゥラメンテの末脚の爆発力は、ぶっちゃけヤバい。今回俺達が実行する作戦は、彼女の末脚を振り切るためのものと言っても過言じゃない」
トレセン学園で最強集団の一角として名高い、チーム・リギルの新星エース。東条トレーナーが手塩にかけて育てたドゥラメンテは、皐月賞の前哨戦である弥生賞を圧勝し、今最も勢いのあるウマ娘と言えるだろう。
ドゥラメンテ最大の武器は言わずもがな、その冠名を彷彿とさせる荒々しい強靭な末脚。
地形やバ場状態、レース展開をものともしない彼女の追い込みをねじ伏せるためには、
ダイヤが皐月賞を制覇するためには、仕掛けどころは絶対に失敗できない。
そして、ダイヤが警戒すべきウマ娘は他にも数多く存在する。
先月のスプリングステークスで一着となった三番人気、リアルスティール。
ジュニア級GⅠ重賞、朝日杯FSを制覇した四番人気、リオンディーズ。
トライアルに指定された若葉ステークスを叩いて本番に臨んだ五番人気、マカヒキ。
ホープフルステークス二着、スプリングステークス二着と善戦を続ける六番人気、チーム・スピカ所属のキタサンブラック。
皐月賞制覇の有力候補として名前の挙がる彼女達は、ほとんどが後方からのレース展開を得意としている。
後方集団に大きな団子が生まれれば、条件クラスの二の舞を演じてしまうのは目に見えていた。
その点からも、ダイヤが先行策に打って出ることが出来たのはとても大きなアドバンテージだ。
「それで……今回の作戦では以前にも説明した通り、相手をマークする立場に回ってもらう。誰をマークして、彼女達をマークする目的が何か。もう一度、説明する必要はあるか?」
「いいえ、大丈夫です」
「なら良し」
ダイヤ自身も俺が提案した作戦の要点を理解しているため、最終確認はこの辺りで終わっても良いだろう。
「……あとは、そうだな。中山レース場のバ場は基本的に、内ラチが荒れている傾向がある。良バ場といえど、進路選びは慎重に見極めた方が良い」
「分かりました」
「ミーティングで話すことはこれくらいだけど、何か聞いておきたいことはあるか?」
「大丈夫です」
こうしてダイヤと共に入念な確認作業を終えたわけだが……時間にして、ようやく第一レースの出走時刻を迎えた程度だ。
第十一レースに予定されている皐月賞の出走まで、五時間以上待機している必要がある。
「…………」
先程からダイヤも緊張でガッチガチだし、一度座った椅子から立ち上がろうともしない。
そんな彼女の姿を見ていると、現在大勢のファンから注目を浴びている強かなウマ娘といえど、こういうところは年相応の女の子なんだなって思ったりもする。
「…………」
そして……そんな彼女を温かい眼差しで見守る俺も、実は内心バクバクだったりする。
何故なら今日は、教え子の夢が叶うかもしれない本当の晴れ舞台。しかも、ウマ娘にとって生涯で一度きりのクラシックレース。
ダイヤを支える指導者として、彼女に余計な心配を掛けさせないようしっかりしなければ。
「……兄さま」
「うん?」
「兄さまも、緊張されているのですか?」
「…………ごめん」
しかし、俺の緊張はどうやら教え子に筒抜けだったようだ。
「隠していたつもりだったんだけど、よく分かったな」
「ずっと見ていましたから。兄さま、緊張すると左手の革手袋をくいってしますよね」
「……あ」
ダイヤに指摘されて、俺は自身の左手に視線を落とす。
確かに俺は、右手で反対の革手袋の付け根を引っ張ることがある(今もそうだ)。
手袋をピシッと伸ばすと、何だか身が引き締まるような気がして。
「ふふっ。私達、お揃いですねっ」
「お揃いだな」
お互いに笑い合って、少しだけ場の空気が軽くなったように感じる。
「だいぶレースには慣れてきたと思っていたんですけど……緊張して震えが止まりません。これが、GⅠレースというものなのですね」
トゥインクル・シリーズで開催される年間レース数は、約三千四百レースあるとされている。
その中で開催される重賞競走の合計は、百三十八レース。
そして、世間が最も注目するトゥインクル・シリーズ最高峰のGⅠ重賞は──たったの、二十六レース。
やはり、重みが違うのだ。知名度も、賞金額も、得られる名誉も……何もかも、GⅠレースは格が違う。
だからこそ、多くのウマ娘がGⅠレースという晴れ舞台に夢を抱いて、世界中の人々がこぞって熱狂する。
「……ミライさんも、初めてGⅠレースに挑んだ時は……私のように、緊張を感じていたのでしょうか」
以前は熱狂する立場にあったダイヤが、在りし日に抱いた胸の高鳴りを呼び覚ますようにしみじみと呟いた。
「世界中の方々を魅了して、誰よりも速くターフを駆け抜けて。そんな素敵な姿に魅せられた私が、同じ世界に飛び込もうとしているなんて……いまいち、実感が湧かないです」
ミライ、か……。
「そうだな……あいつ、みんなが見ている場所では余裕があるように振る舞ってたけど、控室ではいっつも顔を真っ青にしながら緊張してたよ」
あいつはどうも、見えっぱりな側面があったから。
わがままな性格を周囲にはひた隠しにして、緊張を何とかしろと毎回せがんで来たっけ。
「メイクデビューの時ですら、緊張しすぎて泣きついて来るくらい。世界的アイドルウマ娘ってチヤホヤされて得意になっても、レース直前の姿はどこにでもいる普通の女の子だったよ」
「そう、なんですか……。ミライさんほどのウマ娘でも、やっぱり緊張はしてしまうんですね」
「ああ。それに、緊張するってことはそれだけ、真剣に準備を積み重ねてきたってことの裏返しだ。武者震いみたいなものだから、あまり重く受け止めすぎない方が良い」
この手の緊張は、レース直前の返しに取り組む頃には案外、身体の中から消え去っているものだ。
「……そう、ですよね。せっかくのGⅠレースなんですから、楽しまなきゃいけませんよね!」
「ああ、そうだな」
「実はですね。昔、親友のキタちゃんと一緒のレースに出て勝負しようねって約束していたんですっ。その舞台がまさか、GⅠレースになるだなんて……っ!」
そこからは少しずつダイヤの口数が増していって、彼女との雑談に興じている内に、いつの間にか昼食の時間帯を迎えていた。
レースに支障をきたさない程度に空腹を満たして、もうしばらく二人で出走までの時間を潰した。
そしてそろそろ、当初予定していた勝負服に着替える時間が目前に迫っている。
「…………」
……のと、同時に。
ダイヤの全身を蝕む緊張も、最高潮に達しつつあった。
先程までの穏やかだった様子が一変して、緊張による症状が目に見えて大きくなる。
思い詰めたように視線を落として、膝の上で両手を揃えるダイヤの身体は震えが止まらなくなっていた。
俺はそんな姿を見て、少しだけまずいなと思った。
さすがに武者震いと言い聞かせるには無理があるレベルに達しようとしている緊張を何とかしなければ、この後のレースに影響が出てしまう。
ダイヤを支える担当トレーナーとして、彼女をこのまま晴れ舞台へ送り出すわけにはいかない。
今の俺に、何か出来ることは無いだろうか。
とは言っても緊張を解きほぐす手段はあらかた試したし、既に万策は尽きている。
「…………っ」
ダイヤの緊張や不安を和らげてあげるために、俺は何をするべきか……いや、逆に考えよう。
俺が不安や緊張を感じていたとき、それらをどうやって解消させていただろうか。
そこを辿れば、何か良い方法が見つかるはずだ。
「…………ぁ」
ここ一年程度の出来事を振り返っている途中、俺はふと気がついた。
自分が抱えきれない未練に押しつぶされそうになって、大きな不安を感じていたとき……俺は一体、どうやって乗り越えていたのか。
だがしかし、それを実行するのは非常に勇気がいることであって、ヘタレな俺にはそんな甲斐性なんて当然備わっていなかった。
「……」
俺は自分の中でしばらく葛藤を続けて。
俺はついに、一つの結論を導き出した。
「ダイヤ。ちょっと、こっち来て」
「……え? は、はい」
俺は椅子に座って思い悩むダイヤを手招きして、目の前まで来てもらう。
そして、その手招きの意図を掴めずきょとんとするダイヤをよそに、俺は……。
「……失礼」
ダイヤの背中と後頭部に両腕を回して、彼女を俺の胸元へと抱き寄せた。
「………………ぇ、ぁっ」
突然のことでダイヤの重心が前方に傾いて、彼女の頭が俺の胸板にとすんと触れる。
……やっぱり。
「俺が不安になった時、ダイヤはいつもこうしてくれたから。だから、今度は俺の番」
「……ぇ、ぁ、あっ、え、えとっ」
「心が不安定になった時は、誰かの温もりを感じると良いらしい。それは言葉とか、態度とかでも良いんだけど……こうして抱きしめてしまうのが、人の体温を直に感じることができて一番手っ取り早い」
突然のことで動揺した様子のダイヤだったが。しばらく一方的な抱擁を続けていると……次第に抵抗は薄くなっていって、腕の中ですっかりおとなしくなった。
「今みたいに、ダイヤが俺のことを何回も抱きしめてくれて……あれ、ちょっと癖になってるんだよ。ダイヤの体温を感じていると、心の底から安心出来るっていうか」
俺がこうしてダイヤを抱きしめているのはきっと、彼女の緊張を解きほぐしてあげたいと思うのと同時に、自分自身の不安も解消したかったからなんじゃ無いかと思う。
「ダイヤの努力は、俺が一番よく知ってる。ダイヤの力があれば絶対に夢を掴むことが出来る。だから、何も心配しなくて良い。ただただ思いっきり、ダイヤにはレースを楽しんでほしい」
俺はダイヤに緊張を解きほぐすための言葉を送りながら、小さな背中を優しくさすった。
「…………」
それから程なくして、ダイヤの宙に逆立った尻尾が穏やかに揺れ始め、俺の身体にも彼女の華奢な両腕が回された。
ダイヤは俺の胸元に顔を押し当てて、身体に蓄積した不安を根こそぎ吐き出すように、深呼吸を繰り返した。
「…………兄さま」
「うん?」
「少しくさいです」
「え”っ”」
ウマ娘は人間よりも格段に優れた五感を有しているため、体臭にはめちゃくちゃ気を遣っていたはずだったのだけれど……。
俺は緊張に苦しむダイヤを楽にしてあげるどころか、彼女を苦しめてしまっていたようだ。
……あぁ。
俺はまた、なんて余計なことを……。
変な勇気なんて出さなきゃよかった。
俺は教え子から逆に心を抉られるような指摘を受け、慌てて彼女を身体から引き剥がそうと試みる。
だがしかし、俺がダイヤから距離を置こうと身を捩るたびに、身体にまとわりついた彼女の腕に力がこもって離れられないのだ。
「……えっと」
「…………すぅぅ………………はぁぁぁぁ……………………っ」
「臭いなら、早く離れた方が良いんじゃないか?」
「…………………………………………」
内心、俺は後悔していた。
くさいと文句を言っているはずなのに、今やっている彼女の行動が矛盾している。
「…………兄さま」
「……う、うん」
「もう少し、強く抱きしめてくれませんか? ちょっと痛いくらいが良いです」
胸元に顔を埋めたまま、ダイヤが俺に要求してくる。
俺から始めた抱擁だから、ダイヤが良いなら、別にいいんだけど……。
「兄さま……私、頑張ります」
「……ああ」
「頑張って、夢を叶えて来ます。マックイーンさんと交わした約束を果たして、兄さまに恩返しをします」
「うん、楽しみにしてる」
お互いの温もりを感じながら言葉を交わしていると、控室の扉がコンコンコンッとノックされる音が響いた。
もうそろそろ、準備を始める時間だ。
「兄さま。私、一番最初に帰ってきますから」
「ああ、ゴール前で待ってる。思いっきり、楽しんでこい」
「はいっ」
ダイヤとの抱擁を解いた後、俺は控室を出てそのままターフがある会場へ足を運んだ。
足の踏み場もないような人混みの隙間を何とか切り抜けて、俺は何とかゴール位置に一番近いメインスタンドの場所を確保することが出来た。
途中の方からは、何故か俺の姿を見た観客達が自然に道を開けてくれたのだが……まぁ、都合が良かったので、彼らの厚意にあやかることにした。
本当は皐月賞に出走するウマ娘達のパドックを直接見たかったけれど、それだと本命のレースを一番良い場所から観戦することが出来なくなってしまう。
なので俺は仕方なくターフビジョンに流れる映像で、勝負服のお披露目となるウマ娘達の姿を確認した。
人気順に出走ウマ娘達の紹介が行われて、ついに俺の本命である、一番人気のサトノダイヤモンドが高貴な勝負服に身を包んで姿を現した。
ダイヤの勝負服をお披露目するのは、世間にとってはこの瞬間が初めてだったはずだ。
元々非常に端正な容姿と驚異的な実力で人気を博していたダイヤの勝負服姿に、会場のボルテージがすごいことになった。
出走すら迎えていないのにも関わらず、鼓膜が破れてしまうような熱狂具合だ。
本当に、ダイヤはたくさんの人達から愛されているんだなと感じた。
そんな大人気のダイヤがチームメイトと共に写ったスマホの待ち受けを確認すると、まもなく出走ウマ娘達が本バ場に入場する時間が迫っていた。
「頑張れ、ダイヤ」
そんな俺の小さな呟きは、大観衆から湧き上がった歓声に容易くかき消されてしまう。
『──続きまして本日の第十一レース。クラシックレース開幕戦、GⅠ──皐月賞に出走するウマ娘達の入場です』
大切な教え子が夢の舞台へ駆け上がる瞬間を、俺は大きな声援を上げて見守っていた。