「行こ」
とシルバーと一郎はその場を移動する。
木々掻き分けながら歩くガバラを見ながら、一郎は
「あれがガバラ!?」
と尋ねる。
「そうだよ。意地悪なんだ」
と答えるシルバー。
「喧嘩したことある?」
「ないよ、ちょっと強いんだよあいつ」
「じゃあ僕と同じだ!」
と自分をいじめてくる相手と、同じ名前の怪獣に弱気になるシルバーに共感を覚える一郎。
「ん?なにが?」
とシルバー。一郎は
「僕の知ってるガバラだよ」
と答え。その答えに
「ふうん」
とシルバー。一人と一匹はガバラが行ってしまったのを確認すると。
「ここは危険だからジュニアの縄張りまでいこうか」
とシルバーが提案し、ゴジラジュニアの縄張りに行くことになった。ジャングルの中を進む一郎とシルバー。その途中、
「うわっ!メガヌロンだ!」
人間よりも大きいヤゴの怪獣、メガヌロンが現れた。獲物を見つけたメガヌロンは一郎の方へ近づいてくる。メガヌロンは大トンボメガニューラの幼虫であり怪獣としてはかなり小さいサイズであるが、それでも簡単に人体を引き裂けるハサミや手持ちの機関銃程度なら弾く皮膚をもっており人間にとっては脅威だ。しかしその前にシルバーが立ちふさがった。
「僕が相手だ!」
と叫ぶとシルバーは放射火炎をメガヌロンに吹き付けた。たちまち炎上するメガヌロン。しかし2匹目のメガヌロンが現れ、シルバーに向かって突進した。
「うわぁ!」
と叫ぶシルバー。シルバーに体当たりするメガヌロン。しかしシルバーは倒れることなく耐えた。
「このぉ!」
とシルバーはメガヌロンを押し倒し、その首をつかむ。そしてそのまま握りつぶすように締め上げる。ギィッと声を上げて息絶えるメガヌロン。
「やったね」
とシルバー。
「ありがとうシルバー!」
と礼を言う一郎。しかし彼らの苦難はまだ終わっていなかった。一郎とシルバーを囲む様に複数のメガヌロンが姿を現したのだ。
「あっ!」
「ど、どうしよう……」
シルバーも狼狽える。この数を前に自分は良くても一郎を守り切る自身が無かったのだ。その時である、
「ああっ!」
辺りが影に包まれたかと思うと大きななにかがゆっくり降り立って来た。
「ラドンだ!」
降り立って来たのはメガヌロンの天敵にして翼竜の怪獣ラドンだ。ラドンは一郎達を一瞥すると、彼らを囲んでいたメガヌロンの群れをあっという間に嘴で啄んでしまった。
「すごい……!」
と感心している一郎。シルバーは
「危なかったぁ……ありがとラドン」
とラドンに感謝の言葉をかける。
『気にするな』
一郎には分からなかったが、怪獣の言葉でそう言うとラドンは飛び去って行った。
「僕たちを助けてくれたんだ」
とシルバー。
「僕たちも行こう」
と一郎はシルバーに声をかけるとジュニアの縄張りに向けて再び歩き出した。しかしその時けたたましいベルの様な音が遠くから聞こえて来た。
◇ ◇ ◇
おい…起きろよ……おい、起きろってば」
南に揺すられて一郎は目を覚ます。
「……どこ?どこ行ったんだよう。どこだよー…」
と一郎。南は
「おいおい寝ぼけるな何処にも行かないよ」
と一郎の肩を叩く。
「やだなーおじさん起こしてー」
折角寝ていた一郎はぼやく。
「悪かったな」
謝る南。
「ゴジラの所に連れてってもらう所だったんだぜ」
と一郎。南は
「誰に?」
と尋ねる。一郎は
「シルバーにだよ。僕シルバーと友達になったんだ」
と一郎は寝転ぶ。
「おいおい続きを見るつもりか。今母さんから電話があってな、今夜帰れなくなるそうだよ」
と一郎の母からの言づけ知らせる南。
「本当?」
「うん」
「ちぇっまたか…いつもいつもそうなんだから」
と一郎。南は
「ボヤくなボヤくな。お父さんやお母さんだって一生懸命に働いてるんだから。そうだ晩飯は俺の所で食おう。いいだろ?」
と提案する。それを無視して自作の玩具をいじる一郎に
「おい、元気を出して」
と慰める。
「うん……」
と答える一郎。
「じゃあ、支度出来たら呼ぶからな」
と自分の部屋へ戻って行く南を見送り一郎は再び寝転ぶ。そしてシルバー出てこい…シルバー出てこい…と念じるが
「駄目だぁ……」
何も起きず、起き上がる。そして南の部屋へ向かうのだった。
◇ ◇ ◇
その頃、ベーリング海アドノア島に設置された、アドノア島在住生物調査研究所では1人の少女が騒いでいた。
「だから~本当に男の子がいたっぽい~!」
ここアドノア島在住生物調査研究所はこの島を故郷としこの島の主ともいえるゴジラジュニアや、北極海に近い位置に浮かんでいるにも関わらずジュニアの放射能の影響で南国の島の様な緑あふれる様相になり、ジュニア以外にも大小関わらず多数の怪獣が住み着いているアドノア島の生態系の調査研究をしている場所であり、ここで従事できるのは国連に認められた者だけである。一見中学生くらいにしか見えないこの少女もその1人だった。彼女の名前は夕立。艦娘と呼ばれる種族だ。彼女は島に生息する怪獣、バラゴンと友好関係を築いており時折このアドノア島に遊びに来るのだが、
「もぉー!絶対いたんだってばぁ~」
彼女はまだ幼さを残した顔立ちをしており、腰まで伸びた長い金髪が特徴の少女だった。しかしそんな外見とは裏腹に彼女の戦闘能力は高く、その気になれば一人で戦艦を沈めることも容易な程の実力を持っているのだ。だが今はその見た目相応の子供の様に駄々をこねていた。それもこれも全て先日の出来事が原因である。
それは1日前に遡る… いつものように夕立はバラゴンと共に遊んでいた。2人は普段から一緒に行動しており、仲睦まじい関係であった。そして今日もまた仲良く泳いだり追いかけっこをしたりして遊んでいた。そんな時にシルバーが大コンドルに襲われる場面を目撃したのだが、夕立やバラゴンの加勢をする必要も無く。シルバーは大コンドルを撃退した。と、そこまではこの怪獣島、アドノア島ではよくある話である。しかしその最中、夕立はその近くのジャングルの辺りに子供が立っていたのをみたと言うのだ。
「夕立ちゃん。普通に何かの見間違えじゃないの?ここは一般の人は入れないのよ」
と夕立の証言を否定するのは夕立と同じ艦娘であり姉妹とも呼べる存在の村雨だ。彼女は夕立より年上なだけあって大人びた容姿をしており、金髪ツインテヘアーである。彼女もまた夕立と同様に戦闘能力が高く、単独で戦艦を落す事も出来るほどの腕前なのだ。ちなみに夕立とは同室に住んでいる。
「むぅー。絶対にいたっぽいぃー」
夕立は頬を膨らませながら言う。そんな様子の夕立を見て、
「うふふっ。それじゃあ私も探してみるわ。だから夕立ちゃんも協力して頂戴?」
と夕立を宥める。しかし他の国連職員は
「しかしですねえ。実際問題このアドノア島は一般の船も飛行機も近づけさせないようにしているんですよ。それに夕立が目撃した地点の近くにはカマキラスやクモンガのテリトリーがある訳で、もしいたとしても高確率で連中の餌食でしょう?」
と否定的な意見を言う。
「でも、万が一って事があるかもしれないし、実際にいるなら保護するべきじゃないかしら?」
と村雨が反論すると
「いえいえ。村雨さん。ここは危険です。いくらあなた達が小型怪獣を倒したとはいえ、流石に大型怪獣に襲われたらひとたまりも無いですよ。ここは諦めて下さい」
という国連職員。その時、
「私も一瞬でしたが、『彼』を感じました」
と名乗り出る者がいた。
「未希さん!」
と艦娘達。彼女は新城未希。研究所所員にして超能力者だ。彼女は予知能力を有しており、未来視ができるのだ。
「確かに『彼』を感じたんです。私の能力は絶対ではありませんが、ほぼ100%近い確率で当たるはずです」
「ですが今のアドノア島は新種の怪獣が出現しているんですよ?今出向くのは危険です」
未希の言葉を聞いてもなお懐疑的な態度の職員に対し
「ではこうしましょう。私と夕立さん。それと村雨さんの3人で捜索します。もしも発見できなかった場合はすぐに引き返す事を約束します。それでいいでしょうか?」
と提案をする。
「…わかりました。その条件でしたら許可します」
と渋々といった感じで承諾する。
「ありがとうございます。それでは早速行きましょうか」
こうして夕立達は捜索を開始したのだが……
◇ ◇ ◇
あくる日、またガバラ達に揶揄われた一郎は、気を晴らしに廃墟に来ていた。廃墟で真空管を見つけた一郎は他に何かないか探していると、ヘッドフォンと誰かの運転免許証を拾った。すると上の階で物音がしたので一郎は上に上がってみることにした。しかし
「あっ」
夕暮れ時を知らせるサインが鳴ったので一郎はそのまま帰ったのだった。すると廃墟のキャビネットの中から二人の男が出てきた。片方の男が
「馬鹿野郎ドジ踏みやがって」
ともう片方の男をなじる。もう片方の男は
「俺が何したってんだよ」
と言う。男の1人が
「お前が穴を覗いた時にポケットから免許証を落っことしたんだよ!」
と怒る。男たちは慌てて隠れながら窓の外を見る。すると一郎が柵を乗り越えて帰っていく所だった。男の1人がサングラスをかけ、
「おい、あのガキの家を確かめてこい」
と言った。もう片方の男は行こうとするがサングラスの男がその男の持っている重そうなバッグを引ったくり自分達が隠れていたキャビネットの中に隠すのだった。
男は一郎を尾行し、彼の住むマンションの前まで来た。一郎はマンションの前に止めてある中古車に触っていたが、車の管理人に咎められ、
「僕ね、車の免許証持ってるんだ!」
と言った。管理人に
「玩具の免許証なんて通用しないよ」
と言われ
「ちぇっ」
と自分の部屋に戻って行く。そして廃墟で拾ってきたヘッドフォンを自作の玩具に接続した。
「怪獣島、怪獣島、怪獣島どうぞ。怪獣島どうぞ。」
とまた怪獣島と交信しようとする。その頃男はマンションの前で様子をうかがっていたが、洗濯物を取り込むためにベランダにでてきた一郎を見つける。それを確認すると一旦潜伏している廃墟に戻るのだった。
一郎と南は晩御飯にすき焼きを食べていた。
「なんだ、ちっとも肉を食わないじゃないか」
と南。一郎は
「だって、悪いもん…おじさんが破産するんじゃないかって」
と言う。
「すき焼きくらいで破産するかよ」
と南。一郎は
「玩具売れたの?」
と尋ねる。南は
「見込みありだ、それでだ君にモニターになってもらいたいんだ」
と一郎に提案する。
「モニター?」
と一郎。
「新しい玩具に対する、君の率直な意見を聞かせてもらいたいのさ」
と南。
「じゃあ、すき焼きはモニター代?」
と尋ねる一郎。
「まあね」
と答える南。一郎は
「いただきます!」
と肉を頬張るのだった。それを見て南は、
「おいおい、そんなにガバガバ食っちゃダメだ、眠くなっちまうぞ」
と言うが一郎は、
「あっそうだ。今度寝てる時、起こしちゃダメだよ。ゴジラに会うんだから」
「ゴジラ?何処に居るんだい?」
怪訝な顔をする南に
「怪獣島さ。シルバーに連れていってもらうんだ」
と一郎。その時、ドアをノックして制服を着た二人組の男が入ってきた。
「すみません。お食事中でしたか」
と制服の男。南は
「何か?」
と尋ねる。制服の男は
「警察のものですが、ちょっとお伺いしたいことがありまして……」
と警察手帳を二人に見せる。
「はい、なんでしょう?」
と南。
「下にある車貴方のだそうですが」
と刑事。
「そうです。しかしあそこは駐車違反じゃないんでしょう?」
と南。刑事は
「いやいや、そうじゃないんです。知っていると思いますが、五千万円の強盗がですね、車を盗んで逃走する恐れがあるんで注意していただきたいんです」
と言った。南は
「そうですか。わざわざご苦労様でした!」
と言った。刑事達は
「どうも、お手間を取らせました」
と言い残して去っていった。その頃二人組の強盗は、廃墟の中で相談していた。
「どうすんだよ、いくら煙草を吸ってたって腹はいっぱいにならないぜ……」
とサングラスの強盗。もう一人の強盗も
「俺は腹が減ってペコペコだよ……」
と弱音を吐く。
「金がならガバっとあるんだから」
とバッグに手を掛けるが、
「腹よりここから逃げ出すのが先決だ!」
とサングラスの強盗に窘められる。そして
「それよりお前さっきの子供の居場所確かめて来たんだろう?」
と相棒に尋ねる。もう一人の強盗は
「ああ…2階の右から3つめだ」
と答えた。サングラスの強盗はライターの灯りで腕時計を確認すると、
「ようし…出かけるぞ」
ともう一人の強盗の肩を叩き、立ち上がった。
◇ ◇ ◇
その頃、一郎はシルバーとはぐれ、ガバラに追われていた。しかしガバラは直ぐに一郎に興味を無くし、なんとか一郎は逃げきることができた。
「あー良かった……」
と岩場で一郎はほっと息をつく。そして岩場の一角に腰かけるシルバーを見つけた。
「はーい!」
と一郎はシルバーに挨拶する。
「なんだ君か」
と花を手に持っていたシルバーは答えた。
「何してんの?」
と一郎は尋ねる。
「うーん、友達がいなくてつまんないや」
とシルバー。
「じゃあ僕と同じだ」
とまたもシルバーに共感する一郎。
「君は何しに来たの?」
と言うシルバー。
「だって、この前ゴジラの背中に乗せてやるって言ってたじゃないか」
と一郎。シルバーは
「あっ、そうか。今どこに居るかな?」
辺りを探す仕草をする。
「いつも一緒じゃないの?」
「うん。あんまり側に居ると怒るんだ」
とシルバー。
「どうして?」
と疑問を呈す一郎。
「なんでも1人で戦えってさ。1人で生きる練習をするんだって」
「へえ~厳しいなぁ」
「うん…」
1人と一匹が会話を続けていると。特徴的な鳴き声と共にゴジラジュニアが現れた。
「ジュニアが呼んでる!あっちだいこ」
と一郎とシルバーはジュニアの元へ向かうのだった。
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