シニア級〇年目のライスと朴念仁系お兄さまと時々同期や後輩の話   作:ブルーペッパー

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 掲示板要素ありです。
 後半はいつもの形なので、掲示板形式が苦手って方は前半飛ばしてください。



17話 マルカブと新年

 

【推しが負けても】トゥインクルシリーズ秋シーズンを振り返るスレPart.×××【恨みっこなし】

15:名無しのレースファン ID:Xhkv8jAHX

 今年の秋シーズンGⅠウマ娘 

 ・スプリンターズS 同着 ミホノブルボン 専属

              タイキシャトル リギル

 ・秋華賞      メジロドーベル メジロ

 ・菊花賞      マチカネフクキタル 専属

 ・天皇賞(秋)   マチカネタンホイザ カノープス

 ・エリ女      ――――――― 専属

 ・JBCレディクラ ――――――― アルタイル

 ・JBCスプリント ――――――― 専属

 ・JBCクラシック ――――――― リギル

 ・マイルCS    タイキシャトル リギル

 ・ジャパンカップ  マチカネタンホイザ カノープス

 ・チャンピオンズC ――――――― カペラ

 ・有記念     ライスシャワー マルカブ

 ・東京大賞典    ――――――― 専属

 こんな感じか。意外とばらけたな

 

16:名無しのレースファン ID:uPvk0iLW0

 >>15

 いうて毎年こんなもんでしょ

 一時期のリギル一色がおかしかったんだよ

 

19:名無しのレースファン ID:7Kd/CyLqV

 >>15 まとめ乙

 そしていつものチーム・メジロで笑うw

 

21:名無しのレースファン ID:0fpejQ6te

 メンバーほとんどメジロ家所縁の子だししゃーない

 

22:名無しのレースファン ID:kRRopGM4r

 メジロの至宝を担当して史上初のトリプルティアラ達成したんだから残当

 

23:名無しのレースファン ID:wiRsJWOqh

 なおマックイーンとパーマー……

 

25:名無しのレースファン ID:2BrzwGuzv

 絶対入るって約束してるわけじゃないんだからセーフ

 

26:名無しのレースファン ID:1UmSw2c0q

 今年は色々あったな。ブルボン復帰からのGⅠ二勝、お米復帰からのグランプリ勝利、バクシン中距離重賞勝ち、マチタンが念願のGⅠ制覇でしかも二連勝とか

 

27:名無しのレースファン ID:mvPbiYY8x

 >>マチタンが念願のGⅠ制覇

 有記念ぇ……

 

29:名無しのレースファン ID:cOl2umbF2

 復帰初年でヒットマンかますとかお米先輩流石っすわwww

 

30:名無しのレースファン ID:ifoAYOnC/

 >>29

 お前はネタかジョークのつもりかもしれんがそれで気悪くする人もいるんだからな

 

31:名無しのレースファン ID:N3xmnxLGX

 でも俺は見たかったよ秋シニア三冠

 

33:名無しのレースファン ID:0kzlCOKfE

 ルドルフやタマもできなかった三冠王手だからな 

 期待したわ

 

34:名無しのレースファン ID:0x/kgutUW

 みんな真剣勝負なんだから結果にあれこれ言ってもしゃーないわ

 

36:名無しのレースファン ID:84zHE4AMH

 >>29が言ってるお米って誰の事?

 

39:名無しのレースファン ID:Wg3bpkfTl

 >>34

 今年ケガから復帰したライスシャワーのこと

 由来は名前通り結婚式とかでお米まくやつから

 

41:名無しのレースファン ID:qu7WxskVZ

 >>36

 >>39

 あと一時期農協とコラボして米のCМ出てたから

 

43:名無しのレースファン ID:8wrVazv96

 >>39

 割烹着きてご飯よそった茶碗差し出してくるアレか

 

46:名無しのレースファン ID:kbqCSSYCK

 よそった(大盛)

 

49:名無しのレースファン ID:WYz3M9nE/

 茶碗(どんぶり)

 

51:名無しのレースファン ID:tt5eF3IiB

 もしかしてあの子って大食い?

 

53:名無しのレースファン ID:mxM6a07TG

 オグリほどじゃないが結構食べるらしい

 

56:名無しのレースファン ID:NM4K7dvIi

 オグリクラスが二人もいてたまるか

 

57:名無しのレースファン ID:FK/1KL23Q

 実際あのCМで米の消費量とか上がったらしいな

 

60:名無しのレースファン ID:EMapkokTn

 ぼくあのCМでロ〇コ〇に目覚めました!

 

62:名無しのレースファン ID:Cb3dn5TEG

 おまわりさんあの>>60です

 

63:名無しのレースファン ID:sgbekGwqR

 >>60

 射サツします

 

65:名無しのレースファン ID:6LluejSFp

 ご慈悲を……

 

68:名無しのレースファン ID:43IN3IwVt

 >>57

 なお本人はパン派のもよう

 

71:名無しのレースファン ID:zhSyAe1s9

 マジかよ最低だなザキヤマパンのファン止めます

 

73:名無しのレースファン ID:Aq4lkW9N+

 朝がパン派ってだけだろ!

 昼と夜は米食べとるわ!

 

75:名無しのレースファン ID:o5x2R98sx

 失敬な米もパンも麺も食べるぞ

 (画像)

 

76:名無しのレースファン ID:rwplMKC0i

 >>75

 やだ、すごい量……

 

78:名無しのレースファン ID:fxHyU+jj8

 レースじゃなくてウマ娘個人の話は専用スレでしてくれ

 で、言いっぱなしもなんだからジュニア級のGⅠ結果追加で

 ・朝日杯FS    グラスワンダー マルカブ

 ・阪神JF     ――――――― リギル

 ・ホープフルS   エルコンドルパサー マルカブ

 

79:名無しのレースファン ID:J9QIIl40d

 >>76 乙

 マルカブすげーなリギル並みに勝ってる  

 

82:名無しのレースファン ID:QG1oKwhgp

 いうてジュニア級だし クラシック進んだらガラッと変わることも多いからなんとも言えん

 

83:名無しのレースファン ID:+WGTHuBCR

 でもエルコンはすごかったぞ。クラシックの有力候補だろ

 

85:名無しのレースファン ID:sR/h7bIlN

 ほーんじゃあ注目してくか

 

88:名無しのレースファン ID:NVgqqTBu1

 グラスワンダーもレコード勝ちだから期待大だけどケガしたんだろ。

 残念だわ

 

89:名無しのレースファン ID:5IHFXcBrs

 いうて皐月まで四か月あるし間に合わんかね?

 

91:名無しのレースファン ID:g+LvCiX1l

 骨折だし。治ってからリハビリして落ちた筋肉戻してたらきつくない?

 

92:名無しのレースファン ID:89EqfbCIn

 出ても勝てるか分からん状態か

 

94:名無しのレースファン ID:tJro2PqVR

 まずは無事にケガ直してほしいわ

 ウマ娘にとっちゃ一生に一度のクラシックだろうけど俺としては長く走って欲しい

 

96:名無しのレースファン ID:x25tcEaOg

 まあ俺らただの客やし。出たら全力で応援するだけだわ

 

97:名無しのレースファン ID:1tzfuEjU7

 んだんだ

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

132:名無しのレースファン ID:FFGFt7PFL

 ちなみに今年の年度代表ウマ娘誰になると思う?

 俺はタイキシャトルだと思う。スプリンターSとマイルCSは圧巻だわ

 

133:名無しのレースファン ID:PfjDtKSJl

 >>132

 ちょっとスレチじゃね? 年度代表なら春シーズンの結果も考慮せにゃあかん

 あと短距離路線からはまず選出されん

 

134:名無しのレースファン ID:ziorA8fiO

 >>132

 年度代表については↓でやってるぞ

 (URL)

 メジロドーベルは?

 

137:名無しのレースファン ID:48EZFivMq

 クラシック級はシニア混合重賞勝ってないと難しくない?

 

 

 

 

【一般投票】今年の年度代表ウマ娘は誰か●●年版Part.△【やってくれない?】

 

95:名無しのレースファン ID:Sv5OEfW8c

 ブルボンそんなに無理かな?

 復帰から重賞四連勝うちGⅠ2連勝だぞ

 全距離芝GⅠ制覇の夢もURA的には推したいドラマやろ

 

96:名無しのレースファン ID:padgq79zK

 >>95

 前にも出たが実績が短距離路線からはまず選出されん

 それこそ春から短・マイルのGⅠ総なめでもせん限り無理や 

 

98:名無しのレースファン ID:k76PMJpUm

 年度代表ウマ娘は有記念勝った子が選ばれる

 これマメな

 

102:名無しのレースファン ID:RqSeyvh14

 >>98

 じゃあライスシャワー?

 

104:名無しのレースファン ID:Nt/IsW1mR

 GⅠ2勝が何人かいるのにGⅠ1勝で選ばれだら反感買いそう

 

108:名無しのレースファン ID:FKk4y1ssf

 秋天勝ってたら文句なしだったんだがな

 

109:名無しのレースファン ID:D6H6RVEJl

 どうしてみんなしてお米をいじめるのん?

 

113:名無しのレースファン ID:MJ4tQwd0R

 >>109

 カワイイからさ(暗黒微笑) 

 

114:名無しのレースファン ID:lKHqOCpeq

 >>113

 パァン!

 

118:名無しのレースファン ID:OHrMr7TcA

 >>113

 ババババババババ!

 

121:名無しのレースファン ID:aDsW7Dz3e

 >>113

 ドドドドドドドドドドドド!

 

125:名無しのレースファン ID:UAzJ/9/G0

 ああ! >>113 が粉みじんに!

 まあいいか

 

126:名無しのレースファン ID:U5atsIzDy

 GⅠ2勝以上

 芝

 短距離・マイルからはない

 クラシック級はシニア混合勝ってないとダメ

 

 もう一人しか該当なくね?

 

129:名無しのレースファン ID:QtlHvgfn6

 あ……

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 年末から年越しと賑やかな日が続いたが、それも三が日が過ぎれば落ち着いてくる。

 この一週間ほどはマチカネタンホイザの実家が営む食堂も例に盛れず忙しかったが、今年の忙しさは例年とは違っていた。

 自身のGⅠ勝利祝いだと、帰省を聞きつけたご近所が連日押しかけ、連日連夜の宴会騒ぎだった。

 店に来たなら本来こちらがホスト側なのだが、なぜかマチカネタンホイザが歓待される側だった。

 幼いころから見知った人から祝いの品やらお酌やら、泣きながらおめでとうを何度も言われた。

 さすがに勝ったレースの鑑賞会まで始まった時は恥ずかしかったが、今思えばそれだけ自分の勝利を待ち望んでいたということの証でもあった。

 

「みんな喜んでたし、やっぱり勝てて良かったなー」

 

 地元総出のお祝いも落ち着き、今日は一人炬燵に入って特に興味もない新年特番を眺めていた。

 テレビには何やら華やかな装いのウマ娘が映っている。

 画面に映ったテロップで、彼女が欧州のとある国の王族であることが分かった。番組出演者が驚愕の声を上げるのに合わせて、マチカネタンホイザも声を上げた。

 

「あーあの人ジャパンカップで走った人だ。そっかー綺麗な人だと思ってたけどお姫様なんだ。

 ……本当にいるんだお姫様なんて。すごいなー」

 

 ここにナイスネイチャがいれば、「そのスゴイのに勝ったのはアンタでしょうが!」とツッコんだだろうが、残念ながら彼女も地元へ帰省中でありここにはいない。

 卓に置かれた籠からミカンを取ろうと手を伸ばすと、傍らに置いていたスマホから音楽な鳴り響く。

 片手でミカン、もう一方の手でスマホを取って画面を見る。ナイスネイチャからの着信だった。

 

「もしもしネイチャー? あけおめー」

『おーあけおめー……じゃなくて! タンホイザ、トレーナーからのメール見た?』

「え、メール?」

 

 スマホを動かすと、確かにトレーナーの南坂からメッセージメールが届いていた。

 時間は少し前で、返信がないのを心配したのか何度も連絡を取ろうとした記録もあった。

 

「あーゴメン! ボーっとしてて気が付かなかった。もしかして何か急ぎの要件だった?」

『いやまだ大丈夫……のはず。要件ってのは年度代表ウマ娘! URA賞のこと!』

「年度代表……ああもうそんな時期か。やっぱり今年はGⅠ二つ獲ったブルボンさんかな。スプリンターズS凄かったもんね。それとも有記念勝ったライスさん?」

 

 受賞者についてはメディアで報道されるより先に関係者へ通達がある。

 カノープスに来たということは、自分ももしや特別賞か敢闘賞にでも入れたのかもしれない。

 しかし、彼女の予想はナイスネイチャからの一言で粉砕される。

 

『――――アンタだよ!』

「………………………………………………へ?」

『秋天でブルボンさんやライスさんに勝って! ジャパンカップで海外のウマ娘にも勝って! 有記念で惜しくもハナ差二着のアンタが! 今年の年度代表ウマ娘!!』

「へ………………………………ふぇえええええええええ!!??」

 

 大音声に、ナイスネイチャも悲鳴を上げた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 三が日も終わり、世間も正月気分から抜け出して普段通りの生活に戻りつつある頃。

 私たちは都内某所のビルの中、フロア一角を貸し切った会場にいた。

 目的はURA主催による年度代表ウマ娘――いわゆるURA賞の表彰式だ

 URAが運営する中央と呼ばれるトゥインクルシリーズにおいて、昨年のウマ娘たちの活躍を称えるものだ。

 階級や距離に分けて複数の部門があり、新聞や放送などのメディアによる投票によって選出される。ただの多数決ではないため、一定の支持が集まらない場合は該当なしとされることもある。

 レースの勝敗とは違う、ウマ娘たちの努力に対する総決算。世代の王を決める場だ。

 ライスたちとは正装に着替えるために別れ、一足早く私だけが会場前に立っていた。

 掲げられた大看板に、受賞するウマ娘たちの名前が刻まれていた。

 

 年度代表ウマ娘    :マチカネタンホイザ

 最優秀ジュニアウマ娘 :グラスワンダー

 最優秀クラシックウマ娘:メジロドーベル

 最優秀シニアウマ娘  :マチカネタンホイザ

 最優秀短距離ウマ娘  :タイキシャトル

 最優秀ダートウマ娘  :該当なし

 URA特別賞     :ミホノブルボン

 

 朝日杯フューチュリティステークスのレコード勝利が評価されてか、グラスがジュニア級における最優秀ウマ娘に選出された。

 これで名実ともにグラスが世代のジュニア級王者ということになる。

 エルはどうして自分が選ばれないんだ! と憤慨していたが、よほどのことがない限り一人しか選出されない賞だ。投票の内訳がまだ公表されていないので何とも言えないが、恐らくはかなりの接戦だったのではないだろうか。

 クラシック級の王者はダブルティアラを成したメジロドーベル。クラシック二冠を獲った子もいたが、ケガで秋シーズンを休養した彼女よりもシニア混合の重賞に挑んだメジロドーベルが評価されたと見た。

 シニア級の最優秀賞及び年度代表ウマ娘がマチカネタンホイザであることに疑問を挟む余地はないだろう。秋の中距離GⅠを二連勝、しかも一つはジャパンカップで海外のウマ娘たちを抑えての勝利だ。他のシニア級にGⅠ二勝したウマ娘がいない以上、春シーズンのGⅠ勝利が無かったとしても受賞するには十分な活躍だった。

 短距離で選ばれたのはタイキシャトル。正直ここはミホノブルボンが来るのではとも思ったが、マイルチャンピオンシップの勝利が決め手となったか。

 ダート部門は該当なし。良くも悪くも群雄割拠だったため票がバラけてしまったようだ。

 そして特別賞。こちらは毎年表彰されるものではなく、なにか記録を打ち出したりシリーズを盛り上げたウマ娘が表彰されるものだ。これは表彰理由も明かされており、今回のミホノブルボンの場合はケガからの復帰初戦がGⅠであり、その後も重賞を連勝かつGⅠ連勝したことを評価されたのだろう。

 

「お兄さま、お待たせ」

 

 声がした方を向くと、着替えを終えたライスたちがいた。

 今日の主役はグラスなので、ライスとエルも余所行きの格好だがそこまで着飾ってはいない。特にライスは撮影係に手を上げて、銃器と見紛うようなカメラを持っていた。

 一方でグラスは艶やかな和装で着飾っていた。

 花の柄をあしらえた白い帯と青の和服が勝負服姿の彼女を連想させる。長い栗色の髪を結いあげ、普段は見えないうなじが露わになって妙に色っぽい。髪を止める蒲公英のかんざしの他、私がプレゼントした翼の髪飾りもあった。

 

「どうでしょうか……」

「綺麗だよ。グラスは和服が似合うね。髪飾りもつけてくれたんだね」

「トレーナーさんからの贈り物ですから……。トレーナーさんもつけてくれたんですね」

 

 そういうグラスの視線は私の袖口と首元に向く。

 今日の私の装いはスーツこそ有記念前の会見よりももう一段上等なものだが、ネクタイとカフスボタンはエルとグラスに貰ったものを着けていた。

 

「せっかく二人が選んでくれたものだからね」

「似合っていますよ」

「ありがとう」

「「………………」」

 

 ……なんだろう。ライスとエルからの視線が痛い。おかしなことは言っていないはずだが。

 とりあえず、二人にも声をかける。

 

「えっと……ライスは今日撮影よろしくね」

「……うん。カメラも新調してきたし、お兄さまとグラスさんの晴れ舞台はしっかり残すよ」

「エルもそろそろ機嫌を直してくれないか?」

「別にエルが選ばれなかったことにへそを曲げてなんてないデスー。……でも」

 

 エルがちらりとライスを見る。

 

「ライス先輩が特別賞にも入ってないのは納得いかないデス。ブルボン先輩と同じで復帰した年にGⅠ勝ってるのに」

「あはは……ライスは特別賞を一回貰ったことあるから二回目は難しいかな」

「え、そうだったんですか?」

「天皇賞(春)でマックイーンさんに勝った年の次のまた次の年だったかな。不調続きだったところで天皇賞(春)勝利したら一年越しの復活だって」

「おお……トウカイテイオーみたいデス。……あれ? でもこの前歴代の表彰式の写真を見た時ライス先輩は……」

「うん、その年の宝塚記念でケガしちゃって……。入院中だったから表彰式には出れなかったんだ」

「オウ……なんかゴメンなさいデス」

「別に謝ることじゃないよ」

 

 気まずい顔をしたエルに私から言う。

 ライスの状況はともかく、彼女の成果を賞してくれたのだから。

 

「さて、ライスも言ったけど今日はグラスの晴れ舞台だ。エルも笑顔で行こう。笑顔で」

 

 そう言ってエルの頬をつまんで左右に引っ張る。口元を釣り上げて無理やり笑顔を作ってあげると三人から笑いが起こった。

 それでいい。暗い記憶もあるURA賞だが、いつまでも引きずっているわけにもいかない。

 私たち四人は並んで会場へと入っていった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 会場に入ると各メディアやURAの役員など、トゥインクルシリーズ運営の重鎮たちが揃っているのが目に入った。同時に多くの報道陣の視線が私たちに向けられる。

 

「ライス先輩、あの人この前テレビで見たことありマス!」

「指さしちゃだめだよエルさん」

 

 主な視線の先はグラスだ。レコード勝利によるジュニア級王者の称号への称賛と、ケガによるクラシックへの不安と好奇が入り混じった視線。正直、心地よくはない。

 

「大丈夫かグラス?」

「ええ。少し緊張はしていますが、大丈夫ですよ」

 

 若干声に固さがあるがグラスの様子は普段とそう変わりない。

 慣れているというより、こういう場でも凛とした姿を保つことが彼女が志す大和撫子という者なのかもしれない。

 一方、会場の一角ではより一層注目される一団がいた。

 年度代表ウマ娘に選ばれたマチカネタンホイザと付き添いできたチーム・カノープスの面々だ。

 

「あば、あばわわわ〜〜〜! 人が〜〜カメラが〜〜いっぱいだ〜〜!」

「URA賞の表彰式ですからね。昨年を代表するスターウマ娘が一同に介する以上はメディアの注目度もひとしおかと」

「いやーあの自称ザ・普通のタンホイザが年度代表ウマ娘とは。ネイチャさんも友人として鼻が高いわ。

 ……ていうか緊張しすぎ。報道陣とかGⅠの出走会見で散々見てるでしょ」

「天皇賞(秋)も有記念もこんなに沢山いなかったよ! ああどうしよ。なんだか顔の奥がツーンとしてきた……」

「マチタン大丈夫? ターボのティッシュ使う?」

「ううん今かんだら色々飛び出しそうだからやめとく。でもありがと」

「ちょっ、今日だけは鼻血勘弁してよ。せっかくの友達の表彰式が血染めとかトラウマになる」

「本当、折角この日のためにドレスも新調したんですから……」

 

 華やかなドレスを着ていても彼女たちは普段通りだった。

 また視線を余所に向ければマチカネタンホイザと同じくらい緊張しているウマ娘もいた。

 最優秀クラシックウマ娘となったメジロドーベルだ。メジロ家が周りを固めているが、どうにも顔色が白い。

 

「………………」

「ドーベル大丈夫? 水飲む?」

「だ、大丈夫。ちょっと人が多くて緊張してるだけだから……」

「でも顔色が良くありませんわ。こういう時は~深呼吸~深呼吸~」

「う、うん……すぅー……はぁー…………すぅー……はぁー……」

「あとは……周りを南瓜だと思う、でしたか?」

「あれ、アルダンさんところだとそうなの? うちの近くだとジャガイモだったなー」

「どちらでも良いのでは? ようは人に見られていることを意識しなければよいわけですから」

「あーじゃあなんか興味ないものならオッケーな感じ? ドーベルが興味ないもの……空き缶?」

「なんですのそのチョイスは……むしろ好きなものだと紛れるかもしれませんわ。例えばスイーツとか!」

「……パーマーもマックイーンもなんか他人事だからってからかってない?」

 

 そんなことないよー、とはにかむメジロパーマーと、やれやれと苦笑気味のメジロマックイーン。どうやらチームの垣根を越えてメジロ家総出でのお祝いのようだ。

 辺りを見回すとやはりいた。メジロ家当主の『お祖母様』がいた。

 本家当主まで来ているとなってはメジロドーベルの緊張も仕方ないか。

 他にもタイキシャトルとリギルの面々、ミホノブルボンと黒沼トレーナーの姿もある。各々が着飾り、普段とは違う一面を見た気分だ。

 

「あら、マルカブの皆さん!」

 

 見渡していると、メジロマックイーンがこちらに気づいて駆け寄ってきた。

 ……ライス、どうして前に出るんだ?

 

「ライスさん、有記念勝利おめでとうございます。……なんだかお会いするたびにお祝いの言葉を送っている気がしますわ」

「ライスも、会うたびにお礼を言っている気がするよ。ありがとうマックイーンさん。……今日はメジロの人たちみんなでドーベルさんのお祝い?」

「ええ、メジロ家からURA賞が出たのは久しぶりですので。ただ本人は祝われることの嬉しさよりも緊張が勝っているようですが……」

 

 確か前にURA賞を取ったのはメジロマックイーンだったか。

 あの時は彼女が最優秀シニアで、年度代表ウマ娘はトウカイテイオーだった。

 

「最優秀クラシックなんて一生に一度しか選ばれる機会のない賞、世代の代表である証さ。緊張するなというのが無理な話だよ」

「最優秀ジュニアを取った方のトレーナーさんに言っていただけると助かりますわ。

 ……ああ、失礼しました」

 

 一歩下がったメジロマックイーンがグラスとエルを見てから深々とお辞儀した。

 

「グラスワンダーさん、エルコンドルパサーさん。お二人ともGⅠ勝利おめでとうございます。海外からお二人のようなウマ娘が来ていただけること、トゥインクルシリーズの先達として光栄ですわ」

「こちらこそ、メジロマックイーンさんにそう言っていただけるなんて光栄です」

「あ、ありがとうございマス……」

 

 ゆったりとお辞儀を返すグラスと慣れない様子で頭を下げるエル。

 対照的な反応に思わず笑ってしまう。

 頭を上げたメジロマックイーンがグラスを見る。

 

「足のことは聞き及んでおります。歯痒い想いが続くでしょう……ですが焦ってはいけませんよ。いつか、好機というものは来るものです」

 

 彼女の言葉は同情ではない。彼女もデビュー当初はケガに苦しみ、クラシック期のほとんどを休養していた。しかしその後のメジロマックイーンの活躍は誰もが知るところとなる。

 一時のケガがその後の全てを決めるわけではない。その証明となる名優の言葉にグラスは力強く頷いた。

 初々しさが気に入ったのか、メジロマックイーンも笑みを見せた。ふと、彼女の視線が私に向く。

 

「あらトレーナーさん。普段とは趣の違うネクタイをされているのですね」

「ああこれか。この前二人から貰ったから着けてみたんだけど……」

 

 赤いネクタイと、空色のカフスボタンを見せてみる。学生の二人が買ったものだからスーツとは値段が張り合ってはいないが、おかしかっただろうか。

 

「いえ、似合っていないという意味ではありませんわ。ですがネクタイにカフスボタンですか……相変わらずチーム・マルカブは仲がよろしいのですね」

「スピカも仲が良いと思うけど?」

「そういう意味ではありませんわ」

 

 ではどういう意味だろうか。まあトウカイテイオーやゴールドシップを見る限り、スピカのトレーナーとは大人と子供というより少し年の差のある友人のような間柄に見えなくない。

 

「ライスさんも相変わらず苦労されてますわね……」

「もう慣れました……」

 

 ……なんだろう。私が非難されている気がする。 

 グラスとエルまでやれやれといった表情なのは何故なんだ。

 

「それにしてもマルカブの躍進は目を見張るものがありますわ。年の瀬のGⅠを三つも勝つなんて、来年は気が抜けないとトレーナーも言っておりました」

「それはこちらも同じさ。サイレンススズカがシニア級に上がってくるし、クラシック級ではスペシャルウィークとぶつかる。……それに君も帰ってくるのだろう?」

「ええ、その通りですわ。

 ……ふふ、あの自信が持てず頼りなさそうだった貴方が随分と頼もしくなりましたね。……スカウトを断ってしまったのは早計だったでしょうか」

 

「――はい?」

「――ケ?」

 

 ぐりゅん、と音がしそうな勢いでグラスとエルが私の方を見た。

 なんか二人の視線に迫力がある。……え、私この流れで責められてる?

 

「トレーナーさん、本当ですか今の話?」

「あ、ああ……まだサブトレーナーだった頃、師匠からそろそろ自分で指導するウマ娘をスカウトしてみろと言われてね。それで声をかけたのが彼女だったんだ」

「懐かしいですわね。……わたくしもあの時はメジロの悲願を背負っておりましたから、天皇賞(春)の実績がない方のスカウトは受けられないと断ったんですの」

「そうだったね。でもそのあとにスピカに入ったのはちょっとショックだったなー」

 

 結果として彼女は天皇賞(春)を連覇したのだから選択は正解だったわけだが、それでも自分のスカウトを断り同期の担当となったのは自分の未熟さを突き付けられた気分だった。

 

「そ、それについては申し訳ありませんわ……。ですが、わたくしもゴールドシップに半ば無理やり連れていかれましたのよ?」

(なるほど、マルカブとスピカの因縁はその時から……ライス先輩がマックイーンさんを意識するのも当然ですね)

(マックイーンに断られた後にスカウトしたのがライス先輩……そりゃあ負けられないデス)

 

 やがて表彰式開始のアナウンスが流れ、メジロマックイーンとは別れた。

 式典は粛々と続き、グラスを始め各受賞者たちが表彰されるたびに嵐のようなフラッシュが焚かれた。

 

 そして年度代表ウマ娘であるマチカネタンホイザのスピーチで、彼女がドリームトロフィーリーグへと行くことが発表された。

 

 時間は進む。

 トゥインクルシリーズから次のステージへ行くもの。

 クラシックからシニアへ行くもの。

 ジュニアからクラシックに行くもの。

 シニアをもう一度走るもの。

 新しい一年が始まる。

 

 

 

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