キラマリュがメインとはいえ、ある程度プラント側の情勢描写をしておかないと、文字通り何と戦っているのか分からなくなりますからね。
本話後半はアスランとマリューさんがメインとなります。投稿は日付が変わる頃を予定しております。
メンデル外殻ドックに停留した艦へと帰投したフリーダム。キラは機体に残ったまま再度の出撃に備え、マリューは彼を残して本来の持ち場である艦橋へと向かう。
「キラくん……」
マリューは艦橋へと戻りながら、自らの存在意義に疑問を持ってしまったキラを心配するのであった。
◇
「状況は?」
「母艦と思わしき艦が一隻、メンデル周辺で待機しています。」
「識別信号から地球軍の艦船だとは思うのですが、本艦のデータベースには載っていませんでした。」
「アークエンジェル以降に作られた新造艦ね。でも、そんな新型なんて作るなんて情報は……」
連合の艦船であることは間違いない一方、アークエンジェルを建造した技術士官でもあるマリューが把握出来ない新型艦。その存在に不吉さを感じていた。
「それでも、まずは出撃をしないと。アークエンジェル発進。組み立て中のクサナギを守るためにも、先行して地球軍艦船と接触します。」
艦を進発させ、接近する部隊の確認を試みるマリュー。そしてアークエンジェルの艦橋モニターに、迫りくる地球軍の艦船の姿が映し出されるのであった。
「なぁっ!?」
「あ、あの艦は……!」
モニターに映し出された艦の姿に、アークエンジェルの乗員は驚きの声を上げる。そこにはアークエンジェルに瓜二つの戦艦が対峙しているのであった。
「アークエンジェル……いえ、アークエンジェル級の2番艦ね。」
敵対せずとも、艦の性能を熟知しているマリューは同型艦の脅威に感じていた。そして、その同型艦から突如として通信が入る。
「艦長……あの艦から通信が……!」
「えっ?」
瓜二つの戦艦が映し出されていたモニターに内部の乗員と思われる人間の姿が映し出される。
「お久しぶりです、ラミアス艦長。」
「ナタル……!」
アークエンジェル級2番艦、ドミニオン。アークエンジェルと同じ天使の名を冠する艦であり、大天使を上回る主天使の名を冠した艦は、かつての戦友であるナタルを艦長として、マリューたちと対峙するのであった。
◇
「ミサイル、来ますっ!」
「迎撃。下げ舵20!」
飛来する無数のミサイルを機銃で撃ち落としていくアークエンジェル。見知った姿形の艦から放たれる見知った兵器。敵艦、ドミニオンの艦底に狙いを定め砲撃を仕掛ける。
「バリアント照準、てぇぇぇぇっ!!!!」
火力、機動性、装甲全てが同等のアークエンジェルとドミニオン。両者の勝敗を分かつのは艦長の指揮と乗員の練度、そして艦載機の差であった。
「フリーダムとバスターは?」
「敵MS部隊と交戦中。っ……フリーダム、被弾箇所増大!」
「キラくんが……!?」
かつて投降してきたバスターは、パイロット共に艦の護衛をしており、敵機とミサイル迎撃をしていた一方、キラが搭乗するフリーダムは敵機に苦戦を強いられていた。
「ぐぅぅっ!!!このぉっ……!」
キラを弄ぶように飛び回る3機のモビルスーツ。フリーダムやストライクと同様に、V字型アンテナとツインカメラが特徴的な3機の新型は、ザフトの量産機や強奪された4機の試作機を遥かに上回る性能であった。
「鎌とかハンマーとか……あんなメチャクチャな武装なのにどうして……!」
凡そモビルスーツに装備させるものではない代物を運用する連合の新型機。不正規戦闘を想起するような武装と運動性、そして数の優劣にキラは次第に追い詰められていく。
「はぁっ……はぁっ……僕が……僕がやられたら……マリューさんも、アークエンジェルも……!」
敵の攻撃を躱しながら、反撃を試みようとするキラ。しかし、これほどの苦境に立たされてもなお、彼は敵機の急所を狙うことが出来ずにいた。
大切なものを守るために敵を撃つ。その葛藤を戦場へと持ち込んでいた彼の苦戦は必然であった。そして、フリーダムを翻弄していた3機のうちの1機、砲撃戦に特化されたカラミティが痺れを切らしたようにアークエンジェルへと向かう。
「敵モビルスーツさらに接近!」
「っ……!ヘルダートで迎撃、バスターは!?」
「ダメです、依然として他のモビルスーツ部隊と交戦中!」
艦の砲火はドミニオンへ集中し、迫りくる敵機へ割く余裕はなかった。そしてアークエンジェルはカラミティの接近を許し、敵モビルスーツの有効射程に捉えられていく。
「アークエンジェル……!あがぁっ……!このぉっ……!」
艦の援護に向かうとするフリーダムを残る2機、フォビドゥンとレイダーが行く手を阻む。それに留まらず、2機はフリーダムを撃破する寸前まで追い込んでいた。
「くぅぅぅぅっ……!」
砲塔を収納した青い翼が損壊し、脚部が切断され、満身創痍のフリーダム。艦を守ることはおろか、自身が撃墜されることが必然という状況へ追い込まれ、キラは絶望の淵へと追い込まれる。
「………!?」
だが、敵機レイダーが放った最後の一撃は、突如として割って入ってきた1機のモビルスーツによって阻まれる。さらにその赤を基調とした機体は、間髪を入れずにフォビドゥンとレイダーを瞬く間に撃退していくのであった
時を同じくして、カラミティの砲撃に晒されることとなったアークエンジェル。しかし、その砲火に餌食となる寸前に、青を基調とした敵機に向かって無数のミサイルが襲い掛かりアークエンジェルへの攻撃を中断する。
「敵モビルスーツ部隊、後退していきます。」
「今のミサイルは……一体どこから?」
艦の窮地を救った攻撃に呆然とするマリュー。僚機を襲った第三者による攻撃を確認したドミニオンは撤退。それと同時に、アークエンジェルに対し通信が入る。
『ラミアス艦長、ご無事でしたか。』
「あなたは……ラクス・クライン……!?」
艦橋モニターに映し出されたのは、かつてアークエンジェルが救助したプラントの要人、ラクス・クラインが。彼女の乗船する鮮やかなピンクの塗装が際立つ艦、エターナルがマリューたちの前に現れる。その一方で
『こちらザフト軍特務隊所属、アスラン・ザラ。フリーダムのパイロット、応答しろ。』
「あ、アスラン……!?」
フリーダムとアークエンジェルの窮地を救った1隻の艦と1機のモビルスーツ。その援軍にキラとマリューは驚きを隠せないのであった。
◇
オペレーション・スピットブレイクの失敗後。プラント最高評議会の議長、パトリック・ザラは地球連合軍に対する態度をさらに強硬なものとしていた。
「それで、ラクスさんもシーゲルさんもプラントからの脱出を?」
「はい。わたくしも父も、ザラ議長から討つべき政敵と見做され、プラントを離れるしかありませんでした。」
パトリックは地球軍に対する苛烈な攻撃、ナチュラルに対する虐殺行為を容認するだけに留まらず、プラント内に残っていた自身に対する抵抗勢力の排除に乗り出していた。
「でも、お二人ともよく無事で……」
「ザラ議長……いえ、お父様から離反をしたアスランに助けていただきました。エターナル単独では、とてもここまでたどり着くことは叶いませんでしたわ。」
父親であり、最高指揮官であったパトリックの元を離れた彼の息子、アスランはラクスたちと共にフリーダムの行方を追い、このメンデルへと辿り着いたのであった。
「あの男とはいずれ、こうして袂を分かつのだと思っていた。しかし、あそこまで周りが見えなくなってしまうとは……」
「プラントの内情は理解しかねますが、こちらへ来たからには可能な限りの対応はさせていただきます。」
「本当にあなた方にも申し訳が立たない。私の力が及ばなかったばかりに、この戦争をさらなる混沌に陥れることになってしまった。」
ただひたすらに悔恨の言葉を述べる初老の男。マリューは俄かに信じることが出来ずにいた。目の前にいるコーディネイターの男が、ザフトの総司令官であったことを。
「ラミアス艦長、いかがされました?」
「あっ……いえ。まだ、少し戸惑いがあったりするもので。」
「戸惑い?」
「ええ。つい先日まで、私は地球軍の軍人として、ザフト軍と戦っていました。それなのに今は、こうしてお二人と会話をしていることが不思議に思えて……」
キラと共に過ごしたマリューは改めて感じていた。ナチュラルとコーディネイター、その間に大きな違いなど無いことを。悩み、悔やみ、悲しむ、同じ人間なのだと実感するのであった。
「戦争によって苦しむのは誰も同じ。だからこそ、わたくしたちは同じ人として、誰とでも手を取り合えると思うのです。」
「そう……ですね。私たちはまだ、より多くのことを知る必要があるのでしょうね。」
マリューをラクスと手を握り合い、憎しみに満ちた世界を終わらせることを誓う。誰とでも手を取り合う、その言葉をマリューは決して忘れないのであった。