『花の異変対策本部(仮)』
達筆な文字が書かれている看板が天狗の詰所に置かれてあった。
「人里に『花』による攻撃を確認。霧雨魔理沙、博麗霊夢の二人がこれを沈黙化。されど人里の被害は甚大なり。か。」
相次ぐ悪い報告に犬走椛は頭を抱えていた。白狼天狗である彼女は、哨戒班の隊長である事を理由に現在起きている異変の情報収集任務の統括を(半ば強引に押しつけられたが)担っている。
「これで現状、確認が取れているのは紅魔館、永遠亭、命蓮寺、博麗神社、守谷神社。守谷神社を除いて連絡が付くのが不思議なほど壊滅的な状況。」
椛は睨めっこをしていた資料を空に投げ散らかす。
「あー!もう!なぁーんで魔理沙さんを追い返したんだよぅ!しかも博麗の巫女にも絶対協力しないとか言っているし!バッカじゃねーのー?術の出どころもわかってない、黒幕見当つきません、黒幕探せって無理あるってもんだろこれぇ!」
「あやや。椛が珍しくキレてますねー。」
詰所の引き戸をガララと開くやいなや射命丸文が小馬鹿にするように言った。
「良いですよねー。文さんは。さぞ自由にやってんでしょうけどこっちはみんなにやな仕事押し付けられてんですよ!」
「まぁまぁ、そうカッカしない。せっかく椛にいい知らせを持ってきたってのに。」
「新聞の売り上げでも伸びましたか?」
「霧雨魔理沙、博麗霊夢、東風谷早苗他異変解決者を正式編入させることになりました。」
全てに疲れ果てたように曇っていた椛の目が輝く。
「ほ、本当ですか!誰がそんな事。」
「私だ」
文が開けっぱなしにしていた引き戸から二人の直属の上司である飯綱丸龍が歩いてきた。
「ああ!流石です飯綱丸様!何処ぞのガセネタ捏造してクソみてえな新聞記事書いてる鴉天狗とはえらい違いです!持つべきは有能な上司。はっきりわかんだね。」
自分の業務が楽になるとわかり、耳と尻尾をフル稼働させた椛が飯綱丸に勢いよく抱きつく。
「しかし、飯綱丸様。他の大天狗様やお上の反対も多かったのでは?」
文は笑いながらも怪訝な目で質問を投げかけた。
「あ、確かに。それ気になります。一体どんなカラクリで?術とか?」
「いや、みんな色んな所との癒着が有るからそれをダシに脅した。」
「やり口がどえらいヤクザだった!」
ーいや、飯綱丸様も人のこと言えないのでは?ー
「という訳で異変解決者なども交えた御前会議が開かれる事となった。初めからこうすればよかったものを…。」
「全くそのとぉーりですよ!で、御前会議はいつやるのですか?」
「3時間後だ。今、同胞達が全力で彼女らを探している筈だ。椛、お前にも手伝ってもらいたい。」
椛の耳と尻尾がひどく項垂れ、飯綱丸を抱き締めていた腕も解け、そのまま滑らかに床に伏していった。
「うー。それじゃあ私も外出て探してきますぅ。」
「いや、お前はここから千里眼で博麗の巫女を見つけるだけでいい。文から聞いたがお前の負担が大き過ぎる。少しはサボっておけ。これは上司命令だ。」
嬉しい業務命令に、椛の耳と尻尾がまたフル稼働していた。
椛 「目標補足!って、もう他の鴉天狗と行動しているじゃないですか。」
飯綱丸「なんだと?誰と居るんだ?」
椛 「えーと、あれです、最近、もてはやされてる三人組の特級戦闘員です。」
飯綱丸「まずいな…。アイツらは巫女をかなり見下しているからなぁ。何をしでかすか…。」
椛 「うわっ!めっちゃ巫女の身体痣だらけですよ!」
飯綱丸「いかん!椛、正確な場所を教えてくれ!お前はここで待機だ。」