3週間限定で一緒に住むことになったウザかわ美少女が、まさかの推しVTuberだった件。   作:藤宮氏

1 / 2
第一話 事件はふとした日に起こり得る。

 

「よし、これで大丈夫だな」

 

 1.5リットルの()()()ティーに某有名お菓子メーカーの()()()キャラメル。いつもならこれだけなのだが、今日は特別。『昔ながらの味』がコンセプトであるコンビニオリジナルの()()()バーを二本、カゴに放り込むと、俺はレジの方へ向かった。

 

 

「以上四点で六百二十円です」

「あっ、すみませんiTunesカード二万円分もお願いします」

「かしこまりました」

 

 店員さんがレジを操作し、表示されている金額が二万円追加された物に変わる。

 ギリギリセーフ。危うく今日の主役を購入し忘れるところだった。

 

 店員さんに言われたとおりの代金を支払い終えた俺は、コンビニを出る。

 

「うわ、暑っちいな……」

 

 時刻は既に十六時を(まわ)っているというのに、東京の外はまだまだ暑い。まあ六月に突入したので当たり前と言えば当たり前なのだが。うっかりさっき買ったミルクバーに齧り付きたくなるほどの暑さだ。

 

 アイスが溶けてはいけないし、流石にこのままだと熱中症になってしまうかも知れないので、俺は家路を急ぐ。

 

 それはそうと、今日の俺は少し浮かれている。だからこうやって周りの人に白い眼を向けられながらも軽くステップを決めながら歩いているのだ。

 そこで問題だ。なぜ、俺は今日、超絶浮かれているのでしょうか?

 

 三

 

 二

 

 一

 

 正解は、さっき学校で女子に告白されたからである!…………。

 

 うん、ハイ。嘘です。すみません。こんな陰キャに告白するもの好きなんていませんよね。ハイ。

 

 今度こそ正解は、俺の推しVTuber『十六夜(いざよい)みるく』ちゃんのチャンネル登録者三百万人突破記念配信があるからである!

 

『十六夜みるく』。美しいミルク色の月が輝く十六夜、突如として月から現れた『月の妖精』。妖精というワードに反さないその幼女の様な可愛い容姿と、耳を(くすぐ)るような可愛らしい声、そして和洋折衷とでも言うのだろうか、その綺麗な金髪碧眼と絶妙にマッチするミルク色の着物に定評があり、普段から動画配信サービスを使っている人であれば、だれもが知っているであろう有名配信者だ。

 

 ただし、俺はそこんじょらの『しゅがーみるく(みるくちゃんが公式に呼称するリスナーの総称)』達とは違う。なぜなら俺は、みるくちゃんの初配信の時からの古参しゅがみる(これも公式が称するしゅがーみるくの略称)だからである! 

 

 いや~、初配信から早三年。初めの半年は二千人だったりと、伸び悩んでいた時期が有ったが、もう既に登録者は三百万人超え。すっかりトップVTuberにまでなってしまった。

 

 こうしてみるくちゃんの可愛さが世間に広まるのはファンとして、やっぱり嬉しい事だし誇りに思える。しかし、それと同時に知名度が上がったことでまた一歩俺たちリスナーから遠くなった気がして何だか複雑な心境になる。

 

 

 そんなことを考えている内に、段々と家が見えてくる。俺はシェアハウスの一人暮らし。『シェアハウスの一人暮らし』という言葉に違和感を感じる人も居るかもしれないが、これはただ単に同居人が居ないだけ。確かに東京23区外で駅からも少し遠くアクセスが悪いところではあるが、特にいわく付き、というわけではなく、俺の通っている学校へ行くには何分困らない場所である。

 

 始めは、ラノベとかで見るような、キラキラ美人お姉さん達と一つ屋根の下で暮らす……なんてことを妄想していなかったと言えば噓になるが、ここにきて既に三カ月。一向に同居人が来るなんてこともなく、一人暮らしに慣れてしまった俺としては逆に同居人が増えない事を望んでいるのだが――。

 

 

「…………ha?」

 

 家に着いた俺は、玄関に有る靴の数を見て思わず外人顔負けの呆気ない声を漏らす。そして――

 

 ――『あっ、貴方が桜井さんですね? ルームメートになった月森(つきのもり)未琉玖(みるく)です! これから三週間、よろしくお願いしますね♪』――

「…………」

 

 目の前にはエプロン姿の如何にも陽キャって感じの美少女が一人。

 

 ある程度の事を悟った俺が放った、その声は――

 

「はあぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」

 

 全、ラブコメ系ラノベ主人公顔負けのあの奇声だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。