後半はアラスカ寄港後の上官によるお小言タイム。そしてテコ入れ的な感じでマリューさん2度目のシャワーシーンです。今回はちょっとだけエッチな感じになっています。
言うほどマリューさんの胸に関する描写が書けていないというもの。まぁ全年齢作品なので、そこまで魔乳要素を放り込むことも出来なかった、というのが正直な話だったりします。
次回はいよいよアラスカ戦。マリューさんがブチギレで盛大にやらかします。その前に日付が変わった頃に閑話を投稿する予定です。出来れば読んでいただければ思います。
「キラ!トール!お願い返事をしてっ!」
艦橋に響くミリアリアの声。恋人と友人の名を呼ぶ彼女の声には悲壮感が滲み出ており、彼女自身も二度と応答がないことは察していた。
「キラくん……!」
艦長席に座りマリューもまた、彼らからの信号が途絶えたことに憔悴していた。しかし、艦長として悲嘆に暮れている余裕はないのであった。
「バスターの収容、完了しました。」
「6時の方向、海上より敵機接近!ディン3機です!」
「艦が動けるようになっても、現状使える火器で出来るような数では……艦長!」
ザラ隊の猛攻により、アークエンジェルもまた満身創痍といえる状態であった。オーブ近海の群島に不時着した艦は応急処置が済み次第、連合が勢力圏を維持する海域まで早急な撤退を余儀なくされていた。
「………」
艦の戦闘能力の半数を喪失、さらにはキラとストライクを失い、最大の窮地を迎えるマリュー。そして、彼女は苦渋の決断を下す直前、出撃前に交わしたキラとの会話を思い出していた。
◇
「どうかしたの?もしかして、怪我とか……」
「放っておいてください。僕は……大丈夫ですから。」
オーブから出国した直後の戦闘で、キラはついに強奪された機体の内1機の撃破に成功していた。
「ブリッツは……友達が乗っている機体じゃないわよね。」
「でも……アスランの仲間が、友達が乗っている機体だったから……!」
「あっ……!」
マリューはキラの心情を察しており、それは彼の友人であるアスランも同じ心境であると推測すること出来た。
しかし、キラに仲間を撃たれた彼はおそらく、キラを憎み撃とうとする。それが避けることの出来ない状況へとなっているのであった。
「もう、僕は……アスランと……!」
「で、でもキラくんだって、戦わないと撃たれてしまうのだから……」
「誰かを殺してでも生きていたい!マリューさんはそう思っているんですか!?」
「……っ!?」
殺したくないと思いながら、敵を撃ち、殺し続けていたキラ。声を荒げて放ったその言葉は、彼の心を蝕み続けた果てに出た悲鳴であった。
「戦わないと守れないから……でも、戦って誰かを殺すことになるなんて……こんなことが……!」
「………」
守るために戦う。そう自ら言い聞かせて戦い続けていたキラ。だが、その自己暗示の上に成立していた彼の心身は、友人の仲間を討ち果たしたことで崩れ去ろうとしていた。
「ごめんなさいキラくん……私が、あなたを戦わせていたから……!」
キラの心を少しでも落ち着かせるべく、彼を抱き締めて慰めようとするマリュー。しかし、彼女が伸ばした手をキラは払い除けてしまうのであった。
「……っ!!!?」
「やめてくださいっ!マリューさんが僕を戦わせていたのも、生きるために当然なんですからっ!」
「そ、そんなことは……!」
彼女がその言葉を否定することは出来なかった。しかし、キラが放った言葉は、彼女が秘めていた罪悪感を噴出させ、目から込み上げてくるものを抑えることが出来なくさせていた。
「すいません……マリューさんも、艦長として戦っているんですから。僕だけが辛いわけじゃないって……分かっていますから……!」
涙を零しそうになっていたマリューを前に、声を荒げていたキラもさすがにばつの悪さを感じ詫びの言葉を漏らす。だが、寄り添い合っていた2人の心は確実にすれ違っているのであった。
「大丈夫です。僕はまだ……戦えますから。もう少しだけ、みんなを守るために戦いますから。」
「き、キラくん……待って……!」
マリューが制止する言葉も聞かず、キラはその場を後にする。そして彼女は一人、彼に言おうとしていた言葉をつぶやく。
「あなたを本気で戦わせたいなんて、一度も思ったことなんてない。キラくんだって……その気持ちを分かってくれたんでしょ……!?」
伝えたくても伝えられない言葉。そして、伝えたところで何も変わらない言葉。そしてこれが、キラとマリューが艦内で交わした最後に会話となるのであった。
◇
『修理完了、いつでも動けますぜ!』
「艦長、すぐに発進を!」
ブリッジに整備班からの連絡が入り、ナタルがマリューに発進を促す。しかしそれは、未だに帰還しないストライクとスカイグラスパーの回収を断念することを意味していた。
「このままで本艦も危険です!それでもいいんですか!?」
「くぅっ……!」
艦と乗員の命を預かる身として、決断を強いられたマリュー。そして彼女は、声を振り絞って命令を下す。
「機関出力最大、本戦闘空域を……離脱する……!」
不時着していた艦が浮上し、暗雲と落雷に乱れた戦場から飛び去ろうとする。マリューは小さくなっていく群島を見ながら、通信士に向けて口を開く。
「オーブへの救難信号を。ストライクとスカイグラスパーの信号が途絶した座標を送って。」
「艦長!いくら捜索が困難とはいえ、オーブへ救助を要請するなど……!」
「責任は私が取ります!乗員の安否を最優先とする艦長としての義務よ!」
「………」
目に涙を浮かべたマリューの言葉に、ナタルがそれ以上何も言うことはなかった。副官として、ナタルはマリューの心情を理解していた。そして、自らに欠けている者をマリューに見出そうともしていた。
◇
「しかし、よくここまで無事に……いや、無事でもないか。ずいぶんと酷くやられたようだな。」
嫌味を存分に含んだ物言いで、マリューたちを詰りながら話を続ける男。彼、ウィリアム・サザーランド大佐はアラスカに辿り着いたアークエンジェルを歓迎してはいなかった。
「オーブに寄港したことは百歩譲って多めに見よう。しかし、その後にストライクはともかく、スカイグラスパーの片方までは失うとは。これでは戦闘データも揃わんかもな。」
「我が軍は未だに、戦闘機乗りが多くを占めますからな。実戦を積んだ機体のデータは、少しでも多いほうがよかったのに。」
「しかも、なぜ砂漠ではソードなどを装着して出撃させたのだ。わざと機体を壊そうとでもしたのかね。」
ほぼ母艦単体で辿り着いたアークエンジェルに何ら価値があるのか。厄介者だという雰囲気を隠そうともしないサザーランド大佐。それに対して、マリューは弁解の余地もなくただ謝るだけであった。
「大変申し訳ありません。僚機の損失は、私の指揮官としての技量が不足していたばかりに……」
「まぁ、君はよくやっていたよ、ラミアス艦長。コーディネイターが乗ったストライクがいたという前提があってもね。」
「………っ!?」
十分に小言を吐いた後、彼は彼女たちの最たる咎となる事案へと言及し始める。
「キラ・ヤマト。ヘリオポリスにいた民間人のコーディネイター……民間人、そしてコーディネイター。どちらもいただけない要素だが、それが両方揃っているとはね。ストライクのパイロットにしては、些か過ぎた冗談だよ。」
大西洋連邦の高官でありながら、反コーディネイター組織、ブルーコスモスの一員でもあるサザーランド大佐。彼が最も不満を持っていたのは、コーディネイターの力を借りたアークエンジェルが健在という事実であった。
「しかし、彼の力がなければ本艦は間違いなく……」
「それが問題だというのだよ。我が地球連合軍において、とりわけ我々大西洋連邦に属するキミたちがコーディネイターの力を用いて生き残るなど以ての外。」
コーディネイターの力を借りて生き延びるくらいであれば潔く死ね。それがブルーコスモスに傾倒する彼らの価値観であった。
「ま、キミたちともにアラスカへ辿り着かなかったのは、ある意味でも惜しいといえるか。」
「最近はあの『化物共』のサンプルも少なくなっていましたからね。実戦経験があったのなら、いくらかの利用価値はあったでしょうが。」
「……っ!?」
マリューは必死に自らの感情を押し殺していた。自らの想い人を『化物』と誹り、実験材料として扱うと憚ることなく口にする上官たち。
己が恥辱に塗れることは十二分に覚悟していた。しかし、コーティネイターだからという理由だけでキラを愚弄する彼らの言葉に、マリューの中では得体の知れない何かが芽生えているのであった。
「そう明け透けに物を言うべきではないぞ。我ら大西洋連邦は西暦時代からの人権先進国なのだからな。」
「これは失礼しました。彼らコーディネイターも一応人間と呼べるものでしたな。」
敵であるから撃つのではなく、自らが好まざる存在であるから撃つべき敵である。マリューは自らとは前提が異なる上官たちを前に、自らの軍人としての在り方を改めて問うのであった。
◇
基地内で修繕を受けるアークエンジェル。乗員たちは新たな辞令が下るまでの時間を、不安なまま過ごし続けていた。
「………」
室内のシャワールームで一人、温水に打たれるマリュー。孤独を感じ、否応なく思い出すキラの顔。彼女の中に後悔の念だけが絶え間なく沸き続ける。
「キラ……くん。」
艦長として彼を戦場へと出し続けていた自らの所業。艦を守るため、敵を撃てと命じ、戦い拒んでいた彼を戦わせていた現実。
「私は……私が、あの子を……」
同胞と戦い、友人と撃ち合う苦悩を吐露した彼に対し、理解者として振る舞い寄り添っていた軍人として自分。
彼女は自らを顧みて、キラを殺したのは自分なのだと思い悩む。軍人として、一人の人間として、そして女として彼を死に追いやったのはないかと苦悩する。
「やっぱり……軍にいて恋なんてするものじゃないわね。」
一糸纏わぬ身体に伝う水滴。若さと女らしさに溢れる一方、軍人として鍛え抜かれた肉体。異性の目を惹きつけ、軍務には些か煩わしい豊満な乳房を有した身体は、果たして誰の為ものか。
「ねぇキラくん……私ね……」
最早言葉の届かぬ相手に、自らの思いを口にしようとするマリュー。シャワーの温水が滴る彼女の頬からは、水滴ではないものが静かに零れ落ちているのであった。
◇
アラスカへと入港してから1週間後。アークエンジェルに対し新たな辞令が下される。一部乗員の転属後、艦はそのままアラスカ守備隊として編成されるというものであった。
「宇宙用母艦であるはずの本艦が……アラスカに留まる?」
「艦長、何か気がかりなことが?」
「いえ……ザフトが大規模な降下侵攻作戦をパナマへ行うと聞いているから、こちらの防備を私たちで固めてほしい……ということなんでしょうけど。」
ブリッジの艦長席に座りマリューは、新たな命令に違和感を抱くものの、最前線へ向かう必要がないことに安堵を覚える。
「艦の修繕状況は?」
「既に完了しています。全機関、武装、共に万全です。」
「ありがとう。ただ……もう使わないのが一番いいのだけど……ね。」
大小に関わらず、二度と戦いたくない。それがマリューの本音であった。本来は技術士官であった彼女は既に、軍の中でも相当数の実戦経験を積んだ指揮官となってしまっていた。
「やっぱり、軍人には向いていないのよね。」
未だに傷が癒えぬまま、彼女はアークエンジェルの艦長席に座り続けていた。戦いから離れればキラを失った悲しみも消える、そう思いながら。
しかし、戦争は彼女を逃がそうとはしなかった。偽りの安寧を打ち砕くべく、絶望の波はすぐ傍へと押し寄せているのであった。