シニア級〇年目のライスと朴念仁系お兄さまと時々同期や後輩の話 作:ブルーペッパー
あと今回は今後の布石的な話で、ちょっと短いです。
なので、感想や活動報告にあった質問の回答も載せておきます。
特に興味ないという方はスルーしてかまいません。
Q.35話 ブルボン見送りには学園を離れたりしたけどライスから連絡受けて見送りに来たって娘もいる?
A.少なくともライスの同期には、いま学園にいるいない拘らず全員声かけてますね。そこから都合つく子が集まってくれました。
Q.35話 黒沼トレーナーはタイキ達を引率してそのままブルボンと海外で活動って流れなんだろうけど担当してる他のチームの娘はどうしたんだろう
A.黒沼トレーナーはチーム組めるほど担当はいませんが、移籍を希望する子は他のトレーナーやチームに引継ぎしました。引き続き黒沼トレーナーの指導を求める子は、タブレット使ったりしてリモートでトレーニング見ることになるでしょう。
黒沼トレーナーは拠点こそ海外に移しますが、定期報告とかでたまに学園に戻ってくるので、その時しっかりトレーニング見ることもできますね。
Q.42話 エアグルーヴはスズカさん達について行って病院とのあれこれやった後はどうしてたの?
A.エアグルーヴは引き続き病院で裏方に徹してました。ライブ忘れて病院まで来ちゃったことへの彼女なりのケジメということで。
Q.トレーナーと担当ウマ娘間で、オフの際は結構一緒に行動したりしますか?また担当ウマ娘のオフでの意外な一面を見たことがあれば言える範囲でお願いします
A.毎回ではないですが、ウマ娘側から誘って一緒に行動することはあります。マルカブの場合みんな趣味がバラバラなので二人で行動することが多いですね。意外な一面というか、アプリでいうお出かけイベントは起きているでしょう。
Q.仮装喫茶の仮装はゲームでのそれぞれのもう一つの勝負服?
A.その通りです。偶然にも5人とも別衣装あったので。
【番外7】夏の答え
その夏、ミホノブルボンは渡欧した。ダービーウマ娘らしく時代の代表としてではなく、次代を見据えた地盤固め役として。
決して華々しい出立ではない彼女は改めて世界という壁の高さを知る。
言葉に文化、環境の違い。特にレース場の違いは大きかった。
日本のように整地されたコースではなく、良くも悪くも自然の立地を活用したコースが多い。中距離なのにカーブが一回しかないようなレースもある。芝も日本のものよりも背が高く、水はけが悪い。
知識としては知っていた。しかし、いざ走ってみるとその差は歴然だった。
コンディションを完璧に整えたうえでレースに臨んでもバ場は悪く、日本のような走りは出来なかった。
欧州のレースに挑み始めてついに十月も終わる。ミホノブルボンは未だ勝利を収められずにいた。
日本にも名が伝わるGⅠ戦線への挑戦など夢もまた夢だ。
挑み続けて改めて理解する。
夏のGⅠ、シーキングザパールとタイキシャトルの連勝はまさしく奇跡にも近かったのだ。いや彼女たちの能力を疑うつもりはないが、距離に天候、当日のバ場にレース展開、様々な要因が積み重なってのものだったのだ。
あの夏の連勝で、日本のウマ娘たちのレベルは本場の欧州に届いたと思ったが違う。
挑むだけの力は持った。しかし、勝ち負けのレベルにはまだ至らない。欧州レースで勝利を独占する怪物たちの足元にも及ばなかったのだ。
そしてその一方で、ミホノブルボンは頭の片隅で考えてしまう。
───もしも、欧州に来たのが自分でなかったとしたら……?
王や怪物と称される彼女たちだったらどうだったのか。あっという間に重賞を制覇し、GⅠ戦線に乗り込んでいたかもしれない。意味のない想像だが、敗北の度に浮かんでくる。
渡欧時にかけられた期待。ダービーウマ娘としての矜持。上げられない成果。孤独感。あらゆる要素がミホノブルボンを追い込んでいく。精神に暗い暗い影が差していく。
「こ、これは……!」
転機となったのは、黒沼が渡してきた一枚の紙だった。ネットニュースの記事をプリントアウトしたものだ。どういうわけか電子機器に触れると故障を引き起こすミホノブルボンはこうしないとネット上の情報を拾えない。
記事には日本のウマ娘レースのものだ。記事タイトルにあるレース名から、もうそんな時期かと想いを馳せた。
そして勝者の名前を見た瞬間、ミホノブルボンは雷のような衝撃を受けた。
紙を持つ手がふるふると震えた。
視線が繰り返しその名前をなぞる。見間違いではない。なによりも、ゴールの瞬間を切り取った写真に写る黒い勝負服と胸元のバラを見間違えるはずがなかった。
「ライスさん……やはり、やはり貴女は凄い……!!」
印刷された記事は、ライスシャワーが天皇賞(秋)を勝ったことを報じたものだった。
レース中のサイレンススズカの故障、ゴール後にライスシャワーも搬送されたという文にギョッとしたが、どうやら二人とも大事は無かったようだ。
記事を一通り読み終えて、ミホノブルボンは感嘆の息を吐く。
春シーズン、ライスシャワーとミホノブルボンを揃って打ち破ったサイレンススズカ。絶対的とも言われたあの逃亡者を、ライスシャワーは捕まえたのだ。
───挑み続けて、サイレンススズカに勝てますか?
夏。あの浜辺でライスシャワーにかけた問いを思い出す。あの時は出せなかった答えを、ライスシャワーは見事示したのだ。
菊花賞で自分に勝ったように、春の天皇賞でメジロマックイーンに勝ったように。彼女はまた絶対的な存在に対し、勝利の可能性を証明した。
その事実が、友としてライバルとして、途方もなく誇らしい。
「貴女は、今も私のヒーローです……!」
心臓が早鐘を打つ。気落ちしていたはずが、今は興奮で熱くなっていた。
四肢に気力が満ちる。海の向こうで、友が栄光を打ち立てたのだ。
ライバルを名乗る自分がここで腐っていてどうする。
ミホノブルボンが歩き出す。負けが続いて落ち込んでいた彼女はもういない。
自分が彼女の活躍を知ったように、彼女にも自分の活躍が伝わるように。
少し先、彼女が欧州重賞を制することが日本でも報じられた。
【番外8】女帝の進む先
時期は年も明けて少し経った頃。ようやくサイレンススズカのトレーニングが再開された。
久方ぶりに地面を踏む感触に、サイレンススズカは思わず笑みを零した。
秋の天皇賞で負ったケガは彼女の選手生命こそ脅かさなかったが骨折は骨折。治療からリハビリ、そして今日にいたるまで、レース中の無茶もあってかトレーナーだけでなくチームメイト、友人たち総出で監視された。
「無理をして退院や復帰が遅れたらどうする。これからも走るというのなら、今だけは大人しくしていてくれ」
皆を代表してそう言ったのは友人でありライバルでもあり生徒会副会長だった。
「そんな、まるで普段の私が大人しくないみたいじゃない」
「これまで、何回朝練に夢中で遅刻したか教えようか?」
「………………天気が良かったのが悪いのよ?」
考えた末に出た言い訳は、ため息とともに切り捨てられた。
そんなエアグルーヴについて、ある噂が流れたのはつい最近だった。
「エアグルーヴ……」
それを確かめるべく、学園中庭の花壇で水やり中だった彼女にサイレンススズカは話しかけた。
エアグルーヴの視線は花壇に向いたままだ。
「スズカか、どうかしたか?」
「あの噂は本当なの?」
「噂か……。どれのことだ?」
「トゥインクルシリーズを引退するっていう話よ」
それか、と特に感情もなく言うエアグルーヴへさらに問う。
「ドリームトロフィーにも行かないって聞いたわ」
「…………本当だ」
「どうして?」
反射的に言葉が出た。
ドリームトロフィーリーグはトゥインクルシリーズで功績を残したウマ娘が行くさらに上のステージだ。
エアグルーヴが敬愛する皇帝シンボリルドルフに、同じ生徒会であり三冠ウマ娘のナリタブライアン。オグリキャップにタマモクロス、スーパークリークという伝説的メンバーが介する大レース。エアグルーヴがそれを目指さないとは思わなかった。
「エアグルーヴの成績なら行けないということは無いでしょう? 皆の手本になるっていうのなら行くものだと思っていたわ」
「確かに誘いはあった。トレーナーからもドリームトロフィーへの移籍を勧められた。しかし……」
一度口を閉じる。
少し間花に水をやる如雨露から水が出る音だけが響き、そして女帝の口がまた開いた。
「トレーナーを目指そうかと思う」
その言葉は、思わず目を見開くほどの衝撃だった。
「………トレーナー? エアグルーヴが?」
「ああ。学科を移り、進学して、いずれ試験を受ける。資格を得たら今度はトレーナーとしてまたこの学園に戻る。……それが出来たらいいと思っている」
中央のトレーナー資格は国内屈指の難関資格だ。学園でも優等生なエアグルーヴが無理とは思えないが、それでも競争者を続けるよりも困難な道だ。
「どうして? と言いたそうだな。……きっかけはお前だよ」
「私?」
「ああ。正確に言えば、スズカだけじゃない。ライスシャワーにエルコンドルパサー、今年活躍したウマ娘たちの姿を見たからだ。
……スズカの大阪杯に宝塚記念。そして秋天と、スズカを打ち破ったライスシャワー。エルコンドルパサーのジャパンカップ。皆、鮮烈な走りだった。そして私にはできない走りだった」
「そんなことは───」
無い、と言いかけた口を閉じる。
天皇賞(秋)のライスシャワーと自身が見せた走りが異質だったことは理解していた。そしてサイレンススズカが走っていないジャパンカップを語ることは出来ないが、いずれもエアグルーヴが敗北したレースだ。
「そう暗い顔をするな。……私に皆のような走りはできないが、より近くで見たのも私だ。だから、その走りを伝えることは出来たらと思ったんだ」
「だからトレーナーに? 教えるだけなら、エアグルーヴは今も下級生の子たちにしているじゃない」
「私が教えているのは基礎的なことに過ぎん。より専門的な、それこそ個々人に合わせたメニューになると知識のあるトレーナーの方が良い」
如雨露から水が止まる。
エアグルーヴがようやくサイレンススズカを見た。その表情は決して敗北に打ちひしがれたものではなく、晴れ晴れとしていた。
「いつか、お前たちのような……お前たちにも負けないウマ娘を育てて見せる。それが今の私の夢だ」
「エアグルーヴ……」
「そのためにもお前には頑張ってもらわんとな。未来の後輩たちに話したら、誰だそれ? などと返って来ては目も当てられん」
「ふふふ……そうね」
良かった、とサイレンススズカは安堵した。
気高き友人は、度重なる敗北に心折れたわけではなかったのだ。
自分や、他のウマ娘たちの走りに光を見出し、それを後世に伝える道を選んだのだ。
「でも、エアグルーヴも早くトレーナーになってね。皆が私のことを覚えていてくれるうちに」
「たわけ。お前のような変わり者、そうそう忘れられるものか」
「うそでしょ……フクキタルならともかく、私は普通よ」
「それはない。絶対にない」
しばらく、花壇から普通とは何かを論じる声が響いていた。
◆
数日後、エアグルーヴは真剣な表情で自分のスマホを睨みつけていた。
スマホの画面は電話帳を表示しており、名前と連絡先の一覧が並んでいた。
生徒会副会長であり、リギルのGⅠウマ娘でもあるエアグルーヴは何かと外部の者との接点が多い。必然的に登録された連絡先は膨大だった。
そのうちの一つに、いざ電話を掛けようとして、しかし躊躇いもあって懊悩としていた。そも無理やり押し付けるような形で登録された番号だ。消しても良かったが、相手が相手だけに実行できなかった。
「……………どうしたものか」
エアグルーヴがこうも悩んでいるのは、彼女なりのケジメというか恩返しであった。
サイレンススズカを、理屈と手法はどうあれライスシャワーは救ったのだ。サイレンススズカの友人として、何か返してやりたかった。
とはいえチームも得意な距離も違うライスシャワーへ直接的に返せるものは少ない。そこで聞いたのが、エルコンドルパサーの海外遠征だ。
ジャパンカップで並みいる強豪を相手に勝利しているあたり、その資格も実力も持っている。だが彼女が所属するチーム・マルカブは遠征のノウハウがない。無論、トレーナーもその問題を放置しているわけがなく方々で動いていることは聞いていた。
「彼女がマルカブではなく、リギルにいればもっとスムーズだったろうな」
無粋な仮定だった。しかし昨年のタイキシャトルの活躍もあり、そう思わずにはいられなかった。
そして何の因果か、エアグルーヴには彼女たちの助けになるだろう伝手が偶然にもできていた。
問題は、そこに連絡を取ることに踏ん切りがつかないことだった。
向こうの態度に悪意は感じられなかった。おそらく、お願いすれば快く受け入れてくれるだろう。
しかし、その結果とても面倒なことが自身に降りかかることも理解していた。
恩を返すためとはいえそこまでするのかと、女帝の自制心が待ったをかけているのだ。
「ええい! 電話一つ臆するなど、女帝の名が廃る! 行くぞ!」
意を決して電話を掛けた。
一回、二回。三回目の音が鳴り終わる前に、相手が出た。
『やあ。まさか君から連絡をしてくれるなんて一足早い春が訪れたかのようだ』
早速、頭痛がしてきた。
電話相手、一体なにサドスキーなんだ……。
また書き溜めに入りますので次回更新までしばらくお待ちください。
バレンタイン回でのイベント相手は?
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ライスシャワー
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グラスワンダー
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エルコンドルパサー
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メジロマックイーン
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サイレンススズカ
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スピカトレーナー