キレイ系お姫様が俺の部屋に来たが縮尺がおかしい   作:HIGU.V

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大きくて太い女の子が細く見せようとするファッションも実は好きです。


冷めたご飯

季節は過ぎて、そろそろ梅雨本番という頃になった。

連日の雨で気分が下がっている人も多いが、雨自体はそんなに嫌いじゃない私にはそこまで辛くもない。

 

しいて言えば満員電車で濡れた傘を押し当ててくる馬鹿野郎が嫌いなだけだ。いや、つまり雨が嫌いという事ではないのか? そうかもしれない。

 

姫様が、こう……こちらをからかったり、距離を詰めたりするようになってから、しばらくたったが、まあ何とか耐えている。

 

しかし冷静に考えておかしい気がしてきた。

私はもっとこう、甘酸っぱいやり取りを期待していたのに、だいぶ雰囲気が違う。週刊少年系のラブコメを期待してたら、ヤングとかが冠詞につく方だったというか、そんな感じだ。

即物的な下半身の欲求は私がブレーキを握っているというのは変わらないが、アクセルはなぜか彼女の手にわたっているのだから。

 

実のところ嫌な気持ちは全くない、少しばかり困っているが、それだけだ。関係性を進めることに抵抗感はない。ただ、その距離を詰めるのならば助走が欲しい。

 

なし崩し的にそういう関係になりたいのではなく、いや為りたいのだが、それは言うなれば物が下に落ちるという結果だとして。

現状というのは物が落ちるのではなく、落とすために下に投げ捨てるという感じなのだ。私の希望としては、結果的に落ちてしまうのがいいのだ。恋と同じで。

 

我ながらうまいこと言ったなと納得しつつ、少し前から計画していた助走用のプランを練ることにする。

 

まずは有給の申請だ。もうすぐ繁忙期なので、むしろ取りやすいのはありがたい。今のうちに休んでおけという圧があったとも言うのだが。

 

 

 

 

 

「……家主様、今なんとおっしゃいましたか?」

 

「はい、ですからお出かけしてみませんか?」

 

いつもの様に仕事を終えて少しばかり買い物をしてから、夕食の席で私は彼女にそう提案する。今日の晩ごはんは実家よりレシピを教わってきたローストビーフである。なんかだんだん自身の料理スキルが上がってきているな。

 

そんな事を考えながら返事を待っていると、珍しく姫様が驚いたような表情で、食事の手が止まっている。赤ワインが飲みたいとのことだったので、ホースラディッシュと一緒に出している肉は口にあっているといいのだが。

 

 

「…その、それは難しいのでは?」

 

「まぁ姫様は一目で通常ならざるものだと判断されてしまいますよね」

 

彼女の最大にして最小の問題はその背丈というか、縮尺だ。彼女の自己申告によるところ、やはり6割ほどのサイズに縮んでいるとのことだ。厳密には、食器や家具などが彼女から見て全部1.5倍位のサイズになっている。水の落ちる速度や、動物の大きさ。こちらの世界のものさしの大きさ等から推測したらしい。

 

まあそれはいいとして。

 

「そのまま、それこそ土日の渋谷にでも行けば大変なことになってしまうとは思います」

 

「ええ、私もそう思います」

 

彼女は定点カメラで渋谷のスクランブル交差点の映像を見たり、そもそも外国人向けの動画でも紹介されていたので、人が多いことのたとえとしてきちんと理解している。新宿駅の構造なら下手したら私より明るいかもしれない。随分日本に詳しくなった様子で何よりだ。

 

「そのために、今の時期まで待ったんです」

 

そういいながら、買ってきたものを鞄から取り出す。

登山などにも使われる大き目のバックパック、子供用に雨合羽に傘、ついでに成人用の雨合羽。

以上である。

 

「……家主様?」

 

これは姫様は説明を求めていますといった聞き方だ、今までも何度かあったからわかる。

 

「はい。姫様の特殊性は多々あれど正直なところ、体格はともかく背丈自体は子供とあまり変わりません。」

 

そう、身長や肩幅とかは実際のところあまり子供と変わらない、腰つきとか胸周りとか手足の長さの比率が大人のそれなのが、とんでもない違和感の起因である。

だから、レインコートを着てしまえば体のラインは曖昧になりごまかせる。なれば顔のサイズを見られなければ、小学校低学年の女児のシルエットにしか見えない。

もし、あまりにも細身すぎるという事であれば、適当な鞄でも背負ってから着込めば問題はないであろう。

 

「ですのでこれを着て、平日の夜でしたら歓楽街に行きさえしなければ、外を歩くことはできるかと」

 

レインコートを着るのだから当然雨が降っている日。人通りを気にするため夜の帰宅時間帯を過ぎて、電車の本数が落ち着いた辺りや深夜などであれば、問題ないであろう。

しかし他にも屋内に入れないという問題もある、なにせ脱げないからだ。

 

さらに、つまりは夜でも人通りのあるところ、もっと言えば飲み屋の近くなどで警察が巡回しているような場所では『幼い子供をつれたアラサーのサラリーマン@深夜』と職質対象の有力候補になる。モンテスマと国境を接したときに攻め込まれる可能性くらいで職質される。

 

 

 

それでも、

 

「さすがに、ずっと家にいるのも大変でしょうし、最低限周囲の地形でも把握していただければ、選択肢も増えるかなと」

 

私ももともと極度のインドアであり、外出自体が嫌いで。気を使って出かけるのに家族から誘われると不愉快になるタイプだ。それでも家から出ないと出れないは違う。家の外に出ることができても、事実上出られないのはストレスがあるかもしれない、そう思ったので。こうして誘ってみることにしたのだ。

 

「そうですか……」

 

軽く手を組んでちゃぶ台に乗っけて、考え込むような仕草を取る姫様。恐らくリスクと希望などを色々考えているのであろう。

 

「それで、天気予報的に今晩から明け方まで、ほどほどの雨が降るようですし、この後行きませんか?」

 

「……え? 今日ですか」

 

「はい、私明日有給取りましたし」

 

なんとなく気分が悪いときとか、祝日がないときに適当な病院に行く理由でちまちま消費しているが、まだあまっている有給休暇。それを既に申請済みである。

思い立ったが吉日というだけのことはある。

 

「まぁ、万が一の場合は、こちらのカバンの中にでも隠れていただければ」

 

買い物した雨具を入れてきた大きな鞄そのものを指さしてそう告げると、姫様はさらに深く考え込むようなそぶりを見せる。難しい顔をしているので、躊躇っているのかそれとも計画に不安点があるのであろうか?

まぁ、パスポートも滞在証明もない、しかしこの国の人間は顔つきで、外国人だとすぐに看破するというのは、外を歩くのはリスクと取るだろう。だから断っても良いとは思うが。

 

「…そうですね、折角ご用意いただきましたし、行ってみましょう」

 

「本当ですか!? よかったです」

 

少しだけ驚いたような、困ったように彼女が笑いながらそう言ったので、今晩いざ決行となったのである。

にこりと会った頃と同じ笑顔でこちらを見る姫様を横に、とりあえず調理器具の洗い物に取り掛かるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「足元気を付けてください」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

日付が変わるより少し前、近所のスーパーも閉店して町でやっている店がコンビニだけになったころ、姫様と連れ立って外出をした。

 

そう、これは俗にいうデートである。

 

小雨という位の雨が降る中、雨合羽を着た姫様にはあわせて買っておいた、子供用の軽くて不透明な傘も持たせている。自分も雨合羽プラス傘をさしている。傘に当たる雨音はポツポツでもボタボタでもなくパラパラといった程度だ。更に、念のため姫様の片手を引いているので、お互い両手がふさがっている状況だ。

自分の左手に持つ傘を気持ち左に傾けながら、二人で夜の街を行く。

 

「……それで家主様、本日はどちらに向かうおつもりですか?」

 

「あーそうですねぇ」

 

行けるところは限られている、いやないといってもいいかもしれない。

そもそも夜の逢引なんて飯食ってホテル直行くらいしかしたことない身だ。それも家から離れた繁華街なので、自宅周りの住宅街で深夜で屋外で雨で行くような場所など考えたこともなかった。

 

「では、確か近くに公園がありましたよね」

 

「えぇと、確かあったはずですあっちの方に」

 

姫様が言っているのは恐らく、駅とは反対に向かったところにある場所だ。自然公園等などとは比べられないが、そこそこの大きさの公園があったはずだ。具体的には横にテニスコートが併設されているのが。

 

一先ずその公園に行くことになった。現状人っ子一人いない夜の街に、静かに少しくぐもっている雨音が包み込むように響く。これならばあまり大きな声を出さなければ会話には問題はないか。

 

「あちらのお店は、ストリートビューとは違っていますね?」

 

「あー、確か先々月につぶれましたね」

 

会話は、なぜかこの辺をしっかり予習している彼女が発端となることが多かった。まぁもともと質問を受けて答えるのが私たちの基本ルーティンなのでいつもと変わらないといえる。

線路横の開けた道をゆっくりと歩いていると、向かい側からまばゆく輝く電車が走ってくる。ガトンゴトンと断続的なけたたましい音が響いて通り過ぎていく。特に何も感じることはない日常風景だ。

電車の中にはあと数本で終電だからか割とすかすかで、傾いて背もたれによりかかる酔っぱらいのスーツ姿のおっさんが何人か見えた。

 

「やはり、この音が電車の音だったんですね」

 

「はい、まぁたまに聞こえますよね」

 

音の通りがよく周辺住人の存在をサラウンドに感じられる我が家においては、静かな時間帯にふとした時に電車の音が聞こえるときがある。彼女は日中も家にいるので、何度か経験があるのであろう。

 

そのままいつもより歩幅を小さくゆっくり目に歩く。

夏前で夜で雨とはいえ多湿の我が国の暑さは、慣れない人にはつらいかもしれないからだ。私にとっては別段暑くは感じない気温だが、レインコートという通気性の悪い衣服を着ている状況だ。その辺は気を使うべきだろう。何せ、彼女は家では常に冷暖房を入れているのだから。

 

道中一度だけ、犬の散歩をしているご婦人とすれ違ったが、それ以外は人に会うこともなく、無事に公園へとついた。

 

外周部は植樹されており、花壇ではないが低い柵が立ち入りを少し躊躇う作りになっている。あとは芝生がどーんと広がり、隅っこによくわからないオブジェクト型の遊具があるという。多少の個性はあるが、探せばどこにでもありそうな、そんな就活時期だけ発生する独自の個性を出している大学生レベルのレア度な公園だ。

 

「まぁ、誰もいませんね」

 

「まぁ、シチュエーション的に」

 

正直自宅周囲のアウトドア的施設など、ほぼ把握もしていなかったが、ここは偶然読んだ地域新聞で知って。その後不審者情報で露出狂だか青姦してたカップルがいたと聞いて頭に引っかかっていたところだ。

 

「…」

 

「…」

 

しかしすることがない。見るものもやる物もないからだ。そのままなんとなく彼女に寄り添って、ぐるりと内部を歩いていると、謎のオブジェクトや遊具の近辺までたどり着く。

滑り台にもなっているので、上るための階段もついている。雨の日で滑る気は到底起きないが。周囲が坂になっている形状のため、ここは周囲よりわずか高い位置にあることを思い出す。

 

「姫様が大丈夫なら、ちょっとだけ上りますか?」

 

「まぁ構いませんが……」

 

多少戸惑ったようにそう答える姫様を連れ立って、階段を滑らないように一段ずつ登る。上まで行けば、目線の高さは、外周部の木々よりも気持ち程度だが高いところにまでなる。

 

「あっちの方向に見える青い光の物が、日本で一番高い電波塔です」

 

だから、上の一部と右側のほんの少し程度だが、巨大建造物が見えるのだ。だからなんだという話でもあるが。

 

「まああれが。たしか結構距離があったはずでは?」

 

「この近辺ですとわりとどこからでも見えますよ」

 

割と遠くからでも角度によっては見える、理論上は福島の山からでも見えるとかなんとか。そんな無駄に高い青い網目のあいつを指さしてみる。

綺麗な眺めとはお世辞にも言えないが、彼女の視点からしての非日常感があるものが見れたであろうから良しとする。

 

 

 

 

その後もほぼ特に盛り上がることもなく、残り半分の公園を歩いて、途中で自販機で飲み物を買ったりしつつ帰路に就く。なんとも盛り上がりに欠けるデートになった。

助走どころか減速したような気もする。

 

善は急げではなく、急がばまわれというわけだったようだ。

慣れないことはするものではないなと、改めて自戒するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煌々と焚かれる炎のように光る自動販売機で、家主が2人分の飲み物を買うのを彼女は黙って見つめていた。住宅街の人通りもさほどない中に、大量の硬貨や紙幣を詰めた箱が、あえて目立つようおかれている。平和ボケとすら言えるかもしれないそれに、もはや呆れていたというのもある。

 

受け取った飲み物を口に運びながら、彼女はふと口から漏れ出てしまったように、ふと口を開く。

 

「これが、普通の暮らしですか」

 

平和だ。人とすれ違うことは殆どなかったが、家々の灯りは優しく灯っており、時折にぎやかに話す声も聞こえる。そんなこの国ではありふれている、普通の夜の光景。

 

 

「どうかしましたか?」

 

「いえ、少し国のことを思い出しまして」

 

 

彼女の脳裏に浮かぶのは、窮屈な暮らしだ。青い血が流れているからという理由で、父はもとより、周囲からも、姫であることを求められる暮らし。

嫌悪感すら覚えないように幼少時より自身を固めて生きて来た。彼女はそれこそ、自身の性自認ですらあやふやなうちのままから、姫になるようにと教育されてきていた。

 

「やれ礼儀作法だ、教養だ、人心掌握のためだと。心を休める暇もない場所でした。いまのこののんびりとした時間では特にそう思います」

 

「城には自由がないって言ってましたね」

 

「ええ、城ではお姫様でしたから」

 

さすがにこの年まで育った以上、今でこそ女性という性自認はあるが、結果としてそうなっただけであった。

戻りたくとも戻れない故郷なんてものではない。戻りたくもなく、戻るとしても姫はもうやりたくない。そんな故郷だ。

 

そんなにべもないことを思いながら、彼女は無言で帰路を歩いていく。甘ったるい過剰なまでに砂糖が入った紅茶のようなものを飲み終われば、汗がじんわりと滲んでくる。

通気性の悪い服に暑さと疲れを覚えているから、必要にかられなければ口を開こうとも思えない。急に雨の中外出することと為り疲労感と恐怖によるストレスが彼女を苛んでいたからでもある。

 

それでも、わざわざ余計にコストを払ってまで、リスクを負ってまで自分を連れ出そうとした彼に対して、もうあとひと押しで、完全にこちらに手を出そうとするといった。勝利への確信に近いものまで持てたので。内心上機嫌ではあったのだが。

 

そんな『故郷の話を思い出して』物憂げな表情をした彼女は、それが横の家主からどう見えているかなど、考えもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近の姫様の攻勢を何とかやり過ごしながら、関係が少しでも進めばと誘った言葉を濁さずに言えばデートは失敗に終わった。そう結論付けることにする。何せ彼女に里心をわかせてしまったのだから。

 

月を見て泣くかぐや姫のように、彼女がどんな月を見たのかはわからないが、それでも今の生活と元の生活に大きな差があるのはわかる。

だからこそ、ふとした時に浮かべる表情が、もしかしたら、望郷の思いを膨らませているのではないかなんて思ったり。

 

ただ私は、もっと姫様と関係を進展させたかった。もっとこう自然体で居れるような、そんな関係でいたかった。このまま続けていれば、遠からず自分は彼女に対して我慢が効かなくなるであろうという確固たる自信がある。

 

今まで試験前や面接前、課題前にも続かなかった自身の自制心を見てきた確固たる結論で、確実にそのうちぷつんと行く。

それになにが問題があるのかといわれると、実のところないように思えてきてしまったからだ。約60㎝もある身長差と想定4,50キロある体重差。その問題さえ目を瞑れば、そういったものを踏まえても。ただただ倫理観だけで社会通念的な罰則を受けるようなことはしていないはずだ。

 

だが、それでも。

 

今までの姫様の行動が、ただこの家にいる、いさせてくれる確固たる理由として、私の情婦であることを望んでいるのだとしたら。こんなに惨めなことはない。

 

今まで投げていた、私の言葉も何一つ彼女に届いていないことなのだから。

 

私には、下心があった。それは否定しない。そして、優越感もあった。それも嘘ではない。彼女が頼ってくれることに自尊心が満たされていくこともあった。

 

だが、それでも根底にあったのは善意だ。偽善とも言ってもいいが、いいことをしたいという根源的欲求に起因した行動だ。今日に至る過程で、良い人間に思われたいという虚栄心、あわよくばという性欲も巻き込んでいったが、根本には善意があってのことだ。

 

人に優しくしなさいと教わったから、自分が良い人間であると、自分で思うために善意を働く。スタートの感情は清らかでなくとも、行動自体は善のはずで。それを否定するのは、育ててくれた親にも顔向けできない。

自分は悪を悪のために喜ぶ性格はしていない。娯楽や手段として、悪をとることはあって、それが目的であったことは一度もない。

 

だからこそ私は、改めて彼女との関係を見つめなおすことにする。ちょうど会社の夏前の繁忙期も相成って、自然に少しばかり帰る時間が遅れてきた。一時的なものではあったが、ビデオ個室に向かうことなく8時を過ぎるようになった。

 

「すみません、食事は適当なものを冷蔵庫から出して食べてください」

 

「はい、家主様」

 

それだけ告げて、私は家を出る。それなりにこだわっていたコーヒー豆も、最近は焙煎してもらいに行く時間もないため、スーパーの安物を買ってしまった。

最低限の体裁は整うが、慣れていない臭みのようなものがして、気持ち悪くなる。グラム単価が10倍も違えば、馬鹿舌でも味は十分わかるという事か。

 

そう自嘲しながら今日も仕事を片付けていく。ここ10年スマホの待ち受け画面はただ見やすさを追求して、無地の真黒単色にしていたのを、少し前に同居人の姫様の写真になんてして見る。背後に縮尺を類するものが無ければ、スケール感の小ささがないために、普通に美人のお姫さまだ。

 

頼み込んで部屋で撮らせてもらった一枚で。それをたまに見ながらいつもより多めに仕事をこなして、帰る前にすっきりして。半額シールが張られた自分の分の総菜と、献上品のそろそろ出始めた過去に破産した自治体のメロンを買って帰る。

 

「遅くなりました」

 

「おかえりなさい」

 

帰れば、すぐに姫様が笑顔を浮かべて迎え入れてくれるが、疲れからか多少おざなりに返して、シャワーに入ることにする。

 

体を洗うだけの為の入浴をすませたら、ついにログボすらもらわなくなってしまった大半のソシャゲを起動する事もなく、買ってきた揚げ物をつまみながら、安物のウィスキーをジョッキに明けて、氷と炭酸水を叩き込む。分量は適当だ。酔えればよい。

 

「家主様、一口頂戴しても良いですか?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

すぐに横に姫様が来て、私のイカリングに手を伸ばそうとするので、いったん制して。割りばしのビニルの中から、爪楊枝を差し出す。あえて、先に酒を胃の中に流し込んでから、冷めて衣がふにゃっているイカリングを口に運ぶ。

 

「ちょっと生臭いですね」

 

「まぁ、確かに」

 

多少の臭さはあるが無視をして、飲み込んで空腹を満たす。ちらちらと姫様がこちらを見ている。そもそも気がつけば何時ものように隣にきて、膝に手を掛けてデザートを求めてくる。

そんな彼女を見るたびに、そこまで私へ媚びなくても良いのだと、そんな気持ちになってしまう。その証拠なのか、片手間にメロンをカットして、彼女の前に差し出せば、目を輝かせてそちらに取り掛かる。

 

「どうぞ」

 

「まぁ、ありがとうございます!」

 

認めるべきだ。私が姫様とこうして話せているのは、すべてが運によって成り立っている。彼女に受け入れられてきてはいるが、別段私の『この』気持ちのように、彼女は私のことを見ていないであろう。

 

すこしこちらに興味がある様に身体的接触を増やされただけで、彼女のことが頭から離れなくなってしまう私とは、そもそもの生まれが違うのだろうから。

 

「姫様、今月いっぱいさらに帰りが遅くなります。食事も食べてから帰りますので、暫くは先に就寝してくださって構いません」

 

「まぁ、それほどまでにお仕事が?」

 

「はい、どうにも。申し訳ないですが暫く食事は買い置きの物で……」

 

「……そう、ですか……」

 

「買い置きのものですと、味気ないですし家の前まで持ってきてドア横に置いてくれるサービスを使いましょう」

 

「よろしいのですか?」

 

「油をさした扉なら開けられるようですし、しっかり外の人が居ないのを確認して、顔を隠して回収してくださいね」

 

「はい、勿論です」

 

それでも、どうしても彼女の悲しげな顔をみていると、譲ってしまう。これではどちらがおもねっているのだろうか。もしかしたら、故郷に帰りたくて仕方ないのかもしれない。帰る目処が立てば私に何も告げずに帰ってしまうのもおかしくない姫様だ。

 

本当にどうすれば良いのだろうか……私にはもうわからなかった。

 

「姫様、もし……」

 

もし帰ることができるのならば。いつもは帰りたくないと軽く言っている彼女が。帰る手段がわかったとしたら。どうしますかと、それを聞く勇気は。

 

「もしもの時のために鍵はきちんと閉めてくださいね」

 

「勿論です。家主様」

 

私にはなかった。

 

 

 

 





ふとももの太いお姫様のイメージを固めるために落第騎士を見直してたら遅くなりました。


今回の家主君のお出かけは

外に出れば喜ぶだろうといった軽い考えで当日に誘う。
勢いだけでプランなし。
道具を準備してから誘う。
仕様上仕方ないとはいえ雨天決行。
強制クソださペアルック。
金を極力かけない。
それでも文句言わずに同行したら、帰宅後距離を取る。

となっております、是非採点をお願いします。
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