3週間限定で一緒に住むことになったウザかわ美少女が、まさかの推しVTuberだった件。 作:藤宮氏
事件はふとした日に起こり得る。
今日は夜からみるくちゃんの三百万人記念配信がある為気分ルンルンで帰ってきた俺だが、玄関を見ると見たこともない靴が並んでおり、わざわざ出迎えてくれたのはまさかの美少女jk。そんな男子であれば誰しもが
「はぁぁぁぁぁぁ⤵⤵⤵⤵」
制服のままベッドの上にある枕に顔を埋めていた。
帰宅して三十分。未だに『ルームメート』と『三週間』という情報しか分かってないのには訳が有り、帰宅後急に自宅に美少女jkが居たものだから、女子に大した耐性の無い俺は(なんて言ったかは忘れたが、多分気持ちの悪い事をぶつくさ言いながら横を通り過ぎたのだろう)すぐに自室へと駆け込んでしまっていた。
『シャイニングスター♪綴れば♪――』
「んあ?」
中学三年生の時に設定してからめんどくて変えていなかった痛々しい着信音が耳に入り、俺はポケットに入っていたスマホを取り出した。
「お、おっちゃん!?」
着信画面には『オーナーのおっちゃん』という文字。
某有名新聞社が放送している探偵系アニメの主人公の様な
『よぉ湊ぉ、お前そろそろ自宅に着いてる頃かぁ?』
『あまりの胡散臭さに全米が泣いた(当社調べ)』がキャッチコピーになっていてもおかしくないレベルの話し方に俺は溜息を漏らしつつ話始める。
「はぁ……どうしたんですか急に?」
『まぁまぁ、そんなに落ち込むなって、クソかわjkが引っ越して来たんだろ?』
「やっぱりおっちゃんの仕業かよ……」
そう言う俺におっちゃんは『ガハハ』と愉快そうに電話の向こうで笑う。
その豪快な笑い声に、俺はスマホをベッドに投げつけそうになるのを必死にこらえ、話を続ける。
「まあそりゃそうですよね。だっておっちゃんはウチの管理人ですし」
『おぃおぃ、管理人と言うなと何度言ったら分かる。オーナーさんと呼べ!』
「はいはい。オーナーオーナー」
『そうだろ、そうだろ、ガハハハハッ!』
圧倒的な面倒くささに、俺は「オーケーオーケー」のノリで軽くあしらうと満足したのかおっちゃんが再度愉快そうに笑った。
こんなオレオレ詐欺顔負けの胡散臭さを
(因みに管理人ではなくオーナーと呼ばないといけないのは、「だって管理人ってなんかダサいじゃん?」だかららしい。――本当に中年男性なのか?
「それで、何の用ですか? これから忙しいのですが」
別に大して聞きたいわけでもないが少し話が逸れてしまっていたので、俺は隙を突いて話を戻す。
『あぁそれなんだがな、お前はもう未琉玖ちゃんの事は知っているんだろ?』
「まあ、引っ越してきたという事だけは……」
『はあ? まだそれだけしか聞いてないのか?』
だって、帰ってきて一言しか話さずに部屋に引きこもったからな。
そのことをなんとなく察したのか、おっちゃんは『これだから陰キャは』と溜息を漏らす。うっせぇよ、客の生き方否定すんなよ!?
『取り敢えず三週間だけ、お前んとこで暮らす予定になってっから。まあ、詳しい事は未琉玖ちゃんから自分で聞け』
「はぁ? 教えてくれないんですか?」
『ったりめーだ。後の事は、お前の寂しいコミュ力でも使って聞いてみろ』
「……… 」
『ちょっ、コイツ殺っちゃっていい?』←俺の悪魔くんの声。
『ダメよ、元々コイ……この人はこんな性格だったじゃない』←俺の天使ちゃんの声。
『いいじゃねぇか、お前もコイツの事を憎んでるんだろ?』←俺の悪魔くんの声。
『そ、そんなこと無いわよ。そんなこと……』←俺の天使ちゃんの声。
ダメだ、俺の中の天使ちゃんが完全に圧倒されてしまっている。悪魔くん強者!!
「ま、まぁ、落ち着け俺。こんなことで怒っていてはダメだ」
『そうよ! 大人げないわ』←天使
『ん? なんか俺
『おーい、なんか異物が混入してきてんぞー。追い出しとくなー』←悪魔
「おっ、助かる」
『え、ちょ、助かるっt――グハッ!?』←オーナー
悪魔くんが俺の隣から消えたかと思うと、電話の向こうでおっちゃんが腹パンを喰らわせられたかのような声が聞こえる。
ほぅ、俺の悪魔くんもなかなかに気が利くやつだ。
おっちゃんに勝った事で、「思い知ったか」とふふんと鼻を鳴らしていると不意に、俺の部屋の扉がコンコンと叩かれ、可愛らしい声が耳に入る。
「桜井さん、ちょっといいですか?」
「え?」
『お、やっとか。よし行ってこい。可愛いjkと一つ屋根の下だからって調子乗るんじゃねぇぞ』
「えっ、ちょっ!?」
『まっお前に手ぇ出せるような相手じゃねぇっけどな。手ぇ出したら不当に敷金増やしておいて、払えんかったら訴えるからな~…………ブチッ! ――ツー……ツー……』
「ちょっ、まっ……はぁ」
画面には『通話終了』の文字。
掛けられていた
「桜井さん?」
「ファイッ!?」
めっっっっちゃダサく声が裏返ってしまったが、女子に声を掛けられるドキドキでそんな羞恥など脳の端っこへと追いやられ、俺は扉を開けた。
「プライベートの空間で声をかけてすみません。寝てましたか?」
「あ、ああ。全然大丈夫……です」
この子やっぱり礼儀正しい! さっきおっちゃんと会話してたから月森さんの態度と比べるとまるで天使と悪魔のようだ。
周りの人間には無い気遣いに、俺の目から涙がこぼれそうになる。
「そ、それでどうかしましたか?」
「そうそう! まだきちんと挨拶して無かったので――」
何故だか分からないが、顔を赤く染めてモジモジとしている月森さんに俺は首を傾げる。
「ので?」
――「ですから、その……ご飯、一緒に食べませんか?」――
「………………え、マジ?」