ゼルダの伝説 ~六人目の英傑~   作:クラウディ

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なんかすごいものができた(小並感)





兵士として、女として

「ゲギャッ!?」

「グギャッ!?」

「ゲベッ!?」

 

 視界に映り込んだ醜悪な魔物の顔面に力任せに剣を叩きつけていく。

 吹き飛んでいく魔物を見届けることなく次の標的へと視線を移し、また剣を振り下ろした。

 一体、二体、三体……。

 次々と襲い掛かってくる魔物たちを、ただひたすら斬り伏せていった。

 

「ゲギャギャギャギャ!!」

――ブォオオオオオオオオオオン!!

 

 一体の魔物が笛を吹き、仲間を呼び集める。

 仲間を集めてくれるなら好都合だ。

 笛を吹き終えたのか、そいつは弓を構えてこちらに矢を射ろうとしてくる。

 その前に――

 

――ブォンッ!

――グシャッ!

「ゲピャッ!?」

 

 頭をかち割られたことで息絶えていた魔物が握っていた棍棒を全力で投擲した。

 投げられた棍棒は吸い込まれるように魔物の頭部へと命中し、そのまま絶命させる。

 それを確認するまでもなく音で情報を得た俺は、棍棒を振りかぶっていた魔物を貫き、こちらも絶命させた。

 返り血がおもいっきりかかり、生ぬるく気色の悪い感覚に全身が包まれるも、剣を振って貫いていた死体を放り投げる。

 そんな姿を見た魔物どもは、怯えながらも戦意を緩めるつもりはない。

 そんな魔物どもを見据えながら、俺は状況を把握する。

 

(残り7体……うち一体はモリブリン……あいつらの血のせいでこっちの武器は鈍ら……まぁ、関係ねぇか……)

 

 剣に付着している血液は後で水で洗い流せば済む話だ。

 切れ味に関しても、俺は大して気にはしていない。

 どうせ力任せに叩き潰せば死ぬのだ。

 俺も相手も。

 問題は、剣を振るう際に発生するであろう弊害の方。

 今の俺にとって一番の問題。

 それは……。

 

「ゲギャァッ!?」

 

 突如、背後から魔物の悲鳴が聞こえてきた。

 そちらに目を向けると、そこには先ほどまで戦っていたはずの魔物の死骸が転がっている。

 おそらく仕留め損ねていたのだろう。

 そして、俺の背後から不意打ちを仕掛けようとしていたのだろう。

 しかし、そうはならなかった。

 何故なら――

 

「すまねぇなリンク。助かった」

「…………」

 

 いつの間にかいたリンクが、その魔物の首を切り落としたからだ。

 俺が彼に感謝すると、彼は剣についた血を払い落としながら、俺の側に立ち小さく首肯するだけだった。

 そんな態度にいつも通りだと苦笑しながらも、彼は俺の隣に立ち、構えを取る。

 

「リンク、右の三体を任せる。俺は……モリブリンを含めた左の四体を殺る」

「……!」

 

 彼が静かに、そして力強く首を縦に振る。

 それを確認した俺は地面を踏みしめ、一気に駆け出した。

 そして、まず目の前にいた魔物に肉薄する。

 その瞬間、奴は手にしていた剣を振り下ろそうとしたが、俺は剣を振り上げて脇腹から肩にかけて両断した。

 死体が宙を舞い、地面に落下する前に別の魔物の頭部を粉砕する。

 それと同時に、頭上から影が差し込んだのを確認し、すぐにその場から飛び退いた。

 その直後、俺がいた場所に棍棒が叩きつけられる。

 どうやら俺に攻撃しようとしていたモリブリンが、棍棒での攻撃に移ったらしい。

 仲間が殺されたことに怒りの咆哮を上げるモリブリンを前に、俺は――

 

「うるせぇよ。黙って攻撃してこい」

 

 手に持っていた剣を投擲した。

 怒りで気をとられていたモリブリンは頭を貫かれて絶命する。

 それを見届けることなく、次の獲物へと狙いを定めた。

 最後の一匹は逃げ出しており、背中を向けていた。

 だが、そんな無防備な敵を逃がす俺ではなく、

 

「逃げてんじゃねぇよ」

 

 モリブリンの死体から引き抜いた剣を投擲してとどめを刺した。

 

「さてと、俺の方は終わったから……」

 

 自分の仕事が片付いたことで、もし苦戦しているのであればリンクの手助けをしてやろうかと思っていたのだが……。

 

――ザシュッ!

「グ、ゲェ……」

「フゥ……」

 

 ちょうどよく終わったようだ。

 魔物の群れの中に突っ込んでいったというのに、怪我一つ負っていない様子のリンクを見て、俺は思わずため息をつく。

 そんな俺に気づいたのか、剣を収めた彼はこちらに歩み寄ってきた。

 

「さっすが、王国最年少天才騎士だな。助かったよ。今度なにかお礼をさせてくれ」

「! ……!」

「お、おう。そんなに喜ぶほどか? まぁいいけどよ」

 

 俺の言葉を聞いた途端、リンクは嬉しそうな表情を浮かべた。

 相変わらず無口だが、こうして喜んでくれるのを見るのは悪くない。

 それにしても、この調子でいけば、あと1時間くらいで終わるかもしれないな。

 そう思いながら、再び周囲の警戒に入った。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 それからしばらく経った頃。

 

「ふぅ……これで終わりか」

 

 魔物を全滅させた俺とリンクは、今回の実践訓練の野営地に戻った。

 すると、そこにはすでに他の兵士達が戻っており、焚火の前で座っていた。

 俺たちの姿を見た兵士の中にいたジョンがこちらに手を振り、声をかけてくれる。

 

「おっ、ようやく戻ってきたか。大丈夫だったか?」

「あぁ、問題ねぇ。それより、そっちこそどうなんだ?」

「こっちも問題なしだ。お前らが森の奥へ行ったって聞いた時は焦ったが、まさか本当に戻ってくるとはな……正直、心配はしてなかったがな」

「るっせ、褒めんなっての」

 

 ニヤリと笑いながら言ってやったが、実際あの時、ジョン達を置いて先に行ってしまったのだから、あまり強く言えない部分がある。

 まぁでも、結果的に無傷で戻ってこれたんだし、別にいいだろう。

 焚火の前に座りながら、配膳されたパンとスープを食べ始める。

 そんな時、ふと思い出したのようにジョンが呟いた。

 

「そういや、最近は魔物の動きも活発化してるみたいだし、今日みたいな実戦訓練は今後も増えていくかもしれねぇな」

「魔物の活発化か……」

「ああ。最近、近くの村が魔物に襲われたらしい。何とか撃退らしいんだが、その魔物の中にはボコブリンだけじゃなく、モリブリンやリザルフォスなんかもいたそうだ」

「そうか……」

 

 その話を聞きながら、俺は今日の魔物との戦いを思い出していた。

 確かに、最近の魔物たちは以前にも増して凶暴化している気がする。

 それに、話題にも上がったモリブリンは、さっき戦った魔物の中にもいた。

 以前と比べて、明らかに強くなっている。

 その原因が何か、心当たりはある……。

 

「魔物の活性化はここ数年前から起こっていて、最初は小さな異変だったが、今では大きな事件にまで発展してる。近いうちに大規模な討伐作戦が行われるんじゃねぇかな?」

「……これも、厄災復活の予兆なのかもな……」

「そうだろうなぁ……まぁ、まだ俺達にできることなんて何もないだろうがな」

「だといいがな……」

 

 俺は軽く肩をすくめ、残っていた食事を平らげた。

 

「さて、おれはちょっと散歩にでも行ってくるかなっと」

「気をつけろよ~」

 

 食事を終えた俺は、立ち上がって森の中に入っていく。

 そんな俺にジョンは軽い感じで手を振りながら見送ってくれた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

――ガサガサ……。

 

 しばらく歩いていると、少し離れたところから物音が聞こえてきた。

 よく見ると、茂みが揺れ動いており、誰かがいるのは確かだった。

 

「…………」

「…………」

 

 しかし、その気配には覚えがあり、その視線にも敵対の意思はなかった。

 そして、向こうも俺の存在に気づいているらしく、隠れているつもりもないようだ。

 なので、俺は特に気にすることなく、そのまま歩みを進めた。

 すると、案の定というべきか、その茂みも俺の後をつけるかのように動き出す。

 だが、それを気にかけることなく、俺は歩き続けた。

 そして、ある程度進んだところで、俺は振り返り、口を開く。

 

「はぁ~……出てきていいぞリンク」

「!」

 

 それは、俺が予想していた通りの人物だった。

 そこに立っていたのは、先ほど別れたばかりのリンク。

 相変わらずの鼻筋通った美形で、女性陣が見たら黄色い悲鳴を上げること間違いなしの顔をしている。

 そんなリンクが俺に近づくと、頭を突き出してきた。

 

「あ~……なんだ、撫でればいいのか?」

「……!」

「分かったよ。……ったく、こんなむさい男に撫でられて何が嬉しいんだか……」

 

 美少年がむさくるしい男に頭を撫でられている。

 世の貴腐人が見ようものなら、狂喜しかねない光景だが、今更そんなことを言っても仕方がない。

 俺はリンクの頭の上に手を添えると、優しく撫で始めた。

 すると、リンクは気持ちよさそうな表情を浮かべながら目を細める。

 その様子を見て、「こうしてみたら女みてぇだな」と思いつつ、俺はしばらくリンクを撫で続けていた。

 

「さて、俺は適当に散歩しに来たんだが、お前は……」

「…………」

「パンに水筒……飯食ってこなかったのか?」

「…………」

「周りが気になって食べれなかったから、俺についてきたって? ……はぁ、しょうがねぇなぁ」

 

 リンクが無言のまま渡してくれた水筒を受け取り、その中に水を注いでやる。

 それを受け取ったリンクは嬉しそうに飲み始め、あっという間に中身を飲み干してしまった。

 

「流石は育ち盛り、いい食いっぷりだな」

「…………」

「腹減ってたからついてきたって? まぁ、そういうことにしておいてやるか」

 

 俺は空になった水筒を返してもらうと、地べたに座る。

 ちょうど着いたところが川のほとりだったので、ここで休むことにしたのだ。

 すると、リンクも俺の隣に腰掛け、パンを食べ始める。

 

「……そういや、お前と一緒に昼を食べるのは久しぶりだな」

「…………」

「最近かまってやれなかったからって不貞腐れるなよ。俺だって忙しいんだから」

「…………」

「んっ? 今日はいつもより大人しくないかって?」

 

 そう言われれば、確かに普段よりも落ち着いた様子だったかもしれない。

 まぁ、理由はなんとなく分かるけどな。

 

「心配すんなって。大丈夫だよ」

「…………」

「分かってる。厄災との戦いには姫さんが研究してるガーディアンだけじゃねぇ。俺達もガノンに引き寄せられた魔物をつぶすために戦いに出る。そして……」

 

 そこでいったん言葉を区切り、リンクの方を向いた。

 その顔は不安げな表情をしており、俺のことを見つめている。

 俺はそんなリンクに向けて、安心させるように微笑んでやった。

 それにつられるようにして、リンクも笑顔を見せる。

 そして、俺は言葉を続けた。

 

「ま、死ぬつもりはねぇよ。あんな奴らに、滅ぼされてたまるかってんだ。そのためにも……くぁっ……はぁ~……今より強くならねぇとな」

「…………」

 

 体を伸ばしながら欠伸をし、再び視線を川の方に向ける。

 そんな俺の横に座りながら、リンクはこちらを見上げていた。

 その目を見て、俺は軽く苦笑する。

 本当に、こいつは分かりやすいな。

 

「大丈夫って。弟分を残して死ぬわけねぇだろ? お前が立派になっても俺は生き続けてみせるさ」

「……!」

 

 その瞬間、リンクはまるで子供のように目を輝かせ、俺の手を取ってくる。

 そして、そのままブンブンと上下に振り始めた。

 そんなリンクの様子に、思わず頬が緩む。

 

――こんな世界でも、絶望だけじゃねぇんだな。

 

 そう思いながら、俺はリンクと共に川のせせらぎを聞き続けた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 ハイラル王国へと戻った一行は、各々割り当てられた部屋に帰っていく。

 基本的には二人一組、四人一組で部屋を共有するのだが、中には個室を与えられる者もいる。

 兵士達の隊長や、近衛騎士。中には武勲を認められて昇格した者も個室を与えられていた。

 クロウはもちろんのこと、リンクもその一人であり、二人は個室を持っている。

 クロウは部屋について早々風呂にも入らず、そのままベッドに倒れ込むかのように眠りについた。

 対してリンクは、部屋へと戻るとすぐに荷物を置き、備え付けの机へと向かう。

 日記を書くためだ。

 

「♪~」

 

 鼻歌を歌いだしそうなほどに上機嫌なリンクは、ペンを走らせていく。

 そこには、今日の出来事が綴られており、その中には当然、クロウとのやり取りも含まれていた。

 リンクが、この日の出来事を書き終える頃には既に外は暗くなり始めている。

 それでも、リンクは気にすることなく続きを書いていった。

 だが、それも終わりを迎える。

 

「フフッ♪」

 

 書き終えた日記を閉じ、リンクはその表紙に口づけをした。

 それは、彼にとって大切な思い出であると同時に、かけがいのない宝物でもある。

 それを胸に抱きながら、リンクは幸せな気分に浸っていた。

 

「んっ……」

 

 そんなリンクは、寝るために服を脱ぎ始め、下着姿になる。

 その胸には――

 

――男にしては大きい膨らみがあった。

 

「ふぅ……んっ……」

 

 シャツ一枚の姿になり、リンクは自分の胸を揉んでいく。

 既婚の女性のような柔らかさこそないものの、適度な弾力と確かな重みがそこにあった。

 その手つきは優しく、時折漏れ出す声も艶めかしい。

 その姿を普段のリンクを知る者が見れば、あまりのギャップに目を疑うだろう。

 しかし、これはリンクにとって必要なことだった。

 

 何故なら……。

 

「クロウ……」

 

 そう呟きながら、リンクは自らの乳首を摘まむ。

 すると、そこからは僅かな痛みと快感が生まれ、彼――彼女は顔をしかめた。

 それを見たリンクの顔に笑みが生まれる。

 

「フフッ……」

 

 いまだ肉体は未成熟なれど、彼女の年齢はまだ十代前半。

 故に、その身体には女性としての魅力が芽生え始めていた。

 本来ならば、まだ先であるはずのソレは、彼の影響によって急速に成長を始めている。

 大人の女性へと変化を始めているのだ。

 

 無粋な説明だが、彼女は元から女である。

 何もこの魔法がある世界であっても、魔女の呪いや薬の影響で性転換したわけでもない。

 彼女は元々女なのだ。

 しかし、周りの者達からはごく一部を除いて男だと認識されている。

 それは何故か?

 それに関しては、この王国での徴兵制度にある。

 ハイラル王国の徴兵制度は、年齢に関しては一定の年齢から兵士となれるのだが、その下限年齢は低く、よほどの子供でもない限り兵士となれる。

 しかし、女性が兵士になることは原則として認められていない。

 戦うのは男の役割だという固定観念が根強く残っているからだ。

 だからといって、女性を戦場に出さないというわけにはいかない。

 しかし、やはり女性兵士の数は少なく、肉体的な面から見ても男性に劣っているため、採用されることもほとんどない。

 

 その点、リンクは特例中の特例であった。

 

 女性でありながら、その戦いは近衛騎士すら圧倒されるほど。

 加えて、他の兵士達よりも優れた身体能力を持っている。

 そんなリンクを周りが放っておくはずがない。

 リンクはハイラル王国の王族の間で瞬く間に有名人となり、王国上層部はしばらく混乱したほどだ。

 

――まさか、勇者となりうる者が、姫と同じく女性だとは……。

 

 リンクのことを知ったハイラル王の言葉がこれであった。

 つまり、リンクを男だと思い込んでいるのは一般兵や隊長達だけで、それ以外の人間はリンクを女性と認識していることになる。

 

 これで、リンクが性別を偽っていることへの疑問は解決できた。

 

 では何故リンクは、女性でありながら兵士になることを決めたのか?

 

 勇者の使命に目覚めたから?

 違う。

 

 国のために戦いたかったから?

 これも違う。

 

 復讐のため?

 まさか、彼女の家族は無事だ。復讐なんてするわけがない。

 

 誰かのために戦いたかったから?

 確かに近いがだいぶ限定されてる。

 

 では、何故兵士になることを決めたのか?

 

 それは簡単。

 

「クロウ……好き……」

 

 愛する男の側にいたいという単純な理由である。

 

 クロウとしては身に覚えがないことなのだが、リンクがクロウを好きになった理由は単純明快だった。

 物語の御姫様よろしく、魔物から助けてもらったのである。

 

 その時のクロウは、様々な村を放浪しており、その都度何かしらの手助けをしてきたのだ。

 牧場の手伝いや、雑貨屋の店番。果てには魔物退治といったことをしてきたのだ。

 

 クロウは、自ら魔物を倒しに出かけるような戦闘狂だった訳ではなく、むしろ戦うことが怖かった一般人だったのだ。

 訳も分からず死に、気づけばゲームの世界。

 その世界で何か凄まじい力を手に入れたと言う訳でもなく、ただただ普通の人間。

 しかし、そんなクロウが普通ではない力を持つ魔物が蔓延る世界で生き抜くためには、人並み以上の力を持っていなければいけなかった。

 クロウは、生き残るために必死で戦った。

 そして、戦い続ける内に、いつしか彼は英雄と呼ばれるようになり、その名を轟かせた。

 

 その過程で、様々な人を救っていた中に、当時の幼いリンクがいたのである。

 

 当時から少女としては不釣り合いな才能を持っていたリンクは、魔物であろうと負けることはないと慢心していたのだ。

 結果、魔物に殺されかけ、間一髪クロウに助けられたのである。

 

 その時のクロウの姿は、今でもリンクの目に焼き付いている。

 

 使い古されたせいで刃毀れし、ボロボロとなった剣。

 返り血がこびりつき、傷跡だらけの鎧。

 傷だらけの鍛え上げられた体。

 そんな状態でありながらも、自分を助けてくれたクロウに、当時幼かったリンクは恋をした。

 そして、今に至るのである。

 

「クロウ……」

 

 リンクの頭の中には、いつもクロウがいる。

 クロウのことを考えるだけで、胸の奥底に甘い痺れが生まれ、身体中に広がる。

 それがたまらなく気持ちいい。

 もっと、この感覚に浸っていたい。

 そう思うのだが、魔物達がそうはさせてくれない。

 噂では、厄災が復活しようとしているとか……。

 

「関係ない……」

 

 そう呟き、リンクは机の引き出しの中から一枚の手ぬぐいを取り出す。

 その手ぬぐいは、先日クロウが渡してくれたものであった。

 それにはリンクの汗以外にも、愛するクロウの汗がしみこんでおり、それだけでリンクの心は満たされた。

 手拭いで顔を隠しながら、リンクは思いっきり深呼吸をする。

 

「んっ……ふわっ……」

 

 リンクの鼻腔に、愛しい人の匂いが広がる。

 まるで全身を包み込まれているような安心感。

 これがあるだけで、リンクはどんな敵でも倒せる自信があった。

 

 だから、

 

 

 

 

 

「邪魔するやつは私が倒すよ。……だからクロウ……」

 

 

 

 

 

「私と一緒にいてね」

 

 

 

 

 

 その瞳はどろりと蕩けていた。

 

 夜も更けていく。

 

 異物によって狂った歯車を回しながら……。







恋する乙女リンクちゃん。

どうしてこうなった……。


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