シニア級〇年目のライスと朴念仁系お兄さまと時々同期や後輩の話   作:ブルーペッパー

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 アプリでメインストーリー1章が完結したので初投稿です。

 お久しぶりです。
 今回は本編の毎日投稿ではなく、番外編の単発投稿です。明日の更新はありません。
 本編はもうしばらくお待ちください。

 なお番外は、話の流れ的に入れられなくて、かつ一話分とするには文量が少ないものをまとめたものになります。
 あと、あらすじちょっと直しました。



【番外】ホワイトデーと置き土産

 

【番外1】小箱に秘めた想い(ホワイトデーネタ)

 

 

 ウマ娘のトレーナー資格は手に入れるのが最難関な資格の一つとしてよく挙げられる。

 都内の国立大学に入ることよりも難しいなどと言われるが、世界的なエンターテインメントであること、未成年の少女たちの決して長くない全盛期において今後の人生を左右しかねないことを考えれば当然だろうという声もある。

 トレーナー自身の学力、指導力の他、分類上は教職ということもあり若者の模範足りうる精神性も求められる。

 まさにウマ娘のトレーナー業というのはトップエリートの集団と言っても差し支えないだろう。

 しかし一度資格を得て、トレセン学園へ入ることが出来れば目標達成。後の人生順風満帆とはいかない。

 難関資格だのエリートの証明だの言っても所詮は準備段階。トレセン学園へトレーナーとして入り、担当するウマ娘を得て初めてスタートと言える。

 何が言いたいかというと、トレーナーになってからも自己研鑽を求められるということだ。

 日々進化し、新たに提唱されるレース理論やトレーニング理論。変わりゆくトレンド。そういった変化を敏感に捉え吸収していくことが求められる。

 私たちトレーナーが才能あるウマ娘をスカウトしたいように、ウマ娘たちも指導力の高いトレーナーと担当契約したい。中には実績がなくとも運命的な出会いをする組もあるが、結果を出せないコンビはやがて解消される。

 最難関故に常にトレーナー不足と言われる以上、質を上げることは必要不可欠ということは学園側も自覚しており、頻繁に講師を招いての勉強会や研修、ベテランとの交流会を開いている。

 今日も学園主催の勉強会に参加すべく、私を含めて多くのトレーナーが講堂に集まっていた。

 時間となり講師が登壇する。

 

「それでは、『ホワイトデーで失敗しないお返しの選び方』について講義を始めます」

 

 これも勉強、研鑽である。……いや本当だって。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 バレンタインデーの由来は海外の聖人だか司祭だかを敬う日だそうだが、ホワイトデーというお返しの日は日本発祥だという。一応はバレンタインデーの由来となった人物に救われた若者たちがバレンタインデーの一か月後に結婚したからだそうだが、そこからイベントとして発展させたのはお菓子メーカーの陰謀もとい涙ぐましい企業努力の結果だろう。

 回数を重ねてイベントとして認知され、需要が見込まれるようになると自然とお返しの品に意味がついてくる。果たしてそれが売り上げを見込んだ意図的なものか、それとも実話に基づくものかは分からない。イベントに参加する者としてはそのあたりの真偽はどちらでもよいのだろう。ただ何かに結び付けて贈り物に意味を含ませることが出来ればいいのだから。

 

「……だからと言ってマシュマロに『あなたが嫌い』はやりすぎでしょう」

 

 マシュマロメーカーから苦情は出ないのだろうか。いやマシュマロメーカーなんてあるのか知らないが。

 バレンタインデーの贈り物が基本チョコかクッキーの二択なのに対して、ホワイトデーでのお返しの選択は菓子だけでなく花なども含まれるため多い。

 しかもそれぞれに色んな解釈を踏まえて意味が含まれるため、考えなしに渡せば今後のウマ娘との関係に影響しかねない。

 そういう意味で、今日の講義は有意義であった。

 さきほど言った通りマシュマロは絶対NG、キャンディーは『あなたが好きです』なので安易に贈るべきではない。安牌に思えるチョコも実は『あなたの気持ちは受け取れない』となるので推奨されない。

 選択肢は広いようで、なんの意味も含まないもの、否定的な意味を持つものを排除していくとなかなか狭い。

 やがて一つの候補にたどり着き、スマホで商品があるか確認する。

 

「うん……やっぱり贈るならこれかな」

 

 考えた末、十二月から常連になりつつあるスイーツ店へと足を向けた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ライス、先月はチョコありがとう。これ、バレンタインのお返しだよ」

「ありがとう、お兄さま!」

 

 当日、チームルームにて横長の小箱をライスに渡した。

 グラスとエルの分も準備していたが、二人は今はいない。なんでもスペシャルウィークが追試になったらしく、同期とスピカ総出で勉強会なんだとか。

 真っ青な顔で机に向かうスペシャルウィークが想像できた。クラシック期待の星も、トレセン学園が文武両道を掲げる以上はレース成績だけでやってはいけないのだ。

 

「わあ、マカロンだ!」

 

 早速開封したライスから感動の声が上がる。

 滑らかなクリームをサクサクの生地で挟んだ洋菓子マカロン。フランス生まれの焼き菓子が一つずつ、仕切りで分けられた箱に並んでいた。

 桜、カシス、シトラス、カラフルな色合いにライスの瞳が輝いていた。

 

「ホワイトデーにマカロン、その意味は……『あなたは特別な人』」

「やっぱり知っていたか……」

 

 いざ口に出されると恥ずかしくなってくる。

 しかし嘘のつもりもなかった。

 ライスは私にとって初めてスカウトから指導までしたウマ娘だし、グラスとエルは新生マルカブとして始動するきっかけだ。間違いなく、特別な子たちだ。

 ちなみに私が出張中にライスたちに渡してくれた子たちにはラスクを寮長たちを通して渡してもらうことにした。

 ラスクには本当に意味が含まれておらず、純粋なお返しにちょうどよかった。

 

「そういえば……」

 

 ふと思いついた。

 

「クリスマスにグラスとエルがプレゼントしてくれたものにも意味とかあるのかな……」

「え」

 

 カフスボタンにネクタイ。普段スーツでいる私に、普段使いできるものを贈ってくれたのだと思っていたが実際どうなのだろうか。

 気になったので調べようとスマホで検索する。

 『プレゼント ネクタイ 意味』と入力したあたりでスマホが宙に浮いた。

 正確には、ライスによって取り上げられていた。

 

「ライス……?」 

「えっと……」

 

 見えている方の目が泳いでいる。

 

「……お兄さまにはまだ早いと思うの」

「ええ……」

 

 それだとライスもグラスもエルも早いと思うが。というかその言い方だとライスは知っているのか。

 

「えっと……ほら、グラスさんとエルさんが意味を知っていたとは限らないし。二人とも伝えたい想いがあるならプレゼントと一緒に直接言ってくれるんじゃないかな?」

「ふむ……」

 

 一理ある……かも?

 確かに中等部の二人が贈り物に付属する意味まで知っていたかは定かではない。

 もしも知らなかった場合、彼女たちの意思を無視して私の方で勝手な解釈をするのは良くないか。

 

「ライスの言うとおりかもね。二人のいないところで詮索するのも悪いしね」

「う、うん! そうだと思うよ……良かった

「ライス?」

「な、なんでもないよ! ねえお兄さま、このマカロン一緒に食べない? マックイーンさんがくれた紅茶もあるし」

「いいのかい? じゃあ、せっかくだしご相伴にあずかろうかな」

「分かった!」 

 

 ライスが部屋に備え付きのキッチンへ向かう。

 少しして、香り立つ紅茶をお供に、久しぶりのライスとの時間を過ごしたのだった。

 

 

 

 

【番外2】渡り鳥の置き土産(副題:エアグルーヴの受難)

 

 

 トレセン学園において、最も偉大なウマ娘は誰かと問われれば、シンボリルドルフと答える者が多いだろう。

 学園の生徒会会長にして、史上初の無敗でクラシック三冠、未だ並ぶ者のいないGⅠ七勝を成した絶対の皇帝。世界でその脚を披露する機会にこそ恵まれなかったが、間違いなく日本のウマ娘レースの歴史において頂点に君臨すると言っても過言ではない。

 今はトゥインクルシリーズを去り、ドリームトロフィーリーグからも離れて専ら運営側についているが、未だ専属のトレーナーとの担当契約は続いておりいつかレースに舞い戻るのではと期待されている。

 しかし、学園で最も勤勉な者は誰かと問われれば、また別のウマ娘の名前が挙がるだろう。

 その名はエアグルーヴ、女帝の二つ名で呼ばれる生徒会副会長。

 生徒会長シンボリルドルフの片腕として辣腕を振るい、後輩の指導にも積極的に参加。目安箱により生徒の要望を集めより良い環境を作ろうと常に学園を駆けまわっている姿が常に見かけられる。さらに、担当でなくとも年上であるトレーナーに対して真っ向から意見を言う姿に憧れや尊敬の眼差しを向ける生徒は多い。

 シンボリルドルフを象徴とするのなら、エアグルーヴは生徒たちの模範なのだろう。

 

「…………な、なぜ」

 

 そんな彼女が、カフェテリアで頬を引きつらせていた。

 

「なぜき……貴女がここにいる?」

「そんなかしこまった呼び方はよしておくれ。私と君の仲じゃないか」

 

 ジャパンカップで二着に入ったあの海外ウマ娘がいた。

 後で王族と聞かされたが、エアグルーヴが想像するお姫様像からかけ離れすぎて受け入れるのに時間を要したのでよく覚えている。

 彼女とエアグルーヴの様子をうかがうのはボリュームのある赤毛を二つに結んだウマ娘、ナイスネイチャだ。テーブルをはさんで向かいに座る彼女の手元には編入者向けの学園案内のパンフレットが広げてあった。

 エアグルーヴが自身の記憶をたどる。

 ナイスネイチャはトゥインクルシリーズを去った後、ドリームトロフィーリーグにはいかず運営側のスタッフ候補生として学科を転換した。なお、より現場を近くに感じるためと称してチーム・カノープスには未だ籍を置いている。

 スタッフと言っても学園の職員も兼ねており、業務には広報活動や編入案内もあったはずだ。ナイスネイチャが対応しているのは候補生としての実習の一環ということか。

 何故西欧の姫が学園のカフェテリアにいるのか、そこから導き出される答えは。

 

「まさか、トレセン学園に編入するつもりですか?」

 

 今は一月の終わり。ジャパンカップはもちろん、有記念もURA賞の発表も終わった今、彼女が日本に居座る理由が他に思い至らなかった。

 しかし、エアグルーヴの答えを聞いた姫君はからからと笑った。

 

「残念だが違う。いや、女帝陛下と同じ学び舎に通えるのはとても魅力的なのだが、私は渡り鳥のような性分でね。一つの場所に長くいることに我慢できないのさ」

「では、なぜ……?」

「なぜって、この私を打ち負かしたウマ娘が育った学園だ。興味が出るのは当然だろう。色々と話を聞きたくて問い合わせをしたら、こうしてネイチャ嬢が場を設けてくれたというわけさ」

「えーっと、学園の施設とかカリキュラムとかを聞きたいと。ついでにできればレース経験のあるウマ娘に説明して欲しいと言われて私が駆り出されたんです、はい」

 

 王族相手にプレゼンとか荷が勝ちすぎですわー、と渇いた笑いを零すナイスネイチャ。

 

「実に分かりやすい説明だったよ。簡潔で、されど取りこぼしはない。話を聞くたび興味をそそられる内容だった。君が充実した学生生活を送っていた証明だよ」

「おおう、キラキラ台詞が身に染みわたりますわ……。えー、一応この後は学園の施設を実際に見てもらう予定なんですが」

「それは良い。……いやしかし、ナイスネイチャ嬢には悪いがぜひとも案内は女帝陛下にお願いしたいな!」

「は?」

 

 思わず声に出た。

 二人の視線がエアグルーヴに向く。

 片方は楽しそうに、もう片方は申し訳なさそうな視線だった。

 脳内で今後の予定を確認する。運も悪く、今は空き時間だった。

 

「……一時間だけなら。それ以上は先約もありますので」

「構わないさ。限られた時間だからこそ濃く、鮮烈に記憶に残るものだ」

 

 席を立つ姿すら優雅なふるまいで、姫は女帝とともにカフェテリアを出ていった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 トレセン学園の敷地は広い。だが、生徒が使う施設に限ってしまえばウマ娘の脚で回るのは大して難しくない。

 しかも二人は国際GⅠに出るほどの猛者。普段のトレーニングに比べれば準備運動にすらならない。

 実際のレース場を再現したトレーニングコース、高低差のある坂路、ダートコース、プール、悔しさを吐き出す切り株、エトセトラ、エトセトラ。

 屋内のジムに行けばウマ娘第一を掲げる理事長の慧眼と思い付きにより導入された最新鋭の機材から本当に効果があるのか眉唾レベルの珍品まで置かれている。

 他主要施設を予定通り一時間程度で見て回ったところでエアグルーヴは切り出した。

 

「それで、何を企んでいるのですか?」

「企むとはまた物騒な」

「王族ならば公務もあるでしょう。まさか護衛もつけず未だ日本観光というわけでもありますまい」

「ははは。私は見ての通り放蕩娘でね、父上も呆れ果てて公務も最低限しか回してこないのさ。あと、護衛は人目に映らないようにしているだけでちゃんとついているから安心して欲しい」

 

 エアグルーヴがあたりを見回すが、学園の生徒しか見当たらない。彼女の言葉を信じるのなら、まさにプロと言うことだろうか。

 

「とはいえただの観光ではないのも確かでね。……実は、妹をこの学園に留学させようと思っているのさ」

「妹を? その、妹君は……」

「ああ、私と同じくウマ娘さ。一方で私と違い、真面目に王族としての義務を果たすできた妹さ。ゆくゆくは父の後を継いで王位につくだろう。……これは父上からもぎ取ってきた、あの子にとって最後の自由さ」

「最後?」

 

 ああ、と呟き空を見上げる表情は真剣そのものだった。

 

「妹はいずれ王位という鳥籠に入る。そしてその後は一度も大空を飛ぶことなく、囲われた箱庭でしか羽ばたけない。それを勝手に不憫に思った私の、自己満足なお節介さ」

「それは……」

「勘違いしないで欲しい。妹は王族の責務に不満を持ったことはない。あれは血筋や環境によって形作られた王ではなく、まさに生まれながらにして王にふさわしい気品と精神を併せ持つ……私と違ってね」

 

 自虐的に笑い、渡り鳥の姫は続ける。

 

「ただ妹には知っておいて欲しいだけさ、空とは石壁で囲まれた城から見えるものが全てではないと。世界に吹くのは穏やかで優しい風だけでなく、嵐のような荒々しいものもあるのだとね。

 そして……」

 

 何かを言おうとして、彼女は頭を振った。

 

「いや、これ以上言葉にするのは無粋だろう……。

 女帝陛下をお誘いしたのは、我が賢妹が編入した暁には面倒を見てあげて欲しかったからさ」

「私に……?」

「これでも人を見る目はあるつもりさ。ナイスネイチャ嬢から君の評判も聞いたし、世間の君の評価も調べてある。

 別に付き人になれという意味ではないさ。他の学園のウマ娘たちと同じように接してくれればいい。世間知らずの箱入り娘に世の中の厳しさと言うものを教えてあげてくれれば構わない」

 

 エアグルーヴはその言葉を真っ向から受け止めた。

 

「言われずとも、学園に来るというのならどこの誰であろうと区別するものか。

 女帝として、貴女の妹君も導いて見せよう」

「……ああ、ありがとう。感謝するよ朱の眼差しの君よ」

 

 こうして、かの姫君は日本を発った。

 そして彼女の宣言通り、春には海外の王族が留学生として編入してくることとなり、エアグルーヴがルームメイトとして受け入れた。

 渡り鳥の置き土産が日本の空でどんな軌跡を描くか。それはまた別のお話。

 

 なお、

 

 エアグルーヴの様子が妹を通して筒抜けになるとは知る由もなかった。

 

 






 アプリのストーリー最終章を見た感想ですが、
 このネタは使えるなと思いました(使いこなせるとは言っていない)。
 

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