ひねくれ者の旅路   作:はらぺこあおむし

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第二話

 食事を終え、食器などを片付け終えた俺達は良質な睡眠を取るべく、テントを張って準備を始めていた。

 

「やめて、お願いだからやめて」

 

 俺は誰かと一緒に行動する予定はなかったからテントなど所持しておらず。

 寝袋だけ準備をしていたこともあって今や暇を持て余していたのだが。

 

『シャワ』

『ブースター』

『シャー』

 

 準備に忙しいそれぞれの主人の代わりに構えと訴えてくる為に、俺はイーブイとの寝袋争奪戦に敗北してしまう。

 てか、イーブイがど真ん中を占領しなければ俺とお前で使えるサイズなのだが、完全なる嫌がらせで独占してくれる。

 

「わかったよ……ほら、遊んでやるから」

 

 イーブイと遊ぶ時ようにバックに入れて置いたバスケットボール並の大きさになるボールに空気を入れて投げ渡すと初めて遊ぶかのような態度を見せて不器用にシャワーズが先に跳ね返してきてくれた。

 

(なんだ、遊んだことないのか?)

 

 雪ノ下さんが連れてきたからにはそういうのは既に学んできてるものだと思っていた。

 進化しているのにまだ慣れていない感じ、と言えば分かるだろうか。その事に何か裏がありそうな気がするが詮索はしないで置いとこう。あの人の周りには闇がありそうだし。

 

「おー、そうそう。今の上手かったぞ」

 

 もう一度下投げでボールを送るとサンダースが額部位を使って跳ね返してきたためそれをキャッチする。

 

「さてはオメー、天才だな?」

 

 ここで注意をしたり、何かを指摘して矯正させようとするのはよろしくはない。

 小さなことからでも褒めてコツコツと自信に繋げてやるのがポイントだ。

 ソースは俺。イーブイも最初は警戒して遊ばなかったが、飯を食う時や眠る時の場所を徐々に理解し、慣れるまで何度も褒めてきた。

 その結果俺を舐め腐って寝袋を独占するほどの図々しさができあがった。つまり、イーブイの場合は悪い見本だわ。

 

「「「……」」」

 

 何故か冷ややかな視線が注がられている。

 今の俺に何か言いたそうな顔をしているのにかける言葉が見当たらない、そんな心情を表現するにはピッタリな表情でもある。

 

「なんだよ」

 

「いえ、別に」

「なんでもないよ〜……あはは」

「あざといんですけど、先輩ものすごくあざといんですけど!」

 

 傍ですやすやと寝ている二頭のケンタロスを横目に捉えつつ、三人の準備が終わるまでの間は三匹のポケモンを相手しておく。

 

「え、ちょっ」

 

 テントの準備が終盤に差し掛かった頃。

 シャワーズ、ブースター、サンダースの三匹はボール遊びを終えたあとの休憩に入った途端に俺を中心に集まって来た。

 そのせいで尻もちを着いた俺に飛びかかり、顔を舐めたり体に乗って来たりと忙しない。

 

「なになになに」

 

 猫のように喉を鳴らして擦り寄って来てくれるのは嬉しいしくすぐったいのだが、サンダース、お前はやめろ。超痛い。毛が逆立ってるだけじゃなくて刺々しいから刺さってきて超痛いから。

 

「わぁっ、先輩が!」

 

 飼い主がサンダースをそっと持ち上げてくれたおかげで難は逃れたのだが、シャワーズとブースターをどうにかして欲しい。

 

「……なんでポケモンにはすぐに懐かれるんですか。貰ったばかりの私達より懐かれてどうするんですか。しかも自分のイーブイより懐かれてませんか。ハッ、まさか外堀から埋めて今度は持ち主にって計算だったんですか! ポケモンに懐かれる人に悪い人はいないとは思いますが相手が先輩なので無理です出直してきてください、ごめんなさい」

 

 一色の伝統芸を披露され、告白してないのに振られたような空気の中で俺はシャワーズとブースターを撫でてなだめつつ。

 舐められすぎて汚れた顔をどうしようかと思っていたら主人の様に俺を傷つけてもいいような勢いで水を放出されて全身がびしょびしょになってしまった。

 

「はは……どうも」

 

 やっぱりポケモンは飼い主に似るんだろうな。

 そんなことを思いながら予備の服に着替えて就寝する時間となったことで寝袋の元へと向かっていくのだが。

 

「……気持ちよさそうに寝てんだよなぁ」

 

 一応主人の俺を差し置いて堂々と寝ている銀色の毛が目立つイーブイ。後でもみくちゃにしてやろう。

 

「おやすみ、ヒッキー」

「おやすみなさい、比企谷くん」

 

「おう、おやすみ」

 

「襲わないでくださいね〜、先輩」

 

「サンダース。一色に、あまえる」

 

『シャ!』

 

「痛たたたっ!」

 

 可愛らしく自身の毛を一色に擦り付けてあまえるを繰り出してくれたサンダースに賞賛を送りつつ、俺は寝ているイーブイを一度抱えて腹の上に乗せた後に俺は静かに横になって目を閉じた。

 

「なんで先輩の言うことはすぐに聞くんですか〜!」

 

 サンダースに言うこと聞いて貰えないの、可哀想に。

 

 ──翌朝。

 

 朝早くからテントを収納している音によって意識が覚醒する。

 

「うおっ」

 

 顔だけが出ている状態で横になっていた事によって目を開けると一斉に視界に映ったのはシャワーズ、ブースター、サンダースの三匹のポケモンだった。

 

「……早起きね」

 

 寝袋から体を出すためにファスナーを下ろして座ると胸の上で寝ていたイーブイが転がり落ちて目を覚ます。

 

『ブイ〜……』

 

 欠伸と共に固まった体をほぐすように伸びたイーブイは早速俺の肩に登って落ち着いた。

 

「ヒッキー、おはよ〜」

「あら、お目覚めかしら」

「うぅ……先輩のせいであまり眠れなかったですよぉ……」

 

 由比ヶ浜は元気に、雪ノ下はクールに、一色は朝から元気なく。

 三者三様性格が分かってくる挨拶の仕方で声をかけてくるのだが、自分のポケモンのことどうにかして。無言の視線が注がられて胃に穴があきそう。

 

『『ブモォー』』

 

「おう、おはよう」

 

 昨日遭遇したケンタロスからの朝の挨拶を受け、俺も寝袋をたたみ、ボールから空気を抜いてスクールバックへと押し込んでいく。

 

『ブイ、ブイブイ。ブイ』

 

 肩の上に乗って何かを俺に主張しているイーブイ。

 やばい、何言ってるか分からないし可愛いだけしか分からない。

 てか本当に可愛いんだよなぁ。稀に憎たらしく感じるけど可愛いが勝る。くっ、これがイーブイの魅惑か。

 

『ブイ!』

 

「痛い……」

 

 イーブイの可愛さに惚けていたら可愛い肉球で頬を叩かれ正気に戻る。

 肩からケンタロスの背に飛び乗ったあとに雪ノ下を見たことで何が言いたいのか察しが着いた。

 

「ケンタロスが雪ノ下乗せて着いてきてくれるって?」

 

『ブイ』

 

 自転車の荷台よりかは確かに安全だし、安定もするからその申し出は正直ありがたい。

 

「いいのか、ケンタロス。お願いしても」

 

『ンモー』

 

 俺の言葉に一度頷き、擦り寄って来てくれる一匹のケンタロス。

 昨夜怪我してしまっていた方はどうやら体力が戻って日常生活に難なく戻れるようだった。

 

「雪ノ下」

 

「なにかしら、温もり谷くん?」

 

「誰が温もり谷だよ。お前まさか、俺の方が先にシャワーズに慣れて貰えてることに嫉妬してんの?」

 

「そんなことないわ。別にあなたが私のシャワーズに懐かれていたとしてもこの先長い時間私と共有する時間の方が多いのだから先か後かの違いでしかないことに嫉妬なんてしないわ」

 

「お、おぉ……、そうか」

 

 氷の女王は健在のようで。シャワーズに懐かれるのが俺の方が早かったせいもあって不機嫌絶好調の雪ノ下。

 俺は俺であの三匹に懐かれてる理由が明確になるなら知りたいくらいだ。

 

「って、そんなことより」

 

「そんなこと?」

 

 やっぱり気にしてんじゃねぇか。

 

「……まぁいいわ。それでどうしたのかしら」

 

「ケンタロスがお前乗せて移動してくれるってよ」

 

「それはとても魅力的な提案なのだけれど……私は何もしてないのだから何かされる道理がないわ」

 

 頭の硬い雪ノ下の貸し借りでの思考によってケンタロスのご好意を拒んでしまう。ならば納得できるであろう理由をあげればいい。

 

「そんなに俺の自転車の荷台がいいのか」

 

「ケンタロスにお願いするわ。お礼はするとして持ち前のきのみで好物があればいいのだけど」

 

 即答かよ。そこまで俺の自転車の荷台がやなの? 

 別に行為的に汚したりとかしたことないし、なんなら小町の特等席でもあったし、てか逆に俺が傷ついたわ。

 

「決まりだな。ケンタロスに言ってくる」

 

「後で私もちゃんと伝えるから」

 

「そうしてやってくれ」

 

 三人の片付けが終盤に近づいた頃合。ケンタロスに近寄ってみると突然足元が崩れて下半身がすっぽりと穴の中に投下され、犯人が誰なのかがすぐにわかった。

 

『ブッブッブ!』

 

 昨夜構ったりしなかったからか、それともほか三匹に構いすぎたことの仕返しか。

 イーブイが作ったであろう落とし穴にまんまと落ちたことで楽しそうに笑ってやがる。誰だ、イーブイが可愛いって言った奴。俺のイーブイ全然可愛くない。

 

「この……」

 

 あ、でもやっぱり可愛い。ああ、だめだ。このまま楽しそうに笑ってるイーブイ見てると許してしまいそうだ。

 

「いたずらっ子め」

 

 うん、そうだよな。構わなかった俺が悪い。

 イーブイは悪くない。

 

「ヒッキー……、ポケモンに甘すぎるよ……」

 

「シスコンだけでなく、あまちゃんでもあるんですね。先輩は」

 

「否定できないかも……!」

 

 否定しろよ、由比ヶ浜。

 

「比企谷くん、片付けは終わったからそろそろ出たらどう? それともそのまま埋められることがご所望なのかしら」

 

 このままでは雪ノ下に生き埋めにされそうだから出ようと試みるがあまりにも深すぎる為自力では中々穴から出られずにいたら。

 

「うおっ!?」

 

 二匹のケンタロスが俺の服を噛んで引っ張り上げてくれた。

 やっぱりポケモンは優しい。人間なんかよりずっと優しい。やばい、惚れそう。告白しても後ろ足で蹴っ飛ばされそうだけど。

 

「良かったわね。ポケモンには優しくされて」

 

「……否定できないんだよなぁ」

 

 ややあって俺達は問題事ばかりだった15番道路からケンタロス共々と抜けて行った。

 

「ねぇねぇ、ヒッキー」

 

「んー?」

 

「今度はあたしかいろはちゃんとバトルしてよ」

「ですです!」

 

「あー……」

 

 雪ノ下は横向きでケンタロスの背中に乗っての移動中。

 俺達は地面の上を歩きながら雑談を繰り広げていたら二人からのお願いをイーブイの顔を伺って決めかねていた。

 

『ブイ』

 

 おお、神から許可がおりたわ。

 

「いいってよ」

 

 次の休憩時にまた俺たちの陰湿な戦いをしますかねぇ。

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