人里近くにある竹林、その上空を魔理沙は飛ぶ。
今までしたことのないような、焦った表情で一直線に永遠亭へと向かう。
目的地にはさほど時間もかからずに到着した。
抱えているアリスを傷つけないように、ゆっくりと降下し、大声を上げる。
「永琳!!アリスが大けがしてんだ!早く来てくれ!!」
大声のあまり喉を傷めたのか、軽くうつむいて咳き込む。
顔を上げると、永琳が魔理沙の元へと駆けてくる。
最初は困惑の表情だった永琳も、アリスの状態を見てただ事ではないと判断し、永遠亭の中に運び込む。
布団にアリスを寝かせ、処置が開始された。
初めは永琳一人で行っていたが、鎖の処理等々は優曇華に任されることとなった。
優曇華もアリスの状態を見るや否や、顔が青ざめ、口を押えたが、持ちこたえたようだ。
魔理沙は意識のないアリスの手を握りしめ、無事に終わることを祈るしかなかった。
半刻ほど経ち、見るも無残だったアリスの姿は包帯に包まれ、鎖も一本を除き、完全に取り除かれた。
喉に巻かれていた鎖だけ、どう頑張っても外せなかった。決して、きつく巻かれていたから、解けなかったなんてことは無かった。
魔力、霊力とも取れない未知の力がついていた。
魔理沙は弾幕で断ち切ろうとしたが、破壊できるか分からない。また、アリスへと影響が出るかもしれない、と永琳に止められた。
アリスが寝ている部屋の外で、魔理沙は壁にもたれかかり、床に座る。
「..アリスが助かってホッとした...。だけど、なんでだろ...安心できないや...」
膝を抱えて、顔を床に向ける。手が細かく震えていた。アリスが助かって安堵の気持ちに、不安も大きくのしかかってくる。
出来ればこうなる前に助けたかったという気持ちの方が大きいのだろう。拳を強く握りしめ、不安も後悔も紛らわせてしまう。
「起こっちまったことはしょうがない..だけど、どうしてこんなことになったんだよ..」
一番は未然に防ぐことだが、それは博麗の巫女でも不可能に近い。だが、最小限にすることはできる。
その為には洞察力や判断力、もろもろが必要だろうが、この世界で十中八九、力だろう。
犯人が分かったとしても、力がなければ倒すことができない、止めることすらできないかもしれない。
「..やっぱり努力するしかないのか...たとえそれが果てしない道のりでも、考える脳のない私にはそれがお似合いだな」
魔理沙はふっと笑い、立ち上がる。
努力なんて、魔理沙の得意分野だ。今まで霊夢と肩を並べようと、異変解決の手助けになるようにと、血のにじむほどの努力を何回も繰り返してきた。
軽く頬を手でたたく。気合を入れる。
アリスのような回る頭もない、霊夢のような圧倒的才能もない。
だけど、魔理沙だけが持つもの、努力をすること。
至って普通かもしれない、でもそう簡単にできるものでもない。
「くよくよするのは..私の性に合わないな。霊夢にも、こんな姿見られたら何て言われるか...」
いつの間にか流れていた涙を拭いて、歩き出す。
絶対に、アリスをあんな目に合わせたやつをぶっ潰す...そう心に誓って....