PSO2NGS外伝 星巡る幻想曲〈ファンタジア〉   作:矢代大介

1 / 4
 こんにちは、矢代と申します。
「自キャラたちが活躍する小説を書きたい!」という思いの元、本作を執筆する運びとなりました。

 見切り発車のため更新間隔にはムラがありますが、ご了承いただければ嬉しいです。


Episode1 覚醒

 

 

 

《ポッド910、システムチェック。――コンプリート》

《コンディション――オールグリーン》

 

《降下シーケンス――スタンバイ》

《目標座標到達まで、10秒》

 

《降下軌道、最終確認。誤差、修正完了》

 

 

《5……4……3……2……1……》

 

 

 

《パージ》

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 腹の底に響くような衝撃を感じ取って、「俺」の意識が浮上する。

 

 ……どうやら、俺は眠っていたようだ。

 

 

 覚醒しきってない寝ぼけ眼のまま、ぼんやりと辺りを見回そうとしたところで、随分と周囲が狭苦しいことに気付く。

 薄闇の中で首だけを動かしてみるが、周囲にあるのは壁。しかし、その壁面はいかにも衝撃を吸収しやすそうな柔らかな素材でできているようで、狭さこそあれど、閉じ込められているような感覚は無い。どちらかといえば、外の衝撃から中を守るための場所なのではないか、とも思えた。

 

 

《地表への到達を確認しました》

 

 なんてことを考えていると、どこからか聞こえてくる声が、俺の耳朶を叩く。

 

《自動環境測定システムとの照合――完了。活動への支障、なし》

 

《ハッチ解放、スタンバイ》

 

 抑揚の薄さと、機械的なエフェクトに歪んだ、おそらくは合成音声と思しき無機質な声は、プログラムに則ってか、粛々と何かのプロセスを進めていく。

 音声の内容を察するに、どうやらこの機械音声は、俺をこの狭い部屋から解放しようとしているらしかった。

 

《3……2……1……》

 

 カウントと共に、バシュッ、という圧縮空気の抜ける音が響く。

 同時に、丁度俺の真正面を覆っていた壁面に、真っ白い亀裂が走った。

 

「ぅ……」

 

 大きく開け放たれたハッチの向こうから、視界を焼くようなまばゆい光が降り注ぐ。

 

 しばらくの間、世界がホワイトアウトしていたが、目が光量差に慣れてきたことで、少しずつ視界が開けていった。

 

 開かれたハッチの向こうから降り注ぐ光は、人工的な照明――ではなく、空に浮かぶ恒星によってもたらされているらしい。光と共に降り注ぐ暖かな熱が、寝起きの重い身体を、じんわりと温めてくれた。

 

 ――視界が光に順応しきったのを確認して、俺はひとまず、身体を動かすことを決意する。

 このまま日光浴しながらもう一眠り、というのも乙なものだと思えるが、しっかりと覚醒したと心と身体が、運動による血行促進を求めているように感じたのだ。

 

 開かれたハッチのフチに手をかけて、力いっぱい身体を起こす。寝起きの重い身体をどうにか動かし、狭苦しい箱の中からどうにか身体を引きずり出すと、一挙に視界が開けた。

 

 

 

 

 

 そうして目の前に広がったのは、蒼穹。

 幾ばくかの白雲をたなびかせ、何処までも広がる真っ青な天蓋が、世界を包んでいた。

 

 視線を下の方へと落とせば、そこにあるのは、色とりどりの大地。

 三日月を思わせる形状にくぼんだ不思議な山や、その真下に広がる青々と茂った木々と草原。くるりと視界を翻せば、その先には陽の光に照らされて輝く、青い海が広がっていた。

 

 雄大な自然が、俺の周囲いっぱいに広がっている。

 美しい光景にしばし目を奪われていた俺は、そこでふと、脳裏に疑問をよぎらせた。

 

(ここは、どこだ? いや、それよりも――)

 

 

「……俺は、誰だ?」

 

 口をついて出た疑問の声は、虚空に溶けて、静かに消えていった。

 

 

 

 

 PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS The Another History

 FANTASIA of Planet Around

 

    Episode1 -覚醒-

 

 

 

 

 

 自分のことが分からない。

 いや、より正確に言い表すならば、「〈自分に関する記憶〉の大部分が、ごっそりと抜け落ちている」……とでも表現するのが的確だろうか。

 

 例えば、モノの名詞――樹や海、空という単語や、今置かれている状況――どこかの惑星の片隅に立っているのであろうということは、問題なく認知することが出来ている。

 しかし、そこからつなげて自分自身に関するあれこれ――たとえば過去に経験した出来事や、自分がどこに所属する何者であるのか等を思い出そうとしても、まるで最初から存在していなかったかの如く、追想が出来なくなってしまうのだ。

 

 記憶喪失、という単語が、脳裏をよぎる。

 腑に落ちない点は多いものの、現状を説明できる単語としては、それが一番適当だろう。

 

「……とりあえず、何か手がかりを探してみる、か?」

 

 ひとりごちりながら、俺は自分に驚く。

 パニック状態に陥ってもおかしくない状態だというのに、自分の五感と認識は、今現在の状況を正しく認識している。その事実が、得も言われぬ奇妙な得体の知れなさを感じさせた。

 

 数刻首をひねっていたが、ここでじっくり思考を巡らせても、現状に光明がもたらされるとは思えない。なのでまずは、自分が置かれている状況を明確にするため、何かしらのアクションを起こすべきだろう……と、俺は結論付けた。

 

「っていっても、何をどうするべきかってところだが……」

 

 ひとまず周囲を見渡して、気になるモノが無いかを観察する。

 

 まず目を引いたのは、やはり豊かな自然だ。

 水平線まで続く青々とした海に、真っ白な砂浜。海岸の反対側へと視線を向ければ、そこには青々とした緑が鬱蒼と生い茂っている。よく耳を済ませば、何かしらの動物の鳴き声や、鳥がさえずるような澄んだ音が、さわやかな風と共に聞こえてきた。

 

 そのまま、視線を近場へと引き戻せば、そこには豊かな自然に似つかわしくない物が鎮座している。

 先端を砂浜に深く埋没させる格好になっているそれは、どうやら先ほどまで俺が押し込められていた機械のようだ。

 やや角ばった形状を持ちながらも、どことなく空気抵抗を抑えられそうなシルエット。さりとて、推進機関も風を捉える翼も持たず、はなから飛行を目的としていないかのようなそれは――

 

「……降下、ポッド?」

 

 俺の脳裏に、「大気圏突入に用いる降下ポッド」という一文を躍らせた。

 

 検討こそついたが、こんなものがここに突き刺さっている理由を考えあぐね、また首をひねる。

 

 これが大気圏突入ポッドだと仮定したとして、俺は何故、こんなものに乗っていたのだろうか?

 妥当な線としては「何かしらの理由でこの惑星に降りることになり、そのためにこの降下ポッドを利用した」というところだろうか。……しかしそう考えると、今度は記憶を失った理由や、降下ポッドの中でのんびりと寝こけていたことへの説明がつかない。

 人間の心身というものは、大気圏突入の衝撃の中で眠れるほどタフではないし、降下の衝撃で記憶が吹っ飛ぶほどヤワじゃないはずだ。ポッド内に搭乗者を保護するための機能が備わっていた、ということを鑑みればなおさらな話だ。

 

 一応、諸々の疑問は置いておいたとして、降下ポッドの中で眠ることができる手段だけを考えれば、おのずと浮かぶ答えは限られてくる。すなわち、大気圏降下の衝撃にも気づかないほどに深い眠り――「仮死状態」にでもさせられたということだ。

 残った記憶を改めて見れば、人為的に仮死状態を作り出す技術――俗に「コールドスリープ」に関する知識も残っている。それを踏まえて考えれば、俺が眠りこけていた理由は、「コールドスリープ状態でポッドに乗り込んでいた」ということになる。

 

 ならば、何故そんなことをしてまでこの惑星に降り立った理由は何か。

 状況証拠から憶測を立てても、結局はそこで詰まってしまう。現状を正しく把握するには、どうしても決定打が足りなさすぎるのだ。

 

「うぅん……?」

 

 にっちもさっちもいかない状況に、首をひねる。

 あるいはいっそ、ここは宇宙の流刑地であり、俺は罪人としてこの文明のない星へ放逐されたとは考えられないだろうか……なんて益体も無い妄想を広げていた、そんな時。

 

 ふと、「何か」に意識を引っ張られたような気がした。

 

「……?」

 

 疑念を抱きつつも、五感をフルに行使してみれば、俺の気を引いたものの正体が、聞き馴染みのない「音」だということに気づく。

 何かが燃えるような、そんな音。音源を探し、周囲を見回した俺の視線は――「上」へ向いた。

 

 

 はじかれるように顔を上げたその先。清らかな青に包まれた空を、一条の「流星」が切り裂いてゆく。

 

 おおよそ自然のものとは思えない紫炎に包まれながら降り注ぐ流星(それ)は、空気を切り裂く重苦しい音と共に、俺の眼前――砂浜にほど近い草原へと落着。

 炎の残滓と盛大な砂煙を巻き上げて、その場の周囲にあった草木を、土を、ことごとく蹴散らしていった。

 

「ッ……何だ……!?」

 

 吹き寄せる土煙の嵐を凌ぎ、再び流星の落着地点を見やれば――そこに、「ナニカ」がいた。

 

 

 全身を構築するのは、生物を包む肉とは似ても似つかない、青白く発光するゲル状の物質。

 それを(よろ)っているのは、甲虫の外殻を想起させる、無機質さと生々しさが奇怪に同居した、黒い外殻。

 

 

 生命体と形容するにはあまりにも異形な「ナニカ」が、そこに屹立していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。