主人公は霧雨魔理沙   作:魔王ヘカーテ

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第七話 これで君は前に進める

『地に伏せよ』

 

その声が響いたと同時に全身に鉛がのしかかるような感覚に襲われる。全ての因果が地に伏すこととなる。

 

これが霊夢の能力『地に伏せさせる程度の能力』

 

失踪した先代霊夢の『空を飛ぶ程度の能力』とは真反対に位置する能力である。霊夢はまだ完全に自分の能力を操る事が出来ず、能力を使う相手を限定する事が出来無い。故に無差別に発揮してしまう。

 

「相変わらず強いな!気ィ抜いてたらやられちまう!」

 

だが魔理沙はそれ以上のメリットがあると考えた。無差別ということは狙いを定める時間が要らなくなり、かつ広範囲に瞬時に『花』を無力化出来ると考えたからだ。

 

「どんぴしゃりってとこかな?」

 

見渡せば先ほどまで邪念たっぷりだった花々が地に抑えつけられ、吸収範囲を縮小させている。

 

しかし、例外が一つ存在した。

 

「ったく今日は最悪な日だわ!モーヴが花に囚われたかと思えばお次は体が鉛のように重たいったらありゃしない!」

 

モーヴに巻き付く花々は、完全自律人形である彼女の永久機関のエネルギーによって霊夢の能力に対抗していた。

 

「何、この殺意の塊は…。ねぇ、アリス大丈夫?ねえってば!」

 

「自分の心配しなさいってのよ!」

 

重くなった自分の頭を何とか上げ、アリスが見たものは擬似物質化された魔法で編み込まれた『マジックミサイル』であった。それらはモーヴに巻き付く花々にめがけ一直線に飛んでいく。轟音と共に超高速で飛来するそれをアリスは知っていた。「弾幕はパワーだぜ⭐︎」だの「この本借りてくぜ!多分返す!」だの抜かすあの憎たらしい白黒の物である。

 

「全く、遅すぎるのよ魔理沙。」

 

マジックミサイルはモーヴへの被弾を避け命中し、派手に爆発する。その刹那、魔理沙が全速力で突っ込み、モーヴを花々から引き離す事が出来た。しかし、余りにも無理矢理過ぎたため彼女の右腕がバギンと音を立てもげてしまった。

 

「モーヴ!大丈夫か!」

 

「おそーいよ!危うく機能停止してた!あとランボーだよ!

 

「こいつぁ元気そうで何よりだ。右腕はまたアリスに作ってもらえ。」

 

「もー!」

 

『魔理沙!地面に結界を張って!』

 

「んぁ、アリスなんか言ったか?」

 

「はあ?何言ってのアンタ?てかこれどう言う状況なのよ!アンタ何か知ってるんでしょ!最悪な日よ全く!」

 

霊夢の能力で全身が重く動かないアリスも辛うじて怒鳴る元気ぐらいはあったようだった。

 

『魔理沙!』

 

やっぱり聞こえる。何処かノイズがかかって聞き取りづらく、くもっているように聞こえづらい。

 

でも、なんか聞き覚えがある声。

 

「この声、よく知ってる…。」

 

「どうしたの魔理沙?」

 

「アンタ遂に最後の頭のネジが吹っ飛んだのかしら?」

 

『ねぇ!聞こえているんでしょう!』

 

霊夢だ。何故すぐ気付かなかったのか。あの時、目の前で消え失せた霊夢が今、語りかけてきている。

 

「霊夢か!霊夢なんだな!何処だ!何処にいる!」

 

『今すぐ地面に結界を張りなさい!早く!』

 

「なんだって急に!」

 

『説明してる暇がないの!早』

 

ーそうは問屋が卸さないってね。まだ邪魔はさせない。してはいけない。博麗霊夢。ー

 

霊夢の声はプツリと途切れてしまう。魔理沙は平行になってしまう会話の意味がようやくわかった。

 

下でくたびれている花々が霊夢の能力に抗い、魔力が急激に上がっているのだ。

 

「モーヴ!上海と蓬莱とお前さんで結界を張ってアリスを守れ!」

 

次に起こる事は容易に想像できる。力の板挟みという奴だ。魔理沙は『魔法使い』になってから色々な魔法を使いこなせるようになったが、どうも結界魔法だけは苦手である。

 

「結界魔法だけは苦手なんだヨォォ!」

 

彼女はすぐさま人里を覆い尽くせる程の結界を花々に掛けるが、所詮は無駄な足掻きだと彼女自身が一番分かっていた。自然を操る魔法というものは東洋魔法であれ、西洋魔法であれ、同時に広範囲であればあるほど自然の因果を操ればその力は比例していく。

 

ーおお!霧雨魔理沙はようやく気付いたようだよ。今まではある一定の範囲で独立させた術式を『同時に』展開していただけだからね。それを繋げたらレームちゃんといい勝負すると思うよ。まぁ、今邪魔するのは得策じゃないよ。君が戻る頃に幻想郷が消え失せていたら嫌でしょう。博麗霊夢?ー

 

花々は魔理沙の結界など最も簡単に打ち破り、霊夢の力を押し返すまでの力を放つ。更に霊夢がこれを抑え込まんと力を強める。

 

「うおぁ!こいつぁやべえ!」

 

魔理沙は間一髪で自らに結界を張ることが出来た。しかし、二つの力のぶつかり合いは凄まじくバレット一つでも放とうものなら歪み落ちる程だろう。それ以上に危惧すべきはこれ以上どちらかの力が高まれば人間など簡単にひしゃげてしまうという点である。見渡せば、もう声すら出せず悶え苦しむ人間達の姿があった。

 

「霊夢!強すぎだっ!このままじゃ人間がひしゃげるぞ!」

 

「で、でもっ!ものすごい力で押し返されてっ!今弱めたらそれこそ、ここの人達全員死んでしまいます!」

 

このまま能力を発動させていれば人間がひしゃげ、それを止めても人間が死ぬ。おまけに力の出どころすら見当がついていない。

 

「こいつぁ…お手上げってか?」

 

霊夢のすぐ下でペちゃりと音を立てて、何かが赤く鉄臭い液体を撒き散らし、肉塊と化した。

 

その様を見た霊夢の口元が緩んでいる事に一体誰が気付いたのか。少なくともその表情は負の感情の物では無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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