ーなんかやべえ通信入ったからフルスロットで箒かっ飛ばしてるがー
『まず霊夢の能力で対象を無力化若しくは弱体化。後に魔理沙が高火力で対象を殲滅。』
「何て安直な作戦なんだぁ、オイ。」
作戦を思い出せば思い出すほど魔理沙の怪訝な表情は度を増すばかりだ。
「んでよ、本当に大丈夫かぁ?こんな作戦。」
通信機越しに顰めっ面をされるにとりは肩をすくめた。
「仕方がないだろう?少なくとも試してみる価値はあるさ。」
「あのー、私は今どう言った状況で連れてこられたんですか?」
魔理沙の後ろで困った表情のまま愛想笑いを浮かべる霊夢がいた。誰だっていきなり首根っこを掴まれて半ば強引につれて来られたらそうなる。
「ちいと人里でボヤ騒ぎがあってよ、そんで霊夢が必要となったんだ。」
「はぁ…。」
「おい魔理沙。理解していないようだが?」
「うるしゃい。黙っとれ。」
「異変、ですか?」
「ああ、何故かお花ちゃん達が人の精気ドレイン祭り開催させちまってよ、その原因究明にこの魔理沙様は勤しんでいるってワケさ。で、今度は人里でお祭りが開いちゃっているから向かってんだよ。」
「成程!私は吸収能力を弱体化させるために必要だったんですね!」
「今の説明で理解できるのかい!?」
「霊夢はお前さんみたいに石頭じゃないんでな。」
森を抜け、見晴らしのいい草原に出た。そこは妖精が多発する地帯であり、いつ襲われても不思議では無い状況であった。
スパン。
突如、上から一つのバレットが魔理沙の頬を掠めていった。
「ちぃ!早速お出ましかこんちくしょうめ。」
しかし辺りを見回してもバレットの発生源が見つからない。妖精どころか陰陽玉すらいない。その弾幕は濃密さを増す一方であり、極め付けは古い時代の弾幕のような一発一発が殺意に満ちた弾幕である。
「何だぁ、こいつぁ気味が悪い。」
縦横無尽に降り注ぐ弾幕はやがて星型弾も交えて美しく、より回避が難儀なものとなっていった。
「何だこの弾幕、見覚えがある…。まさか?いや、そんなこたねえはず。」
「この星型弾、魔理沙さんの使うやつとそっくりですね。」
この霊夢の何気ない一言が魔理沙の疑問を確信に変えた。その刹那、全てのバレットが消え、ようやく弾幕の主が姿を現した。
「魔梨沙。こんな所で何をしてるの?それに後ろに見えるのは博麗の巫女かしら?その娘は私達にとって邪魔な存在よ。消してしまわないと。」
その者は緑のロングヘアーに瞳は更に深い緑を宿らせ、身に纏う紺のマントは新月の夜を思わせる。
「何故だ?何故あんたが此処にいる?」
「何をおかしな事を言っているの?まさか、そこの巫女に洗脳されたのかしら?全く、貴女もまだまだね魔梨沙。」
ー魅魔様だ。すっげぇ懐かしい姿してるなぁ。だが魔力の流れがまるで違う。それに本来の魅魔様は西洋系統の魔力だがこいつは東洋系統の魔力だ。ー
「少し手荒な治療になるけど…覚悟なさい!」
ーこいつは偽物ってことは間違いない。だが作りが精巧過ぎる。一体誰が?これも異変の一部なのか?ー
魅魔(偽)は不敵な笑みを浮かべながら魔理沙のオーレリーズサンを思わせる四つの大きな玉を浮かべ魔理沙達へ回転させながら飛ばしてきた。
「まずい!霊夢しっかり捕まってろ!」
「へ?」
その玉は彼女達の前で突如破裂し、放たれた幾千幾万のバレットは全て満遍なく彼女達に向け襲い掛かる。それは魅魔の常套弾幕であり、かなり強烈なもので並の妖怪が受けようものなら成すすべなく無残なタンパク質に早変わりする事になるほどだ。
「ふいー。間一髪ってとこかな。」
しかし魔理沙は余裕綽々とした表情でそれを転移魔法で容易く避けていた。
「いきなり何ですかあれ!しかも反則弾幕じゃないですか!」
「ありゃスペルカードルールが制定される前の弾幕でな。いわゆる『殺しの弾幕』ってやつだ。しかも相手が魅魔様ときた。ちいと厄介だなこいつぁ。」
「え?魅魔様?!あれが?!いつもと全然違うじゃないですか!」
「安心しな、ありゃ偽物だ…っと!」
次に魅魔様(偽物)は大小様々な星型弾を繰り出す。弾幕のパターンだけは本物のようであり、かえって魔理沙には好都合である。
「懐かしいなぁ、この弾幕。よくこれでボコされたっけな。」
『殺しの弾幕』。その名の通りこの弾幕は正真正銘の決闘、つまりは殺し合いで相手狙いの弾がかなり多い。しかし、それ故にフェイントやスピードの緩急をつけ照準をずらすなど現在の弾幕ごっこに比べ避け方のレパートリーが豊富である。聞こえはかなり物騒だが実際はスペルカードよりも攻略はしやすい。
魔理沙は自分に向けられた弾幕を利用し、姿をくらませ転移魔法で一気に魅魔(偽物)の後ろに回り込む。
「っ!魔梨沙が…消えた?」
「後ろにいたりしてな。」
「なっ!?」
「ほうら、かわいい背中がお留守だぜ!」
星符 「アステロイドベルトナイトメア」
一際大きな星型弾達が魅魔(偽物)に向け飛んでいく。それらは外見からは考えもつかない質量を有しており、魅魔(偽物)の体を目を覆いたくなるほど確実に抉り取った。
「あがぅっ…あら、魔梨沙?一緒に、人間に…復讐をするの。これだけ…あなたが成長していれば。フフっ。」
「あんたは未来で楽しくやってるさ。安心しな。」
「そう…。なのかしら、ね……。」
息絶えた魅魔(偽物)の表情はとても穏やかで(半分顔面抉れたが)その酷く抉れた箇所から彼女の中身が嫌でも見れる。抉れた中身は白い花であった。我こそが女王と言わんばかりに咲き誇る花々が魅魔という虚像を作り上げていたのだ。
「オイオイ、どうなっている?こいつぁ例の『花』だ。」
「この花がですか。」
先程まで魅魔だったものは少しずつ身体が解け、白い花へその形を変えて行く。
「それにしても自然過ぎる命でしたね。誰かが作ったにしては完成され過ぎています。」
「しかも思考が『あの時』そっくりときた。悪趣味だなぁ。こいつぁ。」
偽物の器を精巧に作ったとてその魂まで精巧に作り出す事は熟練の魔法使いでも到底出来る事では無い。あの偶像神ですら困難を極めるだろう。
「おいにとり!今の全部見てたか?」
「そういえば通信機付けっぱなしでしたね…。」
「一応は、カメラにも鮮明に写っているし大丈夫だ。これから解析してみる。それと魔理沙。」
「何だ?」
「あれほど通信機付けっぱなしで転移魔法をするなと言っただろう?全く。おかげてノイズがうるさいったらありゃしない。」
「ああ。すまん。急ぎ人里へ向かう。」
ーあ、魔理沙さん説教始まる前に逃げた。ー