二次創作を書く上で気を付けているのは、出来るだけ原作のキャラクター造形からかけ離れた性格などにはしないことであったりも。でもストーリーを変えてみたりすると、確実に性格は変化するものなんですよね。
次回はフレイの一件で傷心のキラをマリューさんが癒してしまう回です。まぁ半分はピンク髪みたいな(ry
ザフト軍クルーゼ隊の追撃を退けながら、アークエンジェルは本来の所属部隊である第8艦隊との合流を目指していた。
「キラくんも、とんでもないものを拾ってくれたわね。」
道中、艦内の物資が不足し始めていたため、マリューを含む乗員の判断でユニウスセブンが漂うデブリ帯へと立ち寄る。
「人助けをしたのはいいのだけれど、乗っていたのがプラントのお姫様だなんて……」
その補給のために立ち寄ったデブリ帯で、ストライクに搭乗していたキラは救命ポッドを発見。その中にいた人物を巡り、アークエンジェルは新たな問題を抱えていた。
「助けずにはいられないのでしょうね。きっと彼は優しい……いえ、優しすぎるのだから。」
マリュー自身も救われたキラの優しさ。それが起こした問題に直面し、マリューは再び悩むのであった。
◇
「僕なんかに聞いても、何の意味もないんじゃないんですか?」
密かに艦長室にて、保護したザフトの要人、ラクス・クラインの処遇についてマリューはキラに相談していた。
「それは……そうなのだけど。助けたあなた自身の意見も聞いておきたくて……ね。」
「僕は……すぐにかえしてあげるべきだと思います。」
キラの答えにマリューは安堵する。自らと近い考え方を持つ彼に、彼女は親しみと安心感を得ていた。
「そうね……いくらプラント代表の娘とはいえ、まだ彼女も子供。出来ることなら戦いになんか巻き込みたくはないわ。」
「僕だって……そう思います。あんな女の子を、戦争に巻き込むなんて……!」
マリューのような考えは、ザフトとは敵対しつつもコーディネイターに対する憎悪を抱くことがない軍人であればこその考えであった。
「艦隊に合流出来たら、ラクスさんのことも出来るだけ便宜を図るわ。あなたと同じコーディネイターなのだし。でも……」
「でも?何か問題あるんですか?」
一方で連合軍にはザフトだけではなく、コーディネイターそのものに憎悪を向ける者を少なくはなかった。マリューは自らの懸念をキラへと伝える。
「保護という名目の人質……戦局を有利にする道具にはなってしまうかもしれないわ。」
「っ……!どうしてそんなことを……!やっぱりすぐにザフトの艦に……!」
「こちらで保護をしてしまった以上、私たちだけでザフト側に引き渡すことは出来ないわ。少なくとも、正規の手続きを踏んで民間人の返還という形式を取らないと、あなたを含めたこの艦全体の問題になってしまうのだから。」
保護したキラを責めることは出来なかった。だからこそ彼女は、自らの無力感を前に正論を並べることしか出来ないのであった。
「これ以上の追撃がなければ、第8艦隊との合流もあと少しで出来るわ。あなたがストライクに乗ることも、もうないと思うから。」
「ええ……僕も、もうアスランとは戦いたくないですから。」
「アスラン……?」
キラの口から出た名前。マリューはその名に聞き覚えがあり、堪らず言葉を口にする。
「アスランって……確か、ヘリオポリスで私とキラくんが最初に会った時もその名前を……」
「………」
怪訝な顔のマリューを前に沈黙するキラ。しかし彼は、彼女の不安げな表情を目の当たりにして重い口を開く。
「僕の友達で……あの時ラミアス艦長をナイフで殺そうとしたザフト軍の兵士です。」
「……っ!?」
「今は奪われた赤いモビルスーツ……イージスのパイロットです。」
マリューにとっては自身の多くの部下の命を奪ったザフトの兵士でしかなかった人間。しかしキラにとってはかつての親友であり、彼はその親友と戦っているという事実を彼女は知るのであった。
「そんな……!どうしてそんな大切なことを……」
「言えるわけないじゃないですか!?誰かに言ったって、何も変わるわけじゃない。」
ストライクで戦い続け、一人苦悩し続けていたキラ。彼にとって戦うことは同じコーディネイターと殺し合うだけでなく、かつて親友と殺し合いをすることでもあった。
アークエンジェルを守るために、キラは自らの感情を押し殺して戦い続けていた。マリューはただ、彼の言葉に対し罪悪感をさらに募らせていく。
「本当に……ごめんなさい。」
「謝らないでください。ラミアス艦長が大変なのは、僕も分かっています。それに、僕がストライクに乗らないとこの艦を守れないことも分かっていますから。」
それでもマリューは謝ることしか出来なかった。自らが軍人という立場でなければ、キラに対してストライクに乗るな、と言えたかもしれない。
しかし、彼女もまたキラと同じく、自らの感情を押し殺して彼を戦いに向かわせる軍人として振舞おうとしていた。
「キラくん……ありがとう、私に全てを打ち明けてくれて。」
「別に、僕はただ……何を言ってもどうせ変わらないと思って……」
マリューは椅子から立ち上がると、デスクを挟んで立っていたキラへ近づく。そして、胸の内を明かした彼を優しく抱きしめるのであった。
「えっ……!ラミアス艦長……!?」
「本当に……ごめんなさい。あなたを戦わせることしか出来なくて……本当に……!」
一人の人間と、軍人としての狭間で揺れ動き続けるマリュー。本来はこのような行為も、決して許されるものではなかった。
だが、例え軍人であったとしても人に対する情だけは忘れたくはない。マリューはキラに対して、自らが持つ人の心を曝け出すのであった。