シニア級〇年目のライスと朴念仁系お兄さまと時々同期や後輩の話   作:ブルーペッパー

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皆さまいつも誤字報告ありがとうございます。

夏合宿だからイベント満載だぜ!と思っていたら前後のつながりが思った以上にグダグダになったので小ネタ集っぽくなりました。
いつもより短いです。いつか手直しするかも。

一応、後半は話が進みます。





8話 合宿中の特にオチのない話

 

●釣れぬなら、獲って見せようなんとやら

 (グラスワンダー、セイウンスカイ)

 

「むう……いっこうに当りが来ません。釣りとはなかなか難しいですね」

「私としては、グラスちゃんが餌にしてる虫とか平気なのが意外だなー」

「ワームでしたらなんとか……。というかセイちゃん上手いですね」

「こればっかりは小さいころからやってるからね……っとまたヒット」

「むむ……いえ、釣りは忍耐。ここはじっと耐えましょう」

「あれこれ試すから、せっかちほど上達早いって言う人もいるけどね。ポイント交換する?」

「んん…………お願いします」

 

「……あの、グラスちゃん」

「なんでしょうか」

「もう日が暮れるのでセイちゃん帰りたいのですが?」

「まだです。まだ、一匹も釣れていません」

「そういう日もあるって。夜に帰ったら皆心配するよー?」

「もう少し、もう少しだけですから……!」

「それ三回目だよ……」

 

「で、結局夜になってしまったと」

「申し訳ありませんでした」

「謝るのはセイウンスカイと、宿舎の皆にね。エルも心配してた」

「はい……」

「それと」

「…………」

「魚ありがとうね」

「……はい!」

 

 

 

●あのおみ足、前から揉むか後ろから揉むか

 (男トレーナー衆)

 

「やっぱりいいトモを見ると触らずにはいられないんだ」

「変態じゃないですか……」

「なんだと!? あんたらだって担当のトモ触るだろう!」

「一緒にするな」

「疲労の溜まり具合を見てるだけです」

「熱とか持ってると警戒しますよね」

「ああ、疲労を顔に出さないウマ娘もいるからな」

「正直になりましょ! 均整の取れた筋肉! ハリツヤのあるトモ! ここを見ないと強いウマ娘かなんて分からないって!」

「まあ、判断基準の一つであることは同意しますが……」

「だろう!? 女性トレーナー陣も鍛えている人はいるけど、どうしてもぶっとくなるんだ。それに引き換え、あの細い足に秘められた強烈な脚力! これがウマ娘の魅力だと俺は声を大にして言いたい!!」

『そこは同意する』

 

「葵、ちょっとあのバカどもしばいてくるわ」

「お供します小宮山先輩」

 

 

 

●コンドルも鳴かずば打たれまい

 (チーム・マルカブ)

 

「今日はお休み! 心ゆくまで遊ぶデース!」

「わあ……エルさん大胆なビキニ……」

「ふふん! ライス先輩の黒セパレートも、グラスの青ワンピースも似合ってるですよ」

「ありがとうございます。しかし……」

「うう……エルさんはスタイル良くて羨ましいな」

「ウフ~ンアハ~ン、これでトレーナーさんも悩殺デース」

「「……………」」

「え、ちょっ……二人ともジョークですよ! コンドルジョーク! だから、そんな怖い顔はやめ………ホギャーー!!」

 

 

「好きな水着? うーんそれぞれに似合ってればいいんじゃないかな。……そういう話じゃない? そうか……肌の露出が多いとやっぱり視線向けちゃうかな。筋肉の付き方とか、張りとか。……そういう話でもない? 難しいな……。 ライスの水着について? うん、とても似合っている。素敵だよ。やっぱりライスは黒が似合うね。……あれ? なんでそんなガッカリしてるの……?」

 

 

●真夏の夜の暴食

 (モブたち)

 

「来たぜ……ライスシャワーだ」

「あのオグリキャップと並ぶ大食いの……」

「知っているか? 今年来たスペシャルウィークとかいうのもかなり食べるらしい」

「マジかよ。今日の祭り、どれだけの食い物系屋台が生き残れるんだ……」

「くっくっくっく……安心したまえ諸君」

『町内会長!』

「今日という日のため、我々がどれほど入念に準備してきたと思う? 例年の五倍の食材! 鮮度を保つ貯蔵設備! 高速調理を可能とする最新の調理器具! 豊富な電力供給するための発電機も準備万端! 仮に食材が切れたとしても即座に補充する契約も取り付けた! 運送会社との連携も完璧だ」

「そ、そうだ。これだけ準備したんだ。もう『え、もう品切れなんですか?』なんて悲しいことは言わせないぜ!」

「その通り! この祭り、我々の勝利だ!」

 

 スペシャルウィークもいたので全滅した。

 

 

 

●重い想い

 (ライスシャワー、お兄さま)

 

「お、お兄さま! ライス大丈夫だから、おろして!」

「ダメだよ。下駄の鼻緒が切れたんだ。せめてゆっくり直せるところまでは運ぶよ」

「だったらせめておんぶとか、どうしてその……お姫様だっこなんて……」

「浴衣だと背負いにくいんだ。少し我慢してね」

「うう……でもライスさっきいっぱい食べたからきっと重いよ?」

「これくらい大丈夫だよ。ライスはむしろ我慢せず食べてもっと大きくなっていいと思うよ」

「あうう……」

 

 

「……エルたちは何を見せられているんデス?」

「トレーナーさんって、ライスさんのことだとちょっと大胆というか、その……」

 

『重そう』

 

「お、重くないよ!?」

 

 

 

 

●消してえええええええ

 (チーム・マルカブ )

 

「エルさん……待って!」

「ヒ、ヒィィイイイイ!! ライス先輩の目から炎が見えマス!」

「待って……!」

「ゆ、許してください! 出来心だったんデス! 珍しくライス先輩が涎垂らして寝ていたからつい!」

「……つい?」

「写真撮ってトレーナーさんのLANEに送ったデス」

「………………」

「ヒィィイイイイ!! 無言で追ってくるのはもっと怖いデス!!」

 

「3,000m超えたら止めに入ろうね」

(トレーナーさんが送られた写真について何か言ってあげたら止まると思うのですが……いえ、火に油を注ぎかねないですね)

 

 翌日。

 

「ラ、ライス先輩……お願い、待って……デス……!」

「ほらエルさん。ペース上げて。早くライスに追いつかないとこの『マスクを取った状態のエルさんの寝顔』をLANEのグループチャットにあげちゃうよ」

「昨日の写真はトレーナーさんにも可愛いって言われたのに……」

「それはそれ、これはこれだよ」

「お、鬼ぃ……悪魔ぁ……」

「そんなこと言われて、ライス悲しい。悲しすぎて送信先をクラスのグループに替えそう」

「ゆ、許してぇぇえええ!!」

 

 

「そんなにマスクの下見せたくないの?」

「人目のある時は基本つけてますね。寝る時も寝入る直前までつけてるみたいです」

 

「二人ともー! 黙ってないでライス先輩止めてくださーい!」

 

 3,000m超えたあたりで止めた。

 なお写真はまだ消してない。

 

 

●初対面

 (お兄さま、マンボ)

 

「なんか部屋に戻ったらでかい鳥がいる……」

 

 ………………

 

「すごいこっちを見てくる。なんだ? トンビか?」

 

 ………………

 

「足になんか絡まってる。取れってことか?」

 

 ………キーー!

 

「そして窓から飛んで行った。なんだったんだ……。

 ……これ、エルが普段つけてるマスクに似てるな」

 

 LANEを起動して、チームのグループチャットを開く。

 

「えっと……『大きな鳥が置いていったんだけど見覚えある?』っと」

 

 涙目のウマ娘が飛び込んでくるまであと五分。

 押し倒されてると騒ぎになるまであと七分。

 

 

 

●なぜ走る

 (とある栗毛)

 

 

 昔から走ることが好きだった。

 レースが好きだったわけではない。走ることで感じる風が好きだった。

 走っていると音が消え、景色は線になる。ただ顔を撫でる風と内から弾む胸の鼓動だけ感じる世界。それがひどく心地よかった。

 親しいものに語ったことはあるが同意は得られなかった。最近来た年下のルームメイトは目を輝かせて凄い凄いと言ってくれるが、称賛が欲しいわけでもなかった。

 ただ自分と同じ価値観の人に会いたかった。そうすれば、自分の迷いを晴らせるのではと思った。

 

「あ……いけない。またこんなところまで」

 

 ふと足止めて周りを見れば、合宿所から離れた市街地まで来ていた。山道からスタートしたはずだから、また山越えをしてしまったのだろう。

 時間は、まだギリギリ。なんとか門限に間に合うだろう。

 品行方正なチームメイトにまた叱られる前に来た道を戻る。

 周りが目を見張るほどの加速。だが彼女にその視線は届かない。

 音は消え、景色は線に。風と鼓動だけの世界へと没入する。

 

(でも、この走りでは勝てないのよね……)

 

 指導してくれるトレーナーの言葉が片隅で澱んでいた。

 だがトレーナーは分かっているだろうか。

 

(この走り以外で、私は勝てたことあったのかな……)

 

 答えを出せないまま、栗毛のウマ娘は海へと突き進んでいく。

 

 門限には間に合わなかった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 夏合宿もあっという間に過ぎ、学園へ戻ることになった。

 自然の中でのリフレッシュとトレーニングにより、参加者たちの身も心も充実したことだろう。

 ほんのり小麦色に焼けた肌をしたウマ娘たちがバスに乗り込んでいく。

 少女たちの表情は明るく、その瞳にはつけた力を発揮する場を求めるように、闘志が燃えていた。

 

「ちょっとお! どうしてバスに乗ろうとしているのよー!」

「いやいや、お土産とかいっぱい買っちゃったし……」

「荷物だけ載せてもらえばいいじゃない! もう、トレーナー君は私のことなんてどうでもいいのね……」

「そんなことない!」

「本当に……?」

「俺の目にはいつもマルゼンスキーしか映ってない!」

「トレーナー君……!」

「マルゼン……!」

「トレーナーくううん!!」

「マルゼエエエン!!」

 

「……なんデスかあれ?」

「この時期の風物詩さ。蝉みたいなものだよ」

「トレンディなセミデス……」

「いつもあんな感じなんです?」

「レースの時は凄いんだけどね……」

 

 こうして、トレセン学園の夏は終わった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 九月に入り、トゥインクルシリーズの秋シーズンが始まる。

 そして、グラスとエルのメイクデビューだ。

 今日はGⅠレースこそないが、未来の新星を見るため多くの観客がいる。

 熱狂は地下の控室にも響いてくる。

 二人のデビュー戦は別のレースだが、同日のためこうして同じ控室にいた。

 

「二人は同学年の中ではトップクラスだ。でも今日のメイクデビューには年明けから長くトレーニングした子もいる。夏合宿で大きく力をつけた子もだ」

 

 デビュー戦を迎えるのは一レース当たり約十人。レースを制し、次のステップに進めるのはうち一人。

 ここで勝っても、次もまた勝てなければ重賞、GⅠなど夢のまた夢。

 華々しく栄光を得るか、泥にまみれて苦汁を飲むか。苛烈な競争はここから始まる。

 

「とまあ脅かしはしたが、二人は問題ないと思っている」

「当然デース! エルの最強への道、こんなところで止まってられませーん!」

「自信はあります。ですが慢心はせず、全力で」

「それでいい。気負い過ぎず、されど油断せず。君たちの実力をしっかり出せれば負けはしない」

「二人とも、頑張ってね! ライスも応援してるから!」

 

 はい、と力強く頷き、まずはグラスから地下バ道へ向かう。

 ここから、新生チーム・マルカブが動き出すのだ。

 そして、

 

 

 

 

「えー、ではエルとグラスちゃんの見事なデビュー戦勝利を祝しまして――」

『カンパーイ!!』

 

 まあ、問題なく勝つんだが。

 

 

『麦茶だこれ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






補足
小宮山さんは漫画シンデレラグレイに登場する、タマモクロスの担当トレーナーです。
本作ではお兄さまよりトレーナーとして先輩になります。

葵はご存じ桐生院。お兄さまの後輩(なお交流はあまり無い)にあたります。


次回、天皇賞(秋)前編。
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