貞操逆転世界で普通に生きられると思い込んでる奴(男女比1:5の世界でも普通に生きられると思った?)   作:こーたろ

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幼馴染JDは驚く

 

 

 冬は起きるのがとにかく辛い。

 ぴぴぴぴ、とやかましい電子音で、私の意識は強制的に夢からたたき起こされる。 

 

 「んむぅ……」

 

 1月の寒さは布団依存症を引き起こすには十分過ぎて。

 私は3度目のスヌーズでようやく、体をベッドから起こすことに成功した。

 

 アラームを止めた手で、スマホを開く。

 1月7日。待ち受け画面にはそう表示されている。

 今日から大学の授業が再スタートする。

 

 寝ぼけ眼をこすって、顔を洗いに行く。 

 

 年末年始を実家で過ごした私は、1月の2周目が始まるタイミングで、1人暮らしをしている家に帰ってきていた。

 結局、お正月もだらだら過ごしてしかいなかった……。

 だって、別に準備しなくても夕飯用意してくれるし、服も洗ってくれるし、楽なんだもん。

 一人暮らしをして初めて、実家のありがたさがわかりました。

 

 軽い朝食をとって、化粧をして。

 今日は将人と一緒にとっている授業ではないので、将人に会うかはわからないけれど。

 そうでなくても、いつでも自分のできる最大限可愛い状態でいたい。

 

 ……将人は、3月までに答えを出すと言っていた。

 将人がいないこれからの人生なんて考えられないからこそ、正直怖い。

 とにかく、今は自分にできることを全部やっていくしか、ないよね。

 

 「よし、いきますか」

 

 最後の身だしなみチェックを終えて、玄関から外に出る。

 隣の部屋の扉に正月の飾り物がされていて、新しい年が始まったんだな、と改めて実感するのだった。

 

 

 

 「やほー!恋海~」

 「みずほおはよ~」

 

 大学に着いて、一番最初に会った友達は、やはりいつもの元気印みずほだった。

 高校から大学と、彼女と一緒にいない時間の方が短いのではないだろうか。

 

 しかし今日は、サークルの友達も複数人いて。

 

 「恋海あけおめ~」

 「うん!あけおめ~皆元気してた~?」

 「ぼちぼちね~」

 

 6人くらいで集まって、教室で談笑する。

 まだ授業開始までは時間があるし、のんびりと駄弁りながら、時間を潰すことに。

 誰がそうしようと決めたわけでも無く、教室の後方で適当に話す。これが私達の大学生活における日常だ。

 

 「あれ?今日は2人のかれぴっぴ、まさと君いないの?」

 「今日は多分とってる授業無いんじゃないかな?来るとしても4限とかからだよ思うよ~」

 

 もう皆に、私とみずほが将人とずっと一緒にいることは当然バレている。

 そりゃそうだよね。皆ととっていた授業も、将人と一緒に受けちゃったりもしてるから。

 だって、女子5,6人で将人を囲むのも可哀想だから……友達が嫌いなわけではないけれど、そういった理由もあって、別で受けているのだ。

 

 「も~恋海もみずほも彼氏とずっと一緒だから全然話せなくて久しぶりな感じするよ~」

 「あはは……ごめんね~」

 「恋海、まずはまだ彼氏じゃないよ、ってことを説明するべきだと、みずほちゃんは愚考するわけなんですが~」

 

 私がさも当然のように受け答えしていたのを見かねて、みずほがそう挟んで来る。

 そのセリフで、皆からどっ、と笑いが起きた。

 

 「何言ってるのみずほ!こういうのは外堀りから埋めていくべきなんだよ!」

 「まあ、言いたいことはわかるけどさ……」

 「でもちゃっかりみずほも『まだ』って言ってるあたり、抜け目ないよね~」

 「バレちった!てへぺろ!」

 

 確かに。とみずほのしたたかさに苦笑する。

 なんだかんだみずほも強気な子だ。

 

 「頑張ってね~彼、学部でも隠れカッコ良いって噂だからさ、2人が惚れ込むのも分かるよ~」

 「全然隠れてないけどね???」

 「おお怖い怖い……」

 

 将人のカッコよさは全然隠れてないけど???

 私がすかさずそう挟むと、再び皆が笑う。

 

 「ミスターコンとか出て欲しかったな~結構優勝できるレベルだと思うんだけど」

 「確かに~!正式に2人の彼氏になったら、来年とか打診してみてよ~」

 「打診は全然しても良いけど、将人殿はそういうの出るタイプじゃないような気がするんですよなあ~……」

 

 なんだかんだ、みずほも将人の彼氏になる気満々で答えていて、笑顔になってしまう。

 絶対に2人で将人を彼氏にしようね。

 

 そうこうしている間に授業開始直前を知らせる予鈴が鳴り響いたので、各々席に着くことに。

 2週間程度しか休みはなかったのに、なんだか久しぶりな感じがした。

 

 4限の授業が終わり、今日の授業はこれで終了。

 結局今日は、将人が大学に来ることは無かった。

 

 「みずほバイト~?」

 「うん!そうなんだけど、ちょ~っと時間まだなんですよなあ」

 「じゃあカフェテリアでも行って時間潰す?」

 「助かるでござる!」

 

 私は今日別に予定は無いし。

 みずほがバイトに行くまで、大学に併設されているカフェで時間を潰すことに。

 

 「じゃあ私部活だから~」 

 「私もサークル~じゃあね~」

 「うん!また明日ね~」

 

 友人達も各々の予定に散っていく。

 部活に入っている子なんかは、もう1月の3日から大学に来ていたらしい。

 

 カフェテリアは少し利用者はいたものの、私とみずほが座るだけの2人席は、十分に空いていた。

 私はホットのカフェオレ、みずほはカフェモカを頼んで、席に着く。

 

 「結局今日は将人っちこなかったねえ~」

 「さっき連絡あったけど、明日からだって!」

 

 カフェオレを一口飲んで窓から外を見れば、夕日が沈みかけているのが見えた。

 まだそんな遅い時間ではないのに、やっぱり冬って感じだ。

 

 「なんだか将人っち抜きで大学にいるのも久しぶりな感じがするねえ」

 「たしかに……でもみずほは確か一昨日くらいに将人に会ったんでしょ?」

 「ま、まあそうですな」

 「良いな~私も早く会いたいよ~」

 

 みずほは年明けに将人とデートしたらしい。

 なんて羨ましい!

 

 「今回は何したの?」

 「え~っと、ランチを食べて~ショッピングして~か、カラオケ行ったかな、うん」 

 「……ちょっとなんか最後歯切れ悪くなかった?」

 「ひゅーひゅー」

 

 みずほのこんなに下手な口笛は見たことが無い。

 カラオケ、カラオケね……。

 

 「……やったね?」

 「そそそそそそんな言い方良くないと拙者は思うでござるなあ~」

 「何したの!またいちゃいちゃしたんでしょ!」

 

 私は今年まだしてないというのに!(当たり前)

 

 「恋海だってクリスマスでしたでしょ~」

 「私は1回!みずほはもう2回だよ!」

 「ま、まあ……?」

 

 あ~もう羨ましいなあ。

 当時を思い出しているのか頬を紅くして照れているみずほが、心底羨ましい。

 

 「でもさ……実際、すごいよね……」

 「す、すごいね……」

 

 正直、将人といちゃいちゃしている時のこう、多幸感は、すごい。

 何事にも代えがたい何かがある。

 あと出ちゃいけない何かが分泌されているに違いない。

 

 そんな話をしていた時だった。

 

 「恋海、みずほ~」

 「はい?!」

 

 話していた内容が内容だけに、呼びかけに対して私の声が上ずってしまう。

 声をかけてきたのは、先ほどまで授業を一緒に受けていた友人だった。

 

 「どうしたのそんなに驚いて……」

 「いやあ……あはは。それで、どうしたの?」

 「あ、えっとね。あの人が」

 

 そう言って、後ろを振り向く。

 すると、カフェテリアの入り口に、一人の女の子が立っているのが見えた。

 

 「部活行こうと思ったらさ、声かけてきて」

 

 黒髪をショートで切りそろえた、同い年くらいに見える女の子だった。

 そんな姿を見留てから、友人から出た言葉は私とみずほを驚かせるには十分で。

 

 「片里将人君を探しているんですけど、って言うからね?そういえば2人の彼氏じゃんと思って」

 「……え?」

 

 私よりも先に、みずほが声を発した。

 将人に、用事?

 

 「じゃあ、そういうことだから、後はこの2人に聞いて!じゃあ私は部活行ってくる!」

 「あ、はい、ありがとうございます」

 

 そう言い残して、友人は去っていく。

 

 残されたのは、私と、みずほと、その女の子。

 

 「あ、あ~っと、それで、将人殿になにか用事ですかね……?」

 「あ、はい。彼に会いたくて」

 

 おずおずといったみずほの言葉に、その女性が答える。

 とりあえず、会話の糸口を、と思うのと同時に。

 最初にこれだけは聞いておかなければいけないと思ったから。

  

 「えっと、貴方は将人とどういうご関係で……?」

 

 そう聞くと、その女の子は少し困ったような表情をしてから。

 

 

 

 「えっと私は……将人君の元カノです」

 

 

 「え……?」

 

 

 夕陽が沈んだからだろうか。

 店内が少し、暗くなったような気がした。

 






1月9日書籍5巻発売予定です!
引き続き何卒よろしくお願いします。
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