これであなたはサトノ家行きです   作:転生した穀潰し

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07:二人三脚

 一週間後。

 

 午後の授業を終えたダイヤを連れて、俺は別棟にあるトレーナールーム──部室に向かっていた。

 

「トレセン学園の授業って、どんな内容なんだ?」

「午前中は普通の座学が多いです。ウマ娘ならではの内容もあります。午後はウイニングライブ等の声楽や、ダンスレッスンですね」

「とても大変そうだな」

 

 レースに青春の大部分を捧げるウマ娘達だが、彼女達はれっきとした学生だ。一般人同様に必要な教養を身に付ける義務がある。

 

 一般教養以外にも、アスリートとして履修すべき専門科目が複数あるはずだ。

 

 加えて、レース後に開催されるウイニングライブの練習も欠かせない。ウマチューブでウイニングライブの動画を視聴したが、やはり歌もダンスも一流だった。

 

 "ウイニングライブを疎かにする者は学園の恥"という意見が、トレセン学園共通の認識だそうだ。

 

 確かにウマチューブに挙げられた動画の中には、天を仰ぎながら見事な棒立ちを決め込む者がいたり、掟破りのブレイクダンスを披露する者もいた。それはそれで、多くの再生回数と高評価を得ていたのだが……。

 

「私、ダンスがあまり得意ではないんですよね……」

「練習すればすぐに上手くなるさ」

 

 コツコツ練習を重ねれば、ダイヤなら卒なくこなすことが出来るようになるはずだ。

 

 俺は移動中、ダイヤに対して当たり障りのない話題を振った。

 

 放課後になると、トレーナーや生徒達の活動が活発になる。

 

 トレーニングというよりも、感覚的には部活動に近いのかもしれない。

 

「着いたぞ」

 

 施錠していた扉を開けて、俺達は部室に入る。

 

「わぁ……思っていたよりもずっと広いんですね!」

 

 初めて踏み入れた部室に、ダイヤは目を輝かせた。

 

 俺は改めて、その充実した数々の設備を見渡した。

 

 広々とした空間の正面奥側に堂々と配置された、トレーナー用の作業デスク。

 

 チームの作戦会議で重宝しそうな長机とホワイトボード。

 

 部屋の隅にずらりと並んだ空の本棚。

 

 その他、二人程度が余裕を持って入れそうな更衣室。簡易的なシャワールームやトイレも完備されていた。

 

 さすがトレセン学園……恐るべし。

 

「そこに更衣室があるから、ジャージに着替えてこい。内側から鍵をかけられるから安心しろ」

「そんな心配していませんから」

 

 ダイヤがジャージに着替えている途中、俺は童心に帰ったように部室を物色した。

 

 別に、必要であれば私物を置いても良いってたづなさんが言っていたな。

 

 決めた。ポケットマネーでコーヒーメーカーを導入しよう。

 

 空の本棚はそうだな、適当な書類で埋めておくか。そういえば、俺の実家に参考になりそうな本が残っていたな。今度取りに帰るとしよう。

 

「お待たせしました」

 

 しばらくして、ジャージに着替えたダイヤが更衣室から出てきた。運動しやすいようにか、鹿毛の長髪をポニーテールに結っていた。

 

 女の子っていうのは、髪型ひとつで雰囲気が大きく変わるものなんだな。

 

「今後の活動について、色々と話したいことがある。トレーニングはその後だ。とりあえず、そこの席に座ってくれ」

「はい」

 

 ダイヤを椅子に着席させて、俺はホワイトボードの前に立つ。

 

「具体的な話に入る前に、俺達のチームについてなんだが」

 

 チーム名も決めていないし、メンバーもダイヤ一人だ。こんなんで本当にチームを名乗っていいのか、疑問ではあるが……。

 

「現状、このチームは俺とダイヤの二人三脚だ」

「素敵だと思います! ……あれ? でもそれだと、チーム登録に必要な条件を満たしていないような?」

「そのことについてなんだが……」

 

 俺は簡単に、チーム登録が許可された理由を説明した。

 

 言ってしまえば、これは理事長やURAからの完全なエコ贔屓だ。

 

 レースの実績があればこんな横暴もまかり通るかもしれないが、今の俺達は完全に無名のチーム。

 

 今後、俺達は学園内で注意して立ち回る必要がある。

 

 例えば、チーム登録をするため必死にメンバーをかき集めた者達からしたら、俺達の存在が彼らの目にどう映るだろう。

 

「……つまり、内情は公にするな。ということですか?」

「そうだ。物分かりが良くて助かる」

 

 所属するチームについて聞かれたら、適当にはぐらかして欲しい。俺はそうダイヤに伝えた。

 

「まだチーム名も決まっていない。加えてまだ誰からも認知されていないはずだから、誤魔化しやすいだろう」

「分かりました」

 

 可能な限り、トラブルに巻き込まれるのは避けたい。

 

 ダイヤがレースで成績を残すまでの辛抱だ。

 

「よし、じゃあ今日の本題。今後の目標について話していくぞ」

「はい!」

 

 俺はホワイトボードにマーカーを走らせる。

 

「俺達の当面の目標は、二ヶ月半後のメイクデビューだ」

 

 ジュニア級六月後半に開催される、ウマ娘達の新バ戦。

 

「場所は()()()()()()、芝二千メートルの右/内回りのコースだ。有名な重賞として挙げられるのは大阪杯、ローズS(ステークス)、チャレンジカップだな」

 

 ホワイトボード上に、俺は阪神レース場の簡易的な見取り図を描いていく。

 

「レース場の詳しい解説は後日みっちり行うから、今日はざっくりとした概要だ」

 

 今日からメイクデビューを攻略するためのトレーニングを行うが、ダイヤにはまず、今後のトレーニングの意図を理解してもらわなければならない。

 

「特徴的なのが、スタート直後とゴール直前にある急勾配の坂路。第三、第四コーナーがゆるやかな下り坂で、直線に近い形状になっていることだ」

 

 それ以外は基本的に、起伏の少ない平坦なコースになっている。

 

「最終コーナーからの直線が短く、逃げや先行の脚質が有利というのが一般的な意見だ」

「え、じゃ、じゃあ……」

「少し、厳しい戦いになる」

 

 ダイヤは先日の選抜レースで、現状では先行の脚質適性が低いことを痛感しただろう。

 

 今のダイヤは、レース終盤の末脚を活かす"差し"の脚質に適性がある。

 

「でも、新バ戦……メイクデビューに関していえば、俺は脚質だけでは優劣の差が出ないと踏んでいる」

 

 メイクデビューや未勝利戦は、脚質云々よりもウマ娘個人の能力差で勝敗が決することが多い。

 

「コースの特徴を細かく把握し、それに合わせた戦略を組む。これから二ヶ月半のトレーニングで、ダイヤの身体を最適化させる」

 

 俺の“体質"による分析では、二ヶ月半の徹底したトレーニングで十分に勝利を狙えるようになるはずだ。

 

「厳しいトレーニングになるが……ついてこられるな?」

 

 俺の仕事は、ダイヤに一着を勝ち取るための力を授けること。

 

 彼女が根を上げたらそれまでだ。

 

「はい!」

 

 しかし、ダイヤは持ち前の根性で難なく乗り越えてくれると、俺は信じている。

 

「あぁ、あと……。ダイヤが俺をトレーナーとして逆スカウトした以上、絶対に守ってもらわないといけないことがある」

「はい、なんでしょうか?」

 

 俺がダイヤを育成するに当たって、基本的には二人三脚……お互いに意見を出し合いながらトレーニングメニューを考えていくつもりだ。

 

 しかし、俺にも絶対に譲れない教育方針がある。

 

 ダイヤには、最初に説明しておく必要があった。

 

 

 

 

 

「いかなる理由があろうとも……()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 トレセン学園は、生徒の自主性を尊重する。そのため、生徒達の自主トレーニング用に常にトラックが開放されていた。

 

「これだけは約束して欲しい。もし守れないようであれば……俺はお前のトレーナーを辞める」

「……っ」

 

 言葉だけを聞くと、自由を束縛されて息苦しさを感じてしまう条件かもしれない。

 

 それでも、聡明な君のことだ。

 

 きっと理解を示してくれると、俺は信じている。

 

「はい。分かりました」

 

 一見過剰で異常、時代遅れとも言える俺の管理主義的な教育方針に対して、ダイヤは嫌な顔一つすることなく、柔和な笑みで受け入れてくれた。

 

「ありがとう」

 

 その返事から、俺に対する信頼の高さが窺える。

 

 ダイヤの期待に応えるために、俺も全力を尽くそう。

 

 

 

***

 

 

 

 ダイヤを連れて、俺はトラックにやってきた。トレーニングに励むウマ娘とトレーナーの姿が、ちらほらと見える。

 

「トレーニングを始める前に、準備体操と柔軟は入念に行う」

 

 十分に身体が解れていない状態でトレーニングを行えば、怪我を引き起こす原因になる。

 

 一通り準備運動を終え、柔軟に移る。

 

 柔軟、いわゆるストレッチには静的と動的の二種類があり、目的に応じて使い分ける必要がある。

 

 特に激しい運動を行う前は、動きのある動的ストレッチが有効だ。逆に静的トレーニングは運動後のクールダウンとして行うと、最大限の効果を得ることが出来る。

 

 俺はダイヤを芝に座らせる。手本を見せるように、俺はダイヤの前方に腰を下ろす。

 

 全身の筋肉を柔らかくすることは勿論、ウマ娘の場合は特に、酷使する下半身を重点的に行う。

 

 ウマ娘が人間離れした速度を出力する推進力の源──トモの柔軟をメインに、時間をかけて柔軟メニューをこなしていく。

 

「……よし、これくらいで良いだろう」

 

 準備運動と柔軟を終え、俺はダイヤをターフに立たせる。ダイヤは、今すぐにでも走りたそうにうずうずしていた。

 

「最初はウォーミングアップだ。まずは二千メートルをニ周。最初の一周は身体を慣らす程度の速度で、残りの一周は四割程度の力で走るんだ。くれぐれも、全力を出さないように注意しろ」

「はい!」

 

 俺が指示を出した瞬間、ダイヤはあっという間に走り去ってしまう。

 

 本当に走るのが好きなんだな。

 

 ダイヤがコースを走っている内に、俺はこれから行うトレーニングメニューについて今一度確認した。

 

 今日のトレーニングには、ダイヤの身体能力を大方把握するためのメニューを多く組み込んだ。

 

 現時点のダイヤの能力値と、目標とする能力水準との乖離具合を調べるためだ。

 

 加えて、これは俺自身のリハビリのようなメニューでもある。

 

 俺は二年間、トレーナーとしての活動を一切行ってこなかった。故に二年前と比較して、確実に腕が落ちているはずだ。

 

 正直な話、俺の"体質"を用いればタイムの計測など必要ない。俺はすでに、前述した内容の乖離具合を数値に換算して把握している。

 

 それでもタイム計測を実施する理由は二つ。

 

 一つ、口頭で伝えただけではダイヤが納得しないと判断したから。

 

 二つ、俺の"体質"が導き出した結論と実際の結果に、どれほどの差異が生じるのかを把握するため。

 

 この測定結果をもとに、今後のトレーニングスケジュールを調整していく。

 

「ただいま戻りました!」

 

 ちょうどダイヤがウォーミングアップを終えて、俺の元に戻ってきた。

 

「足の調子はどうだ?」

「はい、もうすっかり治っています。兄さまのおかげです!」

「それは良かった」

 

 俺の予想通り、ダイヤが負った捻挫は一週間で完治していた。

 

「よし、次は今のコースでタイムを測定する。この後のトレーニングのことなんて考えず、持てる限りの全力で走れ」

「はい、兄さま!」

 

 阪神レース場で開催されるメイクデビューにおける基準タイムは、二分四秒五。

 

 他のウマ娘と競ることでタイムが縮まることは良くあるが、今回知りたいのは純粋なダイヤの能力だ。

 

 スピード、スタミナ、パワー、根性、賢さなど。さまざま要素を総合して反映されたタイムが、今の彼女の全て。

 

「準備は良いか?」

「はい。いつでも」

 

 集中力を研ぎ澄ませるダイヤの邪魔にならないよう、俺は短く言葉を発した。

 

 俺はストップウォッチのボタンに指をかける。

 

「それじゃあ行くぞ。用意……スタート」

「──ッ!」

 

 俺の合図と同時に、ダイヤが地面を蹴ってスタートを切った。

 

 トレセン学園のターフの内回りは、終始起伏の少ない道が続く。坂路は外回りコースに用意されているため、今回の測定結果がメイクデビューの結果に直結するわけではない。

 

 俺は時折手元のストップウォッチのタイムを確認しながら、ダイヤの走る様子を観察する。

 

(メイクデビューで一着になるためには、単純に計算して一ハロンあたり十二秒四のタイムを継続する必要がある)

 

 ハロンとはイギリスで使用される距離の単位だ。一ハロン二百メートル。二百メートルごとにハロン棒という標識が設置されており、進行するレースのペースを判断する基準として用いられている。

 

 時速六十キロを軽く超える速度で走るウマ娘だが、当然長時間トップスピードを維持することは出来ない。逃げウマの場合はともかく、差しや追い込みを得意とするウマ娘の場合は尚更だ。

 

 この場合において、ハロンタイムはあくまでも基準である。

 

(一ハロンあたり十三秒一。メイクデビュー前にしては、悪くないタイムだ)

 

 向正面へ差しかかるダイヤの様子を確認したところ、後半へ向けて余力を残しながら走っているような印象を受けた。

 

(選抜レースの結果を受けて、ダイヤは”差し”の脚質を意識している)

 

 となると重要視するべきは、レースで残り六百メートル……上がり三ハロンのタイムだ。

 

 ハイペース、スローペースといったレース展開で左右されることがあるが、一般的に上がり三ハロンを三十三秒台で走破できれば優秀と言われている。

 

 当然レース場の種類やバ場状態、走行距離に影響される数字であるため、あくまでも基準である。

 

(っと、そろそろ残り六百メートルの位置に来るな)

 

 色々と考えているうちに、ダイヤが第三コーナーに差し掛かる。六と書かれたハロン棒の横を通過した。

 

 最終コーナーを抜け、残り四百メートル。最後の直線へと突入する。

 

 全身全霊をかけたダイヤの末脚が、爆発的な速度を生み出す。

 

「はぁあああああああッ!!」

 

 歯を食いしばりながら、ダイヤが地を低く翔けるように走る。

 

 普段の温厚な様子とは似ても似つかない、レースという舞台に向かい合う真剣な表情で。

 

「っ」

 

 二千メートルを走破した。

 

 俺は精神を極限まで研ぎ澄ませ、ダイヤがゴールする瞬間にストップウォッチを切る。

 

 タイムを確認する。

 

「……ふむ」

 

 俺はストップウォッチに表示されたタイムを、ノートに記録する。同時に前半三ハロン、上がり三ハロンのタイムや今後の課題や改善点を挙げていった。

 

「お疲れさん」

 

 俺はターフの上で倒れ伏すダイヤに、ペットボトルとタオルを差し出した。

 

「に、兄さま……それ、で……タイムは…………?」

「二分七秒一。俺の予想を上回るタイムだった」

「ほ、本当ですか……っ!」

「ああ。上出来だ」

 

 俺の”体質”が導き出した結論よりも、一秒以上早いタイムが出た。

 

 本番とは異なる環境で生まれた結果だが、メイクデビュー一着に向けてかなり希望が見えるタイムだった。

 

 この一本のタイムアタックで、俺が多くの情報を収穫することが出来た。

 

「はぁ、はぁ…………ふぅ」

 

 文字通り全力を出し尽くしたダイヤだが、俺の予想以上に息の入りが良い。

 

 心肺能力が優れているのだろう。すでに起き上がれるまでに回復している。

 

「十分に休憩を挟んだら、今後のトレーニング方針について話していく」

「分かりました」

 

 俺は自身の汗をタオルで拭って、水分を口に含む。

 

(当面の課題は……フォームの改善だな)

 

 ダイヤの走りを一通り確認した俺が最初に着目したのは、彼女の走行フォームだ。

 

 今のダイヤの走りは、彼女の優れた身体能力に物を言わせているような印象を受ける。簡単に言うと、足への負担が極端に大きい走り方だった。

 

 あの爆発的な推進力を、現状では足だけで生み出している。これでは身体が壊れるのは時間の問題だ。

 

 身体の外側へ逃げる力を抑え、全身の筋肉を駆使して効率的に前へと進めるように。

 

 身体に掛かる負担を限界まで減らし、何よりも故障しないような走り方を目指して。

 

 二ヶ月という時間は長いようでとても短い。

 

 フォームの改善と共にフィジカルを鍛えつつ、スタミナを付けて、戦略を学習させる。

 

 相当ハードなスケジュールになるが、ダイヤなら弱音を吐かずについてきてくれるだろう。

 

 突き放すようで酷だが、根を上げればその程度の原石だったということだ。

 

「……あっ」

 

 俺がトレーニングメニューを練っていると、休憩していたダイヤが明後日の方向を向いて小さく声をこぼした。

 

「どうした?」

「あ、えっと。向こうにキタちゃ……友達の姿が見えたので」

 

 俺はダイヤが指差した方向へ視線を向ける。

 

 トラックの外縁を取り囲む土手の舗装路を、複数人の集団でランニングするウマ娘達の姿があった。

 

「キタサンブラック、か」

 

 彼女は確か、選抜レース後に俺に声をかけてきたウマ娘だ。

 

「え、キタちゃんのことをご存知なんですか?」

「あの子も選抜レースに出ていただろう? 印象に残っているんだ」

「……そうですか」

 

 そして、キタサンブラックの周りにいるウマ娘達についても心当たりがある。

 

 メイクデビューのウイニングライブで、天を仰ぐように棒立ちを決め込んだ黒鹿毛のウマ娘──スペシャルウィーク。

 

 同じくウイニングライブで、突如ブレイクダンスを披露した芦毛のウマ娘──ゴールドシップ。

 

 無敗のクラシック三冠を目前に、怪我で菊花賞の出走を断念した鹿毛のウマ娘──トウカイテイオー。

 

 他を圧倒する天才的な逃げ足で、”異次元の逃亡者”の異名を冠した鹿毛のウマ娘──サイレンススズカ。

 

 彼女達はトレセン学園において、チーム・リギルと肩を並べる実力派集団──チーム・スピカ。

 

「キタサンブラックは、チーム・スピカに入ったのか?」

「はい。キタちゃんはすごいです。とっても……」

 

 キタサンブラック。

 

 おそらく今後、幾度となくダイヤのライバルとして立ちはだかるウマ娘に成長するだろう。

 

「兄さま」

「ああ」

「私、キタちゃんとはライバルなんです」

 

 俺は、穏やかな瞳の奥底で滾るような闘志を燃やすダイヤを見た。

 

「キタちゃんにだけは絶対に、負けたく無いんです」

 

 気合十二分。

 

 担当ウマ娘の熱い要望に応えるのが、担当トレーナーの──俺の仕事だ。


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