大天使の戦女神   作:Scorcher

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宇宙へと戻り、メンデル内部の探索を行う回となります。舞台は原作と同じですが、やっていることは大幅に異なっている状態です。

若干生々しい描写がありますが、キラの出生に関わる話ですので、ご容赦していただければと思います。

明らかに仮面要素が不足しているのですが、キラマリュがメインのため登場機会はまだありません。

そして激怒することにより、さらにミ○トさんが出てくるメインヒロイン。閲覧中の作品は機動戦士ガンダムSEEDの二次創作です。


Phase10

オーブ、そしてウズミの願いを聞き容れ、オーブの新造船艦クサナギと共に宇宙へと戻ってきたアークエンジェル。

 

装備、物資は共に当面は問題とならなかったものの、拠って立つ場所があったわけではないため、2隻の艦は孤立状態へと陥っていた。

 

「世界の行く末といっても、具体的にどう行動をすればいいのかしらね。」

 

無闇に戦場へ赴くわけでもなく、戦いから目を背けるわけでもない。マリューは改めて、オーブが掲げていた中立という概念に苦慮していた。

 

「地球にいても、連合や大西洋連邦、ブルーコスモスのやり方にはついていけない。プラントにいても、ザフトとしては戦いたくない。そういった人達を集めるところから始めればいいんじゃないでしょうか。」

 

ブリッジでの会議に立ち会うキラからの提案。彼はさらに自分の考えを交えながら言葉を続ける。

 

「マリューさんが……アークエンジェルが軍から抜けたように、プラントでもラクスが僕に力を貸してくれたように、連合とザフトの双方に、あるいはそうじゃない場所でも、本当に戦争を望んでいない人が絶対にいると思うんです。」

 

たとえ小さくとも、自分たちの考えに共感を持ってくれる人々を集めたいと語るキラ。そんな彼にブリッジに集まった乗員たちも頷き、朧気でありながらも未来に目標と希望を見出す。

 

「キサカ一佐の話では、この辺りに廃棄された無人コロニーがあるとのこと。まずはそこへ立ち寄り、キラくんの言った賛同者を集めることにしましょう。」

 

キラの意を汲み取りつつ、当面の目的と活動の拠り所を目指すマリュー。一方で彼女は、自分から率先して意見を述べた彼の顔を呆然とした様子で見つめていた。

 

「……マリューさん?どうかしました?」

「えっ?あっ……!いえ、その……な、なんでもないわ!」

 

艦長として成長したとウズミに言われたことを思い出し、マリューもまたキラが人として成長していることを感じていた。

 

しかし、そのどことなく浮世から離れ、達観をした彼の様子は彼女に一抹の寂しさも感じさせる。彼と結ばれたマリューにとって、それは些細でありながらも不安を抱かせる変化でもあった。

 

 

 

 

「空気も抜けていなくて、バイオハザードの痕跡も見当たらない……と。」

「本当に廃棄されているのでしょうか?」

 

廃棄されたコロニー、メンデルへと寄港したアークエンジェルとクサナギ。2隻は外殻となるドッグへと艦を止め、内部の探索を始めようとしていた。

 

「内部は無人でしょうけど、警備システムが作動している可能性はゼロではない。フリーダムで内部を探索してもらうとしても、キラくんの他に護衛を……」

 

白兵戦の経験がないキラを守る人員、その選定をしようとしていたマリューであったが、周囲の目は彼女自身へと向けられていた。

 

「どうしたのかしら、みんなで私を見て……」

「いえ、ラミアス艦長以上に適任がいるとは思えなくて。」

「白兵戦だったらこの艦どころか、軍内でもトップだったじゃないですか。」

「というか、なんであんなに強いのに技術士官になったんですか?」

 

マリュー以上の適任は存在しない。それが乗員の総意であった。キラとの関係を持ったマリューは狼狽え、彼らに対して言い返す。

 

「わ、私は艦長よ!そんな簡単に艦を空けるわけには……うぅっ……!」

 

彼女自身の甘さが部下へと広がった結果であった。追い込まれた彼女は信頼の出来る部下たちに艦を任せ、キラと共にフリーダムで内部の調査へと向かうこととなった。

 

 

フリーダムのコックピット内。操縦するキラの傍で機体の内部に興味津々のマリューが周囲を見渡す。

 

「すごいわね……見た目もストライクと似ていたけど、内装もかなり似ているわ。」

「それだけじゃなくて、これ……見てください。」

 

キラに促され、彼女は操縦端末に設置されたモニターへ目を向ける。そこにはストライクに搭載されたOSと同じ頭文字の略称が表示されていた。

 

「ガン……ダム?」

「核動力を使用できる……Nジャマーキャンセラーを搭載した機体のために、ザフトが新しく作り上げたOSみたいなんです。偶然なんでしょうけど、ストライクと略称が同じになったのかと。」

「うーん……本当に偶然かしら?どちらかと言えば、外装の作りから逆算してOSに名前を付与した気もするのだけど……」

「そ、そうでしょうか……?」

 

ザフト製モビルスーツに対し、技術士官としての血が騒いでいる様子のマリュー。彼女はコックピットに座るキラと密着することを厭わず、内装を丹念に確かめていく。

 

「あ、あの……マリューさん。色々なところがその……くっ付いていて……」

「もう……そんなの、別に気にすることじゃないでしょ。それ以上のことなんて、もういっぱいしているのだから。」

「そ、それは……あうぅっ……!」

 

マリューと一夜を共にした時の記憶、その感触。それらを思い起こしキラは赤面して声を詰まらせる。さらには、軍服よりも身体の線が際立つノーマルスーツを着用した彼女を前に、彼はマリューに女を意識してしまう。

 

「に、任務中なんですからやめてください!」

「ふ、ふふっ……!ごめんなさい。わたし、なんだかキラくん少し変わっていて、心配しちゃっていたから。」

「僕が……変わった?」

 

マリューの指摘に疑問に満ちた表情となるキラ。自らに無頓着ともいえる彼に対し、彼女はさらに言葉を続ける。

 

「また、色々なものを背負っているような気がしたから。前みたいに私たちのことを守るだけじゃなくて、ラクスさんの思いや、願いも考えているみたいだったから……ね。」

「………」

 

率先して自らの考えを述べ、行動を起こそうとしたキラ。その姿にマリューは、彼がより大きな存在に追い込まれそうなことへ気掛かりとなっていた。

 

「この期に及んで、もう戦うな、とは言わないわ。でも……背負い過ぎたりはしないでね。」

「……はい。」

 

誰よりもキラの心に寄り添おうとしていたマリュー。だからこそ彼女は、彼の些細な変化にも敏感となっていく。そして、心も身体も通わせた2人に対し、さらなる試練が訪れようとしていた。

 

 

コロニー内部を探索するフリーダム。モニター越しにキラとマリューが確認をしていくものの、とりわけ気になるような場所は見つけられずにいた。

 

「居住区が少し壊れていたりしたけど、あとは特に変わった様子が無いわね。」

「ええ。空気に関しても滅菌処理がされた効果で、普通に生活も出来るような……」

 

無機質な構造物であるにも関わらず、人の気配を感じさせるようなメンデル。しかし、人間そのものいるわけではなかった。

 

「でも、なんだかこの場所。どこかで……」

「どうかしたの?」

「いえ、気のせいだとは思うんですけど……」

 

2人が話を続けていた矢先、前方に巨大な建造物が姿を現す。その建物に2人は共に目を奪われ、フリーダムは導かれるように近付いていくのであった。

 

「何かの研究施設かしら。周辺に警備装置らしくものは見当たらないけど……」

「……っ!」

 

警戒を怠ることなく、思索しながら周囲を確認しようとしたマリュー。しかし、彼女の意に反してキラは機体を急速に建造物の近くへと降下させる。

 

「ちょっとキラくん!?」

 

機体を着陸させると、キラはコックピットのハッチを開いて勢いよく飛び降りてしまう。それを追うようにマリューはワイヤーに捕まり急ぎ地表へと降り立とうとする。

 

「待ちなさいっ!ああもうっ……平気であんな無茶をするんだから……!」

 

2人が初めて出会った時、平然と高所から飛び降りたキラの姿を思い出してぼやきを口にするマリュー。それでも彼女は警戒を怠らず、携行していた拳銃を持ち、安全装置を外して彼の跡を追っていくのであった。

 

 

周囲を警戒しつつ、建造物の内部へと入りキラを追っていくマリュー。研究施設らしき建物の内部を慎重に進みながら、彼女はその奥へと足を踏み入れていく。

 

「病院のようにも見えるけど、何かが違う。確か……遺伝子改良を施すための設備がこんな感じの場所だったような……」

 

専門外の知識を手繰り寄せるように、この場所が何なのであるのかを思索する。そして、キラが進んでいったであろう方向の新たな区画へ足を踏み入れた時、マリューは言葉を失うのであった。

 

「これは……!?」

 

開かれた空間に鎮座する無数のシリンダー。人ひとりが入るか否か程度のガラス張りの容器の中には、人間の胎児と思われる何かが培養液に漬けられているのであった。

 

「なに……これは……」

 

人権、人道、世に溢れた命を尊ぶような言葉の数々。それらの対極に位置するような研究の残骸が、彼女の目に映っていた。

 

それら『研究材料』を確かめることで、専門知識に乏しいマリューでもここが何の施設なのかを理解することは容易であった。

 

「遺伝子の研究……コーディネイターの実験施設……っ!?キラくんっ……!」

 

次の瞬間、マリューは以前地球へと降下した直後、キラの治療と診断をした自身と軍医の会話を思い出す。

 

『キラくんが、普通のコーディネイターではないということ?』

 

『これほど完璧な遺伝子情報を持った人間など、現在の技術では到底不可能……いえ、母体という不確定要素が存在する限りは未来永劫出来ないはずです。』

 

『彼には我々もザフトにも、多くの人間の理解が及ばない秘密があることだけは確かです。』

 

その時の疑問、そして疑念が解かれようとしていた。しかし、それは決してキラ自身に突き付けてはならない事実。そう思うしかないマリューは、急ぎ彼のもとへと向かうのであった。

 

 

研究施設の最奥。それほど広くない室内に、稼働していないドーム状の機械が置かれた部屋。マリューが室内へ入った時、キラはその機械の傍で立ちつくしていた。

 

「キラ……くん。」

 

彼女は恐る恐る彼のもとへと歩み寄る。そして、その機器の一点を彼の視線を追っていく。

 

「このナンバーは?」

「僕は……この中で生まれたんです。この機械の中で……」

 

番号が記されたドーム状の機器。それは研究、製造した胎児を育てるための設備、人工子宮であった。

 

「ど、どうしてそんなことが分かるの?」

 

キラは彼女の問いに答えることなく、室内の一角に置かれていた写真立てのもとへと歩いていく。

 

「これは……キラくんとカガリさんの……!」

「はい。カガリがウズミさんから預かった写真と同じものです。そして、カガリのお母さんも映っているこの写真が……」

「お母さんって……でもこの人は、カガリさんだけじゃなくて、キラくんのお母さんでも……」

 

果たして本当にそう呼べるものなのか。キラは自らが生まれた機械と、母性に溢れた笑みを浮かべ、幼い自らを抱き締める写真の女性を交互に見つめる。

 

「この人はあなたのお母さんよ!だって、こんなに優しい顔であなたのことを……」

「でも、僕を産んでくれたわけじゃない……!僕が生まれたのは、そこにある……その機械が僕を……!」

 

否応なく突きつけられる事実。母体という最大の不確定要素を排除して誕生したキラは、遺伝子上最高のコーディネイターとして生を受けていたのであった。

 

「どうして……僕はこんな……!どうして生まれてきて……生み出されて……!」

「落ち着きなさい!あなたが生まれたことは決して悪いことじゃない……多くの人が、キラくんが生まれてくることを願って……」

「本当にそう思うんですか?僕が生まれてほしいと……本当にそう思っていたんですか……!?」

「えっ……?」

 

キラが放つ言葉の意図が理解出来ずにいるマリュー。そして彼は彼女に、この部屋とは区切られたもう一つの部屋へ向かうよう促す。

 

「ここは……」

 

本来ついていた施錠は破壊され、扉を開くことは容易となっていた。マリューは全身に悪寒を感じつつも、その扉をおもむろに開く。

 

「うぅっ……!」

 

狭く薄暗い、奥行きもない小さな部屋。旧世紀の貸金庫を彷彿とさせるような、無機質な引き出しが大量に壁のように広がる室内。だが、その一つ一つにキラが生まれた機械に記された同様の番号が刻まれているのであった。

 

「全部、お墓……なの?」

 

墓所と呼べるか怪しい場所。この研究施設で繰り返された実験によって発生した生命の残骸といえる存在。それらを保管する場所を目の当たりにし、キラは自らの存在を知り、マリューはその事実を前に呆然していた。

 

「僕が……どうして僕が……僕みたいな存在が……!」

 

夥しい犠牲の上に成立した自分という存在。人から産まれたのではなく、人が生み出した欲望の化身、怪物という自分。自らをそう捉えたキラは、携行していた拳銃の安全装置を外し、その銃口を自らの頭部へと突きつけるのであった。

 

「……っ!?」

 

生命の残骸を見ていたマリューがキラへほうへと振り返り、引き金を引こうとしていた彼に駆け寄る。

 

鳴り響く銃声。放たれた弾丸は室内の天井へと当たり、躊躇なく引き金を引いたキラはマリューに押し倒されていた。

 

「何を考えているの!?」

「だって……僕が……僕が生きていることなんて……!」

「死ぬ意味だってないでしょ!?生きていたらいけないことが、死ぬ理由になんてならないのよ!?」

 

キラの行為に対して激昂するマリュー。だが、彼の心情を察してしまうが故に、彼女はすぐに優しい声で彼を窘める。

 

「あなた自身が負う責任なんて、何もないんだから。自分を責めたりなんかしたらダメよ……!」

「マリューさん……僕は……」

 

キラを抱き締め、彼が選ぼうとした道を懸命に阻もうとするマリュー。その最中、彼女が所持していた端末にアークエンジェルから通信が入る。

 

「どうしたの?」

『艦長、こちらのコロニーに向かって連合の艦船と思わしき部隊が接近しています!』

「私たちを捜索しているのかしら……?分かったわ、すぐに帰投します。」

 

通信を手早く終え、キラの手を取り艦へ戻ろうとするマリュー。しかし、彼は憔悴した様子のまましばし立ち上がることが出来ずにいた。

 

「連合の艦が向かってきているわ。おそらく、戦闘になるでしょう。あなたは……戦えるかしら?」

「………」

 

マリューの問いかけに対して小さく頷くキラ。彼女の手を力なく握り返して立ち上がると、2人は急ぎキラの生まれた場所を後にするのであった。

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