大天使の戦女神   作:Scorcher

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最終決戦です。ヤキン・ドゥーエ攻防戦というよりは、種死におけるメサイア攻防戦のような状況となっています。

前半はほぼ全編に渡りナタルさんが主役です。もう少し作品前半で出番を多くすべきだったと少し後悔していたりも。

終盤に泣きそうとなっていたマリューさんの前に、主人公が颯爽と現れます。次回が実質最終回、そしてエピローグへと続きます。ただキラマリュ要素がエピローグ後半まで希薄なんですよね……


Phase13-1

「一度軍門に降ることを断っておきながら、共闘を提案とは……なんと恥知らずな。」

「ですが、我々も彼女たちと交戦する余裕などはありません。」

 

地球連合艦隊旗艦代理、ドミニオンの艦橋でブルーコスモスの盟主、ムルタ・アズラエルと艦長のナタルは、アークエンジェルから送信されてきたメッセージを確認していた。

 

「あいつらの手を借りずとも、月からの援軍が来ればプラントは落とせる!それまでに君は部隊の再編成を急がせるんだよ!」

「その月基地が、あの兵器の次の目標である可能性がありますが。」

「プラントを落とせばあんなものを撃つ奴らだっていなくなる。それくらい君ら軍人だって分かるだろ!?」

 

指揮官の如き振る舞いを見せるアズラエルと、その態度に呆れた様子のナタル。現状、一民間人の意向によりプラントの住むコーディネイターの殲滅を受けているという状況であった。

 

一方で、ナタルはプラントへの直接攻撃に対しては不本意であった。むしろこの民間人が軍艦の艦橋で指図をすること自体、彼女にとっては不快の極みといえた。

 

「私たち軍人が好き好んでコーディネイターの絶滅を行うとでも?」

「それを決めるのは君たちではなく僕らだ!僕たち市民が君たちを統制して、敵を撃つように命じているんだからな!」

 

文民統制の原則を声高に叫び、ナタルたちを従わせようとするアズラエル。だが、少なくともナタルは彼を文民としては見ていなかった。

 

「それは市民ではなくあなた個人の意思でしょう。我々は私兵ではなく軍人です。この前線において、自ら生死を個人になど委ねたりはしない。」

 

毅然としてアズラエルの要求を退けるナタル。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた彼は怒りを露わとし、自身の懐から拳銃を取り出し安全装置を外すと、それをナタルへと突きつけるのであった。

 

「あんたたちの生死など関係ない!これはプラントを討ち、地球を守るための命令だ!その命令が聞けないというのか!?」

「軍人ではないあなたの命に、我らが従うことはありません。」

「っ……!お前ぇぇぇぇっ!!!!!」

 

ナタルの言葉に激昂したアズラエルが拳銃の引き金を引こうとした矢先、彼の懐に潜り込んだナタルは銃を持った彼の腕を抑え込む。そして、瞬く間に彼の身体を拘束するのであった。

 

「民間人がふざけた真似をするな!この艦の艦長は私だ!貴様のような人間が武器を持つことはおろか、指図すること自体が間違っているのだ!」

「ぐぅっ……!お、お前……自分が何をしているのか分かっているのか!?僕はブルーコスの盟主で……ごがぁっ!?」

 

自身の肩書を改めて言い放とうとする彼の顔を、ナタルは拳で盛大に殴打する。鼻を強打し、大量の鮮血が飛び散り、その多くが無重力空間であるためにナタルの顔が身体へと付着する。

 

「保安要員を呼べ。この民間人を営倉へと放り込んでおけ。抵抗するようであれば多少手荒でも構わん。」

「し、しかし艦長……アズラエル理事は我が軍のオブザーバーとして……」

「出来ないとでも?」

「は、はっ!直ちに保安要員をこちらに!」

 

厳格な軍人であるナタルが返り血を浴びた姿は、目にする者へ威圧感を与えるに十分な出で立ちであった。彼女から十二分な訓練を受けていたドミニオンのクルーは、信頼する上官の命令を忠実に実行するのであった。

 

「それから、その男に随行していた研究者たちも拘束しろ。あの3機の運用は引き続き本艦の指揮下で行う。3体の生体CPU……いや、3人のパイロットたちもこちらの指揮で動いてもらう。」

 

ナタルは厳格な軍人であろうとした。しかし、かつて戦場を共にした友人の姿を見て、彼女の考えにも変化が生じているのであった。

 

「ば、バジルール艦長。本当にこれでよかったのでしょうか?」

「構わん。責任を問われるのも艦長である私だけだ。命令に従ったお前たちに一切の責任はない。」

「し、しかし……」

「それよりも、各艦に対して再攻撃の準備を急がせろ。月基地が撃たれる前に、あの大型兵器を制圧する。アークエンジェルへ協力要請の受諾の返答を伝えろ。」

 

厳格な軍人である態度をそのままに、柔軟かつ合理的な判断を下すに至ったナタル。ドミニオン率いる連合艦隊の残存勢力は、アークエンジェルに合流してジェネシスの破壊へ赴くのであった。

 

 

 

 

エターナル、クサナギ、そしてアークエンジェルはナタルが代理指揮を務める連合艦隊と合流、共同でジェネシスの破壊作戦を決行することとなる。

 

「それでは、エターナルとフリーダム、ジャスティスが先行してザフトの防衛線を突破、本艦とクサナギ、及びドミニオンと連合艦隊が体勢を崩したザフト軍を迎撃していく方針で行きます。」

『はい、ザフト軍の中には、あのような兵器を使用することに抵抗がある者いるでしょう。わたくしの言葉で、少しでも撤退をする兵がいればよいのですが……』

 

艦隊の中で最も機動力が高いエターナルにはラクスが乗船しており、ザフト軍を心理的に撹乱する狙いもあった。作戦の目標はあくまでもジェネシスであり、多くの敵を討つことを目的とはしていなかった。

 

『破壊が遅れるようであれば、最悪換装されるミラーブロックの破壊に回ることも検討しなければならないでしょう。』

「そちらへ割ける戦力を確保出来れば、という話ですね。作戦の鍵を握るのはアスランくんのジャスティス、そして……キラくんのフリーダム。」

 

ジェネシス本体の破壊にはアスランが志願をしていた。父の暴挙を今度こそ止める、彼はその確固たる意志を持って、戦いに臨もうとしていた。

 

『残された時間は多くありません。コーディネイターの憎しみが込められたあの光がもう一度放たれる前に、わたしくたちは……!』

「ええ……!各艦発進!これよりジェネシスの破壊作戦を開始します。」

 

人が憎み合う世界を終わらせるため、アークエンジェルは志を同じくする者たちと戦場へと向かう。武器を手に取るマリューに迷いはなかった。愛しき者と共に明日を迎えるために、彼女は生きるために戦うのであった。

 

 

 

 

「敵モビルスーツ接近、数12!」

「ヘルダート照準、目標敵モビルスーツ部隊っ!」

 

プラントの意思、そしてザラ議長の意思を代弁するザフト軍がアークエンジェル率いる艦隊へと殺到する。その数はアラスカの時を上回り、戦いの終末期を表しているようでもあった。

 

「アーガイル少尉のストライクには、あまり艦を離れように伝えて。そのためのランチャーなのだから。エネルギーが少なくなれば、すぐに換装するようにとも。」

 

しかし、以前のようにアークエンジェルもまた単独で戦闘をするような状況ではなく、キラの友人が乗るストライクと、バスターによる支援攻撃も展開しているのであった。

 

「エターナル、まもなくジェネシス最終ラインを突破します。」

「本艦も早急にエターナルの元へ。ドミニオンと地球軍艦隊は?」

「本艦後方で敵部隊と交戦中。全艦健在です。」

 

エターナルの中央突破、及び火力支援ユニット、ミーティアを搭載したフリーダム、ジャスティスの攻撃により、ザフト軍の指揮系統は混乱し、数では劣りながらも互角以上の戦局を維持していた。

 

「右舷前方よりナスカ級2隻。モビルスーツも多数!」

「くぅっ……!さすがに2隻同時は……!」

『クサナギの艦砲射撃で頭数を減らすとしよう。それから、こちらのじゃじゃ馬ルーキーが突貫をしたがっている。アークエンジェルと共に進行をするとのことだ。』

「じゃじゃ馬……カガリさんが?」

 

アークエンジェルの右舷へと護衛につく、鮮やかな緋色のストライク。そのさらに前方へとクサナギが全砲門を開いてザフト軍と対峙する。

 

「連射は出来んから外すなよ。ローエングリン、てぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 

アークエンジェルを遥かに上回る大火力、4門の破城砲が禍々しい光を放ち、迫ろうとしていた敵部隊を消滅させる。

 

『ラミアス艦長、今のうちにカガリと共にジェネシスへ!』

「え、ええ……」

 

戦闘中でありながら、クサナギの火力を前に唖然とするマリュー。眼前で放たれた破城砲と同等のものを放った自らの所業に、彼女は些か恐怖を感じるのであった。

 

「ストライクルージュの援護を!先行してエターナルに合流してもらいます。」

「左舷後方より急速接近する熱源を確認。これはモビルスーツ……?」

「数は?」

「一機です。しかし、これは……」

 

激戦が続く最中、ザフト軍の防衛網を突破するアークエンジェルとドミニオン率いる連合艦隊の前に、新型機と思わしきモビルスーツが現れる。

 

「連合艦隊、敵モビルスーツの攻撃を受けています!」

「それがどうしたというの!?ザフトのモビルスーツなんて、この宙域を見渡す限りにいくらでも……」

「いえっ……艦長、連合艦が当該の敵機により撃破されています!」

「なんですって……!?」

 

管制官からの報告のマリューは驚愕する。それに続いて艦橋のモニターにはドミニオンからの通信が入る。

 

『ラミアス艦長!』

「ナタル、ドミニオンは大丈夫なの!?」

『現在のところ、本艦搭載のカラミティ、レイダー、フォビドゥンによる迎撃で対処しています。しかし……僚艦の被害は広がる一方です。』

「あの3機が相手でも……たったの1機で……!」

 

中衛で迎撃に当たっていた連合艦隊が撃破されることで、アークエンジェルとクサナギに対する攻撃は激しさを増そうとしていた。しかし

 

『アークエンジェルは予定通り、エターナルとの合流を最優先してください。』

「そんな……それだとあなたたちが……!」

『我々の任務はあくまでもジェネシスの破壊です。ここでザフト軍を少しでも足止めしなければ、地球が……この世界の未来がなくなってしまうのですから……!』

「ナタル……!」

 

苦渋の選択を強いられるマリュー。ドミニオンを殿として残すことで、アークエンジェルがエターナルへと合流出来る可能性は高まる。しかし、それはナタルたちを捨て石にするも同然の行為であった。

 

「やっぱりダメよ!出来る限り多くの艦がエターナルと合流しなければ、本作戦の成功は望めないわ!」

『何をそんな甘いことを言っているのです!あなたのその甘さが全てを無駄にするようなこの戦場で!』

『ゴッドフリート2番沈黙!艦長!このままでは戦闘の継続も困難に……!』

『ローエングリンを起動させろ!あの新型を落とせずとも、可能な限り先行する部隊への敵部隊の接近を阻止するんだ!』

 

通信中にもドミニオンの艦橋から聞こえてくる劣勢の報告。マリューはそれを聞き、悲痛な表情となってモニター越しのナタルと顔を合わせる。

 

『行けっ!マリュー・ラミアス!あなたにしか出来ない使命を全うしろ!』

 

死地にありながら、かつての同僚を叱咤するナタル。彼女の言葉にマリューは涙を流すことなく、艦を前進させるのであった。

 

「本艦はエターナルと合流し、ジャスティスが突入したジェネシス侵入口を防衛に回ります!」

 

機関を最大として、ドミニオンが苦戦する戦闘宙域から離れるアークエンジェル。マリューは再び大切な者を見捨てる選択した自らに無力感を感じるのであった。

 

「ナタル……ごめんなさい……ごめんなさいっ……!」

 

悔恨の言葉を繰り返しながら前へと進むアークエンジェル。その進行方向から一機のモビルスーツが向かってくる。

 

「フリーダム……!キラくんっ……!?」

『アークエンジェルは早くカガリとエターナルの元へ!僕はドミニオンの救援に向かいます!』

 

アークエンジェルの付近を通過する際に、フリーダムに搭乗するキラは急ぎジェネシスへ向かうようマリューに促す。そして彼は、ミーティアを装備したフリーダムをドミニオンの元へと向かわせるのであった。

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