明らかにフラグ立てみたいなことをやっていますが、退場するようなことはありません。たぶん。
後半はみんな大好きジェネシスの登場です。とりあえず終盤にデカくてバカみたいな威力の兵器を出せばガンダムっぽくなる説。仮面キャラと巨大レーザー砲を出せばガンダムになるんだと思う。
メンデルを出発する直前。フリーダムが本来の搭載艦であるエターナル収納されるため、アークエンジェルから離艦することなったキラとマリューは最後の会話をしていた。
「あなたは、本当にこれでよかったの?」
「例え無茶だとしても、他に方法が無いのであれば、こうするしかないんだと思います。」
双方の軍を制圧し、停戦を呼びかけ無力化させる。マリューはもちろんのこと、キラもまたその方針へ懐疑的な見方をしているのであった。
「大西洋連邦はおそらく、プラントへの直接攻撃も躊躇いなく行うでしょうね。」
「はい。もしそうなってしまえば、これまでよりも多くの人が犠牲になってしまう。血のバレンタインよりも、もっと多くのコーディネイターが……!」
ブルーコスモスが示した、プラントを拠り所とするコーディネイターへの敵意。その意思の代弁者として、マリューの古巣である大西洋連邦は、地球に生きる者の総意であると喧伝してプラントを攻撃しようとしていた。
「ねぇキラくん、一つ聞いてもいいかしら?」
「はい、なんですか?」
マリューはこれまで、キラに対して彼自身の明確な信念や理想、価値観というものを問わずにいた。しかし、彼女はそれを聞いておく必要があると感じていた。
「あなた自身、コーディネイターという存在をどう思っているの?」
誰かを守るためではなく、自らの意思で戦場へと赴き、引き金に指を掛けることとなる今後を考え、マリューは彼に覚悟と考えを問おうとしていた。
「僕は……僕という存在を作った人たちのことが今でも許せません。このコロニーの中で、どれほどの命が犠牲となり、僕が作り出されたのか。それを考えれば……」
未だに自らの生に対して疑問を持ち続けるキラ。人類の理想を体現した自身の存在を、彼自身は否定していた。
「やっぱりコーディネイターなんて存在は、この世界にあってはいけないんだと思います。もう二度と、僕たちのような存在を生み出さないためにも。」
『僕』ではなく『僕たち』。メンデルの内部に保管されていたキラの兄弟たちと呼べる生命の残骸。キラは永遠に、生を受けることがなかった者たちに贖罪をする運命を与えられていた。
「それはつまり、ブルーコスモスの考えに近いってことじゃ……」
「でも、コーディネイターの存在を否定したとしても、今この世界に生きる人々の命を奪うのは間違っているとも思うんです。ナチュラルでもコーディネイターでも、いまを生きている同じ人間なんですから。」
キラはブルーコスモスの思想に理解を示しつつも、彼ら行動を容認しようとはしなかった。そして彼のコーディネイター技術に対する憎しみは、兄弟たちへ贖罪と共に永遠に消えることがないものとなる。
「僕は戦います。人と人が憎み合う世界が続くというのであれば、僕はその世界と戦う。コーディネイターという存在が生まれてしまったこの世界で、僕は……」
最高のコーディネイターとして生を受けながら、自らを含めたコーディネイターの存在を否定したキラ。自らの相反するような考えに、彼はマリューを前に自嘲の笑みを浮かべる。
「おかしな話ですよね。自分の存在まで否定しようとするなんて。でも、僕は僕自身の存在を決して……」
「……いいえ、おかしいとは思わないわ。どんな形で生まれたとしても、あなたには人を思いやる心がある。ナチュラルもコーディネイターも関係ない、多くの人を思いやる気持ちが……」
夥しい憎悪と贖罪を抱えながらも、世界と人々の未来を守りたいというキラ。そんな自嘲の笑みを浮かべる彼の顔に、マリューは優しく手を添える。
「マリューさん……」
「あなたに背負う罪を降ろしてほしいとは言わないわ。でも、なんでも一人で背負おうとしたらダメよ。」
今までも、そしてこれからも、彼の傍にいることしか出来ないと自覚するマリュー。しかし、それでもキラを守りたいという意思だけは、より強固なものとなる。
「マリューさん……ありがとう。」
敬語を使わずマリューに対して感謝の言葉を口にするキラ。眼前で微笑み、全てを包み込むように受け容れてくれる年上の女性艦長。そして彼はマリューの身体を抱き寄せると、互いの思いを確かめ合うように口付けを交わすのであった。
◇
「地球軍艦隊、ボアズの制圧を完了した模様です。」
「思っていた以上に早いわね。やはり、ドミニオンとあの3機以外にも多くのモビルスーツを備えているから……」
地球連合軍は月基地を拠点として、簡易量産機ストライクダガーを中心とした大規模なモビルスーツ艦隊を編成してザフトの防衛線を瞬く間に突破していた。
『ですが、ザフト軍のボアズからの撤退も些か早すぎる気もします。』
エターナルからの通信で懸念を示すラクス。彼女の言葉通り、宇宙要塞ボアズから撤退するザフトの判断は迅速を越えた作為的なものをマリューも感じるのであった。
「地球軍の戦線を伸ばすため?でも、ボアズを拠点として明け渡してしまえば、補給線は確保されてしまうけど。」
『何か……とても不吉で怖ろしい意思を感じます。ザラ議長の意思に支配された、プラントの……』
ラクス・クラインという少女の政治家としてのセンスが、彼女の本能に恐怖と警告を教えようとしていた。そして、アークエンジェルを始めとした3隻の艦が戦場となる宙域へ向かうこの最中、ラクスの感じた意思が形となって現れる。
「プラント周辺に高エネルギー反応!」
「っ……!どうしたの!?」
「わかりません!でも、これは……この反応は指向性もって……地球軍艦隊とボアズに向かって……!」
それは、艦に搭載されたレーダーを確認するよりも、人間の肉眼で漆黒の宇宙を視認したほうが鮮明に見えるのであった。
「なに……あの光は……!?」
プラント群の周辺から放たれた禍々しい光。その輝きの直後、無数の爆発が遥か遠方にいたアークエンジェルからでも確認出来るのであった。
『ラミ……長……いまの……は……!?』
「キサカ一佐、そちらとの通信状況が良くないため聞き取れません。」
「ダメです、クサナギだけではなく、エターナルとの通信も障害が発生しています。」
あらゆる電子機器に障害が発生し、高速艦であった3隻はその進行速度を大きく落とすこととなる。それでも各艦がこれから向かう戦場が尋常ではない事態であることを確信していた。
◇
「確認出来た形状から推察するに、あれは巨大なレーザー砲というよりは超大型のガンマ線照射装置と捉えるべきかと。」
通信障害から回復した3隻の代表は、オーブの技術者であったエリカ・シモンズからザフトが使用した戦略兵器『ジェネシス』についての説明を受けていた。
「シーゲルさんは、あの兵器のことをご存じで?」
3隻の乗員の多くは、ラクスの父であるシーゲルへと疑いの目を向けていた。ニュートロンジャマー、及びキャンセラーだけではなく、あの憎しみを体現したかのような兵器すらも作り上げたのかとマリューが問い質す。
『あれを作ろうとしたのは紛れもなく、この私だ。ラクスも、そしてプラントにいる多くの者が周知しているだろう。』
「そんな……!」
『元々はあのような兵器として作り上げたものではなかった。本来の用途は大気圏外の船舶を加速させる装置、宇宙におけるマスドライバーとして作られていたのだ。』
人類がより広い宇宙へと飛び立つ「創世記」の名を冠した建造物。しかし、それがプラントに住まうコーディネイターの憎悪を具現した象徴として世界に産み落とされているのであった。
『それがまさか……あそこまで悍ましいものへと作り変えられてしまったとは……』
シーゲルの顔には絶望感が滲み出ており、傍にいたラクスも沈痛な面持ちで父の姿を見つめていた。
『連合艦隊の被害状況が判明してきた。前線部隊は約60%を損失、ボアズに駐留していた部隊は指揮官を含めて全滅。旗艦ドゥーリットルは消滅。艦長のウィリアム・サザーランド大佐も戦死したとのことだ。』
「………」
呆気なく散ったマリューの元上官。憎みこそしていた一方で、このような最期を遂げたことに、彼女の心境は複雑なものとなる。
『残存艦隊はドミニオンを中心として一時後退をしている模様。それ以降、明確な動きはないようだ。』
クサナギの艦長、キサカからの報告に呆然とする各艦の乗員たち。その中で、マリューはドミニオンが健在であったことに安堵の色を浮かべる。
「ナタルたちは……まだ無事だったのね。変な話、これで地球軍がプラントへの直接攻撃を断念してくれればいいのだけど……」
そう語ることが希望的観測であることは、マリュー自身も理解していた。そして状況は、地球軍艦隊の被害を心配するほど余裕はないのであった。
「ジェネシスは前方のミラーブロックを換装することで、再度照射が可能となっている設計のようです。仕様上連射は不可能ですが、あと2回も発射をすれば戦いは終わるでしょう。」
エリカが淡々と放った言葉に、それを聞いた人間は言葉を失う。次の発射で月、そして三度目の発射で地球、それにより大半の人類は死滅し、戦争は終わりを告げるというのであった。
「とにかく、戦争を止める前にジェネシスを止めないと全てが終わりだわ。」
『しかし、我々3隻だけでザフト防衛線を突破することはいくらなんでも……』
マリューの言葉通り、この場にいる誰もがジェネシスの再発射の阻止と破壊は最優先であると理解していた。しかし、それを達成するだけの実力があるかは不透明であった。
『ラミアス艦長、ドミニオンのバジルール艦長と接触することは可能でしょうか?』
「ナタルと?ええ……艦隊指揮を代理で執っているのであれば、向かうことは出来ますが……っ!?まさか……!」
『あの憎しみの光を消し去るためには、少しでも多くの力が必要です。それが、わたくしたちに出来る唯一のことでしょうから。』
ラクスはマリューに対し、ある提案と望みを託そうとする。そしてそれは、マリュー・ラミアスという軍人にしか出来ないことでもあった。