一郎とシルバーはゴジラジュニアの下に来た。ゴジラジュニアが鳴き声を出す。
「何て言ってるの?」
と一郎が尋ねる。
「えーっと、シルバー。来るべき決戦に備えてお前に特訓を施すことにした」
「なんだって!」
と一郎が言うと、シルバーも言った。
「ジュニアは最近厳しいんだ。それで戦う相手を用意してきたから、それに挑んで強くなれって」
「どんな奴なんだよ」
「それは分からないよ。ただジュニアは勝てる相手だって言ってたけど……」
「まあ、やってみようぜ」
と言うことで一郎たちは外に出ると、そこには巨大なエビの怪獣がいた。
「あれか! あれは確か……」
「エビラだよ。ちょっと大きいけど…まあシルバーなら勝てるんじゃないかな」
海上にはゴジラがどこからか捕えてきたのかエビラがハサミを鳴らして威嚇している。どうやら、最初の相手はエビラでいいらしい。
「シルバー、頑張れよ」
と言うと、シルバーはうなずいた。そして、ゴジラジュニアが合図するとエビラが動き出した。シルバーは巨大化するとエビラの待ち受ける海上に入った。
「来るぞ!」
と一郎が叫ぶと、エビラは口から泡を吹き出して攻撃してきた。それを避けると、今度は両ハサミを振り回してくる。その攻撃をかわすと、今度は尻尾を使ってきた。
「こいつは強いな」
と言いながら、シルバーはエビラの攻撃を避け続ける。そして一郎はシルバーを応援する。
「頑張れシルバー!」
シルバーは負けずと尻尾の一撃をエビラに見舞った。エビラは後退したが、まだまだ元気だ。続けてシルバーはゴジラ一族の伝家の宝刀、放射熱戦をエビラに放とうとした。しかし突如シルバーの視界からエビラが消えた。
「!?」
驚くシルバー。一郎が叫ぶ
「後ろだシルバー!」
シルバーは振り向くがそれと同時にエビラのハサミの一撃がシルバーを襲った。吹き飛ばされるシルバー。幸い直撃は免れたがそれでもダメージは大きかったようだ。
「大丈夫?」
と一郎が聞くと、シルバーはうなずく。
「なんとかね。でも結構痛いよ。しかし何でいきなりエビラが消えたんだ?」
疑問に思うシルバー。一郎が
「あれを見て!」
指さす先を見ると、ブゥゥゥゥゥンと言う羽音と共にエビラが滞空していた。その背の甲羅にはなんと昆虫の様な翅が生えている。
「なんだあいつは? エビラじゃないのか?」
と一郎が言うと、陸地で戦いの様子を見ていたゴジラジュニアが鳴き声を上げた。シルバーは
「今回捕まえてきたエビラはなんか知らないけど翅が生えてるんだって」
と通訳した。なるほど、そういうことか。
「じゃあ、あいつはハネエビラってわけか」
「そんな感じかな」
「そいつは厄介だな……」
と言っても、相手は空を飛んでいるのだ。しかも、一旦はシルバーの視界から消えるほどスピードも高い。これはちょっと厄介かもしれない。しかし一郎は似た能力を持つ怪獣を知っていた。
「ハネエビラは……メガギラスに似ている!」
メガギラスはメガヌロン、メガニューラのボスとも言うべきトンボの怪獣でハネエビラの様に高速飛行能力を武器としていた。しかしそのメガギラスもゴジラに敗れ去った。ハネエビラも同じだとしたら……!一郎はシルバーに言った。
「シルバー!まずはハネエビラの動きをよく見て慣れるんだ!」
「わかった!」
そう言うとシルバーはハネエビラを見つめた。確かに速いが動きそのものは単調だ。これなら避け続けることはできるだろう。シルバーは再びハネエビラの攻撃を避け始めた。ハネエビラは何度も攻撃を仕掛けてくるがシルバーはそれをすべて避ける。しかしシルバーも徐々に疲れを見せ始める。
「シルバー!水の中に潜るんだ!」
「ようし!」
シルバーは海中に潜った。その後をハネエビラが追う。エビラは元々海の怪獣、海中に逃げたシルバーを追うのは造作も無かった。しかし、それは折角の飛翔能力を使えないということでもあった。そしてゴジラと言う怪獣は、水中戦も得意だ!シルバーとハネエビラは水中で取っ組み合う。そしてシルバーはハネエビラの翅を掴むと、力任せに引きちぎった。
「やった!」
と一郎が叫ぶと、シルバーが叫んだ。
「いや!まだだよ!」
ハネエビラは苦し紛れに暴れまわると、シルバーを弾き飛ばした。シルバーはダメージを受けるが何とか踏ん張って耐えた。ハネエビラは更に暴れまわり、そして遂には海に沈んでしまった。
「あ!逃げられた!」
と一郎が叫ぶと、ゴジラジュニアがうなずいて
「『及第点だ。よくやった』だって」
とシルバーが通訳した。一郎は
「エビラが逃げたけど放っておいていいの?」
と尋ねた。シルバーは
「『おじさん』が始末するって」
とゴジラジュニアの声を引き続き通訳する。すると、沖の方で大きな水しぶきが上がった。一郎達が見るとハネエビラ…今は翅の無くなったただのエビラがゴジラジュニアやシルバーとはまた違うゴジラと戦っていた。
「あっ!古代ゴジラだ!」
そのゴジラジュニアやシルバーに比べて、ずんぐりとした印象を持つ体格の古代ゴジラはエビラのハサミをもぎ取り、更に放射熱線を打ち込んでたちまちエビラを撃破した。
「凄いな……」
と一郎が感心していると、シルバーが
「ジュニアは『なかなかやるな。だが俺の方が強いぞ!』って言ってるよ」
と通訳した。一郎は
「そりゃそうだろ……」
と言った。その時である。
「ねえ君、シルバーと話してるの?」
と、一郎に話しかけてくる者が居た。子供の捜索をし、その一郎を発見した村雨である。
「うん?お姉さんは?」
と尋ねる一郎。そして夕立と未希も駆けつけた。
「あっー!あの子っぽい!」
「やっと追いついた……」
「おや、艦娘に国連のお姉さんだ」
とシルバー。村雨達は
「初めまして。私は新城未希。このアドノア島在住生物調査研究所の職員よ」
「私は村雨。白露型駆逐艦3番艦よ」
「同じく、白露型駆逐艦の4番艦、夕立よ」
と自己紹介した。一郎も、
「僕、三木一郎。川崎市から来たんだ」
と自己紹介した。未希は
「一郎君、君は誰かに連れられてこの島まで来たの?」
と尋ねる。一郎は
「ううん、羽田から飛行機に乗って1人で来たんだ」
と答えた。夕立は
「この子嘘ついてるよ!羽田からアドノア島に飛行機なんて出てないっぽい!」
と言った。本当に旅客機がアドノア島へ行くことは通常ありえないので、その疑問も当然だろう。村雨も
「ねえ一郎君。本当の事を言って?密航でもしない限りこの島には子供は来られないの」
と言った。一郎もむきになって、
「本当だよ!飛行機でここまで来たんだい!それに村雨さんと夕立さんも子供じゃないか!」
と言う。村雨は
「私達は艦娘だからね。普通の子供じゃないの」
と答えた。夕立は
「だったら君はパイラ星人か異世界人?そうでも無くちゃ子供が1人でアドノア島に来れないっぽい!」
と言った。夕立は地球と友好関係を結ぶ異星文明のパイラ星人もしくは地球と繋がった異世界の者と考えたのだ。
「違うったら!日本産まれの日本育ちだよ!」
と一郎。未希は
「嘘はついていないようね」
と言う。未希はテレパシー能力も持っており、単純な嘘なら見破れるのだ。
「どういうことなの?」
と村雨。
「私にもよく分からないわ」
と未希。そんな中一郎は
「なあシルバー、これからどうする?」
とシルバーに言う。シルバーは
「それがね、ジュニアが実戦特訓を続けるって言うんだよ」
と答えた。一郎は
「ゴジラは本当に厳しいなあ」
言った。村雨は
「ちょっと待って。君、さっきもだけどやっぱりシルバーと話さなかった?」
と一郎に尋ねた。村雨達にはシルバーの言葉はゴジラの鳴き声にしか聞こえなかったのだ。一郎は
「うん。僕とシルバーは友達なんだ」
と答えた。村雨は
「シルバーって、君のペットなの?」
と尋ねた。一郎は首を横に振って
「ううん、僕の大切な仲間だよ」
と答える。村雨はその答えを聞くと、
「シルバーと喋れるし1人でアドノア島にいるし何なのこの子……」
と言った。未希は
「私と同じような超能力者でもないみたいですね。一郎君、一旦研究所に行かない?ここで長話するのも何だし」
と言った。一郎は、
「うーん、シルバーの修行に付き合いたいしなぁ」
と言った。一郎は国連の研究所に興味がない訳では無かったが、それよりもゴジラジュニアやシルバーの活躍を見たかった。
「じゃあ私達も君に同行していいかしら?流石に子供1人で出歩かせる訳には行かないわ」
と未希。村雨と夕立も頷く。
「それならいいよ」
と一郎。未希は研究所に連絡し、一郎と行動を共にする事を伝えた。
一方、アドノア島の海岸ではハネエビラの死骸を回収に来たモナーク所属の国連職員や地球防衛軍の隊員達が居た。
「こりゃひでえ……。古代ゴジラの仕業だそうだがまた派手にやったな」
と、怪獣の死体を回収しながらつぶやく男。するとそこへ、
「おお、君達、手伝ってくれるのか」
と、モナーク実働隊の隊長であるケンゴウ・サダヒコが現れる。
「はい、俺達も手伝わせてください」
「私達にも何か出来ることがありますか?」
と、他の者達も言う。
「ああ、ありがとう」
と、ケンゴウ。そしてケンゴウの部下達はハネエビラの死骸を袋詰めにしてトラックの荷台へ運び込んだ。その時だ
「あっ!」
ガバラが職員達の前に現れた。ガバラは咆哮を上げる。
「報告に上がっていた新種の怪獣だな!」
ケンゴウ達は手持ちの火器でガバラに攻撃する。しかしガバラは人間たちの攻撃を意に介さなかった。そしてガバラが手をかざすと、電撃が走りケンゴウ達を襲った。
「うわっ!」
「ぐお!」
「ぎゃあ!」
ケンゴウ達は小さくないダメージを受けた。ガバラが嘲笑するかのような鳴き声を出す。その後ケンゴウ達は命からがら研究所に撤退したが、半数の人間が重症を負っていた。
「なんて奴だ……!」
「やはり携行兵器じゃ大型怪獣相手じゃ火力不足か……」
と、驚くモナークの面々。ケンゴウは部下達に、
「至急この事を博士に伝えてくれ!私はもう少し調査を続ける!」
と言ってガバラを追う。だがガバラは既に去った後だった。
「ちくしょう!逃げられた!」
と悔しがるケンゴウ。
「あの怪獣は何なんですか!?」
「まさか新種の怪獣とは……」
と、地球防衛軍のメンバーも言う。ケンゴウは
「落ち着け。兎も角国連本部に救援を要請しよう。負傷者が少し多い……」
と言った。負傷者の応急処置に当たっていた研究員が
「未希さん達が発見した少年と行動を共にしているようですが、そちらはどうしますか?」
と質問した。ケンゴウは
「できるだけ早く研究所に戻ってくるよう連絡してくれ」
と言うのだった。
◇ ◇ ◇
その頃一郎達はゴジラジュニアとシルバーの後をついて行き、次の修行の場に来たのだった。
「わあ次はなんだろ?」
と一郎。シルバーは
「次は奴を倒せだってさ」
と一郎に言う。シルバーの指さす先を見ると、
「あっクモンガだ!」
巨大なクモの怪獣クモンガがいた。クモンガもカマキラスやメガヌロンの様に世界のあちこちに生息している虫怪獣の一つだ。しかしそのクモンガはただのクモンガでは無かった。
「あのクモンガは……」
未希はそのクモンガの特徴に気づく。そのクモンガの前脚の先はまるでカマキラスの腕の様な巨大な鎌状になっていた。
「言うなればカマンガね」
と村雨。カマンガは青かった眼を赤くして戦闘態勢に入った。一郎は
「頑張れよシルバー!」
と言い、シルバーはカマンガに向かっていった。
「シャアアアッ!!」
カマンガは口から糸を吐いてシルバーを攻撃した。正面にいたシルバーは糸を浴びてしまう。
「シルバー!」
「大丈夫だ!」
シルバーは体内放射で糸を焼き払う。そしてシルバーはカマンガに殴り掛かっていった。
「シャアーッ!」
しかしカマンガは素早い動きでシルバーの攻撃をかわし、逆にシルバーの体に糸を絡めて拘束してしまう。
「しまった!」
「今助けるわ!」
村雨と夕立は連装砲を構えてカマンガを攻撃する。しかしカマンガの体は固く、連装砲による攻撃は弾かれてしまった。
「メーサー砲を持ってくるんだったわ……」
と村雨。するとカマンガは口を大きく開けると、そこから毒針を発射した。
「危ない!」
毒針はシルバーに命中し、シルバーは苦痛に顔をゆがめる。カマンガがとどめを刺そうと鎌を振り上げた時だ。ゴジラジュニアが放射熱線をカマンガに当て、カマンガの鎌を破壊した。その隙を突いたシルバーが再び体内放射で自分を拘束していた糸を焼き払い、カマンガを吹っ飛ばした。
「助かったぜ!」
と、ゴジラジュニアに感謝するシルバー。そして今度はカマンガに接近戦を仕掛ける。
「シャアア!」
カマンガも応戦し、残った片方の鎌を振り下ろそうとするが、その前にシルバーは鎌の付け根に噛みついた。
「シャア!?」
予想外の攻撃に怯むカマンガ。シルバーはそのままカマンガを持ち上げて振り回し、地面に叩きつけた。
「シャアァー!」
地面で苦しそうにもがくカマンガ。そこへシルバーが飛び掛かり、そのままカマンガを持ち上げ、ジャイアントスイングのように回転してカマンガを放り投げた。更にそこへシルバーは放射熱線をカマンガに命中させ、カマンガを撃破するのだった。
「やった!」
喜ぶ一郎達。それを見ていたゴジラジュニアは鳴き声を上げる。
「何て言ったの?」
とシルバーに尋ねる一郎。
「今のは自分が助けに入らないといけなかったから不合格だって……」
と通訳するシルバー。さっきの戦いのダメージもあってかしょんぼりしていた。
「まあ気にすんなって!お前はよくやってくれたよ!」
と、一郎達は慰めるのだった……。
その後、ケンゴウから研究所に戻ってくるように言われ、戻る途中の道で一郎達は何かが移動してくる音を聞いた。
「?なんの音だろう?」
と一郎。
「気をつけて!何か近づいてくるっぽい!」
とレーダーで察知した夕立は警戒態勢を取る。すると上空にUFOの編隊が現れるのだった。
怪獣データ
ハネエビラ
体長:100メートル ハサミの長さ:20メートル(右)15メートル(左) 体重:5万トン別名:大えび怪獣
突然変異か、何者かに改造されたのか背中から昆虫の様な翅が生えたエビラ。飛翔能力を得たことにより空中戦が可能になった。また、甲羅やハサミの強度も強化されている。
カマンガ
体長:80メートル 体重:4万トン
前脚に自分の体に匹敵する大鎌を備えたクモンガの変異種。鎌の切れ味はゴジラの皮膚を傷つける程の強度。糸や毒針も原種同様に持っている。
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