シニア級〇年目のライスと朴念仁系お兄さまと時々同期や後輩の話 作:ブルーペッパー
今回で連日投稿は一旦終了します。また書き溜め期間に入ります。
【番外3】お兄さまへのQ&A回答
27話で募集した質問に対する回答です。
回答について以下の点ご注意ください・
・あくまでお兄さま視点での回答になります。
・質問文はQ&A方式の都合上、いただいたものから多少改変しております。
趣旨は変わりないはずです。
・お兄さまの元ネタである騎手のリアルエピソードは一切関係ありません。
Q.現在チームで担当しているウマ娘達のレース内外問わず評価している点や好きな所は?
A.とりあえず全員に共通しているのは夢とか目標のために一生懸命なところですね。まあこれは
ライスの場合は一番長く一緒にいるので、私をトレーナーとして成長させてくれた子です。評価しているところや好きなところと言われると、もう全部としか言いようがないですね。彼女がいなければ今の私はいないでしょう。そして今も変わらず、いつも私を支えてくれています。チームとしてもお姉さんとして後輩の面倒を見れてくれているので、チームの大黒柱ですね。
グラスだと強いメンタルでしょうか。力及ばずケガで春シーズンは泣かせてしまいましたが、腐ることなくトレーニングに励んでいます。一見おっとりしてそうに見えてチームでは特にレースに向けた熱意のある子なので、その想いにトレーナーとして応えてあげたいです。
エルはポテンシャル、潜在能力という意味ではチーム一ですね。経験を重ねて成長すればどんな舞台でも活躍できると思います。性格も明るくてチームのムードメーカーですね。最近は新しく入ったメンバーとも積極的にコミュニケーションを取ってくれていますし、上と下を繋ぐ橋渡しの役割も率先して引き受けてくれています。
デジタルは芝とダート両方が走れる適性とどちらも走ろうとするモチベーションでしょうか。適性はエルも負けないくらい広いですが、主戦場を絞らず両取りしようとするのはデジタルくらいでしょう。当然その分大変なのですが、本人も研究熱心で自分の夢に邁進しています。
ドトウは根性というか、とにかく諦めないところですね。チームにいるのでライスやグラスたちと一緒にトレーニングする時があって、当然デビュー前のドトウにはキツい時もあります。でも彼女の方から諦めたり弱音を吐いたことはありませんね。この意志の強さは必ず良い結果につながると信じています。
以上、長くなりましたがこんなところですかね。
Q.トレーナーとして笑える失敗談はありますか?
A.まあ人づてで聞いたり、過ぎたことだから笑えるという意味では。
レースで担当を応援しているつもりが、似た毛色の別の子を目で追って応援していたとか。
担当が複数いて、同日のレースに出る時渡すゼッケンを間違えてしまったりとか。
スカウトに熱心するあまり不審者扱いされたりとかでしょうか。
え? 私がやらかしたのはどれか?
…………最初のです。はい。
「………………」
「ラ、ライス先輩の目が笑っていないデス……」
「やってしまったんですね……」
「別に気にしてないもん……」
Q.引退している方も含めて、交友のあるトレーナーや尊敬しているトレーナーはいますか?
A.尊敬しているのは師匠、先代のマルカブトレーナーですね。あの人にはトレーナーとしての全てを叩き込んでもらいましたし、ライスと出会うこともなかったでしょう。
他には六平さんはじめ、ベテランの方々は指導の様子を見て学ぶことが多く、どなたも尊敬しています。
あとは……特に名前を上げるならリギルの東条トレーナーですね。あれだけ多くのスターウマ娘を育て上げているわけですから。
交友がある人というとミホノブルボンを担当する黒沼トレーナー、カノープスの南坂トレーナーとか。担当ウマ娘を通して交友がある方が多いですね。
同期は交友というよりライバルって関係ですね。険悪なわけではないですが、あまり慣れ合う感じではないです。
Q.マイルより長距離の子の方が育成するのが得意、という感じで育てるのが得意な距離はありますか?
A.んーマルカブは色んな距離適性の子がいたので、ズバリこの距離って偏ったことはないですね。
一応、どの距離でも重賞はとっていますし。
……でも私のトレーナーとしての最初の担当はライスなので、長距離ってことになるんですかね。
※作者注
質問受付は締め切っていないので、もしも追加があれば活動報告へお願いします。
【番外4】彼女たちの企み
日々、夏の暑さが迫ってくるのを感じる中、エアシャカールは空調の効いた自室で自分のPCと向き合っていた。
画面に現れては消えていく数字の群れ。彼女が集めてきたウマ娘たちの筋力や走力などのデータだ。
それらを自作のプログラムソフトに入力、多様な条件でのシミュレートを行い自分に活かせるものを抽出していく。
明確な数字と確かなデータを基に効率的なトレーニングメニューを定める。彼女は数字とデータの信奉者なのだ。
「…………」
廊下からノックされた。が、エアシャカールは応対しない。
今日は誰かと会う約束はしていない。
重要な件なら声を上げて呼ぶだろうがそれもない。
もっとも、そんなことまでしてエアシャカールを呼び出すのは寮長か、最近やたらと絡んでくるお姫様くらいだろう。
ルームメイトに用があるという可能性もあるが、その同室のメイショウドトウは今留守だ。夏合宿に向けて他のチームメンバーと買い物に行っている。
なので、結局ドアの向こうにいる誰かは空振りなのだ。
いないの一言を伝えるためにわざわざ作業の手を止めるつもりはなかった。
少しすれば来訪者も諦めて帰るだろう。返事があるまで立ち尽くすようなやつは知らん。
「やあやあ、お邪魔するよシャカール君」
「………………はァ」
押し入ってくる非常識なやつがいるのはさすがに想定していなかった。
「勝手に入ってくるンじゃねえよタキオン……!」
「そう思うなら施錠することをお勧めするよ。もっとも、またドトウ君が鍵を失くして締め出されることが無いように鍵を開けておいてあげる優しいシャカール君には難しいかもしれないがね」
「無駄口叩いてんじゃねえ。 さっさと用件だけ言って失せろ……!」
大抵の者なら委縮してしまうだろう鋭い言葉と眼光。だがアグネスタキオンは怯むどころかその反応が面白いと言わんばかりだった。
「ま、君の研究の時間を奪うのも心苦しいし本題に入ろうか。
……単刀直入に聞くが、シャカール君は夏季休暇の予定は? 帰省とか旅行とかするのかい?」
「ねェよ。どっちもな……」
エアシャカールは実家との折り合いが悪い。
旅行、景色だの昔の建物だの料理だのを目的に遠出するのも趣味ではない。
学園がバカンスのようなリクリエーションを用意しているようだが興味はなかった。
「それは結構。では提案だが、私と一緒に夏合宿に行かないかい?」
「……それは、学園が毎年夏にやっている合同合宿のことか?」
「勿論だとも。まさか私と君で楽しくキャンプをするとでも思ったかい? 自慢じゃないが、アウトドアではビックリするほど役立たずだぞ私は!」
知るか、とエアシャカールは切って捨てた。
「あれは担当トレーナーがついたりチームに入ったやつ、デビューの見通しがたったやつしか参加できねえだろ。……まさか、お前の担当になりてえなんて頭湧いたやつが現れたのか?」
「いいや、残念だがそんな都合のいいモル……波長が合うトレーナーはなかなか見つからなくてね」
「だったらどうすンだ。学園も合宿の参加違反は本気で取り締まる。門限破りや授業放棄とはレベルが違ェぞ」
トレセン学園は仮にも名門校だ。名家とされる歴史ある家柄のご令嬢や財閥のお嬢様が多く通う。
そのため生活態度を律する校則は多いし、常習的に違反すれば退学勧告もありうる。
一方でレースという勝負の世界への入口のため、結果さえ出せば大目に見てもらえる風潮───これは是正すべきという声がよく上がる───もある。
アグネスタキオンもエアシャカールも、我が道を往く無法者である故、校則無視の常習犯だ。
門限を破ったり、怪しい実験をしたり、消灯時間後に外出したり、怪しい実験をしたり、教官の指示を無視したり、怪しい実験をしたり。
厳しく非難の目を向けられる彼女たちだが、模擬レースで周囲を圧倒することで大目に見られてきた。
「当然、こっそり忍び込むのさ!」
実質ノープランな発言に、エアシャカールはため息すら出なかった。
「しかし、シャカール君は門限や消灯時間は気にしないくせに、こういうのは律儀に守ろうとするんだねぇ」
「形骸化した、上辺だけの規則を守る意義が理解できねえだけだ。
でも合宿は違えだろ。アレは篩だ。出来るやつと出来ねえやつを合宿参加の可否で分けてンだよ」
参加できなかった者が来年こそはと奮起すればよし。変わらずにいて折れて学園を去るならそれもまたよし。
それを見れば参加した者もせっかくの機会を無駄にはしないだろう。それが学園の狙いだとエアシャカールは語る。
(う〜ん、ただ管理する人数を絞るためだけだと思うが……)
「学園もマジで取り締まる。違法参加したやつは昔から尽く学園へ強制送還だ。一つの例外もなくな」
集めた情報の中には、超高速で動く緑色の何かに捕まったという荒唐無稽なものまであった。
超高速うんぬんは情報としてはノイズだが、強制送還されたのは確かだった。
「ああ、忍び込むというのは少し言葉が足りなかったね。つまりは、どこかのチームにその期間だけ入れてもらうのさ」
「余計に無理だろうが! 正式に入るわけでもない、学園の鼻つまみ者であるオレとオマエを引き受ける? そんなお人好しの当てがあるってのか?」
「あるともさ! ……奇しくも、私たちには共通点が多い。
勝つためにトレーナーは不要だが、レースや合宿に参加するには例え置物でも必要であること。
学園からして問題児扱いで、深く干渉してくる者は少ないこと。
そして、ルームメイトが同じチームに所属していること」
そこでエアシャカールはアグネスタキオンが言わんとしていることを察した。
同時に、そのチームの情報を脳内から引っ張り出す。
「……勝算はあるンだろうな?」
「100%とは言えないがね。それでもリギルやスピカよりは可能性が高い。聞くところによると、随分と人が好いトレーナーのようだからね」
件のチームの実績を思い出す。
シニア級一人、クラシック級二人、未デビュー二人と小規模だが、デビュー済みのメンバーは全員GⅠウマ娘。
少数精鋭と言えば聞こえはいいが、話を聞くにスカウトにあまり積極的でないらしい。
「まあ向こうもタダでとはいかないだろう。私たちもそれ相応のものを差し出す必要がある」
「……研究成果を差し出すのか? オマエが?」
「私の研究はウマ娘に使うためのものさ。有用なら尚更ね……まあ、実証実験を兼ねているというのもあるが」
「………………」
エアシャカールの中で悪魔の提案に伸るか反るかの天秤が動く。
(……夏に大きなレースはねェ。学園に残ったところで合宿に参加できなかった連中しかいない。
有効なデータを集めるなら合宿に潜り込むのは有り。それに……)
PCの中で動き続ける
(オレ以外のやつに対してどの程度の精度を出せるか、試してみるのも悪くないか)
天秤は傾き、エアシャカールの腹は決まった。
「向こうを言いくるめるのは任せていいンだろうな?」
「任せ給えよ。シャカール君こそ、出し惜しみは無しで頼むよ。これは正当な取引なのだから」
「テメェの方こそ、実験とか言ってトンチキな薬持ってくるンじゃねェぞ」
ああ、と頷く共犯者を訝しみつつ、エアシャカールの口角は上がる。
今年の夏は、少し楽しくなりそうだ。
【番外5】王者が行く道
時は遡り、春のマイル王者を決めるとされるGⅠ安田記念。
そんな晴れ舞台であるというのに、天候には恵まれず大雨となった。
超不良バ場とまで呼ばれたコース。多くの出走ウマ娘がぬかるみや濡れた芝に苦戦する中、一人のウマ娘が真ん中を突き抜けるように走っていた。
『タイキシャトル! タイキシャトルだ! 不良バ場もなんのその、ついに香港からのダービーウマ娘を……捕えた! 捕えたぞ!
そのまま抜けた! 抜けた! 抜けた!
タイキシャトルが今一着でゴール!!
激しい雨の中、マイル王者の誕生です! もはや国内に敵は無し!!』
昨年のマイルCSに続くマイルGⅠ制覇。短距離でサクラバクシンオーに破れたものの、マイル部門において彼女が最強を冠することに異を唱える者はいなかった。
空が分厚い雲に覆われ、雨が降り続くレース場にタイキシャトルを称える声がいつまでも響いていた。
◆
「うう〜〜……」
「なんだいなんだい、せっかく勝ったってのにマイル王様は随分ご機嫌斜めじゃないか」
レース後、唸るタイキシャトルの様子に、彼女の髪をドライヤーで乾かすヒシアマゾンは首を傾げた。
「……バクシンオー、出てきませんデシタ」
「ああ〜……」
楽しみが先延ばしにされた子供のような声。思わずヒシアマゾンは天を仰いだ。
「いや仕方ないだろう。バクシンオーは今中距離に挑戦中。出るのも宝塚記念だって、おハナさんも言ってただろ?」
「宝塚記念っ!?」
金にも見紛う栗毛の尾が跳ねた。
やばっ、とヒシアマゾンが己が失言を悔いるが遅い。
「だったらワタシも宝塚記念に……!」
「ダメよタイキ」
要望は傍らで聞いていた東条によって一刀両断された。
タイキシャトルの耳も尾も垂れ下がる。
「おハナさ〜ん……」
潤んだ瞳でトレーナーを見るタイキシャトル。
必殺、上目遣いでのお願いだ。
「そんな捨てられそうな子犬みたいな顔してもダメ。有馬記念の時にもう長い距離はいかないって言っていたわよね?」
「そ、そうデスガ~~~!」
やれやれと頭を振る東条。
サクラバクシンオーがタイキシャトルにとってライバル視できる貴重な存在なのは分かるが、だからと言って向こうのようなハチャメチャなローテーションを真似させる気はない。
「もっと建設的な話をするわよ。タイキ、次のレースだけど……」
「気が早いなおハナさん。ついさっきレースが終わったばかりだろう」
「今日のレースを見て出走を決めたのよアマゾン。あの不良バ場で、向こうの芝にも適性があると確信したわ」
「向こう……?」
首を傾げるヒシアマゾン。
しかしリギルのメンバーの中には察する者もいて、まさか、と呟く声があった。
「GⅠジャック・ル・マロワ賞、フランスにおけるマイル路線の最高峰よ」
「フランス……欧州遠征!! タイキさんが!?」
リギルのウマ娘から驚愕の声が上がった。
欧州はウマ娘レースの本場。日本のレースプログラムも多彩な影響を受け、今日のトゥインクルシリーズに繋がってきた。
故に、欧州遠征、欧州GⅠ勝利は日本のウマ娘レース関係者全員の悲願でもある。
ジャパンカップをはじめとする国際招待競走も、日本のウマ娘たちが世界――特に欧州ウマ娘――を相手にどこまで通用するか確かめる意図もあった。
そんな舞台に、リギルのタイキシャトルが挑むのだ。
「タイキ、スプリントで負けたことが悔しいのは分かる。リベンジしたい気持ちもね。
……でも所詮、サクラバクシンオーは国内王者よ」
鼓舞するように東条が告げる。
「貴方が挑むは世界のマイル王。世界の頂点を獲れば、向こうの方から再戦したいと言ってくるわ」
「本当デスカ!? そのレースに勝てば、バクシンオーとまた走れますか!?」
「ええきっと」
タイキシャトルがFUUU! と興奮の声を上げる。
彼女の意識が海外へ向かったことに東条は胸を撫で下ろした。
海外遠征は千載一遇のチャンス、少なくともその場にいないライバルが気になって力を発揮できないということは回避できた。
「ジャック・ル・マロワは八月の真ん中だ。向こうの環境に慣れることを考えたらすぐに発つのか?」
ナリタブライアンが計画について聞いてきた。
彼女の言う通り、日本と欧州では気候から芝の状態まで違う。万全を期すのなら長期の遠征も考えられた。
しかし、東条の考えは違っていた。
「タイキの場合は慣れた環境でギリギリまで調整した方が良いと思う。だから出発は七月中旬以降の予定」
「合宿中か……帯同するのは? おハナさんはついて行くとして、タイキと二人だけのつもりか?」
「ちょうど同じように遠征で渡仏予定のウマ娘がいるからそちらにお願いするつもり。適性距離も近いから向こうでも何度か一緒にトレーニングするかもしれないわね」
「そうか……忙しくなるな」
「ええ、しばらく私はタイキの方に力を入れることになるから、チームの方は頼むわよブライアン」
「ああ、アマさんとフジに言っておく」
「あ・な・た! に言っているの!」
様々な思いを胸に、それぞれの夏が始まる。
春シーズン終了。次回から夏合宿に入ります。
あとアンケート入れてみました。興味あればぜひ。
どの結果になっても今後の展開に大きな変化はありません。夏合宿中のイベントが増えるだけ。
また、結果がどうなっても特定キャラが不幸になるとか、険悪になるとかはありません。
23話でデジタルが描いたアレが夏合宿でグラスに
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バレる
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バレない
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バレないけどライスにだけバレる
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バレないけどエルにだけバレる
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バレないけどトレーナーにだけバレる