シニア級〇年目のライスと朴念仁系お兄さまと時々同期や後輩の話   作:ブルーペッパー

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 筆者はディープボンド君を応援してます。




54話 ライスたちと天皇賞(春)

『晴れ渡る京都レース場には多くの観客が詰めかけています。彼らの目的はもちろん、本日のメインレース天皇賞(春)!

 現役ウマ娘の頂点が決まると言っても過言ではない一戦。果たして春の楯を得るのはどのウマ娘か!?』

『出走するウマ娘も昨年を超える実力者揃いとなっております。

 やはり最注目はメジロマックイーンとライスシャワーのステイヤー対決でしょうか!』

『しかも、ライスシャワーは今日がトゥインクルシリーズのラストラン! その勇姿を一目見ようと足を運んだファンも多いのではないでしょうか』

『しかし優勝候補は二人だけではありません。クラシックで激闘を繰り広げた黄金世代の三強GSS! 揃って上の世代との激突も見所ですね!』

『スペシャルウィークはメジロマックイーンと、グラスワンダーはライスシャワーと同じチームですし、同門対決にも注目ですね』

 

 

 

 

「お兄さま、みんな、どうかな……?」

 

 わああ……! と控室に感嘆の声が満ちた。

 ライスの控室で、彼女の勝負服を見ての反応だった。

 

「ああ、似合ってるよライス」

 

 今日ライスが着ているのはいつもの黒い勝負服ではない。去年に年度代表ウマ娘に選ばれたことで贈呈された新しい勝負服だ。

 ウエディングドレスをモチーフとすることは変わらないが、薄い青色のドレスだった。髪は三つ編みにし、いつもの帽子も今日はヴェールのようなヘッドドレスに変えている。

 いつもの勝負服が静かな夜だとするのなら、今日の衣装は穏やかな早朝のようだ。

 

「せっかくもらった勝負服なのに、着て走るのが最初で最後になっちゃってもったいないかな?」

「ドリームトロフィーリーグでいっぱい着ればいいよ」

 

 改めて言葉にするとこみ上げてくるものがある。

 今日が、ライスのトゥインクルシリーズで走る最後のレースなのだ。

 勝負の世界は厳しいものだが、叶うのなら───

 

「ライス先輩」

 

 私の思考を斬り払う、張り詰めた声。音の方を見れば、同じく勝負服に着替えたグラスがライスを真っ直ぐに見ていた。

 ライスの新勝負服お披露目で弛緩していた空気に緊張が走る。

 

「先輩と同じレースを、最後のレースを共に走ることができて光栄です」

「グラスさん……」

「ですが、胸を借りるなんて言いません。私は……貴女に勝ちたい!」

 

 視線が交錯し、火花が爆ぜた。

 普段は先輩後輩として仲の良い二人。だが今日この時ばかりは、二人の間にあるのは和やかな友愛ではなく、激しく燃える闘志であった。

 

「……うん、いいよ。ライスも本気で走るから、グラスさんの本気を見せてね」

「二人とも互いを意識するのはいいけれど、今日のレースはいつも以上に強敵ぞろいだ」

 

 気づけば口を挟んでいた。

 

「他のウマ娘も二人をマークしてくる。互いを気にしすぎて視野を狭めないようにね」

「うん!」

「はい!」

 

 お辞儀をして、グラスは先に控室を出ていく。

 少し間を空けてライスも地下バ道へ向かう。

 

 ……どちらに勝って欲しいのか。私は胸の奥で宿った想いを握りつぶす。

 ライスのラストランであり、象徴である天皇賞(春)を勝ち有終の美を飾って欲しいと思う。一方でグラスのシニア級になっての初GⅠ、勝って昨年の春の悔しさを払拭して欲しいという想いもあった。

 チームトレーナーとしてどちらかを贔屓してはいけない。

 

「頑張れ。二人とも……」

 

 どちらの勝利も祈る。無事に帰ってくることを祈る。つり合った天秤を崩さぬように、慎重に。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ライスシャワーとグラスワンダー。地下バ道を歩く二人へ、他のウマ娘たちが視線を向ける。

 片や前年覇者、片や菊花賞ウマ娘だ。トレーナーが言っていたように意識されるのは当然であった。

 

「ライスさん」

 

 声をかけられ、ライスシャワーの脚が止まる。グラスワンダーは少し迷ったが、少し後ろで脚を止めた。

 

「マックイーンさん……今日は、そっちの勝負服なんだね」

「ええ。いつか貴女とまたこのレースを走ることがあれば、その時着るのはこの勝負服と決めていましたから……」

 

 メジロマックイーンの勝負服は、いつもの黒い勝負服ではなく、全身が白の勝負服だった。

 スカートからパンツスタイルに変わり、髪飾りとして小さなシルクハットをつけていた。彼女が年度代表ウマ娘に選ばれた時に贈られた勝負服だ。

 そして、三連覇のかかった天皇賞(春)で、ライスシャワーに敗れた時の衣装でもあった。

 

「決意表明、ってことなのかな?」

「そう取っていただいて構いませんわ。……あの時とは立場が逆になりましたわね。貴女が王者で私は挑戦者。けれど家名に捧げた誓いは変わりません」

 

 バチリ、とここでも新たに火花が舞う。

 

「メジロに春の楯を。今年こそ、勝たせていただきます!」

「負けないよ、マックイーンさん!」

 

「おーおー、バチバチしてるねぇ。さっすが歴戦のスターウマ娘、私らなんか眼中にない感じかな~?」

「セイちゃん……」

 

 名ステイヤーの宣戦布告を傍で聞いていたグラスワンダーへ、セイウンスカイが声をかけた。

 

「まあセイちゃん的には~? 余所でバチバチしてもらってる方がやりやすいんですだけどね」

「……何が言いたいんですか?」

「いやー偶にはスポ根系を演じてもいいのかなって?

 ───先輩の方ばっかり見てると、足元掬われても知らないよ、グランプリウマ娘さん?」

「それは───」

 

 グラスワンダーが言い返す前に、セイウンスカイはターフへと向かっていく。

 葦毛の逃亡者の後ろ姿を見て、グラスワンダーは気づいた。

 線の細いはずのセイウンスカイだが、その脚は最後に記憶していたものよりも太くなっていた。

 

「グラスちゃん……!」

 

 スペシャルウィークが入れ替わるように声をかけた。

 その顔は真剣そのもので、いつもの親しい友人としての対面ではなかった。

 

「今日は負けないから!」

 

 言葉はそれだけ。ライバルとしての言葉だった。

 セイウンスカイの変化とスペシャルウィークの言葉で自覚する。

 今日のレースに強い想いを抱くのは自分だけではない。そして、自身は既に追うだけでなく、追われる立場でもあるのだ。

 

「ならば……それに相応しい走りをしないと行けませんね」

 

 レースが始まる。

 

 

 

 ◆

 

 

 

『今日は青空が広がりつつも、昨日の雨でやや重バ場でしょうか。最長距離のGⅠ、トゥインクルシリーズ春の大一番、天皇賞(春)。激闘の春を飾る大舞台、最強の証である春の楯を賭けた熱き戦いが今年もこの京都レース場で始まります。

 今年は過去最高のメンバーと言っても過言ではないでしょう! 十年、二十年に一度と言える逸材たちが集いました!

 

 王者ライスシャワーは本日がトゥインクルシリーズラストラン! この淀で見事有終の美を飾れるか!?

 青いバラへのリベンジなるか!? 名優メジロマックイーンの復活勝利を望む声も多いでしょう!

 二強対決なんてさせるものか! クラシックを沸かせた黄金世代が新時代を拓くのか!?

 歴戦の猛者たちが悲願の戴冠を為し、ウィナーズサークルで勝鬨を上げるのか!!

 

 出走者十二名、それぞれの譲れぬ想いと覚悟を抱いて今! 

 天皇賞(春)、スタートです!!

 

 出遅れはありません、各ウマ娘横一線の綺麗なスタート! 真っ先に飛び出したのは───皐月賞ウマ娘のセイウンスカイだ!

 メジロマックイーンが後を追って二番手! ライスシャワーは二バ身ほど開けて三番手に着きました。ダービーウマ娘のスペシャルウィークが中団に控えました。グラスワンダーはやや後方を位置取ります。最後方にはメジロブライトがついて縦長の展開となりました!』

 

 先頭を突き進み、一番にコーナーを曲がっていくセイウンスカイ。そのペースは3,200mのレースにしては速く、後ろを追うウマ娘たちの脳裏に同じ疑問が過る。

 

 ───最後までもつのか?

 

 そして各々の自答が浮かんでくる。

 菊花賞を思い返し、もつと断ずる者。もつが、菊花賞と同じ展開だ。最後に差し切るチャンスはあると様子見を続ける者。

 一ハロンの延長は大きい。今度はもたないと予測し脚を溜める者。もしも、という不安にペースを僅かに乱す者。

 そして、それぞれが有名な逃げウマ娘たちを思い出す。

 ツインターボ、ミホノブルボン、サイレンススズカ。果たしてセイウンスカイは如何なるものか。

 思考を巡らせながら、十二のウマ娘がターフを駆け抜けていく。

 約三分間の死闘が幕を開けたのだ。

 

 

 

 ◆

 

 

 

(っひゃああ~~~~やっぱり逃げてると皆のマークがキッツいなあ!)

 

 二周目に入るころ、セイウンスカイは思わずボヤいた。

 一周目は各自の位置取りをキープした形で走り抜いた。その間、葦毛の逃亡者に襲い掛かるのは追走者たちからのプレッシャーだった。

 特に厳しいのはやはりライスシャワーとメジロマックイーンという二大ステイヤーだ。さらに奥にはスペシャルウィークにグラスワンダーも控えている。

 

(プレッシャーは凄いけど……ここまでは冷静に走れてる! ローレル先輩との練習は活きてる!)

 

 けれど、影響がゼロでは無かった。後からの圧で、これまでのように自分でペースを作れているわけではない。

 皐月賞で逃げ切ったセイウンスカイを知るウマ娘やそのチームメイトは、長距離でも逃げる彼女を警戒していた。

 

(自由には逃げさせてくれない……なら、今回は真っ向勝負だ!)

 

 まもなく二度目の登り坂がくる。

 

 

 ◆

 

 

 グラスワンダーは考える。仕掛け時はいつか、と。

 菊花賞では二周目の登り坂で勝負を仕掛けて勝った。他のウマ娘たちがその末脚を無警戒でいるとは思えない。安易に同じ手を使うのは躊躇われた。

 何より、ライスシャワーがいる。皐月賞以降はともに併せをすることは避けていたが、彼女の中にそれまでのグラスワンダーの末脚の時計は刻まれているはず。ライスシャワーに勝つためにはその予測を超える必要がある。

 偶然にも、スペシャルウィークも同様のことを考えていた。

 展開は菊花賞の時と似ている。だが同じ手が通用するとは思えない。そして、自身の前を行くメジロマックイーンを超えないといけない。

 

 仲が良く、尊敬するチームの先輩。その実力は確かで、その助言には幾度となく助けられた。

 

 だからこそ勝ちたい。貴女との日々で、こんなにも強いウマ娘が育ったのだと示すために。

 

 

 

 ライスシャワーは考える。一人逃げ続けるセイウンスカイをいつ捕らえるべきかと。

 タイミングを誤ってはいけない。仕掛け時を見誤れば後方に控える黄金たちに差し切られる。

 それだけではない。黄金世代や最強ステイヤーという目立つ看板に隠れているが、他の出走ウマ娘たちも歴戦の猛者揃い。一瞬の油断で春の冠は横から掻っ攫われる。

 既に先頭を行くセイウンスカイが一足早く坂を駆け上がっている。

 坂を上ればコーナーを回って下り坂だ。それまでに、射程圏内に捉えておかねば逃亡劇は完遂される。

 

(ブルボンさんの時は……)

 

 ライスシャワーは昨年の天皇賞(春)を思い返していた。

 あの時は最終コーナーからの下り坂を活かした加速で差し切った。果たして今回はどうか。

 セイウンスカイというウマ娘は、あのミホノブルボンに比べてどうか。

 スピードは、パワーは、スタミナは。かのサイボーグよりも上か、下か。それとも同格か。

 

「───ライスさん」

 

 思考を遮る声。少し前にいたメジロマックイーンが、僅かに視線をライスシャワーへ向けていた。

 

「勝負ですわ!」

 

 そう言って、ターフの名優は仕掛けた。

 それは刹那にも近い、僅かに見えた隙をついた仕掛けだった。

 逃げるセイウンスカイと追うウマ娘たち。勝つために思考を巡らせたが故にレースへの意識が微かに薄れたタイミングを刺したのだ。

 メジロマックイーンの加速に度肝を抜かれたウマ娘たちが後を追って位置を上げだす。

 追い立てられるように、ライスシャワーも、グラスワンダーも、スペシャルウィークも速度を上げざるをえなかった。

 レースの展開を、メジロマックイーンが支配した瞬間であった。

 

 

『客席の歓声に引っ張られるようにウマ娘たちが坂を上って来ました! 

 先頭は未だセイウンスカイ! けれどもすぐに後ろにはメジロマックイーンが来ているぞ! ライスシャワーは届くのか!? 黄金世代の二人は差し切れるのか!?』

 

 セイウンスカイが最終コーナーへ突っ込んでいく。が、仕掛けたメジロマックイーンがその差を縮めていく。

 

(やっぱり、マックイーンさんが一足早く仕掛けた分速い!!)

 

 決死に追うライスシャワーが臍を嚙む。一瞬の判断の差が、致命的な差となっていた。

 

(やっぱりマックイーンさんは強い! ……でも!)

 

 ライスシャワーには一つ、手が残されていた。

 即ち、“領域(ゾーン)”。

 サイレンススズカを差し切ったあの走りを再現できれば二人を抜き去ることが出来るかもしれない。

 が、未だ天皇賞(秋)以降再現出来てはいない。

 一か八かの勝負。あまりに無謀な賭けだった。

 

(それでも……負けたくない!)

 

 このラストラン、全てを出し切らずに終わるなど許せなかった。

 ライスシャワーが意識を深く集中する。

 負けないという意志、残った力の全てを注いだ末脚。勝利を届けたい相手(カレ)の顔を思い浮かべる。

 

 瞬間、時が緩慢になったようだ。全てがスローの世界で、ライスシャワーだけが普段通りに動けていた。

 

(これが───!)

 

 ついに知覚した“領域(ゾーン)”の世界。ライスシャワーは確かに、その走りを掴んだ。

 

 しかし、

 

 その後ろから、三条の流星が昇って来た。

 

『メジロマックイーンがセイウンスカイを捕えた!! ライスシャワーも来ている! ステイヤーの二強が黄金世代の逃亡者に追いついた!!

 そして、そしてきたあ!! スペシャルウィークとグラスワンダーがきたあああ!!! 

 さらに後ろからメジロブライト!!

 黄金世代の三強が並んだ!! 二大ステイヤーも負けられない!! 次代のメジロも決して後れを取らない!!』

 

 最後の直線で、六人が並ぶ激戦となった。

 既に全員がトップスピード。もはや精神力、気持ちのぶつかり合いであった。

 

「私が───!」

 

 名門の誇りに賭けて。

 

「私が───!」

 

 掲げた夢に誓って。

 

「私が───!」

 

 胸に秘めた想いを震わせて。

 

「勝つんだああああああああ!!!」

 

 六人の決死の咆哮が轟く。

 そして、抜けだしたのは──────

 

 

 

 ◆

 

 

 

「私は───」

 

 そのウマ娘が零した声にあったのは、憤りだった。

 世間の声、周りの声。誰も彼もが、彼女をとあるウマ娘たちと比較していた。

 仕方のないことだ。けれど決して納得できなかった。

 だから、見せつけると決めたのだ。

 

 自分がなんなのかを。

 

「私は───!!」

 

 吼える。

 

「ミホノブルボンの真似っこじゃない!! サイレンススズカの代わりじゃない!!」

 

 駆ける。

 

「セイウンスカイだ!! 勝手に格付けして、下に置くなこんにゃろおおおおおおおお!!!!」

 

 慟哭ともいえるその咆哮は、彼女の新たな次元への扉を開いた。

 

 

晴天の霹靂(タケミカヅチ)

 

 

 

 

『セイウンスカイだ! 

 セイウンスカイだ!! 

 セイウンスカイが逃げ切った!!

 

 まさに今日の京都レース場の上空とおんなじだ! 京都レース場今日は青空だ!

 京都3,200m、並み居る強豪を振り切って勝ったのは黄金世代のセイウンスカイ!!

 ───ああ!! 刻まれたタイムは3分13秒7!! レコード決着です! いえ、世界レコードです! 春の王者が、世界レコードを打ち立てました!!』

 

 

 

 ◆

 

 

 

 勝者が決まった瞬間、私がまずしたことは勝者を称える拍手だった。

 担当するウマ娘が負けたのだ。悔しさを露わにしたり、敗因を考えるべきなのだろう。

 それでも、私はまず勝ったウマ娘を称えたかった。

 ライスが勝った時は、それが無かったから。

 

 今日はライスのラストランだ。きっと多くの観客がライスの勝利を願っていただろう。

 けれど、どんなウマ娘もレースに勝つために努力し、その過程にトレーナーやファンの想いがあるのだ。

 セイウンスカイの勝利を望む声を、数で押し込めるようなことになって欲しくなかった。

 私の考えた伝わったとは思わないが、やがて大きな拍手が鳴り響く。

 セイウンスカイの名を皆が呼ぶ。青い空にコールが響き渡っていく。

 

「……ああ、それでもやっぱり、悔しいな」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 勝者に、刻まれた記録に興奮した観客たちを余所に、敗北を喫したウマ娘たちは冷静だった。

 コーナーから最後の直線にかけて競り合った六人はほぼ塊となってゴール板へ駆け込んだ。

 クビ差アタマ差ハナ差ハナ差クビ差。

 二着以降の着差はそんなものだった。

 ライスシャワーは息も絶え絶えに掲示板を見上げる。映し出された自分の番号、その上には別の番号が三つ灯っていた。

 

「四着、かあ……」

 

 二着グラスワンダー。三着スペシャルウィーク。そして五着はメジロマックイーン。

 二大ステイヤー対決と言われていたが、接戦の末に上位を黄金世代に制圧されていた。

 全力だった。油断も、ミスもなかった。全員が、己が持ち得る力の全てをつきこんだ結果だった。

 

「まったく、後進の成長は喜ぶべきですが……やはり、複雑な想いですわ」

「うん……そうだね」

 

 メジロマックイーンの言葉に同意する。

 ここで相手を称えつつも悔しさを吐露できるのは凄いな、とライスシャワーは思った。

 

「……そして、少し寂しくもありますわ。もう春の京都でライスさんを見ることは無いなんて」

「マックイーンさんはどうするの? まだトゥインクルシリーズを走る?」

「ええ。私が目指すのはメジロの栄光。ならばやはり狙うは天皇賞の楯。また、来年の春を目指しますわ」

 

 ウマ娘は走る意志がある限りトゥインクルシリーズに在籍できる。

 きっと彼女は言った通りに来年も、そのまた来年も走るのだろう。自分の中にメジロの誇りがある限り、この春を。

 

「そっか。……でも、またどこかで一緒に走れたらいいな」

「走れますわ。だって私たちはウマ娘ですもの。きっと、いつか……どこかで」

 

 そう言ってメジロマックイーンは去って行く。敗北を喫してなお、その気高さは陰ることは無かった。

 ライスシャワーは振り返る。

 栄光を手にし、声援を一手に受けるセイウンスカイ。勝者の背中を悔しそうに見る黄金世代の二人。

 それはいつかの自分や同期たちを見ているようで、彼女たち次代のトゥインクルシリーズを背負うのだということを理解した。

 それでも、

 

「やっぱり、勝ちたかったなぁ……」

 

 頬を伝う涙が、淀の芝へと落ちていく。

 

 こうして、ライスシャワーのトゥインクルシリーズ最後のレースは幕を閉じた。

 

 

 ライスシャワー トゥインクルシリーズ戦績

 

 33戦11勝

 

 主な戦績

 ××年 菊花賞

 ○○年、△△年、□□年 天皇賞(春) 計三回

 △△年 有記念

 □□年 天皇賞(秋) 

 

 GⅠ計六勝

 

 

 

 





 ハイ。
 いやハイじゃないが。
 多分、この決着に色々と言いたいことある方多いと思います。
 確かに有終の美は良い物ですが負けて世代交代というのも良いと思うのです。
 え?じゃあグラス勝たせろって? そこはほら、今後の展開もあるので……。許して、
 
 本作でライスがトゥインクルシリーズを走るのはこれが最後ですが、まだ走る予定はありますのでその時は応援してください。

 たった二話の更新でしたが、また書き溜めに入ります。
 次は宝塚までいけたらいいなー。
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