貞操逆転世界で普通に生きられると思い込んでる奴(男女比1:5の世界でも普通に生きられると思った?)   作:こーたろ

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元気っ娘JDは積極的

 

 まだ冬休み中のある日。

 年明けからまだ数日しか経っていないけれど、みずほがもう実家から戻ってきているとのことだったので、今日はみずほと遊ぶことになっていた。

 お昼の12時、よく恋海やみずほと遊ぶ時に使う駅の改札前で、みずほを待つ。

 みずほの姿は良く目立つ。トレードマークのツインテールが目立つのもそうだし、可愛いファッションでまとめてくることが多いので、人だかりの中であっても目を引くのもある。

 5分前になって待ち合わせ場所に現れたみずほの姿はやっぱりすぐに認識できたので。

 手を振ってみると、彼女はこちらに気付いて満面の笑みでこちらに小走りでやってきた。

 

 こういうところも小動物っぽくて可愛いよな、なんて思っていると。

 

 「どかーん!!」

 「なんで?!」

 

 そのまま突っ込んで来た。

 俺の胸元に。

 

 「へへへ油断は禁物だぜ……」

 「どういうことなのよ」

 

 胸元に突っ込んできたまま、こちらを見上げるみずほは、いつも通りとても可愛らしい。

 

 「あ~これ良いな一生この体勢でも拙者は生きていける……」

 「無理でしょ普通に考えて」

 

 とんでもないことを言い出したので、肩を掴んで引きはがす。

 

 「あぁ、そんなご勿体な……」

 「新年から元気だねえ?」

 「えへへ、改めてあけましておめでとう将人っち!今日は私の番だぜ!」

 「うん、あけましておめでとう、みずほ」

 「恋海はまだ実家らしいですからなあ……今日は私が将人を一人占めだぜ!」

 

 楽しむぞー、と腕をぐるぐると回すみずほ。

 黒のブーツにグレーのミニスカート。タイツを履いているとはいえ、この冬真っ盛りだと寒そうだけれど大丈夫なのだろうか。

 トップスには白のダウンジャケットこそ着ているものの、思わずそんなところが心配になってしまった。

 

 「すごく可愛い恰好だけど……寒くないの?」

 「わあ、ありがとう!オシャレには忍耐が必要なんだぜ……坊や」

 「それ寒いってことじゃ」

 「にゃはは!気にしない気にしない!それにね」

 

 ぴったりとくっついていた所から、みずほがようやく離れたかと思うと。

 いつの間にかがっしりと俺の右手を掴んでいて。

 

 「こうしていれば寒くなくなる!」

 「……なるほどね」

 

 みずほは笑顔で恋人繋ぎをしたまま歩き出した。

 もうこの少女と仲良くなってかなり経つけれど。この積極性には未だにたじたじである。

 

 

 

 駅併設のショッピングモール7階にある、レストラン街にやって来て昼食。

 和食の雰囲気良さそうな定食屋さんが空いていたので、そこへ入ることに。

 お店に入ってメニューとにらめっこすること数分。

 

 「私はこのとんかつ定食を食べることとする!」

 「そんなここをキャンプ地とする、みたいに」

 

 みずほがメニュー表にでかでかと鎮座するとんかつを指さしながら声高にそう宣言した。

 いつでも元気なのはみずほの長所ではあるんだけど。

 

 「それにしてもみずほホント良く食べるよね?」

 「エネルギーは何事にも必要だからね!」

 

 みずほと食事を一緒にするのももう何度目か分からないレベルだけど、とにかくこの子は良く食べる。

 その小さな身体にどうやってその量が収まるんだと思ったことは一度や二度ではない。

 

 とりあえず、お互いの注文を決めて、今では主流となったモバイルオーダーなるスマホからの注文を終えてから。

 

 「それで、話があるとかないとか?」

 「あ、うん、そうなんだよね」

 

 みずほにも、伝えておかなければならない。俺が3月までに答えを出すという事。

 恋海から「将人が話があるらしい」とは聞いているみたいだけど、恋海も話の内容は俺から伝えた方が良いと判断してくれたようで、内容は知らないらしい。

 

 「えっとね、ほら、俺ってみずほと恋海からその、告白してもらってる立場じゃん?」

 「ふむ。そうですな」

 

 グラスに入ったお冷を飲みながら、冷静にみずほは俺の話を聞いてくれている。

 

 「その答えをね、いつまでも出さないとは良くないなと思って。今年の3月までに、俺なりに答えを出そうと思うんだ」

 「答え……そ、そうなんだ」

 

 その言葉を聞いてみずほもやはり少し、動揺しているようだった。

 星良さんや由佳に伝えた時もそうだったけれど、彼女達の反応を見る度、どれだけこれが影響の大きいことを言っているのかを自覚する。

 当たり前では、あるけれど。自分もその重さを受け止めないといけないな。

 

 「そ、そんなに早くなくても良いのでは……?」

 「いや、むしろ普通ならもっと早く答えを出すべきだと思うし……長引かせるのは、良くないかなって」

 「……将人らしいね」

 

 みずほは、窓からその景色を眺めつつ、「そっか、3月か……」と頬杖をついて呟いた。 

 けれど、みずほが物憂げに考えるような素振りを見せたのは一瞬で。

 

 「じゃあこの3ヶ月で、もっともーっと将人っちのハートを射抜いていくしかないね!」

  

 ばきゅん、と。

 指で鉄砲を作るようなジェスチャーで、可愛らしくウィンクしてくるみずほ。

 ……そういう意味では、もう十分、何回も射抜かれているのだけど。

 

 「そのためにも、まずは腹ごしらえじゃあああ」

 「そうだね、食べようか」

 

 ちょうど店員さんが運んできてくれた料理を食べることにする。

 とりあえず俺は、みずほが少なくとも表面上は元気なままでいてくれていることに安堵するのだった。

 

 

 

 

 しばらく、ショッピングモールを一通り見た後。

 俺とみずほは、カラオケへとやってきていた。

 

 「いや~!まさかプラネタリウムがやっていないとは!このみずほの目をもってしても見抜けなんだ!」

 「まあ年末年始だしあり得る話ではあったよね……俺も事前に調べてなくてごめんではあるんだけどさ」

 

 まだ年始から一週間経っていないということもあり、まだ空いていないお店もちらほら。

 俺達が行こうと話していたプラネタリウムもそのひとつで。仕方なく俺たちは予定を変更してカラオケへとやってきていた。

 

 「まあもうこうなったら歌いまくろう~!」

 「みずほ歌上手いもんね」

 「そんな褒めてもなにも出ないでござるよ~?」

 

 恋海と3人で、カラオケに行ったことはある。

 俺は歌うのがあまり得意ではないので、聞いている側に回ることが多いけれど、それでも十分楽しい。

 みずほも恋海も歌が上手で、聞いてて楽しいし。

 

 早速、みずほが機械に曲を入力して、歌い出した。

 最近流行りのアイドルの曲。

 

 「振り向いて~運命の~♪」

 

 歌っているみずほの横顔を眺めながら、歌声に聞き惚れる。

 この世界に来て少し意外だったのは、前の世界と同じく女性アイドルが活動していることだった。

 割合としては確かに男性アイドルが増えてはいるけれど、女性アイドルもちゃんと人気が出ている。

 女性アイドルは女性からも人気があるからなんだろう。この辺りは前の世界と変わらずで面白いな、なんて思った。

 

 「~♪」

 

 そして今目の前で元気に歌っているみずほは、そんなアイドル顔負けのビジュアルと歌声だな、なんて思う。

 これはもしかしたら、戸ノ崎みずほという少女を知ってしまっているが故の、身内びいきなのかも、しれないけれど。

 

 

 「いえい!」

 「相変わらず上手いね」

 「どーだ恐れ入ったか!」

 「参りました」

 「へっへっへ。ちょっときゅーけい!」

 

 しばらく歌っていると、みずほが満足したのかソファに腰掛けた。

 ふと机の上を見るとみずほの飲み物が無くなっていたので。

 

 「あ、飲み物持ってこようか?」

 「んーん!別に大丈夫!自分で行くよ」

 

 みずほはソファから立って、外に出ようとする。

 その導線に俺が座っていたので、ちょっと足を引こうかな、と思っていたのだけれど。

 

 「隙あり!」

 「ええ?!」

 

 膝の上に、機敏な動きでみずほが乗っかって来た。

 こちら向きの、ままで。

 

 「へへへ……ちょっとだけくっついてても良い?」

 「……ダメでは、ないけど……」

 

 心底嬉しそうな声音でそう言われては、断ることもできない。

 俺の胸に体重を預けたみずほ。驚くほどに軽い。

 本当に、さっきのとんかつ定食はどこに入ったのだろう。

 

 「さっき、3月までに答えを出すって言われた時、正直怖かったんだ」

 「……みずほ」

 

 顔は上げずに、みずほは俺に体重を預けたままそう言った。

 

 「じゃあ4月になったら、もう将人と仲良くお話したりできなくなるのかな、とか。私は今まで、たくさんたくさんフられてきてその度、その人と会うのが怖くなった」

 

 今までたくさん人に告白してきたみずほだからこその、悩みなのかもしれない。

 俺も実際、別れた人とは気まずくなった経験はある。

 もちろん、俺はそんなことをするつもりはないけれど。

  

 「きっと将人はそんなことしないとは思うけどさ、それでも……将人と一緒にいられなくなるのは、嫌だよ」

 

 ぐっ、と、俺の胸元に置いてあったみずほの手に、力が入るのが分かった。

 

 ……俺は、都合よく考え過ぎていた。 

 みずほが、どれだけ明るく振舞ってくれていても。きっとお昼にあの話を聞いた時、みずほにだって並々ならない感情の波はあったはずで。

 今日を楽しむために、我慢してくれてたのだろう。

 みずほは、我慢する子だ。分かっていたはずなのに。

 そんなことも察してあげられない俺は、やっぱりダメな奴だ。

 

 「なーのーで!」

 

 急に、みずほが顔を上げてびっくりする。

 

 と、同時に、完全に密着するような形で、上から見下ろされるような体勢になって。否が応でも思い出してしまう。

 告白された日の、観覧車でのこと。

 

 驚くような暇もなく、みずほの顔が目の前に迫る。

 当然、拒むようなことはできなくて。

 

 唇に、優しく触れた何か。

 女の子特有の、甘い香り。

 

 顔が離れて行って、視界に映ったみずほの顔は、僅かに紅潮していて。

 

 「……はぁ……やっぱり大好き。だからね、私が選んでもらえるように……」

 

 みずほが、蠱惑的に笑う。

 いつもの笑顔とのギャップが、心臓を高鳴らせる。

 ああ、これも、あの時と同じ。

 

 「将人がみずほちゃん無しじゃダメなように、してあげるしかないね?」

 

 

 ――結局。

 カラオケルームに備えられた固定電話が鳴って、終了時間が告げられるまで。

 みずほの積極的なアタックから逃れることはできなかった。

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